性奴隷トゥナと運び屋カリベラ

市樺チカ

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「ここに停めよう。今から運転するのはあれだよ」

寂れた倉庫が並ぶ中、一台のトレーラーに近付いた。コンテナは既に接続されており、このまま走り出せる状態だ。

「開けた所までは私が運転するから。トゥナは良く見てて」

段差に片足を引っかけ、飛ぶようにして高い位置にある運転席に乗り込んだ。隣にトゥナが座ったのを確認し、エンジンをかける。

「よし、行くよ」
「うん」


小一時間程走り、一旦停車した。
運転を替わる事と、もうひとつやらなければいけない事がある。

「トゥナ、そこの袋を頂戴」

助手席の足元に置かれた紙袋を受け取った。中身は飲料と食品だ。

「ちょっと行ってくるね」

座席から飛び降り、コンテナに取り付けられた小窓を開いた。紙袋を投げ入れると、中から物音が聞こえてくる。

出来るだけ中を見ないように小窓を閉じ、足早に戻った。
助手席に座ると、運転席のトゥナがこちらをじっと見ている。

「カリベラさん、今日の荷物って…」
「うん、そうだよ。人間」

何でもないように答え、発車を促した。
どるる、と大きな音と共にトレーラーが走り出す。操作自体は他の車と変わらないから、何とか運転出来ているようだ。

「あの、聞いてもいい?…どういう人達なのか…」
「さあね。私も詳しくは聞いてないけど、女っぽかったから人身売買じゃないかな」
「…そんな…っ」
「別に、良くある話だよ」

見れば、ハンドルを握る腕が震えている。私はトゥナの膝に手を置いた。

「トゥナ、私達は運送屋だよ。荷物に文句を言える立場じゃない。それから…」

膝から手を引き、顔を覆った。天井を見ながら口を開く。

「私の助手で居たいなら、荷物に感情移入しない事。…私はトゥナを殺したくないからね」
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