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第一章 『少年の革新》
第一章14 『技の披露』
しおりを挟む開始、という学院長の声を合図で、立ち続けていたコウたち受験生は、試験会場に向かって歩き出した。
あの後も学院長からの説明は続いていて、コウたちは試験会場の説明などをされていた。
聞くとどうやら、受験生が多いということもあって、色々と工夫をしているようだ。
要約すると、技の披露から実技試験の順に受ける人と、実技試験から技の披露の順に受ける人の2パターンあるらしい。
ちなみにコウは前者のパターンだったため、先に技の披露を行う。
*
おそらく体育館だと思われる試験会場の中、大勢の受験生たちが列に並んでいた。
列のその先では、一つ目の試験である『技の披露』が行われている。
かくいうコウも、既にかなりの時間待ち続けていて、もう少しで試験を受けることが出来そうだ。
辺りを見渡すと、たまたま近くにいた人と話をしてる人や、我慢強くただ待ち続けている人など、色々な様子が見てとれる。
「次の受験生、どうぞ!」
「……はい!」
若干そわそわしながら待っていると、ついにコウの番が来た。
コウは歯切れよく返事してから、椅子に座っている審査員の前に立ち、試験を始めようとする。
「受験番号124番のコウです!宜しくお願いします‼︎」
「はい。それでは、貴方が見せてくれる技の名前を教えて下さい」
コウが受験番号と名前を告げると、審査員から技の名前を言うように催促される。
コウは一呼吸置いてから、技の名前を告げた。
「――今から俺がするのは、〝八岐大蛇〟という技です」
コウは、技の名前を告げると同時に剣を鞘から抜き出し、片手で剣を握り締めて正眼の構えをとった。
瞬間――俺の身体には紫色に輝く鮮やかな剣気が纏われる。
コウはスゥーと息を深く吸い込み、瞼をゆっくり閉じた。
意識が剣技を繰り出すことだけに集中するのを感じながら、コウはここぞというタイミングで目をかっと開く。
「〝八岐大蛇〟……‼︎」
――『八岐大蛇』は八連撃技だ。
八つの首をもつ大蛇を模倣した剣気が、コウが剣を振るのと同時にコウの剣に纏い付く。
まず一撃目。コウは右斜め上から剣を振り下ろした。
素早く噛み付く大蛇を思わせる剣戟を繰り出すと同時に、八つある大蛇の首のうち一つが噛み付く。
鋭い斬撃を繰り出すと同時に、大蛇のような剣気も噛み付くため、威力は倍増だ。
二撃目、三撃目、四撃目と、コウはその後も鋭い剣戟を繰り出し続ける。
もし仮に敵がいたのなら、防ぐことすら出来ないくらいに、コウは様々な角度から斬りかかるようにした。
一匹、そしてまた一匹と、剣に纏われる大蛇が入れ替わっていく。
そして、ついに八撃目ときた時に、コウの纏う雰囲気がガラッと変わった。
最後の八撃目に向けて、コウは精一杯の剣力――剣気を込める。
「ふっ」という、剣を振りかぶる時の小さな息の音と共に、コウの剣は八つ全ての大蛇を纏う。
八つもある大蛇が全て合わさった、まさに渾身の一撃。
力強く、それでいて鋭い斬撃を、コウは真正面に向かって真上から繰り出した。
空気を斬る剣の音が辺りに響く。また、それと同時に風が生み出され、審査員や他の受験生のもとへと行き届いた。
審査員も他の受験生も何かを感じたようで、「おぉ」という歓声を僅かに上げている。
側から俺の技を見ていた人からすると、八連撃の技が繰り出されていたのは、僅か数秒の出来事だったのだ。
ひとまずコウは、それほどまでに短い時間でも、こうして人を魅了できたということに満足しておいた。
「……ありがとうございました。 では、次の受験生はどうぞ!」
少し遅れて合図がかかり、コウの一つ目の試験がたった今終わった。
剣を鞘に納めたコウは、その場を離れて次の試験会場へと向かう。
次は、試験官との実技試験だ。この試験では、油断も慢心も許されない。
今一度、コウは気を締めることにした。
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