転生したら母乳チートになりました

むふ

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7.お墓参り

お墓参り3/4

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 獣道を進んで、木々の間から見えたのは一面花が咲いた丘だった。


 ――ここがお墓……。


 現世みたいに何か石が積まれていたり、木が刺さっていたりするわけでは無く一面の花。
 この花も自生している花の様でお墓と言われても何だか実感が湧かない。お墓であるが、小さく綺麗と言葉が漏れ出でしまうくらい美しい景色だった。


「あぁ、綺麗だろう。ここには私が育てられなかった子達が眠っているんだよ。花はね、私がここにその子達を眠らせてあげる様になってからどんどん増えていったんだよ」


 穏やかな顔をしているオル婆の姿が何だかとても寂しく見えたのは気のせいじゃないと思う。
 この世界では当たり前の弱肉強食の理の中で、オル婆はその考えに疑問をもって生きれる命を生きさせようと尽くしてきた人だ。この場所はその尽くしてきた時間や努力が叶わなかった想いも眠っている場所なのだろう。
 ここに眠る子達の想いはわからない。
 生きられなかったことへの悔しさやもしかしたら安堵している子や喜びに溢れている子もいるかも知れない。自然と流れた涙を止める事はできなくて、抱いているアケロを強く抱きしめて、ここに眠る子達が安らかであるように願うばかりであった。





「ほれ、綾香。みんなの顔み見てきておやり。私らも歩いてくるから」
「でも、オル婆、ここって入って良いの?踏んたりしたら可哀想じゃ……」
「もうね、大地と一緒なのさ。ここに眠っている子達の体を踏むって感覚ではないんだよ。この森に来た子で時が止まったら森がその子達を抱きしめるのさ。魔力が大地に流れて、体は数日もすれば形が無くなって着ていた服もその後数日で跡形もなく無くなるんだよ」


 自分が考えていたお墓とは少し違った。
 ヒューバートさんにアケロを一時的に抱いていてもらって、オル婆の許可を得て花畑を散策させてもらった。
 オル婆もヒューバートさんも思い思いに散策している。ヒューバートに抱かれたアケロが泣き叫んでオル婆に手を伸ばしている姿は少し笑ってしまった。人見知り全開である。


 

 散策していると花畑の真ん中あたりについた。
 そこは何故かぽっかりと花が咲いていなかった。そしてその真ん中には背の低いまだ小さな木の苗木が何かを包んで生えている。
 花畑の中で急に立ち止まっている私に気がついたオル婆達が様子を見にきてくれた。


「あぁ、なんでかねこの周りだけ花が避けちゃってね。この木あるだろ?綾香を見つける数日前にこの木の中に箱が落ちててね。最初は木も生えてなくてその辺と変わらない花畑だったんだよ。それが、その箱だけがいつのまにかあったのさ」
「……箱……?」
 「拾い上げようにも魔法具なのか、呪具なのか、結界が張られているのか触れなくてね。仕方なくそのままにしてたら、いつの間にか花が枯れてもいないのにこの箱を囲うように咲いてて、木が生え始めたんだよ」


 今では木が膝くらいの高さまで育っていて、根本が確かに何かを覆う様に生えている。隙間を覗くように屈んでみると、黄緑色の綺麗な金の模様が入った箱が見えた。


「…………………………」
「見えたかい?」
「…………………………」


 黙り込んでしまった私のそばにオル婆とヒューバートさんが近寄って来る。アドラとアケロも心なしか心配そうにこちらに手を伸ばしていた。


「どうしたんだい……」
「……いえ、……い、え…………ここにいたんだね…………」


 嬉しさと、悲しさと、安堵と一気に感情が押し寄せてきた。根の空いている隙間に手を伸ばす。


「あ!触ると痛いよ!」
 
 オル婆の忠告を無視して隙間に手を入れるとすんなり入った。指に伝わる感触は、箱の表面の模様の凹凸だけ。頭を撫でる様に箱にてを這わした。
 何で触れるんだいと不思議そうなオル婆に、堰き止められない涙を流しながら振り返った。


「オル婆……心明ここあだよ…………」
「…………あ、……ぁ、…………そうかい、……この子かい」
「うん。……皆んなと、一緒にいた……」


 オル婆にはこっちにきた時に話をしていた。
 私の子がいる事を伝えていて、名前を言っただけでわかってくれた。ヒューバートさんは何が何やらとオロオロしているのが申し訳ない。
 いつもは気丈に振る舞ってくれているオル婆も泣いてくれている。離れ離れになったと思っていた子がこちらにきていて、そして皆んなに守られるように眠っていた事に色々な感情が押し寄せてひとしきり泣いてしまった。





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