9 / 28
2.異世界
2.異世界1/2
しおりを挟む「あ?あれ?ここは?」
深い深い森の中、木々の間から木漏れ日がさしている。涼やかな風が時折り吹いて、葉を揺らしている。
遠くから鳥の声が聞こえ、辺りは木と草だけ。
木の幹にもたれ掛かるように寝ていたのかお尻が痛い。自分の身体を触り、服を見ると飛び降りた時の格好と同じ。頭や身体に外傷はない。夢なのか、ここはあの世なのか仕切りにあたりを見回して考える。
頬をつねる時痛みが走り、立ち上がると足も付いていて歩けもする。
――ここは……、どこ……。
「!?心明?!!!」
心明が亡くなり、同じ場所に行こうと身を投げた。
しかし病院でもないここはどこなのだろうか。
心明の骨壷を抱いて飛んだのに周りに見当たらない。必死に探すが、見つけられなかった。
枯れたはずの目から涙が溢れた。
とりあえず着の身着のまま探すしかなかった。
歩いてみるとここは地球ではないのかと思い始めた。
生えている草や花が見たこともない形をしていたり、空を飛ぶ鳥も見た事がない。
――アフリカとか、マングローブとか……自然豊かなところでもこんなの無いよね……。
腕が4本生えている猿みたいな動物を遠目に見つけて、咄嗟にその場に屈んで距離を取った。
――え、気持ち悪っ。
得体の知れない動物をみて不安と恐怖が襲った。
日本でも猿が人を襲うこともある。どんな生態なのかもわからないので、関わらない事が最善だった。
そして地球では無い事が確信した。
少し開けた場所に出ると、太陽が3つあった。
直視できないが、明らかに3つある。
「嘘……。ここどこ……」
闇雲に歩いても仕方がないが、ポケットにあるのは飛び降りた時にすぐ身元がわかるように身分証明書と入れ忘れていたいつもらったかもわからない飴が1つ。
水を確保しなければ終わる。
「って、私死のうとしてたのに……なんでまた生きようとしてるんだろ……」
何故か死にしれなかった事に疑問を持ちつつ、苦しいのは嫌だからとまた飛び降りれるように崖とか無いかなと思いながら歩いた。
何時間歩いたか。
結局骨壷は見つからない。
陽は傾いてきて水も見当たらない。
疲れて歩くのもしんどくなってきた。
少し眠ってしまったのか、気がつくとあたりは暗くなり空には2つの月が昇っていた。
夜は昼間と違って奇妙な声が聞こえる。人の笑い声や、叫び声のような甲高い鳴き声。呻き声も聞こえる。
近くで木が擦れる音がして、疲れた体に鞭を打って走り出した。
「やばい!やばい!夜になった!火なんてないし……ライオンとかオオカミとか肉食の動物にやられたら……!」
洞窟とか木の幹の下に空洞になっている所なんて都合良く見つかる訳もなく、月に照らされて夜でも明るい方だが何も見つけられないまま疲労だけが溜まっていく。
何とか光に照らされるまま明るいところを移動していると、小さな小川を見つけた。
20㎝程度の小さな水の流れ道。
一日中歩き通しで水を見た途端に一気に喉の渇きを覚えた。
水質なんて気にしていられず、手ですくって口に運ぶ。お腹を壊すかも知れないが、背に腹は変えられない。
ひとしきり水を飲んで少し休む。
水の周りには人や動物が集まると聞くので、とりあえず水の流れを辿った。
途中で食べられるかわからないが木の実も見つけて齧ってみる。とても酸っぱい。
仕方なくポケットに入れていた飴を砕いて半分食べた。
川を辿っていると大きな岩の間に人が1人入れるくらいのスペースを見つけた。
ただ、こういう穴は高確率で何か潜んでいる場合がある。
少し大きめの石を拾ってきて何度か穴目掛けて投げ入れる。何も出てこないことを確認して自分も入った。
しゃがんでやっとの広さ。
寝たら足が半分出てしまう。
贅沢は言えないので、とりあえずその穴で一晩を過ごした。
うとうととうたた寝をしてしまったが、幸いにも獣に襲われることは無かった。
「心明、ごめんね……ママ同じ所に行けなかったみたい……」
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる