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酒場
酒場3/3
しおりを挟む「ルーカス……お前にイリアの事がわかってたまるか……」
新しく持ってきた水と飲み残した酒を交互にまた飲みながらブツクサ言い出した。
少し酔いが覚めて呂律が回ってきたかなと思いきや、次の段階があったらしい。
「イリアの好み知ってるら?」
「ぇ、いや?」
「俺が思う、にっ!お前のようなスカしたやつでは…………ないだろうかと」
ルーカスに指を指差していけ好かないと声を張り上げる。通常の人の言葉に直すと、ルーカスのように紳士的で落ち着いた男性が好みなのではないかとのことだった。年齢も自分はイリアより下であるとの事で、頼り甲斐が無いのかも知れないと少し自信が無くなっているようだった。語尾になるにつれて声のトーンが少しずつ小さくなっている。
以前パン屋で2人の姿を見た事が相当ショックだった。そもそもイリアに男性の影が全くなく、ライバルなんて者はいなかった。その上、リオルド自身自分の容姿や職業、戦闘力に関しては自信があった。その辺の男に負ける訳が無いと奢っていたのである。
そんな中、容姿は良い、職業も一緒で自分より上の立場、性格も悪く無い、戦闘力も同じか上、年上、下手したら自分より総合的に上かも知れない相手が出てきたのだ。
何か粗探しをしようと情報を集めたが、数年前に女遊びが激しかったくらい。しかもそれを隠してはおらず、ある意味さっぱりとした関係を築いていたので女性絡みでトラブルもなかったらしい。先ほど聞いたところ、イリアと出会ってから考えが変わり研鑽の日々を送るようになった事を聞くと、真面目で自分を省みる謙虚さも持ち合わせている。現在は女性関係も無い。
――どこなら俺はルーカスに勝てるんだ…………。
何でそんなに性格が良いのか、評判が良いのか、何か欠点は無いのかと本人に詰め寄っているが謙遜するばかりで余計に自信を無くしていった。
「リオルドも良いところ沢山あるじゃないか」
「ああ!あるら!……でも、お前に勝てるところが…………………………ぅ、イリアへの想いは俺の方が強いっ、お前っ、おまえら!イリアの事幸せにできるのかっ!」
「………………幸せにって」
半べそをかきはじめたリオルドがルーカスにくってかかる。
幸せにしたいかなんて思ってもいなかった。
勝手にライバル視されて、煽られ過ぎて対抗心を燃やした。可愛らしい人だとは素直に思っている。
仲を深めたいと言ったのはあくまで自身の利益を考えての事である。相手の幸せなんて度外視だった。
大の恩人である事には変わらず、幸せになって欲しい人ではあると言われれば思うが自分が幸せにするかと言われると悩ましい。
リオルドとは抱いている感情の種類が違う。
――そもそも俺の好きは、愛しているではなくて友人や仲間に抱く好きであって……。なんでこんなに俺は煽られたからって対抗心を燃やしたんだか…………。
「……俺の気持ちは友人としての好意であって、……素敵な人だとは思うけど君と同じ種類の好きでは無いよ?………………」
「うるさい!無意識たらしめっ……なんれっ…………うっ、お前もイリアの魅力に引き込まれてきっと好きになんだっ……………………野菜も食え」
酒がやっと空になって、水を煽りながら野菜スティックでルーカスを差す。
肉やチーズばかり食べているルーカスに手に持ってた野菜スティックを渡す。
そしてまた半べそかきながら、イリアの魅力についてまた語り出した。
――…………リオルドの言う事が正しいかも知れない。イリアの魅力は確かにある……。………………好きになるか……。
リオルドと別の感情であると言葉に出した途端、何だか喉につっかえるような感覚があった。
恋人にしたいと言う類の好きであるかは正直今はわからない。
ただ、目の前で野菜を食え、この水美味いなとイリアが可愛いと言葉の端々につけて喋っている酔っぱらいを見て何だか羨ましくなった。
こんなに真剣に人を想った事があっただろうか。
何十人と女性と過ごしてきたが、お互いの欲求を満たす事ばかり。
自分が人に良い顔するのは自分に対して害が及ばないように、あわよくば利益が出るようにと損得感情が根底にあると思う。ルーカスなりの処世術であった。
自分のこれまでの生き方を恥ることはないが、もう少し相手に踏み込んでお付き合いをしてみても良いのかも知れない。
本格的に泣き出してしまったルーカスを無理矢理連れ出して、高く登った月を背中に帰路についた。
――酒は飲ませるべきではないな……。
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お酒に弱いのかわいい(o^^o)
なんなんさん こんにちはー!
お酒弱々ですが、やる時はきっちりで!w可愛いと褒めてくださりありがとうございます!!
更新ありがとうございます\(* ´ ꒳ ` *)/
お酒によった、ダリウスのイリス好き好きが可愛すぎる( ´ཀ` )!
ルーカスの心情が今後にどう変化、影響されていくのか…楽しみ!
のら様
いつもありがとうございますっ!!
そうなんです!
リオルドのイリア好き好きはとどまることを知らないのですー(*´Д`*)
ルーカスの今後の成長?も乞うご期待!╰(*´︶`*)╯♡
更新ありがとうございます«٩(*´ ꒳ `*)۶»
イリアを好きになった男性二人は見る目ある!
ってなるも、どうしても『変態だけど…』の言葉が語尾に付いてしまって笑ってます(*´ч ` *)
のら様
のら様ー!
感想をありがとうございますっ
あっあっ、ありがとうございますぅぅ(´;Д;`)♡
変態だけど、魅力のあるキャラになるよう頑張っております!
また続編をお待ち下さい!
これからも変態達を温かい目でどうぞよろしくお願いします(о´∀`о)♡