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不能の訳
不能の訳6/6
しおりを挟む全速力で部屋に帰ってきたルーカスは肩で息をしながら、しっとりと額に滲む汗を拭っていた。
部屋に入った瞬間に防音魔法、開錠出来ないように扉、窓に二重に魔法をかける。
ここまできて邪魔が入ることだけは断固阻止。
スラックスのポケットにしまっておいたハンカチが自分の匂いを吸わないように手のひらに広げる。
綺麗に畳まれていたハンカチは少し形崩れしているが、イリアの汚れを拭った跡と匂いはまだしっかりあった。
ベッドの脇に立ち、ハンカチに顔を埋めたい衝動を抑え邪魔な装備を手早く外す。
気持ちばかりが逸り、全身につけている鎧がなんと煩わしいことか。速く匂いを嗅ぎたい。頭の中がそればかりになり、顔が熱ってきているのがわかる。
装備を外し終えると、床に乱雑に放り投げて身をベッドに預けた。
ここ数年仕事の鬼と化していた自分が仕事を放棄して自分の欲に走る。仰向けに寝転がり、一度射精てシミを作ってしまったスラックスもパンツも履き替える事はせず、速く窮屈に首を押さえつけられているモノを速く解放する。スラックスの前をくつろげ、パンツをずり下げる。
ブルンと音を立てそうなほどいきり立ったモノが、腹に勢い余ってぶつかる。
シャツの前のボタンも外して、枕の横に置かれたハンカチを顔の前に持ってくる。
心臓がうるさい。
腕を伸ばしてまじまじと薄ら汚れたハンカチを眺める。
ふんわりと香る刺激臭に早く早くとお腹につきそうなモノは小刻みに揺れる。
小さく息が上がり、ハンカチを持った手も小刻みに震えていた。
――……ぁあ、やっと。
大きく息を吐いて、掲げていたハンカチを顔に埋めた。口と鼻を覆って、勢いをつけて鼻から空気を吸った。
鼻腔を強く刺激する強い匂いが鼻の中いっぱいに充満した。
「っつ゛、んん゛!!おぁ゛」
触ってもいないのに暴発した。
勢い良く白濁した液が飛び散り、はだけてたお腹と胸を汚した。
肩で息をして、目の奥がチカチカする。
強い刺激に射精たばかりの身体が痙攣を続ける。
「ぁ、……んっ、んっ」
――……んぁ、ぁ、やばい……きもち、ぃ。
そこからは一心不乱だった。
右手でハンカチを顔に押し付けて、左手はまだまだ萎えそうにもないモノに手をかける。
くっきりと筋立った部分に指を添えて、何度か往復して摩る。カリの出張った所を指で弾いて、短く切られた爪で洪水になっている鈴口を浅くほじる。
男の自身の手には収まらず、頭が出るくらい大きくなったモノを握り音が部屋に響くくらい激しく梳いた。
「んぁっ、んっ、……っくさっ、あぁっ、いっいい」
語尾にハートマークが付くくらい匂いに夢中。
飛ばした白濁した粘液を拭うことなく、足に引っかかっていたスラックスもパンツも気がつけば床に放られている。
半分白眼を向いて、頬を上気させている姿は誰にも見せられないくらいの痴態であった。
約5年ぶりの快楽は、ルーカスにはとても刺激的な時間で部屋の温度、湿度が上がり生臭い臭いが充満する。この状況が更に意識を朦朧とさせた。
服を全部脱いで、枕にハンカチを敷いて顔を埋めて四つん這いの状態で両手でしごく。
「……んんんっ、…………ふぅ、……あっぁ」
時折り苦しくなって顔を横に向けると口の端から涎が垂れそうになる。
両手が自由になって片手で袋を揉みしだき、快楽を追い求めていたが、先端を数回擦っただけでまた射精てしまった。
余韻を楽しむ暇もなく、横に寝転んで足を広げる。
今度は先端だけを手のひらでこねる様に撫でてあげると、またすぐに達してしまった。
「あふっ、っ……っ、…………はぁ、はっ」
何度あ射精たかわからない。
仰向けに戻って裏筋を撫であげて、腰をへこへこ突き上げる。ベッドが軋む音より、喘ぎ声の方が大きい。
出てくる粘液の色が徐々に薄くなって、今では尽き果ててオーガズムだけ。
何時間経ったか、高かった日は沈み部屋は真っ暗。
暗闇の中荒い息づかいと、粘度を感じられる水の音、少ししゃがれた喘ぎ声がたまに漏れる。
気がつけば部屋が薄ら明るく照らされていた。
裸のままぼんやりと天井を仰ぎ見る。
喉の奥がひっついて、咳き込んでしまった。
久しぶりに体が痛い。
ブリキの人形を無理矢理動かしているような感覚に、眉間に皺を寄せるが体についた粘液が乾いてカピカピになっている感覚に更に皺が深くなった。
頭を掻きながら状況を把握する。
随分夢中になっていたようで、汚れたズボンもパンツもシャツもベッドの脇に乱雑に落ちていて枕は涎で湿っている。いつの間にか漏らしたのか、ベッドには湿り気を帯びたシミと微妙なアンモニア臭が漂う。更に枕の横に丸まっているハンカチも自身の涎でかなり汚れていた。
――匂い残っているだろうか……。
散々自身を可愛がった後にも関わらず、あの匂いを想像しただけでまた自分の下半身に熱が集中していくのがわかった。
涎で汚れていることは承知で鼻を近づける。
緩く立ち上がったモノに手を添えて、朝の1発を開始しようとしていた。
――………………匂いが変わっている……。
当然だった。
自身の涎がついたことと、時間が経った為に匂いが飛んでしまっていた。
あの強烈な刺激臭は鳴りを顰めてしまい、準備万端のモノはみるみるうちに頭を垂らしてしまった。
匂いを思い出していじってもうんともすんともいかず、かなり強い匂いを嗅がないといけないのかも知れない。匂いフェチになったのか、インポ生活に光を見出していた。
――最初からそう上手くはいかないものだね。
一つため息をついて、部屋の横についているバスルームに入って汗と汚れを流した。
――ベッドは……もう使えないな……。
シャワーから出ると部屋付きの侍女を呼び、ベッドを新しい物に交換してもらう様手配してもらった。
軽くご飯を食べて溜めていた仕事を片っ端から片付けていく。
そしてまた3日間の休暇申請を無理矢理通して、このままインポを脱却しようと夜の繁華街に出た。
匂いフェチであることを踏まえてお店を探す。
そういうお店を見つけて、久しぶりの女性との営み。
蒸れた足を顔に付けてもらって匂いを堪能しようとしたところ、臭くてむせてしまった。
――……ぇ、臭ければ良い訳ではない?!
一瞬硬直してしまったが、気を取り直して首筋の匂いを嗅いだ。
何とも思わなかった。
反応しない下半身。掴みかけていたものが滑り落ちていきそうで、焦り出した。
体裁なんて保っている場合ではなく、客の相手をしていない店にいる子を全員呼び匂いを嗅いでいった。
――…………………………全く何も感じない。むしろ臭い。
純粋にショックを受けて、嗅ぎ回るだけ嗅ぎ回って全員分のお金を支払って店を出た。
苦し紛れに事件の捜査の一件で、と理由をつけて。
休暇まで申請して、完全にインポ脱却、現役復帰を志していたが道半ばというかスタート地点1歩目から大きな難所にぶつかってしまった。
――強い匂いにも種類がある……。イリアさんに会ってみるか……。
その頃のイリア。
自室で何やらチラシと睨めっこ。
ブロンド、金髪サービスデイ。
大好きなパン屋のイベントチラシだった。
そこのパン屋は定期的に変わったイベントをしていて、以前は全身黒い服で来店した人に特製パンプレゼントや、1曲歌うと1割引や、フルーツと物々交換などがあった。
今回のイベントはブロンド、金髪のお客様1人につきクッキープレゼント。
――困りました……。私の髪は金でも明るい茶色でも何でも無い。
特製のクッキーが食べたくて仕方がないイリア。
チラシと自分の髪を交互に見て、恨めしそうに眉間に皺を寄せた。
こうして下心と言って良いのかわからない、ルーカスにとってはとても真面目な不純な動機を抱えて冒険者組合に足を運ぶことにした。
冒険者組合でイリアの情報を確認すると、やはり以前一度会ったことがあった。それも自分を見つめ直す大きなきっかけをくれた依頼で。
ルーカスは彼女に対して恩を感じている。しかし、彼女のせいで新しい扉が開かれ、インポの原因になったとはつゆ知れず、早く会いたいとはやる気持ちを胸に心に帰路についた。
――あぁ、なんで忘れていたんだろう。早く、早く会いたい。
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