変態騎士に好かれても困ります

むふ

文字の大きさ
上 下
4 / 26
新しい自分

新しい自分2/5

しおりを挟む
 

 魔力が回復次第出発する為、冷たく固い石畳の上で寝転んでいた。
 お腹が減ったので横になりながら、干し肉を数刻前までいた広間の方から大きな岩が崩れる音がした。




「……ん?」


 まだ意識が覚醒しないうちに、誰かが戦闘を始めたのだとわかった。広間は人が入ると仕掛けられている魔法陣が人の魔力を検知して、ゴーレムが勝手に動く仕組みになっている。無限ループな訳だ。音がするということは、誰か入ってきた証拠。
 男女混合のパーティなのか、感高い声が複数と低めの声が聞こえた。
 地面から身体を起こすことなく、戦いが終わるのを待とうと聞き耳を立ててまた目を閉じた。


 

 ――4人いるんですから、参加しなくても大丈夫でしょう。戦い終わってから参加させていただいて、出口に一緒に向かいとしましょう。



 時折りけたたましい音と、男性の支持を出す叫び声、女性の慌てている声。


 ――初心者レベルの女性が3人、熟練の男性が1人?思い切ったパーティですね。


 この遺跡はほぼ攻略され、攻略のセオリーもある程度伝わっている。難易度的には初心者抜け出し、複数戦の練習の場所と言われている。遺跡攻略の推奨ランクで言うと全員がCランク程度。
 聞こえてくる声と音は余裕があるように思えた。









「大丈夫!俺に任せろ」
「きゃー!ルーカス様ー!」


 ――んー。ルーカス様と言う方頼みの戦闘をされているようですね。
 私は1人だったので、他の心配は要らないのですが、その他3人の事を守りながら戦うのは相当の熟練。ランクBかそれ以上なのか。召喚系の魔法か防御魔法等に優れている方なのか。




 寝転んでいるところに届いてくる声だけでの憶測だが、当たらずとも遠からず。
 あくまで、我関せずを貫くイリアは、湿り気を帯びた壁、蔦があちこちから生えて崩れた壁が人の顔に見えるなぁなんて悠長に思いながら過ごしていた。


 そうしている間に、先ほどまで聞こえてきた黄色い声援に焦りが混じってきた。
 指示と檄を飛ばしていた、カッコつけのルーカス様とやらの声にも疲れが滲んできているようだった。




 ――はぁ。様子を見てきますか。


 参戦する予定はなかったが、自分の生存率が少しでも上げる為、同行してもらえる予定のパーティの戦いを重い腰を上げて見に行くことにした。
 負傷した足に治癒魔法をかける。 
 広間へ戻る道は入ってきた道と、実は上の方から広間全体を見渡せる道がある。その見渡せる道に入るには、結局1階から入って上がって行かないと行けない。ゴーレムの頭上を飛び越えて上に上がる事も可能ではあるが、地上から結構な高さにあるためわざわざゴーレムを避けて上がる人は少ない。


 広間の上に出ると、所々崩れてはいるが幅3メートルくらいある足場がある。
 そこへ出ると、シルバーの鎧を着た金髪で体格の良いタンカーの男性、軽装備の弓使いの女性と、魔法使いのようなローブを着た女性が2人。タンカーの男性が先頭に立ち、小さなゴーレムが女性達に向かっていくのを阻止しているようだった。




 ――隙を狙って後衛が、ジャイアントゴーレムに攻撃しているようですが、あれでは倒せませんね。
 かといってタンカーが前に出過ぎると、小さなゴーレムが後衛に攻撃し出してしまう。それを受け切る能力はあの女性陣には無さそうです。




 周りをゴーレム達に囲まれてしまい、魔法使いの1人がゴーレムの攻撃を受けてしまった。
 飛んでくる岩、振り下ろされたジャイアントゴーレムの拳をタンカーの盾が受ける。剣で腕を落とすが、核が壊れない限り何度でも再生してしまう。懐に飛び込もうとすると、他のメンバーから離れてしまい守ることが出来ない。



「俺の援護をしてくれ!バフをかけて!一気に攻める!弓で他のゴーレムの気を引いて!」


 タンカーの男性が勝負をつけに入った。
 後衛の3人に支持を出して一気に前に出る。





 ――!あれはまずいですね。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...