変態騎士に好かれても困ります

むふ

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新しい自分

新しい自分1/5

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 これはイリアがまだCランク冒険者、リオルドに付き纏われるより5年くらい前のお話。





 

 ――どうしてこうなってしまったのでしょう。


 遺跡での薬草採集の依頼を受けたまでは良かった。
 ただ、目的地に入ってすぐ1人取り残されてしまった。救援要請を誰かが出したようで、幸いにも冒険者が駆け着けたのだが、事故に遭い遺跡の下にイリアと助けに来た冒険者の男性が落ちてしまった。気を失っていたイリアが目を覚ますと、その男性に抱えられていた。一緒に穴に閉じ込められてしまったようで、落ちてきた岩石のせいで辺りは暗く、換気が悪いのか、なんだかとても臭った。


 

 ――これだから、複数人、ましてや女性がいると碌な目に遭わないのですよ。
 ……そして、…………臭いですね。



 

 



 


 遡ること数日前。


 今回の目的の遺跡に入るには最低4人の魔力を注がないと遺跡の入り口が開かない仕組みになっている。遺跡の中にある小さな湖に湧く水を手に入れたくて、基本1人で行動したいのだが、嫌々人と組む依頼を受けることにした。

 
 いつものことだが、それが良くなかった。



 
 この遺跡は街から遠く、一度入ると入り口からは出られない。その為、引き返すことができず、出口まで行くのに4人で丸2日程度かかる遺跡。

 
 そこにイリア1人だけが取り残された。
 いや、中に閉じ込められたと言うべきか。

 
 この遺跡は4人の魔力で入り口が開くが、開きっぱなしではなく数秒経つと自動で閉まってしまう仕様になっている。4人で入ったのに閉まる直前に他の3人が外に出たのだ。


 おかしいとは思っていた。
 
 
 この遺跡の依頼は常時出ており、4人以上であればいつでも依頼を受けることができる。しかし、報酬がイマイチで時間と労力が見合わないのだ。初心者抜け出し、中級者くらいの冒険者が特殊条件下の戦闘訓練か、複数パーティでの戦闘を想定しての練習場としてしか依頼を受ける者はいない。

 
 そんな中、人数が集まればいつでも良いと悠長に構えてたが、依頼の予約した途端すぐ応募があった。イリア以外1人が男性、後2人が女性だった。
 扉が閉じる瞬間、男性のえ?という声と女性のわざとらしい演技が扉越しに聞こえたのは言わずもがな。

 何かと女性が絡むと良くないことが起こりがちなイリアは、そんなこともあろうかと日々備えあれば憂いなし。多めの食糧、ポーションを持ち歩いている。

 本人は何を女性陣にしたのか全く心当たりがないのが常である。
 何度もこういった場面に遭遇しているので、状況を飲み込むことは容易いことだった。





 

 幸いなことにこの遺跡はほぼ攻略されているため、中の地図も、出現モンスターも基本情報は全てインプット済みである。


 ――問題なのは、どれだけ魔力を温存しながら出口に行くかですが……。出るまで、時間がかかりそうですね……。




 1人になってからの行動は早かった。
 アイテムボックスから地図を出して、計画を練る。ここまで進んで休んで、道中のモンスターを狩ってご飯にしてと行動計画を立てて行った。
 出口まで単純計算で8日かかる。


 ――はぁ。がんばります。



 そんなこんなで時間はかかるが、なんとか1人で出口に向かっていた。











 遺跡に入ってから3日目、湖の水は手に入れた。
 身体は汗と砂やモンスターの返り血で汚れてきている。浄化魔法を使う魔力を温存する事を優先して、恨めしそうに湖に映る汚れた自分を見た。この湖は直接手で触ると爛れるただ為に身体を清めることは出来ない。



 ――出るまでは我慢ですね。帰ったらアロマを焚いたお風呂に浸かります。良いアロマを出しましょう。










 更に遺跡に入ってから6日目。
 ついにジャイアントゴーレムが出る広間にやってきた。


 広間の中央にゴロゴロと雑多に岩が落ちている。
 壁は風化して所々崩れ落ちていて、中央の岩を挟んで真正面に奥へ続く道がある。

 
 広間に入ると地鳴りがした。
 中央の岩が音を立てて浮かび上がってく行く。浮かんだ岩が重なり合って数メートルはある巨大な岩のモンスターが組み上がった。
 周りの小さな岩も重なり合って、人より少し大きなゴーレムが数体現れた。



 ここのゴーレムは中央の巨大なジャイアントゴーレムが身体の中に核をもっており、その核を攻撃しない限り他のゴーレムは止まらない。
 もちろん岩なので物理攻撃に強く、身体の中心に核がある為、一定のダメージを与えて核を露出させなければならない。


 ――はぁ……。頑張って倒しますか。


「精霊召喚、ウッドマン」


 広間の床に召喚陣が浮かびあがり、緑色の眩い光が放たれた。
 召喚人の中から、木の枝が人形ひとがたに集まって形作られた下位の精霊だ。
 やはり広間の1人攻略はかなり手間のため、足止めをする役割が必要だった。



 ウッドマンは後方に下がり、植物を操って小さなゴーレムの足に蔓をからませて動きを止める。
 その間に私がジャイアントゴーレムの核が入った胸の部分に攻撃をする。


 





 何時間経ったか……。
 やっとの思いでジャイアントゴーレムを倒した。
 大きな音を立てて小さなゴーレム達も崩れていった。


「……はぁ。やっと終わりました」


 魔力が残り少なくなり、疲労困憊。
 砂埃で更に汚くなった服に靴。
 この後も何があるかわからない為、どれだけ不快でも浄化魔法は使用できなかった。


 大きな打ち身が出来ているであろう足を少し引きずり、ジャイアントゴーレムのいた部屋を抜けてすぐの曲がり角で休息をとる。このまま進むとすぐ罠があるため、腰を下ろして休める場所はここしかなかった。
 戦いで疲弊したイリアには幾分厳しい仕様だった。


 

 ――流石に疲れました。太ももに一発受けてしまいましたが、1人での討伐ですから及第点を上げてもいいのではないでしょうか。



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