あれな除霊屋さん

むふ

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とある日のバイト風景

とある日のバイト風景2

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「師匠今日の仕事は内勤でよろしいでしょうか」
「あぁ。10:00から11:30まで電話を。30分昼食の準備。その後1時間休憩。13:00から修行だ」
「かしこまりました」



 現在時刻は9時過ぎ頃。
 仕事用のスマホを充電器に刺して、メモとペンを用意。
 そして、○イッターと○nstagramのほぼ稼働していない師匠のアカウントから、電話相談本日やります。と投稿。

 ほぼ稼働してないにも関わらず、意外と電話がくる もので10時になったら電話に師匠ではなく私が出て対応します。

 10時までの時間で、部屋の掃除と洗濯をする。
 急いで洗濯機を回す。
 ほとんどこちらに住んではいないので、かなり少ない洗濯物を回して乾燥までかけてしまう。
 パンツなんて見慣れてしまって、恥ずかしさなんてどこへやら。

ーー私は主婦か?



「師匠、洗濯洗剤が無くなりそうです」

 リビングにいる師匠へ声をかけて、小さく手を挙げた。

 経済新聞なのか、海外の読めない新聞なのかよくわからないけど新聞を読んでコーヒーを飲んでいる後ろ姿がとても様になっている。

 新聞も読み終わって、私が別の部屋を掃除している間に師匠は皿を洗浄機にかけていた。
地味にさりげなく家事やるあたり、更によくわからない人に拍車をかけている。

ーーこれが、世の中の女性にはギャップという形で伝わるのか。




そして10時3分前。

 スマホの電源を入れた瞬間に電話がかかってきている。
黒電話に音を設定しているから、うるさい。

 師匠は私が電話対応している間、すぐ近くでパソコンをカチカチ。
何しているかわからない。

 そして、10時より前にかかってきている電話を切って、10時になった瞬間からかかってきた電話に出る。

「お電話ありがとうございます。天斗事務所相談窓口です」
「……」

ーーはい、出ましたよ。無言電話。


かなり電話がかかってくるのだが、まず9割はいたずら電話である。3割は無言電話で、3割は本当に出たよ、爆笑。2割はワン切り、残り1割は何故か怒鳴られる。
 本当の相談に当たれるのは1割だけ。
いたずらは即切る。
 ただ稀に、いたずら電話にも幽霊的なやばいやつを電話口から感じることもあり、いたずら目的でかけてきたのに本当に相談になったこともあった。

 それから、5連ちゃんでいたずら電話。

「師匠いたずらまた多いです」

 言っている間にもいたずら電話。

 すると師匠がSNSに、いたずら電話をかけてきた人に業務妨害で裁判するぞって投稿をしてくれる。

 こんな感じで、SNSに警告をして更に執拗にかけてくる人は全てログをとっている。
 師匠が。
 師匠は暇なのだろうか。余りに余ったお金があるからなのだろうか。
 こんないたずら電話で、裁判なんて冗談でしょうとやってみろ!と言って中には更にかけてくる人がいる。
 実際に師匠は弁護士を立てて裁判までやってしまう。冗談ではないのです。すでに過去にも数名やってる人がいる。
 その度にちょっとした騒ぎになるのだが、いつの間にか情報は廃れていたずら電話という大した罪の意識もないアホが電話をかけてくる。
 そして、痛い目みる。
 警告後、謝っても遅く賠償金をむしり取る。

 そしてやっとのこと、まともな相談っぽい電話に当たった。


「最近、肩が凝って。病院行っても、整体行ってもダメなのよね。家もなんかずっとジメジメしてて……」
「そうですか……」


 私は机の上にある、札を師匠に見せる。
“なし“と書かれた青の札を。

 そして師匠はその札をみて、○か✖️か要相談、3つあるうちの1つの札を出してくる。

 この電話は、私の修行の意味合いもある。
 電話口から、霊力を感じ取る。小さな別の声を聞きとったり、雰囲気やノイズを感じ取らなければならない。
 師匠くらいになると、電話口にしっかり出なくてもわかるんだとか。
 カメラ越しでも霊はわかり、テレビに映っている光景も師匠は全然別の物に見えると言っていた。

 それを感じ取り、感覚を研ぎ澄ます修行なのだ。私の持ち札、幽霊の仕業の場合赤の“あり“、関係無い場合は“なし“。可能性はあるけど断言出来ないのが“要相談“。
 師匠と答え合わせをしながら、1時間半電話対応をする。

 今回の“なし“は“○“の札が上がったので、正解。全問正解すると、次回のバイトの際にお菓子が貰える。

ーー子どもか。

 でも高級菓子の場合が5回に1回くらいであるので、結構真剣に頑張る。

「幽霊的なことではないと思いますよ。運動をお勧めします。ご心配なら神社に行かれたり、パワースポットなど清められた場所に行くことをお勧めします。では、失礼いたします」

 幽霊関係で無い時アドバイスをしてすぐに切る。

 切った瞬間にまた電話がかかってくる。
決まり文句を言ったら、今回は幽霊の仕業な気がする電話だった。
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