あれな除霊屋さん

幸桜苑の女将

幸桜苑の女将1

　こんにちは、佐山　鈴さやま　すずです。

　本日は本業のスポーツ用品メーカーの業務を終わらせ、帰路についています。
　都会の電車は揺れが激しく、今回は運よく座席に座れてお気に入りの漫画を読んでる最中に、チャット通話アプリのL○NEで連絡が来た。言わずもがな、師匠からである。



　◯日の夜6時30分に亀田バス停前集合。
　次の日もあけておけ。




　こっちの予定は聞かないところは毎回。
　幸い、丁度予定の無い日であった。

　小さくため息をついて、わかりましたと返信すると亀田バス停の場所が送られてきた。
　午後5時に終業してからでも間に合う場所で、師匠がちゃんとこちらの事を考えて無理の無い時間設定をしているんじゃ無いかと思ってしまう。
　俺様師匠に限ってそんな事はもちろん無いので、考えてるなら凄いなぁとプラスに思っておく。

　バイトの呼び出しは不定期だ。１ヵ月くらい、決まった曜日に数時間入ることもあれば、こうやって不定期に師匠に外部への呼び出をされる事が度々ある。
　一見さんお断りで紹介されて相談に来た方の対応が主にあるが師匠は気まぐれに霊媒師業をやってるので本当に超不定期。
　事務所も実は看板すら出していない。
　私が事務所に行ける時だけ、電話相談をしている。
　電話相談は私しか対応しない。本当に悩んでいるなと思っても、実際に師匠が対応したことは記憶上無い。
　私が、ポーカーフェイスで内心焦って電話対応している様が、愉快なんだそうだ。

　ネットで何時から何時電話繋がりますってゲリラ的にやるから、レア感があるのか面白がっていたずら電話も多い。
　こんなんでバイト代もらえるのは正直申し訳ない。


　――電話には私しか出ないので、ネットでは霊媒師天斗は実は女だった？！
　――愛人に仕事をさせている。
　――税金対策とか色々書かれている。
　――電話したけど、途中で切られた。
　――奥から男の人の声が聞こえたから、天斗が聞いてくれてる！
　――適当な事言われた。


　などなど、ネット上では愉快痛快、奇想天外、罵詈雑言。好きなことを書かれていて、本人は何も気にしていない様子なので、今後もこのスタイルである。





　外部に行くのは久しぶりで、以前行ったのはお金持ちの大豪邸。曰く付きの物を探し出せというお宝発見のお手伝いだった。
　今回はどんなお手伝いなのか検討も付かないけど、大体私を呼び出す時はめんどくさがって私に何かやらせたい時である。
　お宝発見の時は、服が汚れるからと私を倉に一人置き去りにされたことがあった。



　今回の呼び出しもろくなもんじゃ無いかも知れない。
　ただ、時給が良い上に、予定もない、そして極稀に、本当に極稀にご褒美がもらえるので、報酬を期待してバイトを引き受けるのであった。