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たこ焼き
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「僕と付き合ってください」
「無理です」
ここは、大学の人通りのある中庭。秋晴れの爽やかな空の下、今日は大学の祭りで、有名な卒業生の芸能人も来ている。
そんな中、たこ焼き屋の出店を手伝っていた私は、休憩時間に入った途端呼び出された。相手は、学部でも一番人気のイケメン。誰にでも優しくて、おしゃれ料理もできる理想の彼氏として名高い先輩だ。
私が知るだけでも、大学に入ってから3人の女の子と付き合っていた。その都度真剣交際をしていた彼はとてもモテるから、お遊び浮気上等、彼女から奪ってやるというタイプの女の子が放っておかない。行動派じゃない女の子たちも、彼に恋心を抱いていて、熱と切なさのこもる瞳で彼を見ている。
だからか、彼女のほうが疲れてしまい、短期間で別れを切り出されっぱなしの、気の毒な意味でも有名なイケメン。
彼が私に告白するのを知っていたであろうギャラリーがフリーズする。一瞬の静寂の後、あちこちから、彼を断るなんて有り得ないと、私に対して非難が浴びせられた。
「うっそマジで?」
「何でよりにもよって、あんな面白みのない、暗くてダサイ子が!」
「そんな子やめて私と付き合ってよー」
「うわぁ、彼女、断るとか何様?」
中には、OKもらった今日にも、私とエッチできるかかけていた男子たちの勝った負けたとかいう不届きな声も聞こえる。馬鹿にしないでもらいたい。彼はその人たちとは関係ないみたいで、彼らを睨んでいた。
周囲からどう言われても良い。OKしたところで、嫉妬した女の子たちは歴代の彼女に対して嫌がらせをして来たのも知っている。
つまり、彼に告白されたら、どちらに転んでもただではすまないのだ。せめて、ギャラリーのいない場所でしてもらいたかったけれど、彼も断られるなんて思ってなかったのだろう。
「な、なんで……? あの、色々僕の悪い噂を聞いているかもしれないけれど真剣なんだ。だから、友達からでもいいから」
接点のほとんどない私に対して、なんでも、ボランティア活動で他の子たちがさぼっている間真面目にしていた姿を見てそれ以降気になっていたらしい。ボランティア活動も、そういえば彼は黙々と真面目にやっていた。ことある毎に、彼に声をかける女の子たちの邪魔が入っていたけど。
「自分の胸に聞いたらいいと思いますよ?」
「僕、知らないうちに君に何かした?」
「私には何もしてないですよ。こうしてまともに会話するのも初めてですよね?」
「そうだよね。だったら、なぜ? ひょっとして、女の子たちからの嫌がらせを気にしているの? だったら、僕不安にさせないように頑張るし、ちゃんと対応するから。浮気なんて今までした事ないし、これからだってしない」
どうやら、歴代の彼女の事の顛末は知っていたようだ。彼なりに一生懸命対応していたのかもしれない。そのあたりは、彼の言動が原因だけじゃなくて、周囲の人たちや彼女本人の気持ちや行動次第だっただろうから、真剣な眼差しで私を守るっていう彼の言葉に嘘はないと思う。
なんだかんだで次から次への彼女が出来るし、あっさり引き下がるかと思ったのだけれども、こんな風に食い下がられるとは。逆にこっちがびっくりしてしまった。
彼は真剣だ。だから、私も真剣に対応しようと思い、ギャラリーのいない場所に彼と向かった。大学内では彼は目立つし、こんな状況だから、あっという間に私も有名人になっただろう。
せめて、時と場合を考えて告白して欲しかった。私も返事を別の場所でしたらよかったー!
明日から大学に通うのが憂鬱だ。お互いのスマホの通知音がひっきりなしに鳴り響いている。おそらく、話を聞いた友達やクラスメイトたちからのメッセージだろう。うるさいスマホをサイレントにした。
告白を断った私の歩調に合わせてくれるし、車道側を先輩が歩く。自然とこういう気遣いの出来る優しい人なんだろう。
人生勝ちっぱなしのこのイケメンめ!
って、ここまでスマートに対応してくれる彼に対して心の中で悪態をついた。
「無理です」
ここは、大学の人通りのある中庭。秋晴れの爽やかな空の下、今日は大学の祭りで、有名な卒業生の芸能人も来ている。
そんな中、たこ焼き屋の出店を手伝っていた私は、休憩時間に入った途端呼び出された。相手は、学部でも一番人気のイケメン。誰にでも優しくて、おしゃれ料理もできる理想の彼氏として名高い先輩だ。
私が知るだけでも、大学に入ってから3人の女の子と付き合っていた。その都度真剣交際をしていた彼はとてもモテるから、お遊び浮気上等、彼女から奪ってやるというタイプの女の子が放っておかない。行動派じゃない女の子たちも、彼に恋心を抱いていて、熱と切なさのこもる瞳で彼を見ている。
だからか、彼女のほうが疲れてしまい、短期間で別れを切り出されっぱなしの、気の毒な意味でも有名なイケメン。
彼が私に告白するのを知っていたであろうギャラリーがフリーズする。一瞬の静寂の後、あちこちから、彼を断るなんて有り得ないと、私に対して非難が浴びせられた。
「うっそマジで?」
「何でよりにもよって、あんな面白みのない、暗くてダサイ子が!」
「そんな子やめて私と付き合ってよー」
「うわぁ、彼女、断るとか何様?」
中には、OKもらった今日にも、私とエッチできるかかけていた男子たちの勝った負けたとかいう不届きな声も聞こえる。馬鹿にしないでもらいたい。彼はその人たちとは関係ないみたいで、彼らを睨んでいた。
周囲からどう言われても良い。OKしたところで、嫉妬した女の子たちは歴代の彼女に対して嫌がらせをして来たのも知っている。
つまり、彼に告白されたら、どちらに転んでもただではすまないのだ。せめて、ギャラリーのいない場所でしてもらいたかったけれど、彼も断られるなんて思ってなかったのだろう。
「な、なんで……? あの、色々僕の悪い噂を聞いているかもしれないけれど真剣なんだ。だから、友達からでもいいから」
接点のほとんどない私に対して、なんでも、ボランティア活動で他の子たちがさぼっている間真面目にしていた姿を見てそれ以降気になっていたらしい。ボランティア活動も、そういえば彼は黙々と真面目にやっていた。ことある毎に、彼に声をかける女の子たちの邪魔が入っていたけど。
「自分の胸に聞いたらいいと思いますよ?」
「僕、知らないうちに君に何かした?」
「私には何もしてないですよ。こうしてまともに会話するのも初めてですよね?」
「そうだよね。だったら、なぜ? ひょっとして、女の子たちからの嫌がらせを気にしているの? だったら、僕不安にさせないように頑張るし、ちゃんと対応するから。浮気なんて今までした事ないし、これからだってしない」
どうやら、歴代の彼女の事の顛末は知っていたようだ。彼なりに一生懸命対応していたのかもしれない。そのあたりは、彼の言動が原因だけじゃなくて、周囲の人たちや彼女本人の気持ちや行動次第だっただろうから、真剣な眼差しで私を守るっていう彼の言葉に嘘はないと思う。
なんだかんだで次から次への彼女が出来るし、あっさり引き下がるかと思ったのだけれども、こんな風に食い下がられるとは。逆にこっちがびっくりしてしまった。
彼は真剣だ。だから、私も真剣に対応しようと思い、ギャラリーのいない場所に彼と向かった。大学内では彼は目立つし、こんな状況だから、あっという間に私も有名人になっただろう。
せめて、時と場合を考えて告白して欲しかった。私も返事を別の場所でしたらよかったー!
明日から大学に通うのが憂鬱だ。お互いのスマホの通知音がひっきりなしに鳴り響いている。おそらく、話を聞いた友達やクラスメイトたちからのメッセージだろう。うるさいスマホをサイレントにした。
告白を断った私の歩調に合わせてくれるし、車道側を先輩が歩く。自然とこういう気遣いの出来る優しい人なんだろう。
人生勝ちっぱなしのこのイケメンめ!
って、ここまでスマートに対応してくれる彼に対して心の中で悪態をついた。
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