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イヤルの言った通り、エンフィはドーハンと話し合った。エンフィたちの望むとおりに動く彼だが、自らの子供をつくらないと頑なに意見を変えなかった。
ドーハンにとって、セバスやマイヤはこの地の保護者のような存在である。そんなふたりに、エンフィが助け舟を求めた。彼らとしても、ドーハンとエンフィとの子が生まれれば嬉しい。夫婦間のことに首をつっこむのはと渋った彼らではあるが、それとなくドーハンの本当の気持ちを聞くだけでもと頷いた。
「はあ、セバスさんたちまで。それほどまでに心配をかけているということですよね。この際はっきり言いますが、私は結婚するつもりなどなかったんです。勿論、エンフィ様への気持ちは本物ですし、周囲の煩い事情からここを守るためとはいえ、エンフィ様の夫として迎え入れていただけたことは、思いもよらなかったほどの喜びなのです。ですから、私にとって、今で十分すぎるほど幸せなのですよ」
「ドーハン、お前ならそう言うと思っていたよ。それが本心だということもわかっている。だがなあ……。エンフィ様が、お前との子を望んでいるんだ。イヤル様にしても、お前とエンフィ様との子供が生まれたら、分け隔てなく育てると言ってくださっているんだぞ?」
「……おふたりのお気持ちも、存じております。ですが、私の決意は変わりません」
セバスとマイヤは、困ったように顔を見合わせた。もともと、エンフィですら彼の気持ちを変えることはできなかった。これ以上は、聞いても無駄だろうし、彼の真摯な思いにを軽んじることにしかならない。エンフィには、ありのままに伝え、これ以上、この話題を持ち出すことはなくなった。
※※※※
「そうか。オレも無理強いするつもりはない。てっきり、自分の子が欲しいのかと早とちりをしていたようだ。でも、気が変わったらオレの許可はいらないから。ドーハンの思いを尊重したいと思う」
「イヤル様、ありがとうございます。今後も、イヤル様やエンフィ様、そしてフィーノ様を支えたいと思います」
帰ってきたイヤルは、ドーハンと酒を交わしながら長い間話をしていた。少し酔った彼らは、ふたりしてエンフィが眠る寝室に向かう。
いつもなら、ドーハンはそのまま立ち去るのだが、今日は意気投合した酔っ払い同士、肩を組んでベッドに向かう。
「ん……。イヤル、もうお話は終わったの? あら? ドーハンまでいるなんて、どうしたの?」
エンフィは、いつもとは違う光景に、ふたりの話し合いが自分が思うよりも深刻な内容になったのかと心配になった。
「エンフィ、今日は三人で寝よう! ドーハンもいいだろう?」
「はい、イヤル様」
「え? え? えええええ?」
上機嫌のふたりに囲まれて、エンフィは目を丸くした。どちらにせよ、話し合いによって仲が深まったようで安心する。
しかし、安心したのも束の間で。三人並んで眠るかと思ったのだが、あっという間にふたりに体を固定された。頭のほうにドーハン。足元にはイヤル。まるで今日のこの時のために練習してきたのかというほどの連携プレーのおかげで、あれよあれよという間に服を脱がされた。
「やあん、ふたりとも、酔ってるのね? 今日はもう寝ましょうよ。ね?」
「ははは、酔ってないぞ」
「私も、酔ってません」
酔ってないという酔っ払いほど、深く酔っている。エンフィの言葉を、ふたりは聞いているようで聞いていなかった。
「ああ、エンフィ様。失礼しますね」
「んあっ、ドー、ハ……。はぁ、んんっ!」
ドーハンはそう言うと、後ろから彼女の上半身を支えつつ、前に手を伸ばしてふたつの赤い先端を指先でこね始めた。
それと同時に、足の間に顔をうずめたイヤルが、いやらしい音ともにそこを舌で舐り、時にはじく。ふたりの動きによって、エンフィの体はぴくぴくと震えた。
「ああ、あ、ふたり、とも。ど、したのよぉ、んー!」
「いやなに、前々からこうしたかったんだ。エンフィだって、興味あっただろう?」
「少しは、って、何を言わせっ、やあん、ドーハン。それをされたら……!」
「エンフィ様、遠慮はいりません。どうぞ、気持ちよくなってください」
「えんりょ、してない、ないからっ、ああ!」
ふたりがかりで、息つく暇もないほど責め立てられ、エンフィはあっという間に絶頂を迎えた。どろどろに蕩けた足の間に、イヤルが入り込む。腰を動かされている間も、ドーハンの手は止まらない。少し体をずらして、エンフィとキスを交わしながら、胸や、イヤルにうちつけられている足の付け根の粒を指で捏ねられた。
苦痛ともいえるほどの強すぎる快楽は、エンフィを普段以上に乱れさせる。どこかに縋りつきたいと伸ばした手の先に、ドーハンの大きな杭が当たった。イヤルに穿たれながら、必死に彼のそこを手で刺激する。
「うう、エンフィ様、私のことはいいです、から」
「ああ、だって、わたしば、かりっ、んんっ、ふたりがかりなんて、ずる、い、!」
「ずるくないよ。ほら、エンフィ。もっと乱れて」
エンフィは、もう何がなんだかわらかなくなっていた。目は開けているのに、ぼーっとする頭では、今どちらがどこにいるのかすら把握できない。
最後に、自分に覆いかぶさったのは、果たしてどちらなのだろうか。分からないまま、その日は泥のように眠ったのである。
翌朝目が覚めると、ふたりの夫は、揃って頭に手を置いていた。そして、なぜ三人で裸で眠っているのすら記憶が定かではないようだった。
エンフィが、二日酔いで苦しむふたりに水を飲ませると、ふたりはベッドの上で酔った挙句の行為をしてしまったことを彼女に謝罪した。
「……。覚えていないんでしょ? 今度からは、お酒を飲まないか、飲んでも軽くだけの状態出来て頂戴ね」
イヤルは、エンフィの懐が大きいことに、いつもながら助けられている。ますます彼女に頭があがらない。そして、ドーハンは人生初めての大失態に狼狽えっぱなしだった。もしかしたら、避妊していなかったかもしれないと、エンフィの妊娠を一番心配していた。
運よくというか、エンフィが妊娠したのはそれから半年後。朝日とともに、フィーノの望み通り、愛らしい女の子の大きな鳴き声が屋敷に響いたのであった。
その3年後、もうひとり家族が増えた。その子は、ドーハンによく似た可愛い女の子だと、イヤルが領地でも王都でも言いふらしていたという。
これにて完結です。ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
ドーハンにとって、セバスやマイヤはこの地の保護者のような存在である。そんなふたりに、エンフィが助け舟を求めた。彼らとしても、ドーハンとエンフィとの子が生まれれば嬉しい。夫婦間のことに首をつっこむのはと渋った彼らではあるが、それとなくドーハンの本当の気持ちを聞くだけでもと頷いた。
「はあ、セバスさんたちまで。それほどまでに心配をかけているということですよね。この際はっきり言いますが、私は結婚するつもりなどなかったんです。勿論、エンフィ様への気持ちは本物ですし、周囲の煩い事情からここを守るためとはいえ、エンフィ様の夫として迎え入れていただけたことは、思いもよらなかったほどの喜びなのです。ですから、私にとって、今で十分すぎるほど幸せなのですよ」
「ドーハン、お前ならそう言うと思っていたよ。それが本心だということもわかっている。だがなあ……。エンフィ様が、お前との子を望んでいるんだ。イヤル様にしても、お前とエンフィ様との子供が生まれたら、分け隔てなく育てると言ってくださっているんだぞ?」
「……おふたりのお気持ちも、存じております。ですが、私の決意は変わりません」
セバスとマイヤは、困ったように顔を見合わせた。もともと、エンフィですら彼の気持ちを変えることはできなかった。これ以上は、聞いても無駄だろうし、彼の真摯な思いにを軽んじることにしかならない。エンフィには、ありのままに伝え、これ以上、この話題を持ち出すことはなくなった。
※※※※
「そうか。オレも無理強いするつもりはない。てっきり、自分の子が欲しいのかと早とちりをしていたようだ。でも、気が変わったらオレの許可はいらないから。ドーハンの思いを尊重したいと思う」
「イヤル様、ありがとうございます。今後も、イヤル様やエンフィ様、そしてフィーノ様を支えたいと思います」
帰ってきたイヤルは、ドーハンと酒を交わしながら長い間話をしていた。少し酔った彼らは、ふたりしてエンフィが眠る寝室に向かう。
いつもなら、ドーハンはそのまま立ち去るのだが、今日は意気投合した酔っ払い同士、肩を組んでベッドに向かう。
「ん……。イヤル、もうお話は終わったの? あら? ドーハンまでいるなんて、どうしたの?」
エンフィは、いつもとは違う光景に、ふたりの話し合いが自分が思うよりも深刻な内容になったのかと心配になった。
「エンフィ、今日は三人で寝よう! ドーハンもいいだろう?」
「はい、イヤル様」
「え? え? えええええ?」
上機嫌のふたりに囲まれて、エンフィは目を丸くした。どちらにせよ、話し合いによって仲が深まったようで安心する。
しかし、安心したのも束の間で。三人並んで眠るかと思ったのだが、あっという間にふたりに体を固定された。頭のほうにドーハン。足元にはイヤル。まるで今日のこの時のために練習してきたのかというほどの連携プレーのおかげで、あれよあれよという間に服を脱がされた。
「やあん、ふたりとも、酔ってるのね? 今日はもう寝ましょうよ。ね?」
「ははは、酔ってないぞ」
「私も、酔ってません」
酔ってないという酔っ払いほど、深く酔っている。エンフィの言葉を、ふたりは聞いているようで聞いていなかった。
「ああ、エンフィ様。失礼しますね」
「んあっ、ドー、ハ……。はぁ、んんっ!」
ドーハンはそう言うと、後ろから彼女の上半身を支えつつ、前に手を伸ばしてふたつの赤い先端を指先でこね始めた。
それと同時に、足の間に顔をうずめたイヤルが、いやらしい音ともにそこを舌で舐り、時にはじく。ふたりの動きによって、エンフィの体はぴくぴくと震えた。
「ああ、あ、ふたり、とも。ど、したのよぉ、んー!」
「いやなに、前々からこうしたかったんだ。エンフィだって、興味あっただろう?」
「少しは、って、何を言わせっ、やあん、ドーハン。それをされたら……!」
「エンフィ様、遠慮はいりません。どうぞ、気持ちよくなってください」
「えんりょ、してない、ないからっ、ああ!」
ふたりがかりで、息つく暇もないほど責め立てられ、エンフィはあっという間に絶頂を迎えた。どろどろに蕩けた足の間に、イヤルが入り込む。腰を動かされている間も、ドーハンの手は止まらない。少し体をずらして、エンフィとキスを交わしながら、胸や、イヤルにうちつけられている足の付け根の粒を指で捏ねられた。
苦痛ともいえるほどの強すぎる快楽は、エンフィを普段以上に乱れさせる。どこかに縋りつきたいと伸ばした手の先に、ドーハンの大きな杭が当たった。イヤルに穿たれながら、必死に彼のそこを手で刺激する。
「うう、エンフィ様、私のことはいいです、から」
「ああ、だって、わたしば、かりっ、んんっ、ふたりがかりなんて、ずる、い、!」
「ずるくないよ。ほら、エンフィ。もっと乱れて」
エンフィは、もう何がなんだかわらかなくなっていた。目は開けているのに、ぼーっとする頭では、今どちらがどこにいるのかすら把握できない。
最後に、自分に覆いかぶさったのは、果たしてどちらなのだろうか。分からないまま、その日は泥のように眠ったのである。
翌朝目が覚めると、ふたりの夫は、揃って頭に手を置いていた。そして、なぜ三人で裸で眠っているのすら記憶が定かではないようだった。
エンフィが、二日酔いで苦しむふたりに水を飲ませると、ふたりはベッドの上で酔った挙句の行為をしてしまったことを彼女に謝罪した。
「……。覚えていないんでしょ? 今度からは、お酒を飲まないか、飲んでも軽くだけの状態出来て頂戴ね」
イヤルは、エンフィの懐が大きいことに、いつもながら助けられている。ますます彼女に頭があがらない。そして、ドーハンは人生初めての大失態に狼狽えっぱなしだった。もしかしたら、避妊していなかったかもしれないと、エンフィの妊娠を一番心配していた。
運よくというか、エンフィが妊娠したのはそれから半年後。朝日とともに、フィーノの望み通り、愛らしい女の子の大きな鳴き声が屋敷に響いたのであった。
その3年後、もうひとり家族が増えた。その子は、ドーハンによく似た可愛い女の子だと、イヤルが領地でも王都でも言いふらしていたという。
これにて完結です。ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
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