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17.5 ロイエ ※
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※タグにある複数描写はこの回ではありません。
「ふふふ、あははははは」
ロイエは、寝室にルドメテ以外の若くたくましい男たちを引っ張り込み、享楽にふけっていた。漏らした笑い声は、高笑いに変わり止まることを知らない。
ルドメテは、税金を滞納した地方に、部下たちとともに向かっている。何でも言うことを聞く彼のことはかわいいが、いかんせん嫉妬深い。ほかの男と遊ぶためにも、彼の存在は邪魔でしかなかった。
数日前に行ったルドメテが、帰ってくるのがいつもより遅いが、これ幸いと連日羽を伸ばして遊んでいたのである。
男たちは、ロイエの魔法によってうつろな目をしている。口々に、美しい女神のようにロイエを褒めたたえ、愛をささやく。その中には、恋人がいるものや、妻帯者もいた。
「ああ、ロイエ様。どうか、哀れな僕にあなたの指先に触れる権利をください……」
「ロイエ様、私の苦しいほどの愛を、どうぞ受けて止めてください!」
一糸まとわぬ男女がベッドの上で絡み合っていると、突然突風が生まれた。一瞬体も思考もフリーズした。男たちは何が起こったのかわからず、しかもロイエによって思考が正常に働いておらず、そのまま行為を続けようとした。
だが、この異常事態に、数々の犯行を行ってきたロイエは、数々の修羅場を経験している。すぐさま何者かからの攻撃だと悟り、重なってこようとする男たちを蹴り飛ばした。
「ちょ、ちょっと、あんたたち、離して。離せっってばっ!」
しかし、隙だらけだったロイエのその行動は、侵入者にとっては非常に遅い対処だ。あっという間にロイエはベッドに縛り付けられたかのように、身動きが取れなくなった。
「な、なんなの? くそ、何もないはずなのに、どうして体が動かせないのよお!」
更に大きな声を出し、なんとか動こうと手首をぐるぐる動かそうとしたがなしのつぶて。それどころか、さらに見えない何かで拘束されたかのように、ぎりぎりと締め付けられ、体を動かすための関節が痛んだ。
「ロイエ、久しぶりだな。ずいぶんとお楽しみだったようで」
「は? え? イヤル? なんであんたがここに……。あ、これは違うの。私は、あなただけを愛しているのよ。こうなっているのは、あなたが王都にいってから、あの男たちが無理やり襲ってきたからっ!」
ロイエは、侵入者がイヤルだと知ると、彼の激怒している表情を見て、彼が浮気の現場を見て怒っているのかと思った。自分の体の自由を封じている力のことはわからないが、それは一旦置いといて、言い訳を始めた。しかし、そんなロイエを見る彼の瞳は、氷よりも冷たい。
「……。どういうこと? 私がかけた魔法が解けている? くそ、ならば、もう一度……!」
イヤルの表情を見たロイエは、自らかけた魔法の痕跡が、彼の体から感じなくなっていたことで、彼にかけた暗示と催眠、魅了の魔法をかけなおそうと呪文を唱えた。だが、その呪文はイヤルの体に届く前に、彼の周囲を取り巻く大きな魔力の壁によって、蒸発のように消え去る。
「なっ? なんで? どうして? お前は、どんな男たちよりもかかりやすかったはずなのに!」
何度もイヤルに魔法をかけようとするが、結果は全て同じにしかならない。疑問と焦燥と、今まで無敵状態だった自分の危機的状況に、完全に余裕を無くした。
「強い守護のアーティファクトを身に着けているか、私よりも強い魔法使いでないかぎり、100%かかるはずなのに。こんなこと、あり得ないっ!」
叫び続けているロイエと違い、イヤルは冷静そのものだった。そして、ここに来る前にあっという間に討伐したならず者一団に、魔法で対するうちに徐々に魔法のコントロールも急速に上達していたのである。
もともとの魔力量もロイエよりも格段上であり、さらにその魔法を容易に使うことのできるようになったイヤルにとって、ロイエが唱え続けている魔法など、まるで幼児のお遊戯レベルだ。
「ああ、エンフィから聞いた通りだ。半信半疑だったが、ことの発端である詐欺師もお前だったようだな。頭の中にかかっていたモヤが取れた今、全部思い出したんだ。指名手配犯ロイエ、すでに地方を襲っていたルドメテやお前の仲間たちは捕えている。警備団に引き渡しずみだ。これ以上無駄な抵抗はせず、潔く観念してもらおう」
「ふふふ、あははははは」
ロイエは、寝室にルドメテ以外の若くたくましい男たちを引っ張り込み、享楽にふけっていた。漏らした笑い声は、高笑いに変わり止まることを知らない。
ルドメテは、税金を滞納した地方に、部下たちとともに向かっている。何でも言うことを聞く彼のことはかわいいが、いかんせん嫉妬深い。ほかの男と遊ぶためにも、彼の存在は邪魔でしかなかった。
数日前に行ったルドメテが、帰ってくるのがいつもより遅いが、これ幸いと連日羽を伸ばして遊んでいたのである。
男たちは、ロイエの魔法によってうつろな目をしている。口々に、美しい女神のようにロイエを褒めたたえ、愛をささやく。その中には、恋人がいるものや、妻帯者もいた。
「ああ、ロイエ様。どうか、哀れな僕にあなたの指先に触れる権利をください……」
「ロイエ様、私の苦しいほどの愛を、どうぞ受けて止めてください!」
一糸まとわぬ男女がベッドの上で絡み合っていると、突然突風が生まれた。一瞬体も思考もフリーズした。男たちは何が起こったのかわからず、しかもロイエによって思考が正常に働いておらず、そのまま行為を続けようとした。
だが、この異常事態に、数々の犯行を行ってきたロイエは、数々の修羅場を経験している。すぐさま何者かからの攻撃だと悟り、重なってこようとする男たちを蹴り飛ばした。
「ちょ、ちょっと、あんたたち、離して。離せっってばっ!」
しかし、隙だらけだったロイエのその行動は、侵入者にとっては非常に遅い対処だ。あっという間にロイエはベッドに縛り付けられたかのように、身動きが取れなくなった。
「な、なんなの? くそ、何もないはずなのに、どうして体が動かせないのよお!」
更に大きな声を出し、なんとか動こうと手首をぐるぐる動かそうとしたがなしのつぶて。それどころか、さらに見えない何かで拘束されたかのように、ぎりぎりと締め付けられ、体を動かすための関節が痛んだ。
「ロイエ、久しぶりだな。ずいぶんとお楽しみだったようで」
「は? え? イヤル? なんであんたがここに……。あ、これは違うの。私は、あなただけを愛しているのよ。こうなっているのは、あなたが王都にいってから、あの男たちが無理やり襲ってきたからっ!」
ロイエは、侵入者がイヤルだと知ると、彼の激怒している表情を見て、彼が浮気の現場を見て怒っているのかと思った。自分の体の自由を封じている力のことはわからないが、それは一旦置いといて、言い訳を始めた。しかし、そんなロイエを見る彼の瞳は、氷よりも冷たい。
「……。どういうこと? 私がかけた魔法が解けている? くそ、ならば、もう一度……!」
イヤルの表情を見たロイエは、自らかけた魔法の痕跡が、彼の体から感じなくなっていたことで、彼にかけた暗示と催眠、魅了の魔法をかけなおそうと呪文を唱えた。だが、その呪文はイヤルの体に届く前に、彼の周囲を取り巻く大きな魔力の壁によって、蒸発のように消え去る。
「なっ? なんで? どうして? お前は、どんな男たちよりもかかりやすかったはずなのに!」
何度もイヤルに魔法をかけようとするが、結果は全て同じにしかならない。疑問と焦燥と、今まで無敵状態だった自分の危機的状況に、完全に余裕を無くした。
「強い守護のアーティファクトを身に着けているか、私よりも強い魔法使いでないかぎり、100%かかるはずなのに。こんなこと、あり得ないっ!」
叫び続けているロイエと違い、イヤルは冷静そのものだった。そして、ここに来る前にあっという間に討伐したならず者一団に、魔法で対するうちに徐々に魔法のコントロールも急速に上達していたのである。
もともとの魔力量もロイエよりも格段上であり、さらにその魔法を容易に使うことのできるようになったイヤルにとって、ロイエが唱え続けている魔法など、まるで幼児のお遊戯レベルだ。
「ああ、エンフィから聞いた通りだ。半信半疑だったが、ことの発端である詐欺師もお前だったようだな。頭の中にかかっていたモヤが取れた今、全部思い出したんだ。指名手配犯ロイエ、すでに地方を襲っていたルドメテやお前の仲間たちは捕えている。警備団に引き渡しずみだ。これ以上無駄な抵抗はせず、潔く観念してもらおう」
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