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最終章

気弱なサンタは、止まれない ※

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 ライナさんから、とうとう告白どころか求婚された。おそらく、ヤンネさんと再会する前にこうされていたら頷いていたと思う。

 遠回りしてしまった事で、心の奥底に隠していた決して消えない気持ちが一気に溢れて、気が付けばライナさんにキスされて強く抱きしめられていた。

 もう、何も考えられない──

 彼の熱い吐息と、唇の中を蹂躙するぬるりとした大きな舌の動きが激しすぎて、息をするのも忘れ必死に縋り付いた。

「ティーナ……」

 背中と頭の後ろにあった、大きな彼の手が徐々に腰のほうに降りてきた。思わせぶりに、指先でこしょこしょされて、彼が何を望んでいるのか私に知らしめて来た。

「あ……」

 くすぐったくて体をよじる。すると、やっと唇を開放した彼が、潤んだ瞳で私の視線を釘付けにした。

「ティーナ、ラストワンって事はもう終わりなんだろう?」

「うん……」

 そういえば、トナカイくんが空で待っている。この瞬間まで、仕事だけでなく、相棒の事を忘れていた。その時、空からトナカイくんが近づいた。そして、私たちに今日の仕事は終わりだと告げると、夜空にハートの文字を描いて消えていった。
 ひょっとして、先輩たちもこうなる事を予想していたのかも。出発前に、ライナさんの所に配置されたり、先輩や後輩たちの、意味ありげなニヤニヤした顔を思いだして、これは一本取られたと思った。
 だまし討ちにあったかのような先輩たちのサプライズに、こんなにも嬉しい事が待っていたなんて。幸せしかないこのひと時に、うっとりして彼の胸に頬を埋めた。


「あの、ライナさん。でも私、こんなサンタの恰好だし……」

 仕事着のサンタの服は、女の子用だ。ツーピースに、黒い大きなベルト。スカート丈は、今年からリニューアルされたからと、先輩に太ももの半分がやっと隠れるくらいのものを手渡された。短すぎて恥ずかしいけれど、ユニフォームだからそれを履いている。
 膝下までの赤いブーツには、白いファーがついていてとてもかわいい。サンタの服や真っ白のタイツは、それだけでもあったかいように、魔法がかかっている。

 流石に、こんな格好でこのまま彼と過ごすのは憚られる。だけど、私を抱きしめる彼の腕の力は緩む事がないどころか、ますます私を捕えて離さないとばかりに強くなった。

「ああ、とてもかわいいね。そのスカートで他の男の前に行ったかと思うと気が狂いそうだ。もうそんな服は、俺以外の前では着ないで欲しい」

「ライナさん、でも、これはユニフォームだから……。でも、ライナさんが嫌なら、もう着ないように所長さんに言います」

「というより、来年の今日は、仕事を辞めていて欲しいんだけど」

「え?」

「つまり、こういう事」

 にやりと笑ったライナさんが、テラスで私を横抱きにした。そのまま室内に入ったかと思うと、そのまま彼のベッドにポスンと体を横たえられる。

「ライナ、さん」

「もう離さないし逃がさない。それに、ティーナの気持ちを聞いた以上、俺ももう止まれない。いや?」

 私の上に被さる彼が、いつもの優しさと、はっきりとわかる欲情、そしてほんのわずかの怖さを込めた瞳で見つめてきた。いきなりの急展開で、もう何が何やらわからない。

 だけど、私も止まれない。堰を切ってあふれ出した彼への想いが、私を考えられないほど大胆にさせる。

「いや、じゃないです。私も離れたくない……」

 両手を伸ばして彼の頬を挟み、キスを強請る。それが合図だとばかりに、ほんのわずかに体をずらして遠慮していた彼が、しっかり私の上に乗り上げてきた。

 男女のアレやコレは、協会に入ってから色々見聞きしてきた。とくにグッズは使用方法を知らないといけないからと、ありとあらゆるものを紹介された。実地は流石にされなかったけれど、イラストや模型を使ったそれらは、最初は顔を隠していたのに、今では恥ずかしいけれど見る事が出来るようになった。

 自分自身の経験は0だというのに、知識だけは沢山ある。だから、彼が何をどうしようとしているのかはなんとなくわかった。

「……ティーナは、俺と違って初めてじゃないのかもしれないけど、今は俺の事だけ考えて。頑張って満足させてみせるから」

 なんとなくではあるけれど、初心者らしからぬ合わせようと一生懸命手足を動かしていたのが、あらぬ誤解を生んだ。もしかして、ヤンネさんとそういう関係を持ったと思っているのだろうか。

「ちがっ……! わ、私だって初めてで。職場で色々聞いていたから……」

 由々しき事態に、私は慌てて訂正した。すると、それを聞いたライナさんが、嬉しそうに笑い、私の首筋に、ちゅぅっと強く吸い付く。

「こういう事も?」

「初めて、ですってばぁ……あっ……。キスだって、さっきのが初めてで……」

 チクリと痛みを感じる間もなく、少しずれた場所に、次々と同じように吸い付かれる。恥ずかしいやら、照れくさいやら、嬉しいやらで、もうライナさんに翻弄されっぱなしになった。

 ライナさんこそ、初めてとは思えないくらい、するする私の服を脱がせていく。ユニフォームだから、脱ぎ着しやすいとはいえ、あっという間に下着一枚にされた。

「ああ、ティーナ、これは夢じゃないんだよな? 綺麗だ……」

 露わになった、彼に向かって尖るふたつの赤い粒を、彼が丹念に舌と指を使って愛撫する。ぞわぞわするような、くすぐったさとも違う、初めて覚えるその感覚に、やめて欲しいと弱く伝えた。

「痛い?」

「痛くはないんですけど……あっ、あっ。ライナさんがそんな風にすると、あんっ、変な感じになっちゃうんです」

 痛いと聞きつつ、私が話している最中にも、胸やら脇腹、内腿を触れるから触れないかくらいの指で撫でられた。彼に触られる度に、出そうと思わないいやらしい声が、私の口から次々産まれるのが信じられなかった。

「ティーナ、ティーナ。綺麗だ……俺の名前を呼んで」

「ライナ、さぁ……ああっん、そこはぁ!」

 下着越しに、足の付け根にある小さな豆を指先で擦られた途端、私は強烈な感覚に体を思い切り逸らした。逃げようとしても、彼が腰をがっしり掴んでいて逃れられない。せめて、と思い、腰をくねらせる。

「ライナ、だ。ライナと呼んで。ティーナ、ここがイイんだね」

「イイとか、よくわかんなっ、ああっ、ライナ……ぁっ! それ以上はっ、あんっ!」

 本気でやめて欲しいと思って、もっと腰を動かす。それがかえって、彼の指にソコを擦りつけているかのようだ。どんどん溜まっていく変な感覚は、やがてお腹の中から体全体に行き渡り、頭と胸をいっぱいにした。

 息が止まるほどのその感覚に、体が小さく痙攣する。それでも暫くの間、彼に擦られ、汗が噴き出した。おもらししたような液体が、下着を濡らしているのが分かる。彼の手によって、水音が高く叩かれ弾けるような音が産まれて、それが一層私の耳から官能を掻き立てた。

 数秒、時間が止まったかのようだった。やっと彼の指がそこから離れると、忘れていた息を吐き出せた。まだ、体中がじんじんする。すごく疲れたのに、もっと浸っていたいような、そんな気分でいると、彼が嬉しそうに名前を呼んでキスをくれた。

「ティーナ、愛してる」

「……んっ、はぁ、はぁ……ライナ、わたしも……はぁ……」

 私が感覚に無我夢中になっていた間に、裸になっていたようだ。足を軽く広げられ、その間に、彼の腰が入り込んでいた。

 上半身をあげた彼の、服の上からではわからなかった均整の取れた無駄な肉の無い体は、彫刻の像のように美しいと思った。腹筋もいくつかに分かれていて、うっとりまじまじと彼に見惚れた。

「ティーナ、どこを見ているの?」

「え……?」

「ティーナになら全部見られてもいい。俺も、ティーナの全てを見るから」

 にやりと意地悪く微笑む彼の視線が私と交差した後、さっきまで見ていた腹筋のその下に移動する。つられて視点がそこにたどり着いた時、雄々しく反り返る、彼の象徴が私の足の付け根に擦りつけられたのであった。





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