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番外

毛玉ちゃんと私たち ※

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 あのイブの日、思った通り、先輩たちは示し合わせてあえて私をライノの所に私を送ったようだ。協会の調査ってほんっと、一体どこでどうやって、どこまでも細かな顧客の事情を調査するのか不思議になる。

「ぴ!」

 去年のイブの事を感慨深く思いだしていると、ライナの肩にいる毛玉ちゃんが一声高く鳴いた。

「毛玉ちゃんと、一緒にここに来るのは初めてだねぇ~」

「ぴぃ!」

 私とライナは、春のお祭りの時に式を挙げた。お父様やお兄様たちは、ライナに最初厭味ったらしい姑根性のように意地悪をしていたのだけれど、お母様の一括でそれはなくなった。彼の人となりを知るうちに、いじめていた事なんてなかったかのように、今では親友のみたいに仲良しになった。
 ライノおじさまからは、大歓迎された。亡くなった奥様が受け継いでいたというネックレスとピアス、ブレスレットのセットを、私用にリメイクして贈ってくれた。

 結婚してから、寮を退所した。家事のエキスパートである毛玉ちゃんも一緒に、ライナの家に引っ越しをしたのだけれど、侯爵家にも家事のプロたちがいる。最初、お仕事ができなくてしょんぼりしていた毛玉ちゃんは、料理長とメイド長に大層気に入られた。今では使用人たちのアイドルのような存在になっていて、時々彼らと一緒に家事をしつつ楽しそうに暮らしている。

 サンタのお仕事は、今年のクリスマスイブの配達を以って退職する事になった。無事にやり終えた時、皆から退職を惜しまれ、私も折角出来た仲間たちとお別れする事が、悲しくてわんわん泣いた。

 とはいえ、皆やトナカイくんたちとも仕事ではお別れなんだけど、魔法ですぐに行き来できるし、ライナの領地と北の果ては割と近いから、閑散期には皆で社員旅行で訪れてくれる事になった。その時には、団体様専用の、とっておきの露天風呂つきの旅館や観光地を案内する予定。

 今日は、ライナと一緒に露天風呂に来ている。ライナが従業員のスタッフにも休みを与えたから、こじんまりとした誰もいない露天風呂付きロッジに私たちはいる。

 私もライナさんも身のまわりの事は苦手なので、家事のエキスパートである毛玉ちゃんを連れてきた。だから、滞在中の事については心配ない。
 毛玉ちゃんにも目一杯楽しんでもらいたいと、ライナが肩に乗せて、色んなものを見せてくれた。

「ティーナ、毛玉ちゃんの名前は?」

「あー……。それが、主従契約の時に、いい名前が思い浮かばなかったの。だから、うっかり読んでしまった毛玉ちゃんというのがそのコの名前です」

「はは、そうか。毛玉ちゃん、いい名前を貰って良かったね」

「ぴっ!」

 昼間は思いっきり観光を楽しんだあと、ロッジで近くの分厚い氷の張った湖で撮れた魚料理を、毛玉ちゃんがこしらえてくれた。美味しい料理に舌鼓を打ち、その後は一緒に露天風呂に向かう。

「ライナ、今日は毛玉ちゃんがいるから……」

「そのコはティーナの大切なコだろう? なら、俺にとっても家族なんだし皆で一緒に入ろう」

「ぴ!」

 いつもはふたりきりのお風呂タイムに、毛玉ちゃんがいる。毛玉ちゃんには、裸をしょっちゅう見られているけど、ライナもいるし、なんとなく気恥ずかしくてバスタオルで体を隠して露天風呂に向かった。

「ティーナ、温泉ではタオルはダメだよ」

「でもぉ」

「ぴ!」

 ライナの言葉を聞いて、毛玉ちゃんが触手を伸ばし私のバスタオルをさっと取った。全裸になり、恥ずかしくて胸と足の付け根を隠しながら、慌てて露天風呂に入り体を隠そうと体をまるめた。

「あっつーぃ!」

 温泉の高い温度に一気に浸かったせいで、肌がびりびりする。体を震わせて動けそうにない身体を縮こまらせていた。すると、毛玉ちゃんがびっくりして、触手を伸ばして真っ赤になった体のあちこちを擦りだしたものだから、くすぐったくなった。

「ぴ? ぴ?」

「ひゃぁん! 毛玉ちゃん、くすぐった……! あはは、やめ……、いやぁん!」

 毛玉ちゃんは、やめてと言いつつ、笑っている私の様子を見て、もっと喜んでもらおうとしているかのように、あちこちを触手で撫で始める。


「ティーナ、だいじょう……ぶ、……か?」

「ああっ、毛玉ちゃん、そこはダメぇ、ダメ、あんっ!」

 毛玉ちゃんは、事もあろうに、くすぐったいだけではない反応が違う胸の先を擽り出したのである。そう言えば、このコは、研究所が創り出したアダルトな恋人たち専用の魔獣だ。

 本能なのかなんなのか、毛玉ちゃんが脇腹を擦っていた触手の先を、耳や背骨、腰やおしりを擽り出す。ライナとは違う触られ方をあちこち同時にされて身もだえした。

 ライナに助けを求めようとしても、まさか毛玉ちゃんがこんないやらしい動きをし始めるとは思っていなかった彼は、呆然と露天風呂で仁王立ちのままフリーズしている。────毛玉ちゃんから与えられる快楽に身をよじる私を見て、股間を高ぶらせながら。

「ティーナ……」

「やぁ、んんっ。毛玉ちゃぁん、も、やめ。ライナ、たすけてぇ……!」

 ライナが、ごくりと大きな音を立てて唾を飲み込んだ。助けを求めて震える手を彼に差し出すと、我に返った彼が、胸と股間の中に入り込んでいた毛玉ちゃんの触手を取り除いてくれた。それでも、耳や太もも、手足の指の間までも埋め尽くされたかのように触手がまとわりついていた。

「毛玉ちゃん、もうやめてあげて。ティーナが、苦しがっている……? から」

「ぴ?」

 こんなにも気持ち良さそうなのに? と、ライナさんに反論してそうな毛玉ちゃんの様子。

「毛玉ちゃんは、ティーナに喜んでもらいたいんだね?」

「ぴっぴ!」

「じゃあ、今すぐ触手をしまって。今の毛玉ちゃんの擽りも、ティーナは喜んでいるみたいだったけどね」

 喜んでなんかなーい! って強く物申したい。だけど、ずぅっと触手に官能を高められて息も絶え絶えの私は、声が出せなかった。

「ただ、それは……あー、ほどほどにしたほうがいいんだ。今度はもう少し加減してあげるほうがティーナは喜んでくれるよ」

「……ぴぅ?」

 非常に遺憾だと言わんばかりに、しぶしぶ毛玉ちゃんは触手を直した。でも、ちょっと待って。さっきライナは、今度って言った? 今度って何、今度って!

 今度なんてなくていいーっ! て言いたいのに、ぜーはーぜーはー荒げている息を整える事に必死だった。今度はないように、毛玉ちゃんにはしっかり言い聞かせておかないといけないって思った。


「毛玉ちゃん、俺たちはもう少しここで休んでから上がるから、風呂上りに何か食べれるようにロッジを整えていてくれるかい?」

「ぴっ!」

 ライナが、毛玉ちゃんにそう伝えると、『承知いたしました!』と返事したかのように、ぽむぽむ飛び跳ねてロッジに帰っていった。

 余談だが、ライナは立ったまま、一部分を立ち上がらせたままさっきのやりとりをしていた。

 露店風呂のへりに上半身をぐったり寄せていると、彼が私の体を抱きかかえて露天風呂に使った。おしりに、固く大きく天に向いた股間を擦りつけながら。

「ティーナ、ここのこれは、お湯じゃないよね? ねぇ、ティーナ。さっきの毛玉ちゃんと君の姿のせいで、俺のが大変な事になったから責任とって」

「はぁん……」

 散々触手に体中を弄ばれた私は、地からすら上手く入らない。ぐったりした私を、ぷかぷか露天風呂のお湯に浮かせた。ライナは、持ち上げた私の体を、そのまま下ろした。私の体から出てきたぬめり気のある液体が、すんなり彼のを迎え入れる。

「あ、あぁ……! んんっ、ライナ、ライナぁ……!」

「く……、いつもよりも中が蠢いていて。ティーナ、はぁ、気持ちいいよ。ティーナは? 毛玉ちゃんと俺、どっちが気持ちいい?」

「あ、あんっ、あっ、あっ! ライナ、の、あんっ、これが、ああんっ!」

「毛玉ちゃんには、俺の許可があるまでお触り禁止だって言っておかないとね。ティーナも、俺の前以外で、毛玉ちゃんにあんな事をさせるのは、ダメだからね? わかった?」

「んんっ、ああ、わかった、わかり、ましたからぁ。はぁん、も、もう……!」

 彼がなにやら聞き捨てならない事を言ったような気がした。けれど、もう少しで高ぶった体中の快楽の弾けそうになっていたから、それに集中する。

 後ろから思い切り突かれて、あっという間に高みに登らされた。その直後に、ぎゅうっと体を抱きしめられて、一番奥に、温泉の熱さとは全く違う彼の熱を何度も勢いよく解き放たれたのであった。

 それ以来、月に一度ふたりと毛玉ちゃんっきりになった時に、ライナと毛玉ちゃんの息の合ったコンビネーションに身も心も翻弄されつくした。



 翌年、私は元気な女の子を産んだ。ライノに似た優しい薄水色の瞳は、好奇心いっぱいでとても元気だ。この子は、どんな風に未来を歩くのだろう。でも、どんな夢を追い求めようとも、かつてお母様がしてくれたように、私もこの子の背中を押そうと思う。

 私に子供が生まれた事を、ヤツキマトーイン国のおじい様と伯父様、それに、一応絶縁状態のおばあ様にも知らせた。返事と一緒に届けられた、おばあさまが一番大切にしているというカメオには、お母様にそっくりなかわいい女の子の姿が彫ってあった。
 そのうち、産まれた子がひいおばあ様に会いたいと言ったら、その時は、カメオを持って一緒に会いに行こうと思う。

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