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第二章

侯爵様はドキドキ中 ※

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  メリークリスマス(イブ)。


せっかくですのでしんみりはしますが、悲しいだけのお話は避けます。日程ミスったのです。本来ならここでくっつけたかったのですが、誠に申し訳ありません。
ご要望があったのと、少々こういう変わり種(?)のをどうぞと思い、投稿の順番変えました。番外編のような回です。


今回の追加タグ
[ラキスケ]
[イブに作者くらいしか書かないかもな的な右手の出番]
[これって結局イチャイチャじゃ?]
[露天風呂の足湯]

ヒーローどっちかわからないというコメントを数人からいただいてます。

この回のいい雰囲気のままライナとくっつくのか。いやいや、なんだかんだで番とくっつくのか。残り13話くらい(修正で前後するかも)で終わるので、よかったら楽しんで行って下さい。







 エミリアさんは、とても元気な魅力的な女の人というのが最初の印象だった。義父のライノの視線はいつも彼女を追う。義母とも穏やで幸せな家庭を築いていたが、義父の心にいるのが誰だか一目瞭然だった。

 まだ俺が子供の頃に亡くなった義母は、体が弱いために嫁ぎ先がなかった。一向に結婚しない義父にやきもきした周囲がほぼ無理やり結婚させたような状況だったらしい。

 結婚してから、この地方の凍てつく寒さで体を壊した義母は、出産に耐えられないだろうと医師からも宣告されてしまった。離縁を義母は終始訴えていたらしい。
 ところが、義母の国では出戻りへの視線が冷たい事から、跡取りが産まれなくてもここにいていいと言われて最後までこの家で過ごした。

 幼い頃に、義母がこの家の庭師に恋をしていたのを知ってしまった。といっても、義母の片想いだったらしいが、当時の俺は義父を裏切っている義母が大嫌いだった。だから、亡くなるまでの間、義母に対してどうしても打ち解けられずにいた。必要最低限の礼を尽くしていたのだが、ほとんどをベッドの上で過ごす義母とはあまり話した事はない。

 今なら、義母のどうしようもなく惹かれてしまう恋という気持ちが分かる。

 庭師とは結ばれるはずもなく、夫である義父からの、男としての愛を貰えなかった義母は、どれほど辛かっただろう。もっと優しく接すれば良かったと、寒さで身を竦める胸の内に僅かな後悔が産まれた。
 この事は誰にも言っていない。義父は俺がそんな状況だったと気づいている事すら知らないだろう。

 そんな心の内を、7歳年下の少女に話してしまったのは自分でも愚かだったと言わざるを得ない。本当に自分でも、酒が入っていたからか、つい魔が差してしまったと言っていい。

「じゃあ、ライナさんはお義母様に謝る事も出来ないんですね……」

 しんみりした表情でそう言うと口を閉ざしたのは、俺の隣でしんしんと降る雪を眺めているティーナという少女だった。

 彼女は、俺には使えない転移魔法をどれほど遠くとも使えるから、この領地と母国との用事でしょっちゅう立ち寄る事になった。彼女が来る度に会うのは俺の役目だった。

 エミリアさんに似た美しい顔立ちに、底抜けに明るい彼女と違って、大人しい真面目で控えめな少女。いつしか、彼女がここに来るのを待ちわびている自分に気付いてから、もう2年になる。

 彼女は番を探すためにこの寒い北方の国に来たのは知っている。だから、こんな俺の想いは彼女にとって迷惑以外の何者でもない。

 もしも、災害が起こらずに予定通りハムチュターン国で彼女と出会っていたら、今頃ふたりの関係はどんな風になっていただろう。

 おそらく、番の存在など欠片も思い出させないように俺の腕に抱いて離さなかったに違いない。

「あー、その。いきなり義母のこんな事を言われても困るよね。ごめん、忘れて」

「んー……ライナさん、このベリーの果実酒美味しいですね。もう一杯頂いていいですか?」

「ん? ああ。だけどあまり飲み過ぎないようにね。露天風呂の足湯に浸かりながらだし、案外果実酒でも度数が高いからアルコールが体に回るのが早いと思うよ」

「ふふ、私ねー。お酒を飲んだら忘れてしまう特技があるんですよねー。それにしても、美味しいすぎますぅ」

 すると、ティーナが手に持った果実酒をごくごくほとんど一気飲みした。確かに甘酸っぱいからジュースのようだが、彼女が口にしているのはアルコール度数20くらいだったと思いだした時にはすでに遅かった。
 のんびりゆっくり酒を飲んでいるつもりが、ティーナの飲んでいた果実酒の瓶はもう空っぽになっている。

「はれぇ? ライナしゃんが、ひとり、ふたぁり、いっぱいいるぅ~」

 超ごきげんな酔っ払い状態になった彼女が、並んで足湯に浸けている足をバシャバシャしだした。お湯のしぶきがあちこちに飛び散り、静かな水面に、高くて不規則な波紋が広がる。

「わ、ティーナちゃん。そんなに足を動かしたら危ない……あっ!」

 膝までたくし上げられたスカートの裾が、足を動かしたために足の付け根付近まで露わにさせた。細くて白い太ももや、元気に上下するふくらはぎ、動くたびに波打つ内腿まで視界に映った。

「たぁーのしーぃ。ライナしゃーん、あのね、わらしねぇ。ちゅがいにあったのー」

「ティーナちゃん、ちょっとじっとして……足がっ! え? わぁっ!」

 酔っぱらった彼女が何かを言っていたがそれどころではない。慌てて上着を彼女の足にかけようとしたところ、思いっきり足を上にはね上げた彼女がバランスを崩して倒れ込んできた。

 咄嗟に彼女を抱えたものの、勢いがつきすぎていてそのままふたりで、天然温泉の足湯にどぼんと落ちた。

「わぁ、ぬっくぅい。あはは、ねぇ、ライナしゃん~。そぉ~れぃ!」

 俺は、ティーナちゃんを守るために下敷きになっている。腰を跨ぐように彼女が俺の上に倒れ込んでいたのだが、上半身をあげると、お湯を俺のほうに向かって手でかけてきた。

「うゎっぷ!」

 もう全身びしょ濡れだ。温かいお湯だから風邪をひく事はないだろうが、とてつもなくヤバイ事になっている場所がある。
 ちょうど馬乗りになっている彼女のおしりの真後ろにそれはあって、やわらかくて白い剥き出しの太ももという視界の暴力の前に、気を逸らそうとしても勃ち上がって来て存在を彼女に知らしめようと主張していた。

「ティ、ティーナちゃん、ちょっと落ち着いて! 言わんこっちゃない。酔っぱらって、ぶはっ!」

「わらしはぁ、おちついてまっすぅ! よってなんかないんれすよぉ~! あはは」

 彼女を落ち着かせようと声をかけるが、その度に口に向かってお湯をかけてくる。非常に困った状況になり、なすすべもなく彼女の攻撃に耐えていた。

「くしゅんっ!」

 そうだ、俺の体はほとんどをお湯に浸かっている状態だが、上半身が外にある彼女は、冷たい外気に濡れた服がより体温を奪っている。

「あー、もう。ティーナちゃん、ちょっとごめんっ!」

 華奢な彼女を力づくでどうにかしてはいけないと遠慮していたが、大切なティーナが風邪をひいたら大変だ。俺は、上に乗っている彼女をがしっと抱きかかえて、足湯から立ち上がった。

「ひゃぁ! ライナしゃん、すっごぉい! ちからもちぃ! すってきぃ!」

 全身ぬれねずみの俺たちの体には、濡れて重くなっている服がべったり張り付いている。彼女の柔らかなふたつの曲線も先端の小さな尖りもはっきりわかった。

 彼女から褒めたたえられて嬉しくないはずはない。もっと男らしい所を見せたくて彼女を横抱きにすると、さらにかっこいいとか言われた。

 脱衣所にも誰もいない。それもそのはず、今は夜で、一般の客は立ち入り禁止の時間だからだ。

 露天風呂に一度案内してから、ティーナはここを気に入っている。彼女が来る時は、夕食のあと毎日ここで過ごしていた。
 普段は男女別の露天風呂に入るのだが、今日はクリスマス。酒と肴を持ち込んで足湯で楽しんでいたのがまずかった。

 昨日のイブに何かあったのか、少ししょんぼりしている彼女を楽しませたかったのもある。

 ここは数組なら宿泊できる部屋がある。今日は誰もいないため、彼女を上等の部屋に寝かせた。そのまま眠りに付いた彼女を、温泉で働く女性スタッフに任せ、俺は隣の部屋に急いだ。

「あー……もうダメだ。もう無理。ティーナ……!」

 もう何年も拗らせている俺の想い。今日はさらに刺激が強すぎた。

  たった二年で少女から女性に変化したティーナの色気に堪らなく反応する。

  普段でも彼女の甘く誘う香りに耐えているというのに、事もあろうか下半身に馬乗りになられ、あられもない姿を見せられたのだ。

 はちきれんばかりに大きくそそり立つ自身を慰めるのに、彼女の先ほどの濡れた白さを思い出す。一度ではおさまらず、なんども貯蔵庫が涸れるまで解き放った。

 翌朝、こちらのそんな想いや状況を知らない、「おはようございます」という無垢な彼女が、愛しい天使にも、可愛い小悪魔にも見えたのだった。















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