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省吾-6 ※

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 愛おしい

 こういう気持ちが自分に沸き起こるなど、去年までは考えた事すらない。最初は、彼女と会えるだけで、言葉をかわすだけで満足していた。けれど、日々を一緒に過ごすうちに、どん欲に彼女を欲しがるようになり、それは再現なく暴食の大罪のようにとどまる事を知らなかった。

 彼女はまるで初めての女の子のように、痛みを堪え、初々しくも大胆に俺を求めてきた。俺が初めてではないと分かってはいる。それほどこだわりはないが、ともすれば例の男の影がどうしてもちらついた。あいつが、彼女の女の部分を開いたのかと思うと嫉妬でどうにかなりそうだった。

 彼女の中は思った以上に狭く熱く、そして痛いほど昂ぶり切った俺のに絡みついて搾り取られそうなほど気持ちがいい。一瞬で痛みを通過させるために一気に腰を押し付けたが、奥でじっとしているだけで果てそうになった。まさか、好きな人に入れるだけで出してしまいそうになるなんてびっくりしたし、何が何でも情けない姿を見せたくなくて、やせ我慢をする。
 彼女を必死に抱いて慰め、彼女が腰を押し付けた時、堰き止められていた川のように濁流となって腰の動きを急かした。

 どこがいいか探りながら腰の角度を変えると、ようやく彼女が痛みだけではない吐息や小さな喘ぎ声があがりだす。そこを重点的に攻めたものの、そうすればするほど、俺のをうねりながら締め付けてくる中の刺激に逆らえなくなった。
 もっとゆっくり彼女と繋がっていたいのに、早く駆けのぼる快楽の赴くまま奥に吐き出す。0.02ミリの膜が、彼女に直接俺を送り込むのを邪魔したのがもどかしい。
 彼女は学生で、俺たちはまだ結婚もしていないから、快楽の赴くままにする事は出来ない。もしも、妊娠などすれば、来年卒業して国家試験を受ける予定の彼女の人生が台無しになる。この時代に古臭いと言われるかもしれないが、うちも天川の家も、許しては貰えるだろうがいい顔をしないだろう。

「俺の方が好きだ」

 そう伝えた時、彼女はそんな事ないと言ってくれた。彩音は男によって心に深い傷を負わされたから、男としての俺にも警戒しているだろうと考えていた。俺の事を好きだと言ってくれていても、それほどではないと思っていた。なのに、俺の胸に恥ずかしそうに顔を埋めてきゅっと細い腕で抱きしめてくれる彼女に堪らなくなり、「今日はおしまい」と言った事を前言撤回して組み敷きたくなり困る。

 ベッドの上で、彼女と結ばれた後に、こうして話をするだけでも満たされていく。彼女に愛を注がれても注がれても、器は宇宙のように膨れ上がっているから満タンにはなかなかなりそうにない。

 体に籠った熱がひいていく。肌の表面が冷たくなり、彼女が寒くなったのかふるりと震えた。

「彩音、シャワーを浴びようか」
「うん」
「一緒に行く?」
「ええ? しょ、省吾さん、それはハードルが高いっていうか……その、あの、えっと」

 俺としては、このまま抱きしめて連れて行き一緒に入りたい。俺も多少気恥ずかしいが離したくなかった。俺の腕の中で、身もだえしながら真っ赤になる彼女が可愛い。少々悪戯心が俺を刺激するが、今日のところはやめた方がいいかもしれないとぐっと耐えた。

「はは、彩音、可愛い」
「もう、省吾さんったら。冗談ばっかり!」
「半分以上は本気。でも、今日は我慢するから先に入って来て」
「うん」

 腕をゆるめると、むくっと起き上がる彼女の白い肌が、ぞくりとするほど色っぽく俺を誘う。ふるりと揺れる胸元に、もう一度顔を埋めろと下半身が疼いた。そんな俺の事情を知る由もない彼女が、俺の視線をなぞるように自分の体を見て一瞬で顔を真っ赤に染める。

「きゃあ! えっと、省吾さん、見ないでぇ。えっと、先に入って来てください!」

 バスタオルもなにもないし、服は俺がベッドから離れた床に脱がせてそのまま放置している。自分が裸な事に改めて気付き、シーツで体を隠す彼女は出るに出られず困って俺に先に入れと言ってきた。全て見せ合った今もなお、恥ずかしがる彼女の姿は本当に可愛すぎて、こっちが困る。

「そうする。あとでバスタオルを持って来るから、ここで待ってて」
「うん、ありがとう」

 1センチ離れた体が、もう寂しさを覚える。彼女にキスを強請ると、小さな唇が俺に向かって尖ってそれを待ち望んでくれた。わざと音が鳴るように重ねると、彼女はとても幸せそうに笑う。
 いつも、いつまでもこの笑顔でいて欲しい。愛しさと、胸が苦しくなるほどの切ない気持ちになって、彼女を一生守りたいと思った。

 彼女への愛が大きくなるほど、体を求める下心も増える。シャワーで下半身の熱を下げて、バスローブを羽織った。部屋に備え付けられていたバスローブは、俺には小さかったがタオル一枚巻いて出るのも恰好悪い。彼女にバスタオルを持って行き、シャワーを交代する。

 シャワーの音が聞こえると、着替えを済ませてフロントに夕食を頼んだ。彼女が出てくる時間が長く感じつつ、スマホを見ると通知が来ているのかチカチカ光っていた。
 スマホを確認すると、相手は勇翔だった。何かあったのかと思いメッセージを確認すると、俺が彼女の部屋に泊った事をもう知られていたのかと、あれほど熱かった心が急速に冷える。

「妹を泣かせたら承知しないぞ」

 少々バツの悪い思いをしつつ、よろしく頼むと書かれた一言だけのそれに、勇翔が彩音をどれほど大切にしているのか分かる。返事をどうしていいのかわからず、了解とだけ文字を打った。
 特大の釘をさされたが、勇翔に言われるまでもない。彼女が俺から離れようと考える事すら一ミリもないように大切にするし、他の男など近づけさせるものかとスマホを握りしめたのである。

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