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 彼の腰が私に近づいて来る。それと同時に、根元に向かって太くなる彼自身がめりめりと中を穿ってきた。彼の熱に、普段は何も感じる事のない中が圧迫されて痛んだ。その痛みを堪えるために、夢中で彼にしがみ付き名前を呼び続ける。

「省吾さん、省吾、さん……ああっ!」
「彩音、痛むのか? やめようか」

 汗を額に浮かべながら結ばれているそこを見ていた彼が、私の切羽詰まった声を聞いて顔に視線を移動させる。一度しか経験していないし、あの時はあっという間に終わった。省吾さんのは、とても大きいみたいだから、慣れていないそこは、まるで初めてのように痛みを感じるのかもしれない。

 痛みを堪えている目尻には涙が浮かんでいて、顔が酷く歪んでいるのだろう。私の顔を見た彼は、とても心配そうな表情をして、私を上からぎゅっと抱きしめてくれた。

「痛い、けど……。大丈夫です」
「俺は、彩音が痛いのにしたいとは思わない。一緒にいるだけでも幸せなんだ。さっき、待たないって言ったからって、無理して痛いのを堪えなくていい。ゆっくりしていけばいいから、今日はこのまま一緒に過ごそう」

 私の中に半分も入っていなかった杭のような大きなものが、慎重に抜かれていく。折角このまま彼とひとつになれると思っていたのに、中から抜け始めた途端、心も体も、彼の熱が消えて行こうとする中も寂しくなった。

「ダメッ!」

 私は、彼にしがみ付きながら、彼が離れようと腰を引くのを、足を腰に絡めて止めた。その衝撃で、くんっと中にもう一度入って来て息が詰まる。

「あ、彩音? 足を離してくれないと」
「やだ、やだぁ……! 痛くてもいい。省吾さんとこうしていたいんです。ねぇ、ダメ?」

 ぶんぶん首を振りながら、涙目で彼に抜かないでと懇願した。彼がもう待てないって言ったからではない。私が、今日この時に彼と結ばれたいと思うから。だから、戸惑う彼にお願いした。

 すると、彼はびっくりしたように目を見開いた後、ちゅっと唇をつけてきた。

「彩音、……ごめん、ちょっと我慢していて」
「うん」

 ふーっと長い溜息を吐いた彼が、私をきつく抱きしめ直す。ぐいっと腰を押し付けられたかと思うと、一気に奥まで貫かれた。

「ああっ!」

 一瞬の痛みに、大きな声が漏れる。中がじんじんして足先までしびれているかのようだ。ともすれば息がとまりそうになるから、はふはふ短く息を繰り返した。

「彩音、暫くこのままでいるから」
「うん、うん……」

 目尻から涙が零れた。米神から耳に伝いそうになるそれを、省吾さんが唇で優しく拭う。

 体中が今の衝撃でぷるぷる小刻みに震えていて止まらない。でも、そんな風に痛いのに、彼とこうして一つに慣れた事がとても嬉しい。

「省吾さん、私、幸せ……」
「俺もだ」

 近くにある彼の吐息がとても熱い。体中に触れる彼の肌も、なぐさめるように擦る大きな手も、荒い息でさえ私を幸せの中に包み込んでくれる。

「彩音、ゆっくりするから動いていいか?」

 硬く抱きしめあっていると、徐々に痛みが治まって来た。力が抜けて楽になった事に気付いた彼が、私に問いかける。余裕が産まれて彼の顔を見ると、とても辛そうに眉をしかめていた。彼の方が痛かったのかと心配したけれど、動きたいのを我慢していたからだと苦笑される。

 その言葉の意味を知らないわけはない。そっと彼の肩に手を当てて、小さく身をよじり、結ばれた場所を動かして彼を促した。

「ああ、彩音。そんな風に動かれたら……」

 ほんの出来心のようなその動きは、彼の何かにスイッチを入れたみたいだ。上にいる彼からぽたぽた熱い汗が落ちてきて私の肌に当たる。その一滴一滴が、彼の熱をじんわり波紋のように広げるかのように思えた。

 ほとんど音もならない彼の動きが、私の様子を伺いながら徐々に加速する。厭らしい水の音と、肌をうつ甲高い破裂音、そして、ベッドの軋む音が激しく大きく部屋中に響いた。

「あ、ああっ、省吾さん、省吾さん!」

 もうほとんど痛みはない。長く擦られていたせいで、痛みの感覚がなくなり、代わりにその奥から新たな何かが弾けだす。いつの間にか、彼の腰に絡みつかせていた私の足が、宙をその動きに合わせて揺れていた。

「彩音、もう……!」

 一際大きく、ばちんと音がしたかと思うと、ぐいっと体の中心の更に奥を押された。省吾さんの体がぴたりと止まったかと思うと、中の彼自身が大きく膨らみ、何度か体と合わせてぴくつく。

「はぁ、はぁ……」
「ん……省吾さん……」
「うあ、彩音、今、締め付けたら……」

 ようやく彼が、私の中で絶頂を迎えてくれたのだと思うと、胸が熱く、心が歓喜で大きくふくれあがった。きゅうっと中が締まるのがわかり、彼が焦り出した。

「ごめんなさい、省吾さん大丈夫ですか?」
「はぁ……。今日は一度で済ませようと思ったんだが……」
「え?」

 中からずるりと彼が出て行く。半ばまでズレた避妊具の中には、たっぷり白い彼のものが入っていた。彼の大きな熱は、まだまだ硬く反りかえっている。

「彩音のせいで収まらなくなったから、コレの責任を取ってもらおうか?」
「え、え?」
「はは、冗談だよ。今日は、もうおしまい。彩音、痛くしてごめん。でも、ありがとう」

 もう一度始まるのかとびっくりしつつ、嬉しくもあったから少し残念に思う。お互いに顔を見合わせて笑い合いながら、こつんと額をつけた。汗ばんだ体同士で、ぴとりとくっつく。汗がやや冷えた肌が気持ちいい。

「省吾さん、大好き」
「俺のほうがもっと彩音を好きだ」
「そんな事ないですよ」
「そうか?」
「うん」
「はは、嬉しいな」

 ベッドの上で、彼と過ごす楽しくて幸せなひと時が、世界中の宝物よりも大切だ。何より、彼と気持ちと体が交差した事で、今、間違いなく世界一幸せなのは私だと実感できたのであった。



 
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