12 / 18
9 最終決戦に向かう人を見送りながら
しおりを挟む
UMA3体を捕らえたことで、十分データを取ることに成功した。
今、アリの巣には、数え切れないくらいの卵があり、女王アリと側近一体が守っている状況らしい。
ノウキたち以外の、今回の侵略でやってきた戦闘専門UMAたちもほぼ殲滅が完了しており、巣にいるのは掃除をしたりリフォームしたり、世話をしたりするアリたちばかりらしい。そのうちの何%かは戦闘用に変わるだろうけど、突入するなら今がチャンスだと判断された。
「ノウキたちが巣にいるまでの地図も完成している。だが、キュービクルだけでは心もとないこともあり、4名のパイロットと軍とともに、全員を追従させることにした」
もう候補生ではなく、やり直しのきかない仕事だ。だけど、そんな急に学生気分が抜けるわけもなく、わたくしたちは互いに肩を抱き合った。
「皆、わたくしは何が起こってもキュービクルには乗れないでしょう。でも、一生懸命サポートをするわ」
「はい、おねえさまの言葉は励みになりますし、指示は他の誰よりも的確で最大限の効果を生み出してきましたから信じることができます」
「皆の代表として、私達は敵の巣を完膚なきまで破壊してみせますっ!」
正直なところ、選ばれた4名を羨む気持ちはある。他の子たちもそうだろう。でも、選ばれたら選ばれたで恐ろしい自体に直面することになるのだ。それぞれの思いを込めて、キュービクルを収納している巨大な戦艦に乗り込んだ。
UMAの本拠地は、地球から月ほどの距離の、古に打ち捨てられた衛生基地のひとつだった。わたくしたちが思っていたよりも早くにそこに巣を作り、虎視眈々と地球の侵略を目論んでいたらしい。
あっという間にその場所を目前にした戦艦のコクピットから巣を見下ろす。
「コーチ、わたくしではなく、あの子たちの誰かのコーチだったのなら、未来永劫語り継がれる名声と地位が約束されましたのに。最初から外される予定のわたくしで、本当に良かったのですか?」
コーチの最後の立ち位置で、未来の地位も財産も大きく変わる。人類の存続のためとはいえ、天と地ほどの差になるのがわかっていて、落選確定のわたくしのコーチになる物好きはいなかったから、コーチがハズレくじのような形でわたくしについたのかと思っていた。
「タイム。俺はもともと直属のコーチではなかった。たまたま空席だった場所に放り込まれただけだ。だが、俺はあの偶然に感謝している」
「後悔ではなく、感謝ですか?」
「ああ。個人的な話になるが、俺は女性がこれほどの才能と行動力があるとは思っていなかった。あー、一部の女性が、男よりも有能なのは知っているが、俺の実家は女性は守るべきか弱き存在だという風潮でな。ある意味馬鹿にしていた」
「出産のことを考えると、そういう女性の方が多いかもしれませんし、価値観は多種多様ですので互いに納得していれば問題ないのではないでしょうか。コーチの考えが古臭いとは思いませんが」
「だが、なんとなくで下に見て良いわけはない。お前たちはそこら辺の男よりも素晴らしかった。コーチとして側にいられて、俺は価値観ががらりと変わったのを自覚した。それからは、未成年という未熟さがあるものの、対等の存在だと心がけて接するようにしていたんだ」
「そうだったのですね」
まさか、コーチが男尊女卑とまではいかないだろうけど、そういう家系で育ったとは思っていなかったのでびっくりした。いつだってコーチは、男性たちと同じように厳しかったし、体調不良はともかくとして、女性だからと指導の手を抜かなかったから。
「それまでは、一緒に過ごさねばならない結婚など、メリットなどないと考えたこともなかった。だが、女性でも支えるだけでなく、支え合える女性がいると、そう思うようになったきっかけは、タイムお前だ」
「わたくし?」
「ああ。お前は男よりも男らしい。あいつらが慕うのもわかる」
「男らしい……」
これでも、訓練の合間におしゃれやケアを怠らなかった。一応、そこそこきれいな部類にはいってるんじゃないかなーって思っていたから、男らしいと言われてなんだか複雑だ。
せめて、頼もしいとか言えないのだろうかと、言葉が斜め何度かのコーチをにらんでしまった。そんなだから、いつもいつも説教の時に、皆に責められて詰め寄られるのだと確信した。
そんな話をしているうちに、すでにキュービクルに乗り込んだカエリズミたちが戦艦から飛び立った。
「カエリズミ、皆……どうか無事で」
残る4名も、コーチと一緒に彼女たちを見守る。わたくしと違って、カエリズミたちに何かあればすぐさま護衛艦に乗ってキュービクルのもとにいき戦闘しなければならない子たちだ。わたくしよりもその思いは複雑で強いだろう。
ついに、巣の中に突入する。キュービクルと一緒に追従する護衛戦闘機のカメラの映像がスクリーンに映し出されていた。
「アリたちが、キュービクルの姿を認識したら逃げていったわ!」
「データの通り、あそこに残っているのは、戦闘しないのね」
目指すは卵を守る女王アリと側近の場所。カエリズミたちは、一寸も迷うこともなくそちらに向かっていく。
わたくしは、あまりにもスムーズすぎて、逆に不安になった。ドキドキと、心臓の鼓動が嫌な不協和音になる。単なる気の所為で、思い過ごしならいいのだけれど。
「あ!」
そうだった。前世で、シバタは……
「ダメ! 戻って! これは敵の罠よ!」
わたくしは、スクリーンに向かって大きな声をあげた。だけど、遅かったようだ。
カエリズミたちを映していたスクリーンが一瞬で真っ暗になり、通信が途絶えてしまったのだった。
今、アリの巣には、数え切れないくらいの卵があり、女王アリと側近一体が守っている状況らしい。
ノウキたち以外の、今回の侵略でやってきた戦闘専門UMAたちもほぼ殲滅が完了しており、巣にいるのは掃除をしたりリフォームしたり、世話をしたりするアリたちばかりらしい。そのうちの何%かは戦闘用に変わるだろうけど、突入するなら今がチャンスだと判断された。
「ノウキたちが巣にいるまでの地図も完成している。だが、キュービクルだけでは心もとないこともあり、4名のパイロットと軍とともに、全員を追従させることにした」
もう候補生ではなく、やり直しのきかない仕事だ。だけど、そんな急に学生気分が抜けるわけもなく、わたくしたちは互いに肩を抱き合った。
「皆、わたくしは何が起こってもキュービクルには乗れないでしょう。でも、一生懸命サポートをするわ」
「はい、おねえさまの言葉は励みになりますし、指示は他の誰よりも的確で最大限の効果を生み出してきましたから信じることができます」
「皆の代表として、私達は敵の巣を完膚なきまで破壊してみせますっ!」
正直なところ、選ばれた4名を羨む気持ちはある。他の子たちもそうだろう。でも、選ばれたら選ばれたで恐ろしい自体に直面することになるのだ。それぞれの思いを込めて、キュービクルを収納している巨大な戦艦に乗り込んだ。
UMAの本拠地は、地球から月ほどの距離の、古に打ち捨てられた衛生基地のひとつだった。わたくしたちが思っていたよりも早くにそこに巣を作り、虎視眈々と地球の侵略を目論んでいたらしい。
あっという間にその場所を目前にした戦艦のコクピットから巣を見下ろす。
「コーチ、わたくしではなく、あの子たちの誰かのコーチだったのなら、未来永劫語り継がれる名声と地位が約束されましたのに。最初から外される予定のわたくしで、本当に良かったのですか?」
コーチの最後の立ち位置で、未来の地位も財産も大きく変わる。人類の存続のためとはいえ、天と地ほどの差になるのがわかっていて、落選確定のわたくしのコーチになる物好きはいなかったから、コーチがハズレくじのような形でわたくしについたのかと思っていた。
「タイム。俺はもともと直属のコーチではなかった。たまたま空席だった場所に放り込まれただけだ。だが、俺はあの偶然に感謝している」
「後悔ではなく、感謝ですか?」
「ああ。個人的な話になるが、俺は女性がこれほどの才能と行動力があるとは思っていなかった。あー、一部の女性が、男よりも有能なのは知っているが、俺の実家は女性は守るべきか弱き存在だという風潮でな。ある意味馬鹿にしていた」
「出産のことを考えると、そういう女性の方が多いかもしれませんし、価値観は多種多様ですので互いに納得していれば問題ないのではないでしょうか。コーチの考えが古臭いとは思いませんが」
「だが、なんとなくで下に見て良いわけはない。お前たちはそこら辺の男よりも素晴らしかった。コーチとして側にいられて、俺は価値観ががらりと変わったのを自覚した。それからは、未成年という未熟さがあるものの、対等の存在だと心がけて接するようにしていたんだ」
「そうだったのですね」
まさか、コーチが男尊女卑とまではいかないだろうけど、そういう家系で育ったとは思っていなかったのでびっくりした。いつだってコーチは、男性たちと同じように厳しかったし、体調不良はともかくとして、女性だからと指導の手を抜かなかったから。
「それまでは、一緒に過ごさねばならない結婚など、メリットなどないと考えたこともなかった。だが、女性でも支えるだけでなく、支え合える女性がいると、そう思うようになったきっかけは、タイムお前だ」
「わたくし?」
「ああ。お前は男よりも男らしい。あいつらが慕うのもわかる」
「男らしい……」
これでも、訓練の合間におしゃれやケアを怠らなかった。一応、そこそこきれいな部類にはいってるんじゃないかなーって思っていたから、男らしいと言われてなんだか複雑だ。
せめて、頼もしいとか言えないのだろうかと、言葉が斜め何度かのコーチをにらんでしまった。そんなだから、いつもいつも説教の時に、皆に責められて詰め寄られるのだと確信した。
そんな話をしているうちに、すでにキュービクルに乗り込んだカエリズミたちが戦艦から飛び立った。
「カエリズミ、皆……どうか無事で」
残る4名も、コーチと一緒に彼女たちを見守る。わたくしと違って、カエリズミたちに何かあればすぐさま護衛艦に乗ってキュービクルのもとにいき戦闘しなければならない子たちだ。わたくしよりもその思いは複雑で強いだろう。
ついに、巣の中に突入する。キュービクルと一緒に追従する護衛戦闘機のカメラの映像がスクリーンに映し出されていた。
「アリたちが、キュービクルの姿を認識したら逃げていったわ!」
「データの通り、あそこに残っているのは、戦闘しないのね」
目指すは卵を守る女王アリと側近の場所。カエリズミたちは、一寸も迷うこともなくそちらに向かっていく。
わたくしは、あまりにもスムーズすぎて、逆に不安になった。ドキドキと、心臓の鼓動が嫌な不協和音になる。単なる気の所為で、思い過ごしならいいのだけれど。
「あ!」
そうだった。前世で、シバタは……
「ダメ! 戻って! これは敵の罠よ!」
わたくしは、スクリーンに向かって大きな声をあげた。だけど、遅かったようだ。
カエリズミたちを映していたスクリーンが一瞬で真っ暗になり、通信が途絶えてしまったのだった。
11
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
〈短編版〉騎士団長との淫らな秘め事~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~
二階堂まや
恋愛
王国の第三王女ルイーセは、女きょうだいばかりの環境で育ったせいで男が苦手であった。そんな彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、逞しく威風堂々とした風貌の彼ともどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。
そんなある日、ルイーセは森に散歩に行き、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。そしてそれは、彼女にとって性の目覚めのきっかけとなってしまったのだった。
+性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が全面協力して最終的にらぶえっちするというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。
【R18】聖女のお役目【完結済】
ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。
その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。
紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。
祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。
※性描写有りは★マークです。
※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。
【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった
ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。
あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。
細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました
春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。
大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。
――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!?
「その男のどこがいいんですか」
「どこって……おちんちん、かしら」
(だって貴方のモノだもの)
そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!?
拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。
※他サイト様でも公開しております。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる