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40 ガチャの神様というものがいるのなら
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「アイリス、卒業おめでとう。総合一位は残念だったが、学業の成績では、君を抜く人は今後なかなか現れないだろう。君が、この学園を卒業したことを誇りに思う」
「ありがとうございます。わたくしが、辛くても今日のこの日を迎えられたのは、クラスの皆の優しい心遣いや、フォローしてくださった先生方のおかげです」
わたくしは、ゴーリン会長の次席として、卒業の際に銀の盾をもらった。この学園の卒業生の中で、人間では快挙だという。
盾は、本物の盾を模したものだ。これから先、この盾をもらった強者である卒業生は、誇りをもって守るべき他者の盾となれという意味が込められている。
わたくしは、胸を張って会長の隣に立った。そして、銅の盾をもらったマニーデさんと三人で盾を両手で上に掲げる。
それを合図に、会場にいる学生たちが思い思いに騒ぎ始めた。血気盛んな彼らにとって、乱闘騒ぎはお祭りのようなもの。卒業式には、会場が半壊することが恒例行事らしい。
「アイリス、非力な人間の君に銀の盾を与えることになった時、国王陛下がいたく感心されてね。君が望んでいた永住権のことを伝えてみたら二つ返事で了承してくれたんだが。受けるかい?」
学園長の言葉に、わたくしは頭が真っ白になった。今のわたくしには、永住権を陛下にいただく必要はない。
ラストーリナン国では、わたくしは侯爵家の後継者として認められ、今は女侯爵となったお母様がいる実家が出来た。オウトレスイリア国では、ジョアンと結婚するから自動的に住む権利を有する。
(喉から手が出るほど、どうしても欲しかったころには手に入らなかった物が、必要がなくなってからお声がかかるなんて。ふふふ、そんなものなのかも)
「永住権はついでのようなものになったけど、貰っておけ」
「ジョアン?」
「銀の盾をもらっていることでも、アイリスは俺達の国では一目を置かれる。だけど、陛下の勅命による永住権を得た人間ともなれば、どんな獣人も、アイリスにかすり傷ひとつつけられねぇからな。ま、俺がお前を守ってやるけどよ。他者だけでなく自分の身を守る盾は多いに越したことはない」
来賓の中にいるお母様も、ジョアンと同じ意見のようで笑顔で頷いていた。その横には、おじい様とアルカヌム様がいる。アルカヌム様は、お母様に告白する前に、あの人にお母様をかっさらわれたらしい。それ以来、自分の心は奥底にしまって、お母様の幸せを願っていたそうだ。
女侯爵で、離婚した中身30代とはいえ独身のお母様には求婚者が殺到している。チャンスが出来た今、ほかの求婚者が横入りしないように、事あるごとにお母様の隣にいるようにしているとのことだ。
(アルカヌム様は、ダンディなおじ様だしお母様を大切にしてくださるのなら大歓迎だわ。だけど、どう見ても、求婚している男性とされている女性ではなく、親子にしか見えないわね。ふふ)
今の幸せをかみしめながら、学園長にその勅命を受けると伝えた。さらに学園の箔が付くと、学園長はスキップしそうなほどの勢いで、国王陛下にその旨を伝えに駆けて行った。
ここに来てから、わたくしの人生はものすごく変わった。
怖いところもあるけれど、わたくしを白い髪だと差別しなかったウォンたち。わたくしのフォローをしてくれた、ゴーリン会長やマニーデさん。わたくしが行き場を無くした時に救ってくれた先生や大人の獣人がた。
そして、わたくしの側には、ジョアンがいてくれた。足手まといだし、うっとうしいことも多かっただろうに、いつだってわたくしを思ってくれた彼。
(小説や劇じゃないけれど、わたくしはここでジョアンに出会うために来たのね)
ジョアンが、わたくしの手を取って笑っている。彼の左手には、あの時の職人さんが手掛けてくれたゴールデンジュビリーダイヤの子供石で作られた指輪が光っている。わたくしの手には、今はアクアマリンではなく、彼がくれたブラックダイヤモンドの指輪があった。以前もらったブラックオニキスの指輪は、ブレスレットにリメイクしてつけている。
「おねぃちゃああああああん。おめでとー!」
「おねーちゃーーーーーーん。おいわいだぞー!」
すると、ジョアンとわたくしをお祝いに来てくれていた、ちびっコアラたちが飛んできた。
「コモリ君、フクロ君!」
幸い、事情を知っている身内や、信頼する獣人たち以外は乱闘に夢中でこっちを見ていない。
わたくしは、あれからジョアンの魔法を少しだけ借りることができるようになった。身体強化と保護の魔法を、それを借りて発動させる。わたくしの髪の毛は、今はジョアンと同じ色になっているはずだ。
(思う存分いらっしゃい!)
今のわたくしなら、ふたりの飛びつきもなんなく受け止められる。足をしっかり地につけて両手を開いた。やっと、この子たちを抱きとめて心行くまでモフれる。ドキドキわくわくして、ふたりの衝撃を今か今かと待った。
「お前ら、そこまで!」
「なんだよーにいちゃん、じゃますんなー」
「ちっ、にーちゃん、こころがせまいぞー!」
「ジョアン、わたくしなら前と違って大丈夫だから! ね? ね?」
ちびっコアラたちの抗議も、わたくしの必死のおねだりも、ジョアンは許してくれなかった。
「ちっ、お前がもふもふするのは、俺だけだろ?」
独占欲まるだしのジョアンの耳が少し赤い。照れているそんな彼も愛おしく思う。
ペアというものが、獣人にとって唯一の存在という意味合いを持つということを知った時、わたくしは途方もない幸せを感じた。つがいというものは、あの人たちのように裏切らない、絶対的な関係性だから。
もう二度と、辛かったり悲しい思いはしたくない。ジョアンは、わたくしが人間だから、つがいとかそういうのは強い束縛の面もあるから受け入れられないと心配していた。だけど、わたくしがそれを聞いて嬉しくてたまらないと伝えたとき、息が苦しくなるほど抱きしめられてキスされたのは言うまでもない。
「いいえ、違うわ」
「そんなっ!」
わたくしの否定の言葉に、ショックを受けたジョアンの耳元に口を寄せた。
「今日にでも出来る、あなたとわたくしの子も、いっぱいもふもふするわよ? 勿論、あなたの魔法を借りて身を守ってね」
「アイリス!」
わたくしの言葉一つで、ジョアンが一喜一憂する。彼とわたくしは、まだそういう関係ではない。だから、その言葉がどういう意味なのかわかってくれたみたいだ。
神様を、何度も恨んだ。だけど今、彼と出会わせてくれた運命の神に、わたくしは感謝の気持ちでいっぱいになる。
めんどくさがりで口が悪い、わたくしだけの大当たりガチャの花婿。この後、わたくしは彼の妻になる。
わたくしが回したガチャの中は外れが多かった分、きっと残りは大当たりのものしかないだろう。
R18 外れガチャの花嫁 本編完結
続きは、ジョアンとのR18やコメディなどの番外編となります。
「ありがとうございます。わたくしが、辛くても今日のこの日を迎えられたのは、クラスの皆の優しい心遣いや、フォローしてくださった先生方のおかげです」
わたくしは、ゴーリン会長の次席として、卒業の際に銀の盾をもらった。この学園の卒業生の中で、人間では快挙だという。
盾は、本物の盾を模したものだ。これから先、この盾をもらった強者である卒業生は、誇りをもって守るべき他者の盾となれという意味が込められている。
わたくしは、胸を張って会長の隣に立った。そして、銅の盾をもらったマニーデさんと三人で盾を両手で上に掲げる。
それを合図に、会場にいる学生たちが思い思いに騒ぎ始めた。血気盛んな彼らにとって、乱闘騒ぎはお祭りのようなもの。卒業式には、会場が半壊することが恒例行事らしい。
「アイリス、非力な人間の君に銀の盾を与えることになった時、国王陛下がいたく感心されてね。君が望んでいた永住権のことを伝えてみたら二つ返事で了承してくれたんだが。受けるかい?」
学園長の言葉に、わたくしは頭が真っ白になった。今のわたくしには、永住権を陛下にいただく必要はない。
ラストーリナン国では、わたくしは侯爵家の後継者として認められ、今は女侯爵となったお母様がいる実家が出来た。オウトレスイリア国では、ジョアンと結婚するから自動的に住む権利を有する。
(喉から手が出るほど、どうしても欲しかったころには手に入らなかった物が、必要がなくなってからお声がかかるなんて。ふふふ、そんなものなのかも)
「永住権はついでのようなものになったけど、貰っておけ」
「ジョアン?」
「銀の盾をもらっていることでも、アイリスは俺達の国では一目を置かれる。だけど、陛下の勅命による永住権を得た人間ともなれば、どんな獣人も、アイリスにかすり傷ひとつつけられねぇからな。ま、俺がお前を守ってやるけどよ。他者だけでなく自分の身を守る盾は多いに越したことはない」
来賓の中にいるお母様も、ジョアンと同じ意見のようで笑顔で頷いていた。その横には、おじい様とアルカヌム様がいる。アルカヌム様は、お母様に告白する前に、あの人にお母様をかっさらわれたらしい。それ以来、自分の心は奥底にしまって、お母様の幸せを願っていたそうだ。
女侯爵で、離婚した中身30代とはいえ独身のお母様には求婚者が殺到している。チャンスが出来た今、ほかの求婚者が横入りしないように、事あるごとにお母様の隣にいるようにしているとのことだ。
(アルカヌム様は、ダンディなおじ様だしお母様を大切にしてくださるのなら大歓迎だわ。だけど、どう見ても、求婚している男性とされている女性ではなく、親子にしか見えないわね。ふふ)
今の幸せをかみしめながら、学園長にその勅命を受けると伝えた。さらに学園の箔が付くと、学園長はスキップしそうなほどの勢いで、国王陛下にその旨を伝えに駆けて行った。
ここに来てから、わたくしの人生はものすごく変わった。
怖いところもあるけれど、わたくしを白い髪だと差別しなかったウォンたち。わたくしのフォローをしてくれた、ゴーリン会長やマニーデさん。わたくしが行き場を無くした時に救ってくれた先生や大人の獣人がた。
そして、わたくしの側には、ジョアンがいてくれた。足手まといだし、うっとうしいことも多かっただろうに、いつだってわたくしを思ってくれた彼。
(小説や劇じゃないけれど、わたくしはここでジョアンに出会うために来たのね)
ジョアンが、わたくしの手を取って笑っている。彼の左手には、あの時の職人さんが手掛けてくれたゴールデンジュビリーダイヤの子供石で作られた指輪が光っている。わたくしの手には、今はアクアマリンではなく、彼がくれたブラックダイヤモンドの指輪があった。以前もらったブラックオニキスの指輪は、ブレスレットにリメイクしてつけている。
「おねぃちゃああああああん。おめでとー!」
「おねーちゃーーーーーーん。おいわいだぞー!」
すると、ジョアンとわたくしをお祝いに来てくれていた、ちびっコアラたちが飛んできた。
「コモリ君、フクロ君!」
幸い、事情を知っている身内や、信頼する獣人たち以外は乱闘に夢中でこっちを見ていない。
わたくしは、あれからジョアンの魔法を少しだけ借りることができるようになった。身体強化と保護の魔法を、それを借りて発動させる。わたくしの髪の毛は、今はジョアンと同じ色になっているはずだ。
(思う存分いらっしゃい!)
今のわたくしなら、ふたりの飛びつきもなんなく受け止められる。足をしっかり地につけて両手を開いた。やっと、この子たちを抱きとめて心行くまでモフれる。ドキドキわくわくして、ふたりの衝撃を今か今かと待った。
「お前ら、そこまで!」
「なんだよーにいちゃん、じゃますんなー」
「ちっ、にーちゃん、こころがせまいぞー!」
「ジョアン、わたくしなら前と違って大丈夫だから! ね? ね?」
ちびっコアラたちの抗議も、わたくしの必死のおねだりも、ジョアンは許してくれなかった。
「ちっ、お前がもふもふするのは、俺だけだろ?」
独占欲まるだしのジョアンの耳が少し赤い。照れているそんな彼も愛おしく思う。
ペアというものが、獣人にとって唯一の存在という意味合いを持つということを知った時、わたくしは途方もない幸せを感じた。つがいというものは、あの人たちのように裏切らない、絶対的な関係性だから。
もう二度と、辛かったり悲しい思いはしたくない。ジョアンは、わたくしが人間だから、つがいとかそういうのは強い束縛の面もあるから受け入れられないと心配していた。だけど、わたくしがそれを聞いて嬉しくてたまらないと伝えたとき、息が苦しくなるほど抱きしめられてキスされたのは言うまでもない。
「いいえ、違うわ」
「そんなっ!」
わたくしの否定の言葉に、ショックを受けたジョアンの耳元に口を寄せた。
「今日にでも出来る、あなたとわたくしの子も、いっぱいもふもふするわよ? 勿論、あなたの魔法を借りて身を守ってね」
「アイリス!」
わたくしの言葉一つで、ジョアンが一喜一憂する。彼とわたくしは、まだそういう関係ではない。だから、その言葉がどういう意味なのかわかってくれたみたいだ。
神様を、何度も恨んだ。だけど今、彼と出会わせてくれた運命の神に、わたくしは感謝の気持ちでいっぱいになる。
めんどくさがりで口が悪い、わたくしだけの大当たりガチャの花婿。この後、わたくしは彼の妻になる。
わたくしが回したガチャの中は外れが多かった分、きっと残りは大当たりのものしかないだろう。
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