完結R18 外れガチャの花嫁 

にじくす まさしよ

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抱っこされたいコアラ  ※後半右手回です

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「寝たか……。この天気だから、遠足は一時中止だな。朝になったら出発するか」

 他のやつらも足止めを食らっているのは間違いがない。下位クラスの連中は、あの豪雨の中進めるはずがないし、上位クラスほど断崖絶壁の危険なコースなのだ。先生やゴーリン率いる生徒会のやつらが、無理して進もうとするやつらを止めただろう。
 
 遠足の順位は、今後の成績に影響がある。だからこそ、俺はアイリスを連れてベスト3以内を狙っていた。ただ、現段階ではどこまで順位を下げたのかわからない。皆を出し抜いて、夜のうちに動いたとしてもルール違反として順位が最下位になる。

(明日は、もうちょいペースアップするか)

「ん? アイリスのやつ、まだこんなもんつけてるのか……」

 俺の腹に回された小さくて細い指に、アクアマリンの指輪が、暖炉の炎を帯びて輝いている。おそらくは、毎日磨き上げているのだろう。

「お前を捨てた、元婚約者のどこがそんなにいいんだよ……こんなもん、さっさと捨てちまえばいいのに」

 アイリスにとって、人間の国、しかも生家で過ごした過去は、俺が想像するよりも辛かったにちがいない。元婚約者とどういう関係だったのかはわからないが、婚約解消してもなお、こんなにも指輪に固執するのだ。おそらく、そいつのことを心から想っていたにちがいない。

 無性に指輪を外したくなる。だけど、俺が勝手に外せば、今もそいつを想っているアイリスが悲しむ。

 なぜか、じりじりと胸が焼けるような気持の悪さを覚える。初めての感情に戸惑った。

(ふん、こいつは単なるペアだ。なのに、人間の女がなんだってこんなに気になるんだよ。せいぜい、友達だろ? でも、まあ。アイリスは、コアラの姿だと物凄く喜んでくれたな。コアラのまま彼女といられるように、この鋭い爪で傷つけないために、保護魔法も覚えてやるか……)

 魔法は正直苦手だ。相手を守るための保護魔法など馬鹿にしていたから一切習得してなどいない。

シャキン

 空中に手を伸ばして黒く長い爪だけを出す。このクローで、相手をずたずたに出来なくするのは非常に不本意だ。

シャッシャッ

 天然の大岩をも切り裂く、クローのこの自慢の切れ味を無くすなんて恥以外の何物でもない。

(攻撃力0にした爪か。ま、そうすれば、遠慮なくアイリスに触れて抱っこしてもらえ──いや、これはペアを守るための措置としてだな)

 俺は、遠足が終わったら、ミストに保護魔法を習うために頭を下げる事を決意したのであった。










※↓↓雰囲気クラッシュです。特に終わりの方は右手の存在感がありますので、ご注意ください。なんでも許せる人、重々承知の方のみどうぞ。







↓ご注意ください。R18未満 右手エロコメディ




 アイリスの細い腕に抱っこされそうになった時は焦った。思わず、彼女に抱き着こうとして我慢する。
 彼女の縦抱っこのおかげで、獣化しても大きくなった息子の存在には全く気付かれていないようでホッとした。

 ぎゅうぎゅう抱きしめられて、ちょっと苦しい。鼻に、おっぱいの柔らかさがむぎゅっと押し当てられていて息がやばいことになった。

「アイリス、苦しい……」
「あ、ごめんなさい、ジョアンさん」

 お尻を両手でぐっと支えられたまま、彼女のおっぱいが少し離れる。人間のおっぱいも素晴らしい存在ではあるが、甘い香りがする彼女が俺を抱っこしてくれている、その事実だけでくらくら眩暈がしてしまった。

 どうしてもとお願いされて、ロッキングチェアに座る彼女の膝の上にちょこんと座った。

「ふふふ、ジョアンさんってあったかぁい……ふにふにだぁ」

 人間より獣化した時のほうが体温は高い。しかも、今の彼女はやっと温まり出したところで、まだまだ冷たいのが分かる。くるりと体を反転させ、彼女と対面で座りなおす。

 腕を体に回し、唯一爪がない親指でちょんっと彼女の背を触るようにして抱きしめた。

「こ、こうしていればあったかいだろう?」
「うん……」

 ゆらゆら揺れるロッキングチェアに揺られて気持ちがいい。暖炉の炎でアイリスの髪も渇き始めぽかぽか彼女の体も完全に温もって来た。丸い背中がわの毛皮が、炎に近すぎて少々熱いが、うっとりと彼女にもたれ掛かるように目を閉じる。

 暫く、ふたりで抱きしめ合いながら揺られていると、アイリスの首がこっくりと船をこぎ出す。時々、俺の背を撫でていた手が脱力してがくんとしっぽまで落ちた。

 相当疲れていたのだろう。眠りたくないと言いつつ、俺を胸に抱っこしたまま、アイリスがすうすう寝息を立て始める。

(どうすんだ、これ……)

 さっきまでいきり立ったそこは、かなりしょんぼりしてきた。それと同時に、色々冷静に考える事が出来るようになる。


すり……


 寝ぼけたアイリスが、幸せそうな表情で俺の毛皮を撫でながら頬を摺り寄せて来た。柔らかい太ももが動いて、密着しているところが刺激される。思わずびくんとなり、足の爪がにょきっと出た。爪でその肌を傷つけないように、必死に角度を調節する。

(アイリスにとって、今は単なるコアラだ。俺は、抱っコアラ以外の何物でもないんだぞ!)

 少し残念に思いながらも、彼女をそっと抱きしめた。すると、偶然にも、目の前の、俺を誘う深く魅惑的な谷間に鼻をくっつけてしまった。決してわざとではない。腕が短いから不可抗力だ。

(うう、柔らかい……、それにしても、いい、匂いだ)

 アイリスといると、不思議ととても心が安らぐ。ペアとして、ずっと保護しなければならない人間の女。少し前の俺なら、メンドクサイとしか思わなかっただろう。このまま、彼女の香りに包まれて眠りにつきたくなった。

 だが、明日のためにも眠っておきたいのに、一向に眠気がやってこない。

(しょうがない。コアラの姿とはいえ、気になる女の子と抱き合っているんだ。この状態で眠れる男がいたら見てみたい)

 そう思った時、俺は自分の気持ちに愕然とした。

「俺はなんで……うっ、そだろ?  アイリスは、ペア……だから、人間の友達で……。でも……そうか、そう、だったんだ……」


 自分の心にこの言葉が落ちて来た時、なぜか胸のつかえがとれたかのようにすっきりした。そして、今までなんであれほどアイリスが絡むだけで心が乱されたのか、その理由に気が付いた。

 思えば、最初に見た時には可愛いと思い惹かれていたのかもしれない。人間だからと毛嫌いしていたけれど、アイリスの姿を見たくて、その存在を感じたくて、彼女がベンチに来ることを心待ちにしていたのも事実だった。

(異種族の番なんて、馬鹿馬鹿しい絵本の物語か眉唾ものの都市伝説かと思っていたが……)

 この世には、種族を超えて魂が結び付き合い、必ず時が来れば巡り合える一対がいるという。その巡り合いは、幸福な結果を必ずしももたらすわけではない。けれども、惹かれ合うお互いに抗う事は出来ず、自然と結ばれる神の祝福なのだ、と。

(いや、番とか関係なく、いずれ、頑張り屋のアイリスの事を好きになっていただろうな)

 彼女の腕の中から、起こさないようにそろりと身じろぎして膝から降りた。

  自分の気持ちに気づいてしまえば、あとは感情が爆発した。アイリスの眠る姿を見て胸が高鳴り、ぎゅうっと切なくも愛しい気持を感じてたまらなくなる。

 閉じた唇と頬に、そっと指を添える。その指先に、すやすや眠る君の寝息が伝ってきて胸を満たした。くすぐったそうに眉をしかめるその表情すら愛しいと思う。

(今もその幸せそうな表情で見る夢の中には、アクアマリンの男がいるのだろうか……)

 そう思うと、さっきとはくらべものにならないほど、胸が焼き切れそうなほどの苦しさが襲う。アイリスを傷つけ、一時期でも婚約状態だった男を、自慢のクローでずたずたに引き裂いてやりたくなった。




↓注意




 ふとアイリスを見ると、俺が降りたために、パジャマの裾がめくれあがっていた。細く白いお腹とおへそが見えて、呼吸とともにたわわな胸が上下している。

 思わず、ごくりと生唾を飲んだ。

(はっ! ダメだ! ヤバい、ヤバイヤバイヤバイ!)

 側にあったタオルケットで彼女をくるもうとして、コアラの爪でタオルケットを破ってしまった。慌てて人化して、そーっと掛けなおす。

 今の俺は全裸だ。この状態でアイリスが目を覚ましたらヤバイ。

 すぐさま暖炉の炎で乾かしていたジャージを着こむ。チャックの部分が熱っせられすぎて、肌に少し火傷を負ったが構うものか。

 とっくに息子は起きて、ぐいぐいジャージのズボンを押し上げている。本能が彼女を求めてやまないのだ。静まれと言い聞かせても、「パパ、僕と遊んで!」と元気いっぱいに駄々をこねた。

 理性を総動員しても、もう無理だった。

 この施設にはシャワー室がない。かといって、隣の部屋だと、アイリスが起きてきたら見つかる。俺は、まだ雨がざぁざぁ降り続く外に飛び出した。

 かろうじて雨がかからない裏の軒下で、誰もいない事を確認して息子と遊ぶ。一度だけでなく、何度も右手で遊んでやると、満足した息子がやっと鎮まってくれてホッとしたのであった。




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