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独占したい抱っコアラ ②
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俺は、夢見る乙女のように、アイリスにはやく会いたがっているおふくろの肩を掴んだ。おやじが、おふくろに乱暴するなと言ってきたが知ったことではない。
「おふくろ、なんだよ、あの部屋はー!」
「まあ、ジョアンったら。まずは、ただいま、でしょ? 全く、かわいいお嫁さんと帰省したからってうかれちゃって。もう、おっちょこちょいなんだから」
「ん? ああ、ただいま。ってそれどころじゃねぇ。違うから! なんで嫁を連れて帰るとかになってんだ!」
「ジョアン、おかえり。いや、お前が女の子を連れてくるとか初めてじゃないか。それに、年末年始のこの時期に連れて帰るとか、そりゃ、そういう関係かと思うだろ?」
「だから、違うって! アイリスは、ひとりぼっちなんだ。せっかくの年末年始に帰る家がないなんてかわいそうだろだから、俺は、ペアだし誘っただけだ!」
そういえば、おやじたちにアイリスの事情を言ってなかった。ただ、夏季休暇の時に、人間の女の子とペアになって、人間でもいい奴がいるとか、成績がいいとか、頑張り屋とか、人間を見直したとか、かわいい人間の女の子だとか、アイリスを褒めてはいたが。
「あらぁ、違うの? 私たちはてっきり。別に、珍しいことじゃないし、学生結婚でもいいのよ? もしも赤ちゃんが出来たら、あなたたちが学園を卒業できるまで、そっちに引っ越して一緒に暮らしましょうよ。勿論、勉強中は、孫は私たちが面倒を見てあげるし。物件はいくつか目星をつけているのよ?」
「ちーがーう! アイリスは、今は男とかそれどころじゃねぇし!」
「なんだ、結局はジョアンの一方通行なのか?」
「一方通行って、……わけでもないというか、あー、あるというか。いや、だけど!」
「あー、にーちゃんかおがまっかだぜー」
「きっと、かたおもいってやつだぜ?」
「がきんちょは黙ってろ!」
「あの部屋、気に入らなかった?」
「気に入るも何も、なんだよ、あのピンクの部屋は。しかも、ベッドがクイーンサイズになってて、ま、枕が並んで二個て! あんなの、どう考えても新婚夫婦の寝室だろ!」
「なんだお前ら、一緒に寝ないのか? 今が一番楽しい時期だろうに」
「だから、アイリスと俺は、学園でのペアなだけだって!」
「そうなのね、残念。じゃ、あの部屋は、ふたりが結婚してから使いなさいな。あ、でも、使いたかったら使いなさいね。ふふふ」
「だから……」
なるべくリビングには聞こえないようには話しをしたが、俺の単なるペアだという説明は、俺の片思いだということに書き換えられてしまった。図星をつかれて、しどろもどろになったのがいけなかった。もうおやじたち、とくにおふくろの勘違いをどうこうできそうにない。どうにでもなれと、いちいち否定するのをあきらめた。
「とにかく、アイリスにはそういう話は、まだしないでくれ。あいつは、今は勉強を頑張っていてそれどころじゃねぇんだから」
「ええ、勿論よ! ジョアン、そろそろ家に入りたいんだけど。ちょっと邪魔だからどいて!」
おふくろたちが、ルンルンとスキップしそうな勢いでリビングに向かう。この家でおふくろに逆らえる男はいない。おやじが、大きな買い物袋を抱えておふくろの後をついて行くのを見て、はぁっとため息を吐いた。
ちびたちもリビングに走っていき、俺がリビングに入るころには、ちゃっかりアイリスと楽しそうに話をしていた。
「まぁ、じゃあ、アイリスさんはジョアンと、そんな早くから(運命の出会いを果たしていたのね)?」
「はい。わたくしが、故郷を思い出すユーカリの木でいるのを、ずっと見守ってくださっていたんです。ある日、わたくしが転びそうになった時には、すぐに助けていただいて。本当にジョアンには、いつもお世話になっていて、こうして無事に過ごせるのも、彼のおかげなんです」
「ほうほう、あのジョアンがなぁ。やはり(好きな)、ペアが出来ると成長するもんだな。いやはや、アイリスさんこそ、ジョアンを見捨てないでやってくれ」
「そんな。わたくしなんて……ジョアンは、もともとすごく成績が良かったんです」
「にーちゃん、じつは、すげかったんだな」
「学園でもねてばっかりだと思ってたけど、みなおしたぜ!」
アイリスが、あまりにも俺をべた褒めするものだから、しっぽはないというのに、おしり付近がもぞもぞするようなくすぐったい気分になる。だが悪い気はしない。
「アイリス、もっと食えよ」
「もうお腹いっぱいよ? ジョアンのお母様のお料理はどれも美味しいから、ついつい食べ過ぎちゃって」
俺だけが帰省来た時よりも、皆楽しそうだ。何よりも、アイリスが本当に幸せそうに俺に微笑んでくれる。それだけで、心が弾んで充足された気がした。
アイリスを連れてきて、本当に良かったと思った。
「おふくろ、なんだよ、あの部屋はー!」
「まあ、ジョアンったら。まずは、ただいま、でしょ? 全く、かわいいお嫁さんと帰省したからってうかれちゃって。もう、おっちょこちょいなんだから」
「ん? ああ、ただいま。ってそれどころじゃねぇ。違うから! なんで嫁を連れて帰るとかになってんだ!」
「ジョアン、おかえり。いや、お前が女の子を連れてくるとか初めてじゃないか。それに、年末年始のこの時期に連れて帰るとか、そりゃ、そういう関係かと思うだろ?」
「だから、違うって! アイリスは、ひとりぼっちなんだ。せっかくの年末年始に帰る家がないなんてかわいそうだろだから、俺は、ペアだし誘っただけだ!」
そういえば、おやじたちにアイリスの事情を言ってなかった。ただ、夏季休暇の時に、人間の女の子とペアになって、人間でもいい奴がいるとか、成績がいいとか、頑張り屋とか、人間を見直したとか、かわいい人間の女の子だとか、アイリスを褒めてはいたが。
「あらぁ、違うの? 私たちはてっきり。別に、珍しいことじゃないし、学生結婚でもいいのよ? もしも赤ちゃんが出来たら、あなたたちが学園を卒業できるまで、そっちに引っ越して一緒に暮らしましょうよ。勿論、勉強中は、孫は私たちが面倒を見てあげるし。物件はいくつか目星をつけているのよ?」
「ちーがーう! アイリスは、今は男とかそれどころじゃねぇし!」
「なんだ、結局はジョアンの一方通行なのか?」
「一方通行って、……わけでもないというか、あー、あるというか。いや、だけど!」
「あー、にーちゃんかおがまっかだぜー」
「きっと、かたおもいってやつだぜ?」
「がきんちょは黙ってろ!」
「あの部屋、気に入らなかった?」
「気に入るも何も、なんだよ、あのピンクの部屋は。しかも、ベッドがクイーンサイズになってて、ま、枕が並んで二個て! あんなの、どう考えても新婚夫婦の寝室だろ!」
「なんだお前ら、一緒に寝ないのか? 今が一番楽しい時期だろうに」
「だから、アイリスと俺は、学園でのペアなだけだって!」
「そうなのね、残念。じゃ、あの部屋は、ふたりが結婚してから使いなさいな。あ、でも、使いたかったら使いなさいね。ふふふ」
「だから……」
なるべくリビングには聞こえないようには話しをしたが、俺の単なるペアだという説明は、俺の片思いだということに書き換えられてしまった。図星をつかれて、しどろもどろになったのがいけなかった。もうおやじたち、とくにおふくろの勘違いをどうこうできそうにない。どうにでもなれと、いちいち否定するのをあきらめた。
「とにかく、アイリスにはそういう話は、まだしないでくれ。あいつは、今は勉強を頑張っていてそれどころじゃねぇんだから」
「ええ、勿論よ! ジョアン、そろそろ家に入りたいんだけど。ちょっと邪魔だからどいて!」
おふくろたちが、ルンルンとスキップしそうな勢いでリビングに向かう。この家でおふくろに逆らえる男はいない。おやじが、大きな買い物袋を抱えておふくろの後をついて行くのを見て、はぁっとため息を吐いた。
ちびたちもリビングに走っていき、俺がリビングに入るころには、ちゃっかりアイリスと楽しそうに話をしていた。
「まぁ、じゃあ、アイリスさんはジョアンと、そんな早くから(運命の出会いを果たしていたのね)?」
「はい。わたくしが、故郷を思い出すユーカリの木でいるのを、ずっと見守ってくださっていたんです。ある日、わたくしが転びそうになった時には、すぐに助けていただいて。本当にジョアンには、いつもお世話になっていて、こうして無事に過ごせるのも、彼のおかげなんです」
「ほうほう、あのジョアンがなぁ。やはり(好きな)、ペアが出来ると成長するもんだな。いやはや、アイリスさんこそ、ジョアンを見捨てないでやってくれ」
「そんな。わたくしなんて……ジョアンは、もともとすごく成績が良かったんです」
「にーちゃん、じつは、すげかったんだな」
「学園でもねてばっかりだと思ってたけど、みなおしたぜ!」
アイリスが、あまりにも俺をべた褒めするものだから、しっぽはないというのに、おしり付近がもぞもぞするようなくすぐったい気分になる。だが悪い気はしない。
「アイリス、もっと食えよ」
「もうお腹いっぱいよ? ジョアンのお母様のお料理はどれも美味しいから、ついつい食べ過ぎちゃって」
俺だけが帰省来た時よりも、皆楽しそうだ。何よりも、アイリスが本当に幸せそうに俺に微笑んでくれる。それだけで、心が弾んで充足された気がした。
アイリスを連れてきて、本当に良かったと思った。
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