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独占したい抱っコアラ ①
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アイリスが、まさか年末年始を俺と過ごしてくれるとは、思っていなかった。夏季休暇の時も誘おうとしたが、どうしてもしなければならないことがあると断られた。
アイリスは、学園を卒業しても獣人国にいたいらしい。実家から絶縁されているし、ぽつりぽつり話してくれる内容を総合すると、どうやら家族と思った以上にうまくいってなかったようだ。
リーモラさんから、アイリスの足のケガが、実は妹に階段から突き落とされて出来たものだと聞いた時、その妹とやらにクローをお見舞いしたくなった。いくら小さな頃の過ちであっても、俺の花嫁にケガをさせたんだ。その罪は万死に値する。
俺は、いずれ報復する予定の殺戮リストのトップに記した、アイリスの婚約者のすぐ下に妹を書き込んだ。父親や母親も同様に名前は知らないが連ねてある。
1、アクアマリンのクズ男(地獄に落としてやる)
2、殺人未遂の妹(天罰をくらえ)
3、虐待両親(実の母親は除く )
4、アイリスを狙う男ども(アイリスがかわいいからってぽーっと見つめるな!)
5、アイリスをいじめた人間たち(家の使用人他。手あたり次第)
6、アイリスに抱き着いているマニーデなどの女子(あいつに触れていいのは俺だけなのに)
7、アイリスを未だにいじめようとする学生3人(俺やゴーリンたちが絶対に手を出させないが)
こんな感じだ。子供の楽しみにしていた婚約を解消させるだけでも驚きなのに、除籍までするとは。なんとも人間というのは恐ろしい生き物だ。ますます人間が嫌いになる。
とはいえ、実際にすると俺のアイリスは悲しむ。そうなると、アイリスを泣かせた俺が一位になるというわけのわからない状況になるからするつもりはない。万が一やったとしても、アイリスには絶対にバレないようにするが。
アイリスがいなければ、彼女が人の何倍も頑張っていなければ、俺もだが学園の皆も人間が嫌いなままだっただろう。
これまで、人間が留学してきたことはあった。現に、少し前まで人間が在籍していたのだから。だがそいつは、獣人を、もの珍しいペットか何かのように見ていたし、ほとんど口を利かなかった。獣人国に短期間でも在籍していたという箔が欲しかっただけなのがありありとわかっていたから、俺達もそいつらには関わらなかった。
だが、アイリスは違った。俺たちを同等以上の存在として、俺達にとって当たり前の事も感心して称讃くれる。勉強が苦手でも絶対に馬鹿にしない。自分すら気づいていない、ひとりひとりのいいところを発見するのが得意で、ごく自然に心から褒めるのだ。そんな彼女だから、面倒見がいいウォンでも心からアイリスを放っておけなかったのだろう。
今では、学園一の才媛として、色んな奴に勉強を教えてと、人間を遠巻きにしてひ弱で卑劣な種族だと見下していた獣人たちから慕われている。
彼女の側は居心地がいい。だから、たとえ勉強が出来なくても、自然と彼女の側には誰かしらが寄っていっただろうなと思う。
(まただ。また、あの指輪を気にしている)
ちびたちが去ったあと、手の中の指輪を触っているのがわかる。今も、クズ男を思い出しているのだろう。あれからまだ一年も経っていないからしょうがないとは思うが、そろそろ忘れちまえとじりじりする。
(俺のほうが、アイリスと一緒にいるのに)
元婚約者とは会ったのは片手でもあまるほどだという。しかも、家で辛い目に逢った時にだってそいつはいなかった。
(俺なら、辛い目にすらあわせねぇのに)
「アイリス、ちびたちがおやじたちを探してくるだろうから、先に客室に案内してやる」
「ええ、ありがとう。お邪魔します」
胸をかきむしりたいほどやきもきする気持ちを押さえて、アイリスを客室に案内した。アイリスが心地よく滞在できるように、おふくろが準備しているはずだ。安心してドアを開ける。
「……!」
「ジョアン? どうしたの?」
アイリスがにこにこその部屋を見ようとしたが、俺はバタンとドアを閉めた。
(ななな、なんだあれ。なんだあれはー! おふくろー!)
俺は、ありえない部屋の模様を思い出す。恥ずかしすぎて、ここにはいないおふくろになんてことをするんだと心の中で叫んだ。
「いや、いつもはお客さんはここに案内するんだが、どうやら違うみたいだ」
「そうなの?」
「そうだ」
幸い見られていないようだ。きょとんとするアイリスの背中を、やや強く押してリビングに向かう。そこは、俺の記憶通りの普通のリビングだったからほっとしてソファに座らせる。
(あんな部屋、アイリスがいる間は封印だ!)
「ただいまー」
「ただいま。ちょっと足らないものを買いに行って遅れちゃったわね」
「ただいまだぜー」
「たっだいまー」
「アイリスは、ちょーっとここで待ってろ」
「ええ」
おやじたちが帰ってきたようだ。アイリスには、彼女の好きなはちみつティーを出した。おふくろが作っていたクッキーも出して、にぎやかすぎるあいつらの元に向かった。
アイリスは、学園を卒業しても獣人国にいたいらしい。実家から絶縁されているし、ぽつりぽつり話してくれる内容を総合すると、どうやら家族と思った以上にうまくいってなかったようだ。
リーモラさんから、アイリスの足のケガが、実は妹に階段から突き落とされて出来たものだと聞いた時、その妹とやらにクローをお見舞いしたくなった。いくら小さな頃の過ちであっても、俺の花嫁にケガをさせたんだ。その罪は万死に値する。
俺は、いずれ報復する予定の殺戮リストのトップに記した、アイリスの婚約者のすぐ下に妹を書き込んだ。父親や母親も同様に名前は知らないが連ねてある。
1、アクアマリンのクズ男(地獄に落としてやる)
2、殺人未遂の妹(天罰をくらえ)
3、虐待両親(実の母親は除く )
4、アイリスを狙う男ども(アイリスがかわいいからってぽーっと見つめるな!)
5、アイリスをいじめた人間たち(家の使用人他。手あたり次第)
6、アイリスに抱き着いているマニーデなどの女子(あいつに触れていいのは俺だけなのに)
7、アイリスを未だにいじめようとする学生3人(俺やゴーリンたちが絶対に手を出させないが)
こんな感じだ。子供の楽しみにしていた婚約を解消させるだけでも驚きなのに、除籍までするとは。なんとも人間というのは恐ろしい生き物だ。ますます人間が嫌いになる。
とはいえ、実際にすると俺のアイリスは悲しむ。そうなると、アイリスを泣かせた俺が一位になるというわけのわからない状況になるからするつもりはない。万が一やったとしても、アイリスには絶対にバレないようにするが。
アイリスがいなければ、彼女が人の何倍も頑張っていなければ、俺もだが学園の皆も人間が嫌いなままだっただろう。
これまで、人間が留学してきたことはあった。現に、少し前まで人間が在籍していたのだから。だがそいつは、獣人を、もの珍しいペットか何かのように見ていたし、ほとんど口を利かなかった。獣人国に短期間でも在籍していたという箔が欲しかっただけなのがありありとわかっていたから、俺達もそいつらには関わらなかった。
だが、アイリスは違った。俺たちを同等以上の存在として、俺達にとって当たり前の事も感心して称讃くれる。勉強が苦手でも絶対に馬鹿にしない。自分すら気づいていない、ひとりひとりのいいところを発見するのが得意で、ごく自然に心から褒めるのだ。そんな彼女だから、面倒見がいいウォンでも心からアイリスを放っておけなかったのだろう。
今では、学園一の才媛として、色んな奴に勉強を教えてと、人間を遠巻きにしてひ弱で卑劣な種族だと見下していた獣人たちから慕われている。
彼女の側は居心地がいい。だから、たとえ勉強が出来なくても、自然と彼女の側には誰かしらが寄っていっただろうなと思う。
(まただ。また、あの指輪を気にしている)
ちびたちが去ったあと、手の中の指輪を触っているのがわかる。今も、クズ男を思い出しているのだろう。あれからまだ一年も経っていないからしょうがないとは思うが、そろそろ忘れちまえとじりじりする。
(俺のほうが、アイリスと一緒にいるのに)
元婚約者とは会ったのは片手でもあまるほどだという。しかも、家で辛い目に逢った時にだってそいつはいなかった。
(俺なら、辛い目にすらあわせねぇのに)
「アイリス、ちびたちがおやじたちを探してくるだろうから、先に客室に案内してやる」
「ええ、ありがとう。お邪魔します」
胸をかきむしりたいほどやきもきする気持ちを押さえて、アイリスを客室に案内した。アイリスが心地よく滞在できるように、おふくろが準備しているはずだ。安心してドアを開ける。
「……!」
「ジョアン? どうしたの?」
アイリスがにこにこその部屋を見ようとしたが、俺はバタンとドアを閉めた。
(ななな、なんだあれ。なんだあれはー! おふくろー!)
俺は、ありえない部屋の模様を思い出す。恥ずかしすぎて、ここにはいないおふくろになんてことをするんだと心の中で叫んだ。
「いや、いつもはお客さんはここに案内するんだが、どうやら違うみたいだ」
「そうなの?」
「そうだ」
幸い見られていないようだ。きょとんとするアイリスの背中を、やや強く押してリビングに向かう。そこは、俺の記憶通りの普通のリビングだったからほっとしてソファに座らせる。
(あんな部屋、アイリスがいる間は封印だ!)
「ただいまー」
「ただいま。ちょっと足らないものを買いに行って遅れちゃったわね」
「ただいまだぜー」
「たっだいまー」
「アイリスは、ちょーっとここで待ってろ」
「ええ」
おやじたちが帰ってきたようだ。アイリスには、彼女の好きなはちみつティーを出した。おふくろが作っていたクッキーも出して、にぎやかすぎるあいつらの元に向かった。
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