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8 会いたくて、でも会うなんて出来ないと思っていたのに R15
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信じられない思いで、池のほとりの彼の姿を見ている事しかできなかった。
ぽた、ぽた
滴り落ちる水滴が、水面に吸い込まれていく。髪の先から流れたそれが、冷えた体表を伝う温度すらわからないほど、私の意識は彼だけに囚われていた。
月を夜の雲が隠して、光を遮る。
もっと、はっきり彼の姿を見たくて、ほんの少し前のめりになった時、私は自分が一糸まとわぬ姿だった事にようやく気付いた。
そして、そんな私の体を凝視している視線に気づくと、処理しきれないほどの羞恥が私を襲う。
「や、あ……見ないで……」
魔法で家まで転移できる事すら思いつかないほど、頭も心もパニクった。ただ、ずっと見て来た彼に、こんな姿を見せてしまった事が恥ずかしくてたまらない。
乱れた思考は、そのまま体の動きをも混乱させた。歩く事すら難しくて、普段何気ない動きをしているその動作が全くできない。
くるりと彼から逃れるように体を反転させるのもやっとだ。一歩踏み出すごとに、水の重さと自分の動きで生じる流れが、私のバランスを崩し、そして転げさせようと意地悪をしてくる。
バシャバシャと、彼が追いかけてくるような音と気配がする。必死に距離を取ろうとしているのに、無情にもその音が徐々に近づいて来た。
来ないで欲しい。でも、側に来て欲しい。
相反する感情の渦が彼のせいでどんどん酷く激しくなる。どうにかなってしまいそうだと思った時、私は紺色の分厚い布で覆われた。
ぎゅっと、逞しく熱い腕が私の体を閉じ込める。
まるで、どこにも逃がさない、と伝えて来るような力強さと、心地よい優しい温もりで包まれた。
「失礼」
「え? あ? きゃぁ!」
画面越しに聞いていた、腰の奥にびりびりとクる低い声にうっとりしてしまう。
私の頭も心も体も混乱したままだ。ただ、なすがまま彼の腕に捕らえられたまま抱き上げられた。
かねてから思い描いていた通り、彼は紳士的に接してくれるようだ。私は安心しきって、体を筋骨隆隆の彼に預けてしまう。
本性のマメハチドリも警戒心がそれほどないせいか、私はあまり他人を疑わない。だから、皆に放っておけない、と魔王だけど手のかかる子供の様に過保護に扱われるのだ。
きっと彼は大丈夫。だって、シエナマーガたちも彼を認めているんだもの。
前世でも男を見る目が無かったと自覚をしている。でも、彼の事は例え周りがあいつはやめとけって言っても、好きになったと思う。とはいえ、彼が酷い男なら、彼らは許してくれていないだろうけれども。
唐突の出来事に、考えがあっち行き、こっち行きして、迷路の入り口をぐるぐる回っているかのように、全く関係ない事まで思い浮かんでしまう。
やっと置いてけぼりだった気持ちが近くまで追いついて来た。冷たい池の中にいたずぶ濡れの私の肌から、彼の服にそれらが移っていく。
「あの、服が、貴方が濡れて……あの、あの……どうしたら……」
「かまわない。それよりも、体がこんなに冷え切っているじゃないか。服はどこだ?」
「あっちの小さな岩の上に置いて……」
「わかった。しっかり掴まれ」
「は、はい」
目を白黒させているうちに、言われるがまま彼の首に腕を回してしっかり抱き着くと、びくりと一瞬彼の体が震えた。
パンパンに張り詰められた首から肩、そして胸板が盛り上がり硬くなる。
恐る恐る見上げると、一瞬、怖いくらいの真剣な視線で私を見つめる彼の顔が至近距離にあったため、居たたまれなくなり慌てて俯いた。
夢じゃないよね……? どうして彼がここに? でも、……嬉しい。幸せすぎてどうしたらいいの? ああ、このままここで消えてしまってもいい……
彼に私という存在を初めて認識してもらえた。それだけでも浮き立つほど心が弾む。身の程知らずにも、言葉を交わして手を握ってもらえたら、なんて願っていたけれど、お姫様だっこをしてもらっているなんて、一生分の幸運を使い果たしてしまったのかもしれない。
きっと、シカジュラウたちは、彼がこの近くにいる事を知っていたのだろう。
かねてから、私がこの人に、秘めた恋心を抱いているのがモロバレだった。
散々、会いに行け、など言われていたように、彼らは複雑な感情を抱えつつも、私のこの恋を応援してくれているみたいだった。
だけど、単なるマメハチドリで彼の敵である私なんかが会いに行っても、拒否されフラれるのが怖かった。見ているだけでいいなんて、寂しく悲しい想いを抱えながら強がりを言っていただけだ。
最終ダンジョンに勇者パーティが入ったから、この近辺にはいただろうけど、私は、あえて彼を探す事なんてしなかった。
あと数日で消えてしまうだろうこの時に、彼を見れば見るほど心が悲鳴をあげていた。本当は、もっと、もっと見ていたいし、会いたくてたまらなかった。
際限なく溢れ出て来る私の片想いは、自分のわがままな感情を欲深く大きくさせてしまう。厄介者以外のなにものでもない、この気持ちから逃げていたにすぎない。
そうしないと、この世界を消滅させてでも、勇者と戦う事を放棄して、彼の側にいる事を望んでしまう未来が見えていたから。
私が、勇者の手によって消滅させられる未来を変えるために、最後の瞬間まで諦めない、諦めさせたくないというシエナマーガたちも、勇者との戦いが避けられないものとして心の隅で覚悟をしているのかもしれない。
終焉に向かっているこのRPGの世界で抗えない未来になった時、せめて私が悔いのないようにこうして連れてきてくれたのだろう。
あの子たちの気持ちが嬉しくて涙が出そうだ。お節介だとも思う。
あの子たちに感謝しつつ、安心感を与えてくれる彼に巻き付けた腕に力を入れて、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、大きな胸板に頬を寄せた。
勇気がなくて口に出せない、好きという思いが少しでも届くといいなぁ……
ずぶ濡れの私を抱っこしているから、彼の騎士服もびしょ濡れだ。べったり張り付いた服ごしに、大きな筋肉の塊のカーブがはっきり模っていた。
夢のような至福のひと時は、残念ながらすぐに終わった。
私を抱えたまま、軽々と池から上がり、服を置いた岩近くに彼が移動する。そして、そうっと壊れ物のようにとても優しく地面に立たせてくれた。
「あー、濡れたままだと服を着れないだろうから乾燥させる。目が乾くから閉じていて欲しい」
「あ……は、い……。ありがとうございます」
そう言えば、私も魔法が使えたのだったと思い出したのは、彼の風魔法で全身撫でられた時だ。
彼の魔法は、とても力強い。確固たる信念でひたすら突き進もうとする彼の実直な性格をそのまま魔法に乗せているかのよう。
温かな風を、こうして完璧にコントロールできるなんて、賢者のようにとてつもない才能を秘めている。ここまで魔法を扱えるようになるには、相当の鍛錬が必要だっただろう。
こうして彼の一部を知り触れる事で、ますます理想を具現化したかのような彼にのめり込んでしまう自分がいた。
ほどよい風が、身体中を撫でるため少しくすぐったい。
「ん、……はぁん、気持ちいい……ん……」
思わず吐息が漏れていたが、私はそれに気づかず素晴らしい風魔法に身を任せていた。もう少し力が強かったらマッサージみたいだと思った。
「……あー……、俺は後ろを向いているから服を」
彼が風魔法を止めた。すっかり水滴のひとつさえなくなった、さらっとした体を見下ろしていると、私に声をかける事に少し抵抗があるかのように小さな声でそう言われた。
自分の体は今はマントに包まれたままだ。マントも乾きすぎてごわごわになっているなんて事もなく、ふんわり柔らかな肌触りだ。視線を彼に向けると、彼は後ろを向いていた。
背筋がしゅっと伸びていて、広い背中は見事な逆三角形だ。張り詰めた肩甲骨あたりから、きゅっと引き締まったウエストラインも鍛え上げられていて、がっしりした太い丸太のようだ。
まじまじと、画面のカメラワークではなく、自分の思うがままの視点移動で後ろ姿を堪能してしまっていた。
「……? どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません!」
いけない……。これじゃセクハラじゃないの……! 私のバカ!
私は慌ててワンピースを手にとり、うまく動かない手をなんとか動かしたのだった。
ぽた、ぽた
滴り落ちる水滴が、水面に吸い込まれていく。髪の先から流れたそれが、冷えた体表を伝う温度すらわからないほど、私の意識は彼だけに囚われていた。
月を夜の雲が隠して、光を遮る。
もっと、はっきり彼の姿を見たくて、ほんの少し前のめりになった時、私は自分が一糸まとわぬ姿だった事にようやく気付いた。
そして、そんな私の体を凝視している視線に気づくと、処理しきれないほどの羞恥が私を襲う。
「や、あ……見ないで……」
魔法で家まで転移できる事すら思いつかないほど、頭も心もパニクった。ただ、ずっと見て来た彼に、こんな姿を見せてしまった事が恥ずかしくてたまらない。
乱れた思考は、そのまま体の動きをも混乱させた。歩く事すら難しくて、普段何気ない動きをしているその動作が全くできない。
くるりと彼から逃れるように体を反転させるのもやっとだ。一歩踏み出すごとに、水の重さと自分の動きで生じる流れが、私のバランスを崩し、そして転げさせようと意地悪をしてくる。
バシャバシャと、彼が追いかけてくるような音と気配がする。必死に距離を取ろうとしているのに、無情にもその音が徐々に近づいて来た。
来ないで欲しい。でも、側に来て欲しい。
相反する感情の渦が彼のせいでどんどん酷く激しくなる。どうにかなってしまいそうだと思った時、私は紺色の分厚い布で覆われた。
ぎゅっと、逞しく熱い腕が私の体を閉じ込める。
まるで、どこにも逃がさない、と伝えて来るような力強さと、心地よい優しい温もりで包まれた。
「失礼」
「え? あ? きゃぁ!」
画面越しに聞いていた、腰の奥にびりびりとクる低い声にうっとりしてしまう。
私の頭も心も体も混乱したままだ。ただ、なすがまま彼の腕に捕らえられたまま抱き上げられた。
かねてから思い描いていた通り、彼は紳士的に接してくれるようだ。私は安心しきって、体を筋骨隆隆の彼に預けてしまう。
本性のマメハチドリも警戒心がそれほどないせいか、私はあまり他人を疑わない。だから、皆に放っておけない、と魔王だけど手のかかる子供の様に過保護に扱われるのだ。
きっと彼は大丈夫。だって、シエナマーガたちも彼を認めているんだもの。
前世でも男を見る目が無かったと自覚をしている。でも、彼の事は例え周りがあいつはやめとけって言っても、好きになったと思う。とはいえ、彼が酷い男なら、彼らは許してくれていないだろうけれども。
唐突の出来事に、考えがあっち行き、こっち行きして、迷路の入り口をぐるぐる回っているかのように、全く関係ない事まで思い浮かんでしまう。
やっと置いてけぼりだった気持ちが近くまで追いついて来た。冷たい池の中にいたずぶ濡れの私の肌から、彼の服にそれらが移っていく。
「あの、服が、貴方が濡れて……あの、あの……どうしたら……」
「かまわない。それよりも、体がこんなに冷え切っているじゃないか。服はどこだ?」
「あっちの小さな岩の上に置いて……」
「わかった。しっかり掴まれ」
「は、はい」
目を白黒させているうちに、言われるがまま彼の首に腕を回してしっかり抱き着くと、びくりと一瞬彼の体が震えた。
パンパンに張り詰められた首から肩、そして胸板が盛り上がり硬くなる。
恐る恐る見上げると、一瞬、怖いくらいの真剣な視線で私を見つめる彼の顔が至近距離にあったため、居たたまれなくなり慌てて俯いた。
夢じゃないよね……? どうして彼がここに? でも、……嬉しい。幸せすぎてどうしたらいいの? ああ、このままここで消えてしまってもいい……
彼に私という存在を初めて認識してもらえた。それだけでも浮き立つほど心が弾む。身の程知らずにも、言葉を交わして手を握ってもらえたら、なんて願っていたけれど、お姫様だっこをしてもらっているなんて、一生分の幸運を使い果たしてしまったのかもしれない。
きっと、シカジュラウたちは、彼がこの近くにいる事を知っていたのだろう。
かねてから、私がこの人に、秘めた恋心を抱いているのがモロバレだった。
散々、会いに行け、など言われていたように、彼らは複雑な感情を抱えつつも、私のこの恋を応援してくれているみたいだった。
だけど、単なるマメハチドリで彼の敵である私なんかが会いに行っても、拒否されフラれるのが怖かった。見ているだけでいいなんて、寂しく悲しい想いを抱えながら強がりを言っていただけだ。
最終ダンジョンに勇者パーティが入ったから、この近辺にはいただろうけど、私は、あえて彼を探す事なんてしなかった。
あと数日で消えてしまうだろうこの時に、彼を見れば見るほど心が悲鳴をあげていた。本当は、もっと、もっと見ていたいし、会いたくてたまらなかった。
際限なく溢れ出て来る私の片想いは、自分のわがままな感情を欲深く大きくさせてしまう。厄介者以外のなにものでもない、この気持ちから逃げていたにすぎない。
そうしないと、この世界を消滅させてでも、勇者と戦う事を放棄して、彼の側にいる事を望んでしまう未来が見えていたから。
私が、勇者の手によって消滅させられる未来を変えるために、最後の瞬間まで諦めない、諦めさせたくないというシエナマーガたちも、勇者との戦いが避けられないものとして心の隅で覚悟をしているのかもしれない。
終焉に向かっているこのRPGの世界で抗えない未来になった時、せめて私が悔いのないようにこうして連れてきてくれたのだろう。
あの子たちの気持ちが嬉しくて涙が出そうだ。お節介だとも思う。
あの子たちに感謝しつつ、安心感を与えてくれる彼に巻き付けた腕に力を入れて、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、大きな胸板に頬を寄せた。
勇気がなくて口に出せない、好きという思いが少しでも届くといいなぁ……
ずぶ濡れの私を抱っこしているから、彼の騎士服もびしょ濡れだ。べったり張り付いた服ごしに、大きな筋肉の塊のカーブがはっきり模っていた。
夢のような至福のひと時は、残念ながらすぐに終わった。
私を抱えたまま、軽々と池から上がり、服を置いた岩近くに彼が移動する。そして、そうっと壊れ物のようにとても優しく地面に立たせてくれた。
「あー、濡れたままだと服を着れないだろうから乾燥させる。目が乾くから閉じていて欲しい」
「あ……は、い……。ありがとうございます」
そう言えば、私も魔法が使えたのだったと思い出したのは、彼の風魔法で全身撫でられた時だ。
彼の魔法は、とても力強い。確固たる信念でひたすら突き進もうとする彼の実直な性格をそのまま魔法に乗せているかのよう。
温かな風を、こうして完璧にコントロールできるなんて、賢者のようにとてつもない才能を秘めている。ここまで魔法を扱えるようになるには、相当の鍛錬が必要だっただろう。
こうして彼の一部を知り触れる事で、ますます理想を具現化したかのような彼にのめり込んでしまう自分がいた。
ほどよい風が、身体中を撫でるため少しくすぐったい。
「ん、……はぁん、気持ちいい……ん……」
思わず吐息が漏れていたが、私はそれに気づかず素晴らしい風魔法に身を任せていた。もう少し力が強かったらマッサージみたいだと思った。
「……あー……、俺は後ろを向いているから服を」
彼が風魔法を止めた。すっかり水滴のひとつさえなくなった、さらっとした体を見下ろしていると、私に声をかける事に少し抵抗があるかのように小さな声でそう言われた。
自分の体は今はマントに包まれたままだ。マントも乾きすぎてごわごわになっているなんて事もなく、ふんわり柔らかな肌触りだ。視線を彼に向けると、彼は後ろを向いていた。
背筋がしゅっと伸びていて、広い背中は見事な逆三角形だ。張り詰めた肩甲骨あたりから、きゅっと引き締まったウエストラインも鍛え上げられていて、がっしりした太い丸太のようだ。
まじまじと、画面のカメラワークではなく、自分の思うがままの視点移動で後ろ姿を堪能してしまっていた。
「……? どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません!」
いけない……。これじゃセクハラじゃないの……! 私のバカ!
私は慌ててワンピースを手にとり、うまく動かない手をなんとか動かしたのだった。
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