29 / 41
27 先輩の結婚式は、多国籍ペンギンがいっぱい。/ファーストキスは泣き笑いと共に
しおりを挟む
イワトビ国のフェザー王子が婚約者を伴い、ゼファーに言葉をかけてきた。話に聞いていたプリマベーラ侯爵令嬢は、確かに猫かわいがりしたくなるほど華奢で可憐で愛らしい。
今日は、先輩とジスクール王子の結婚式だ。
この国の人たちは、妻への横恋慕などを恐れて大々的に挙式はせず、身内だけで食事会をする程度にとどめているそうだ。
だが、次期王たるジスクール王子のような立場の人物はそうも言ってはいられない。
今日の良き日、空は快晴で、この国の人々もゼクスやシビルのお母様たちの故郷であるコウテイ国やアデリー国からの来賓も過ごしやすい気温だ。まるで天からの祝福が降り注いでいるかのような光の中、純白のウェディングドレスを身に纏った先輩はとても綺麗で、幸せそう。
ゼクスは主役のジスクール王子の身内だから王族の席にいるし、シビルは騎士団長として警護の総責任者であるため勤務中だ。だから、私の側にいる婚約者はゼファーだけである。
神託の乙女である先輩に秋波を送る各国の男性たちの視線を、ジスクールは番犬のように睨みつけながらも、先輩とようやく結婚出来た事で嬉しそうにしている。今この瞬間、きっと彼が一番幸せかもしれない。
会場は、それほどの大人数を収容できそうな場所ではないため、沢山の招待客をどうするのか首をかしげていたが、すぐにその疑問が解消する。
なんと、皆さん本性に戻ったのだ。
なるほど、質量が少なくなれば大勢の人(ペンギン)たちが入る事が出来るし、人化状態ではわからない出身国も一目瞭然でわかるというもの。本来なら、異性が集まる大勢の中で本性になるなど考えられない。
けれど、今日は無礼講であり、本性をこうして表す事で、国同士の繋がりの親密さを表すという政治的な目的もある特殊な例外行事みたい。
ただ、私には目の前で本性になったフェザー王子とその側近の人たちの違いがわからない。オレンジのくちばしに、頭頂部はツンツンしていて、黄色の眉毛(?)がきりっとした目元を強調している。
「ぴぃ、きゅいっきゅっ! きゅきゅっ!」
「きゅぅ~ん……ぴぃ」
目の前で、イワトビペンギンの姿で胸を張り、ドヤァって感じで婚約者を紹介しているフェザーの隣にいるプリマベーラは一回り小さいし、本性になってもイワトビペンギンのキリッとしたイメージと違い、愛らしい顔つきだからすぐわかる。プリマベーラが照れているみたいに、小さな羽で顔を隠そうとしているのを見て、あまりの可愛らしさに思わず連れ去りたくなった。
基本的に鳴き声だから、私には何をいっているのかさっぱりわからない。
通訳はゼファーが側でしてくれるから問題ないんだけど、神託の乙女である私にいろんなペンギンたちがあいさつしにヨチヨチ歩きで来てくれる。
なんてかわいいの、と心の中ではしゃぐものの、人化すれば65才のおじさんだと聞いたりするとテンションが一気に下がってしまう。
きゅいきゅい、きゅっきゅ、ぴぃぴぃ、ぷわぁ、ぷわー
うん、一生懸命考えても何て言っているのかわからない。本日はお日柄も良く、うんたらかんたらといったお祝いと挨拶の言葉らしい。
あとは、時々ゼファーがニコニコしながら睨みつけているから、その人たちは、私にナンパして来ているのかな? なんて思った。
※※※※
あと1か月ほどで18才になる。
これまでの事情を聞き、そんなに長い間精神を病んで治療をしていたのかとびっくりした。
なんというか、あの会議の日から今日までの私も私なんだけれども、でも、なんだか私じゃないみたいな。自分で自分がおかしいなんて少しも思っていなかったから。
こちらに来てすぐの、ゼクスたちと館で過ごしていた幸せな日々は鮮明に覚えている。その延長みたいな感じで、私はずっと今日まで館で暮らしているといった感覚だ。
義母の事とかも分かっているんだけど、館でずっと過ごしていたら矛盾だらけの状況なのに義母たちもいるんだって認識で、今から思い返すとおかしな事だらけだった。
『カレン、あの時は急に色々一気に言ってすまなかった。もっと君の傷ついた心の事を配慮をすべきだったのは私だ。許さなくていい。だが君に、どうしても伝えておかなくてはならない事があるんだ……』
何度もそんな風に頭を下げるパーシィ様に、少しずつ今回の召喚についての真実を聞いた。
記憶に残るそれらの時には、必ず彼らが私の側にいてくれた。動揺したし、悲しかったし辛かった。だけど、彼らがいてくれるから、辛かった日々をリセットしてやり直しをするかのように、私の心は比較的穏やかで徐々に受け入れる事ができたのだった。
義母まで側に寄せ付けなかったと聞いたときにはそりゃもうビックリした。この世界で、本当のおかあさんみたいに大好きな人なのに。どれ程心配かけて泣かせたんだろう。
精神面を子供からやり直して中学生くらいまで成長した頃に、義母や義姉、先輩やパーシィ様に関わる様々な出来事が、ようやく、はっきり理解できた。そして、抱きついて号泣しながら謝罪合戦をしたのである。
特に、1年ほど会えていなかった義母はすっかり痩せていて、この世界でのおかあさんにすごく心配をかけてしまった事に悲しくなった。
なんというか、半透明のゼリー状の何かの中にいるみたいだった頃の私は、会っても彼女たちにどう反応していたのか、古い記憶ほどほとんど思い出せない。
ジスクールが、こんな悲劇は二度と繰り返したくないと、先輩に熱く語っていたそうで、頭の固い重鎮たちや王様に、私にも先輩と同じ権利をって直談判してくれたみたい。だからあっという間に、3人の夫を1日も早く作れみたいな、あのときの会議で決まった事が白紙になったそうだ。
先輩にデレデレしているジスクールしか見たことなかったから意外にも思えたけど、先輩が言うには物凄く有能で人望がある人みたい。ちょっと見直しちゃった。
あと、これは異例の事なんだけれど、神託の乙女としての権利を獲得した私に、王様や重鎮たちは、複数の夫を受け入れる事が、どれほどの覚悟かわからなかったと公の場で謝罪された。中には、デリカシーがなさすぎると愛する奥様に叱られたおじさんたちもいたみたい。
パーシィ様はじめ、神官たちからも地面に頭がめり込んでしまうんじゃないかと思うほど何度も謝られて困った。
神託の言語は、すんごく複雑で難しいらしい。それこそ、ペテルギウスの消滅の正確な時間を計算するくらい、とんでもない頭脳と計算や理解力を必要とするみたい。
私も、かなり傷ついたけれど、どの立場の人たちもわざとした事じゃないから、心配されたけれど謝罪を受け入れたのである。それ以降、彼らとも関係は良好だ。
ただ、受け入れる際に、女性に対してもっと個人の人格を尊重して欲しいと願った。圧倒的に強い立場の男性に逆らえない女性も多いだろう。私みたいに辛い思いをしている女性もいるはずなのだから。
パーシィ様も、女性の地位があまりにも低い事に心を痛めていた。
パーシィ様や先輩、そして私を中心に女性の地位を少しでも向上できればいいと少しずつ運動を始めている。
もう二度と、あの時の私みたいに、受け入れざるを得ない状況や心理に陥る女性がひとりもいない世界が来るよう、義母たちも協力してくれている。
それはきっと、長年この国を支えて来た価値観そのものをがらりと変えてしまう事で、容易くはないだろう。だけど、次の世代やその次、そしていつか、元の世界もまだ途上だったけれど、女性の地位が確立されればいいと思う。
※※※※
賑やかな挙式に披露宴が終わった後、ゼファーとともに家に帰った。私は未だに結婚式の様子に夢心地で、彼に促されるまま家に入る。
「はぁ……先輩きれいだったなあ……」
「カレンも異界のああいうドレスを着たいですか?」
「うん。大勢の前とかじゃなくてもいいの。やっぱり憧れちゃうから」
「では、殿下や騎士団長と相談してから着る機会を作りましょうね」
ゼファーが私のこめかみにキスをする。私はこめかみだけじゃなくて、胸もくすぐったくなって、彼にお返しとばかりにキスを返した。
ゼファーが何度も何度もハヤブサでタンデムツーリングをしてくれるうちに、気持ちも癒えていったこともあり、異性としてすっかり大好きになってしまった。
ゼクスにも、シビルにも、そして彼にも恋をしているって気づいたのがついこの間のように感じる。
その時、夫はひとりでいいからって言われたのだけれども、私は3人のうち、誰を選ぶなんてできなかった。こんな多情な浮気っぽいこの気持ちでも、彼らはそれぞれを愛してくれるならそれでいいって言ってくれた。
『もうカレンちゃんの心の中は彼らでいっぱいだろうし、誰か一人でも抜けたら悲しむでしょう? なんせここは3人の夫が常識なのだから、故郷の価値観じゃなくて、ここの価値観で彼らを愛したらいいんじゃないかしら?』
と、先輩が言ってくれた。
すると、あれほど思い悩んでいたのに、5万ピースもの大きなジクソーパズルよりも細かなピースの数々が、ぴたりとはまったかのようにすっきりしたのだ。
理由はわからない。だけど、ゼクスも、シビルも、ゼファーも今の私にとって大事な人たちで、私を作るひとつひとつのピースなんだって思った。
だから、少し前に改めて彼らと婚約した。
以前、義母たちも言っていたように、比べるのではなくそれぞれが魅力的で、一緒に幸せになりたい人たちだから。
彼らがどんな想いで私を愛しながら、見守るだけの状況を耐えてくれていたのか、胸がぎゅうぎゅう痛むほど苦しい。私は、溢れ出る涙もそのままに、笑顔で彼らにお嫁さんにして欲しいって言ったのである。
私がそんな風に、彼らに逆プロポーズした事で、3人とも、泣きたいような笑顔で手を差し伸べ、そして初めての唇へのキスを贈り合ったのである。
ファーストキスはゼクスで、次にシビル。
最後に、ゼファーとキスをしたら、なぜだか、故郷の両親がおめでとう、幸せにって笑顔で祝福してくれているような、そんな気がしたのであった。
今日は、先輩とジスクール王子の結婚式だ。
この国の人たちは、妻への横恋慕などを恐れて大々的に挙式はせず、身内だけで食事会をする程度にとどめているそうだ。
だが、次期王たるジスクール王子のような立場の人物はそうも言ってはいられない。
今日の良き日、空は快晴で、この国の人々もゼクスやシビルのお母様たちの故郷であるコウテイ国やアデリー国からの来賓も過ごしやすい気温だ。まるで天からの祝福が降り注いでいるかのような光の中、純白のウェディングドレスを身に纏った先輩はとても綺麗で、幸せそう。
ゼクスは主役のジスクール王子の身内だから王族の席にいるし、シビルは騎士団長として警護の総責任者であるため勤務中だ。だから、私の側にいる婚約者はゼファーだけである。
神託の乙女である先輩に秋波を送る各国の男性たちの視線を、ジスクールは番犬のように睨みつけながらも、先輩とようやく結婚出来た事で嬉しそうにしている。今この瞬間、きっと彼が一番幸せかもしれない。
会場は、それほどの大人数を収容できそうな場所ではないため、沢山の招待客をどうするのか首をかしげていたが、すぐにその疑問が解消する。
なんと、皆さん本性に戻ったのだ。
なるほど、質量が少なくなれば大勢の人(ペンギン)たちが入る事が出来るし、人化状態ではわからない出身国も一目瞭然でわかるというもの。本来なら、異性が集まる大勢の中で本性になるなど考えられない。
けれど、今日は無礼講であり、本性をこうして表す事で、国同士の繋がりの親密さを表すという政治的な目的もある特殊な例外行事みたい。
ただ、私には目の前で本性になったフェザー王子とその側近の人たちの違いがわからない。オレンジのくちばしに、頭頂部はツンツンしていて、黄色の眉毛(?)がきりっとした目元を強調している。
「ぴぃ、きゅいっきゅっ! きゅきゅっ!」
「きゅぅ~ん……ぴぃ」
目の前で、イワトビペンギンの姿で胸を張り、ドヤァって感じで婚約者を紹介しているフェザーの隣にいるプリマベーラは一回り小さいし、本性になってもイワトビペンギンのキリッとしたイメージと違い、愛らしい顔つきだからすぐわかる。プリマベーラが照れているみたいに、小さな羽で顔を隠そうとしているのを見て、あまりの可愛らしさに思わず連れ去りたくなった。
基本的に鳴き声だから、私には何をいっているのかさっぱりわからない。
通訳はゼファーが側でしてくれるから問題ないんだけど、神託の乙女である私にいろんなペンギンたちがあいさつしにヨチヨチ歩きで来てくれる。
なんてかわいいの、と心の中ではしゃぐものの、人化すれば65才のおじさんだと聞いたりするとテンションが一気に下がってしまう。
きゅいきゅい、きゅっきゅ、ぴぃぴぃ、ぷわぁ、ぷわー
うん、一生懸命考えても何て言っているのかわからない。本日はお日柄も良く、うんたらかんたらといったお祝いと挨拶の言葉らしい。
あとは、時々ゼファーがニコニコしながら睨みつけているから、その人たちは、私にナンパして来ているのかな? なんて思った。
※※※※
あと1か月ほどで18才になる。
これまでの事情を聞き、そんなに長い間精神を病んで治療をしていたのかとびっくりした。
なんというか、あの会議の日から今日までの私も私なんだけれども、でも、なんだか私じゃないみたいな。自分で自分がおかしいなんて少しも思っていなかったから。
こちらに来てすぐの、ゼクスたちと館で過ごしていた幸せな日々は鮮明に覚えている。その延長みたいな感じで、私はずっと今日まで館で暮らしているといった感覚だ。
義母の事とかも分かっているんだけど、館でずっと過ごしていたら矛盾だらけの状況なのに義母たちもいるんだって認識で、今から思い返すとおかしな事だらけだった。
『カレン、あの時は急に色々一気に言ってすまなかった。もっと君の傷ついた心の事を配慮をすべきだったのは私だ。許さなくていい。だが君に、どうしても伝えておかなくてはならない事があるんだ……』
何度もそんな風に頭を下げるパーシィ様に、少しずつ今回の召喚についての真実を聞いた。
記憶に残るそれらの時には、必ず彼らが私の側にいてくれた。動揺したし、悲しかったし辛かった。だけど、彼らがいてくれるから、辛かった日々をリセットしてやり直しをするかのように、私の心は比較的穏やかで徐々に受け入れる事ができたのだった。
義母まで側に寄せ付けなかったと聞いたときにはそりゃもうビックリした。この世界で、本当のおかあさんみたいに大好きな人なのに。どれ程心配かけて泣かせたんだろう。
精神面を子供からやり直して中学生くらいまで成長した頃に、義母や義姉、先輩やパーシィ様に関わる様々な出来事が、ようやく、はっきり理解できた。そして、抱きついて号泣しながら謝罪合戦をしたのである。
特に、1年ほど会えていなかった義母はすっかり痩せていて、この世界でのおかあさんにすごく心配をかけてしまった事に悲しくなった。
なんというか、半透明のゼリー状の何かの中にいるみたいだった頃の私は、会っても彼女たちにどう反応していたのか、古い記憶ほどほとんど思い出せない。
ジスクールが、こんな悲劇は二度と繰り返したくないと、先輩に熱く語っていたそうで、頭の固い重鎮たちや王様に、私にも先輩と同じ権利をって直談判してくれたみたい。だからあっという間に、3人の夫を1日も早く作れみたいな、あのときの会議で決まった事が白紙になったそうだ。
先輩にデレデレしているジスクールしか見たことなかったから意外にも思えたけど、先輩が言うには物凄く有能で人望がある人みたい。ちょっと見直しちゃった。
あと、これは異例の事なんだけれど、神託の乙女としての権利を獲得した私に、王様や重鎮たちは、複数の夫を受け入れる事が、どれほどの覚悟かわからなかったと公の場で謝罪された。中には、デリカシーがなさすぎると愛する奥様に叱られたおじさんたちもいたみたい。
パーシィ様はじめ、神官たちからも地面に頭がめり込んでしまうんじゃないかと思うほど何度も謝られて困った。
神託の言語は、すんごく複雑で難しいらしい。それこそ、ペテルギウスの消滅の正確な時間を計算するくらい、とんでもない頭脳と計算や理解力を必要とするみたい。
私も、かなり傷ついたけれど、どの立場の人たちもわざとした事じゃないから、心配されたけれど謝罪を受け入れたのである。それ以降、彼らとも関係は良好だ。
ただ、受け入れる際に、女性に対してもっと個人の人格を尊重して欲しいと願った。圧倒的に強い立場の男性に逆らえない女性も多いだろう。私みたいに辛い思いをしている女性もいるはずなのだから。
パーシィ様も、女性の地位があまりにも低い事に心を痛めていた。
パーシィ様や先輩、そして私を中心に女性の地位を少しでも向上できればいいと少しずつ運動を始めている。
もう二度と、あの時の私みたいに、受け入れざるを得ない状況や心理に陥る女性がひとりもいない世界が来るよう、義母たちも協力してくれている。
それはきっと、長年この国を支えて来た価値観そのものをがらりと変えてしまう事で、容易くはないだろう。だけど、次の世代やその次、そしていつか、元の世界もまだ途上だったけれど、女性の地位が確立されればいいと思う。
※※※※
賑やかな挙式に披露宴が終わった後、ゼファーとともに家に帰った。私は未だに結婚式の様子に夢心地で、彼に促されるまま家に入る。
「はぁ……先輩きれいだったなあ……」
「カレンも異界のああいうドレスを着たいですか?」
「うん。大勢の前とかじゃなくてもいいの。やっぱり憧れちゃうから」
「では、殿下や騎士団長と相談してから着る機会を作りましょうね」
ゼファーが私のこめかみにキスをする。私はこめかみだけじゃなくて、胸もくすぐったくなって、彼にお返しとばかりにキスを返した。
ゼファーが何度も何度もハヤブサでタンデムツーリングをしてくれるうちに、気持ちも癒えていったこともあり、異性としてすっかり大好きになってしまった。
ゼクスにも、シビルにも、そして彼にも恋をしているって気づいたのがついこの間のように感じる。
その時、夫はひとりでいいからって言われたのだけれども、私は3人のうち、誰を選ぶなんてできなかった。こんな多情な浮気っぽいこの気持ちでも、彼らはそれぞれを愛してくれるならそれでいいって言ってくれた。
『もうカレンちゃんの心の中は彼らでいっぱいだろうし、誰か一人でも抜けたら悲しむでしょう? なんせここは3人の夫が常識なのだから、故郷の価値観じゃなくて、ここの価値観で彼らを愛したらいいんじゃないかしら?』
と、先輩が言ってくれた。
すると、あれほど思い悩んでいたのに、5万ピースもの大きなジクソーパズルよりも細かなピースの数々が、ぴたりとはまったかのようにすっきりしたのだ。
理由はわからない。だけど、ゼクスも、シビルも、ゼファーも今の私にとって大事な人たちで、私を作るひとつひとつのピースなんだって思った。
だから、少し前に改めて彼らと婚約した。
以前、義母たちも言っていたように、比べるのではなくそれぞれが魅力的で、一緒に幸せになりたい人たちだから。
彼らがどんな想いで私を愛しながら、見守るだけの状況を耐えてくれていたのか、胸がぎゅうぎゅう痛むほど苦しい。私は、溢れ出る涙もそのままに、笑顔で彼らにお嫁さんにして欲しいって言ったのである。
私がそんな風に、彼らに逆プロポーズした事で、3人とも、泣きたいような笑顔で手を差し伸べ、そして初めての唇へのキスを贈り合ったのである。
ファーストキスはゼクスで、次にシビル。
最後に、ゼファーとキスをしたら、なぜだか、故郷の両親がおめでとう、幸せにって笑顔で祝福してくれているような、そんな気がしたのであった。
2
お気に入りに追加
1,293
あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる