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告白と、決意と
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「なんで……、どうし、て……。なんで、今なの……、うう……」
「……、王子がヴィーを愛して大事にするのならと思えばこそ、俺は血反吐で全身濡れる思いで諦めようとしたんだ。少し前のヴィーたちの仲のいい姿を嫌になるほど見て、その度に死んでしまいたいと思うほどだった……」
実際に寝込み、落馬するなど、自分でもどうしようもなく情けない姿を見せ続けた今年の始まりの頃を思い出して苦笑する。
「……ぐすっ」
イヴォンヌが声を荒げ、涙を流し、反抗の言葉を紡ぐが、腕の中にずっといるこの状況。やはり、彼女の心の全てが王子にいったわけではないと確信した。
「だが、今の彼はどうだ? ヴィー、俺にはこんな事をいう資格はないと思う。だけど、指を咥えてヴィーが悲しみ不幸になるのを見ているだけの腰抜けにはなりたくない!」
「……」
イヴォンヌはサヴァイヴの心からの叫びに対して、彼の腕にそっと手を添えて力を抜いた。だが、彼女の唇は開かず何の音も生みだす事はない。
「ヴィー、お前と王子……、二人に何があった? 王子がこれ見よがしに浮気を装う理由を教えてくれっ!」
サヴァイヴの口から驚愕するような事が発せられた。イヴォンヌは目を見開き、震えてしまう唇を動かした。
「サヴァイヴ様……、なにを言って……。あ、貴方は何を知っているというの……?」
「ほとんど知らないさ。でも、噂や現状などを総合したら、可能性の高い未来は想像がつく。もし、もしもその想像が合っているのならば、俺はヴィーを諦めない。諦めたくない!」
「……」
「教えてくれ……。そして、俺の手を取ってくれ……。それとも、もう、俺ではダメなのか……?」
「ヴァイス……」
「お二人とも、そこまでです……」
周囲から完全に閉ざされた二人だけのはずだった廊下に、第三者の声が静かに響いた。
「あなたは……」
声の主は、フラットの乳兄弟であり侍従でもあるアルフレッドだった。彼は、一見イヴォンヌがフラットを裏切っているかのようなこの場面を見ても普段通りの様子である。
ただ単に、業務をこなすといった表情と口調の彼が現れた事で、サヴァイヴの腕が解かれイヴォンヌはそっと彼の胸から離れたのであった。
「お二人とも、私についてきていただけませんか?」
お願いというよりも、断れない強制だと暗にアルフレッドの瞳が言っている。それは、王子の命令と同義であり、未だに混乱と興奮を抱えた二人は頷き、先に歩いて行く彼を追った。
※※※※
サヴァイヴとイヴォンヌが案内されたのは生徒会室だった。アルフレッドが扉をノックするとフラットの声がし、扉が開かれる。
「失礼します。殿下、お二人をお連れ致しました」
「アルフレッド、ありがとう」
「はっ」
フラットが穏やかに微笑んでアルフレッドに礼を伝えると、並んで扉近くに立ちすくんでいる二人に視線を移動させた。
「サヴァイヴ、君とはこうして直接言葉を交わすのは初めてだね」
「はっ。こうして声がかかる名誉、誠に光栄であります」
「ああ、楽にしてくれ。今後も兄のため、国のために力を尽くしてくれる君だからこそ、建前などはなしで本音で話し合いたい」
「……かしこまりました」
フラットは丁寧すぎる口調をくずさないサヴァイヴの態度に苦笑を一つ溢す。
戸惑うイヴォンヌと、警戒をしているサヴァイヴの二人をソファに並んで座るように促した。
「突然こうして呼び出してすまない。イヴ……、彼の気持ちはきちんと聞けたかい?」
「……」
イヴォンヌはサヴァイヴと会うのを避け続けてた。やはり先ほどの事は、偶然に見せかけて彼をあの場に誘導して、自分と彼を会わせたのかと確信する。
フラットを、どういうつもりかと強い視線で見つめ返した。
「殿下、咎は私一人が受けます。イヴォンヌ嬢は無理に私の言葉を聞かされてしまっただけで……!」
「サヴァイヴ、私は君には聞いていない。イヴ、答えて?」
フラットは言葉を不作法すぎる口調で遮ったフラットを一瞥して口を閉ざさせる。そのあと、柔らかな、最近は彼女に見せなかった、前までの優しさ溢れる視線で問いかけた。
「…………」
イヴォンヌは、フラットのその視線を真正面から受けて、戸惑いを隠せない瞳のままこくりと頷いた。
「ふふふ、きちんと聞けたようだね……。良かった。君は彼と会わないようにしていたからね。視界にすら入れない徹底ぶりで隙が無さすぎて、どうやって会ってもらおうか悩んでいたんだ」
「フラット、わたくしは……!」
「イヴ、黙って」
顔をしっかりあげてフラットを見返すイヴォンヌの言葉を微笑みながら、ピンと伸ばした人差し指を自らの唇に当てて遮る。
やはり、先ほどの出会いはフラットが仕組んだものだったのかとイヴォンヌは唇を噛む。
「サヴァイヴ、君はどんな事があっても彼女を守り、慈しみ、幸せにすると誓うかい?」
「……殿下、一体どういうおつもりでしょうか?」
突然そう言いだしたフラットに対して訝し気な気持ちを隠すことなく、サヴァイヴは質問に質問で返してしまう。
「突然こんな事を言うのは、私が計画していたある事を達成するためだ。詳細は明かせないし、これまで振り回して心苦しく思う。ただ、もうすでに情報は得ていて、私と彼女との今後の進退を知っているのだろう? その上で聞いている。先ほどの問いに嘘偽りなく答えよ」
サヴァイヴは、真剣に射貫くように見つめてくるフラットの瞳を真正面からしっかりと受け止めた。答える内容によっては捕らえられ首が飛ぶかもしれない。
だが、彼女を手に入れる少ないチャンスだと、顔を上げ、彼に対して誓いの言葉を伝えたのであった。
「……この国を守る騎士として、我が命、我が剣、我が忠誠にかけて、私に許されるのならイヴォンヌ嬢を愛し、慈しみ、誰よりも、自分自身よりも大切にすることを誓います」
「……、王子がヴィーを愛して大事にするのならと思えばこそ、俺は血反吐で全身濡れる思いで諦めようとしたんだ。少し前のヴィーたちの仲のいい姿を嫌になるほど見て、その度に死んでしまいたいと思うほどだった……」
実際に寝込み、落馬するなど、自分でもどうしようもなく情けない姿を見せ続けた今年の始まりの頃を思い出して苦笑する。
「……ぐすっ」
イヴォンヌが声を荒げ、涙を流し、反抗の言葉を紡ぐが、腕の中にずっといるこの状況。やはり、彼女の心の全てが王子にいったわけではないと確信した。
「だが、今の彼はどうだ? ヴィー、俺にはこんな事をいう資格はないと思う。だけど、指を咥えてヴィーが悲しみ不幸になるのを見ているだけの腰抜けにはなりたくない!」
「……」
イヴォンヌはサヴァイヴの心からの叫びに対して、彼の腕にそっと手を添えて力を抜いた。だが、彼女の唇は開かず何の音も生みだす事はない。
「ヴィー、お前と王子……、二人に何があった? 王子がこれ見よがしに浮気を装う理由を教えてくれっ!」
サヴァイヴの口から驚愕するような事が発せられた。イヴォンヌは目を見開き、震えてしまう唇を動かした。
「サヴァイヴ様……、なにを言って……。あ、貴方は何を知っているというの……?」
「ほとんど知らないさ。でも、噂や現状などを総合したら、可能性の高い未来は想像がつく。もし、もしもその想像が合っているのならば、俺はヴィーを諦めない。諦めたくない!」
「……」
「教えてくれ……。そして、俺の手を取ってくれ……。それとも、もう、俺ではダメなのか……?」
「ヴァイス……」
「お二人とも、そこまでです……」
周囲から完全に閉ざされた二人だけのはずだった廊下に、第三者の声が静かに響いた。
「あなたは……」
声の主は、フラットの乳兄弟であり侍従でもあるアルフレッドだった。彼は、一見イヴォンヌがフラットを裏切っているかのようなこの場面を見ても普段通りの様子である。
ただ単に、業務をこなすといった表情と口調の彼が現れた事で、サヴァイヴの腕が解かれイヴォンヌはそっと彼の胸から離れたのであった。
「お二人とも、私についてきていただけませんか?」
お願いというよりも、断れない強制だと暗にアルフレッドの瞳が言っている。それは、王子の命令と同義であり、未だに混乱と興奮を抱えた二人は頷き、先に歩いて行く彼を追った。
※※※※
サヴァイヴとイヴォンヌが案内されたのは生徒会室だった。アルフレッドが扉をノックするとフラットの声がし、扉が開かれる。
「失礼します。殿下、お二人をお連れ致しました」
「アルフレッド、ありがとう」
「はっ」
フラットが穏やかに微笑んでアルフレッドに礼を伝えると、並んで扉近くに立ちすくんでいる二人に視線を移動させた。
「サヴァイヴ、君とはこうして直接言葉を交わすのは初めてだね」
「はっ。こうして声がかかる名誉、誠に光栄であります」
「ああ、楽にしてくれ。今後も兄のため、国のために力を尽くしてくれる君だからこそ、建前などはなしで本音で話し合いたい」
「……かしこまりました」
フラットは丁寧すぎる口調をくずさないサヴァイヴの態度に苦笑を一つ溢す。
戸惑うイヴォンヌと、警戒をしているサヴァイヴの二人をソファに並んで座るように促した。
「突然こうして呼び出してすまない。イヴ……、彼の気持ちはきちんと聞けたかい?」
「……」
イヴォンヌはサヴァイヴと会うのを避け続けてた。やはり先ほどの事は、偶然に見せかけて彼をあの場に誘導して、自分と彼を会わせたのかと確信する。
フラットを、どういうつもりかと強い視線で見つめ返した。
「殿下、咎は私一人が受けます。イヴォンヌ嬢は無理に私の言葉を聞かされてしまっただけで……!」
「サヴァイヴ、私は君には聞いていない。イヴ、答えて?」
フラットは言葉を不作法すぎる口調で遮ったフラットを一瞥して口を閉ざさせる。そのあと、柔らかな、最近は彼女に見せなかった、前までの優しさ溢れる視線で問いかけた。
「…………」
イヴォンヌは、フラットのその視線を真正面から受けて、戸惑いを隠せない瞳のままこくりと頷いた。
「ふふふ、きちんと聞けたようだね……。良かった。君は彼と会わないようにしていたからね。視界にすら入れない徹底ぶりで隙が無さすぎて、どうやって会ってもらおうか悩んでいたんだ」
「フラット、わたくしは……!」
「イヴ、黙って」
顔をしっかりあげてフラットを見返すイヴォンヌの言葉を微笑みながら、ピンと伸ばした人差し指を自らの唇に当てて遮る。
やはり、先ほどの出会いはフラットが仕組んだものだったのかとイヴォンヌは唇を噛む。
「サヴァイヴ、君はどんな事があっても彼女を守り、慈しみ、幸せにすると誓うかい?」
「……殿下、一体どういうおつもりでしょうか?」
突然そう言いだしたフラットに対して訝し気な気持ちを隠すことなく、サヴァイヴは質問に質問で返してしまう。
「突然こんな事を言うのは、私が計画していたある事を達成するためだ。詳細は明かせないし、これまで振り回して心苦しく思う。ただ、もうすでに情報は得ていて、私と彼女との今後の進退を知っているのだろう? その上で聞いている。先ほどの問いに嘘偽りなく答えよ」
サヴァイヴは、真剣に射貫くように見つめてくるフラットの瞳を真正面からしっかりと受け止めた。答える内容によっては捕らえられ首が飛ぶかもしれない。
だが、彼女を手に入れる少ないチャンスだと、顔を上げ、彼に対して誓いの言葉を伝えたのであった。
「……この国を守る騎士として、我が命、我が剣、我が忠誠にかけて、私に許されるのならイヴォンヌ嬢を愛し、慈しみ、誰よりも、自分自身よりも大切にすることを誓います」
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