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13歳、初めての戦場にて②R15(残虐行為の方)
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死刑確定の罪人の命を断ち切ります。戦場に行くための通過儀礼のような設定です。ご注意ください。
ここも、読まなくても物語は進みます。(今後出たとしてもにおわせ程度ですので次回以降はご安心ください)
「ぼっちゃん、まずはそこにいて見ていてください。質問には必ず答えるように。いいですね? おい、連れて来い」
クロヴィスが、サヴァイヴを連れて拷問用の地下牢につくと、屈強な牢番が一人のやせ細った後ろ手に縛られ、重り付きの足かせをつけた男を乱暴に引きずるように連れて来た。いや、荷物を運んできたといったほうが正確だろう。
サヴァイヴは、すでに拷問の様子を知っており参加していたため、何か機密事項を吐かせるためにこれから男をそうするのだろうかと思った。それにしては、クロヴィスの様子が、一見平常だがいつも一緒にいるサヴァイヴにしてみればピリピリしており雰囲気がおかしい。
「お、おゆるしを……、いのち、いのちだけはぁ、ぐあっ!」
男が、命乞いを始めた途端、血と体液で汚れがこびりついた冷たい床に投げ出され野太い枯れた咽から悲鳴が上がる。
「この男は、山賊の一味で、殺人、婦女暴行、誘拐などを犯した死刑囚です」
「……」
なぜ、今更罪がはっきりしており処刑が確定している男を連れて来たのか分からず首を傾げる。
「ぼっちゃん、ここは戦場です。床に寝そべった男がいます。この場合手足がしばられ身動きすら叶いませんし戦意を消失しております。一撃で戦闘不能になる効果的な場所、あるいは即死する場所を言ってください」
サヴァイヴは、目下の男を見た。すでに命乞いしかできない男だ。
「生かす必要があるのなら、足の腱や、上腕の神経を横なぎに断ち切る」
すると、クロヴィスはおもむろに剣を抜き、サヴァイヴの言った通りの事を瞬時にやってのけた。血が飛び散り、男の悲鳴が部屋全体を埋め尽くし、耳をふさぎたくなったが、塞げばクロヴィスの血濡れの剣先がサヴァイヴのほうへ向くだろう。
驚愕しつつ、これはいつもの拷問ではないと確信して冷や汗を流す。
「ひぃいいぎぃ! た、たすけ、て……! たすけてくれええええ!」
「ここが戦場なら、声が大きくて周囲に気付かれる。どうしましょうか? あなたの言う通りにしたら、男の援軍が来て包囲されて全滅したかもしれませんね?」
「……!」
情報量が少ないとはいえ、戦場ならばそんな事は当たり前だ。その中での一瞬の判断ミスが大勢の、自分の命を危うくする。
「まず、情報が必要か必要でないか、そのような状況を作ってはなりません」
クロヴィスの剣が、男の首をかっきる。痙攣をおこしたのち、男は命の灯を消した。
「……」
「次、連れて来い」
クロヴィスの表情からは何も読み取る事ができない。牢番は言い知れぬ恐ろしさが体の奥底から湧き出て、操り人形のように言われたように次々と死刑囚を運んできた。
「……、もう、やめてください……先生、やめて」
「なぜです? 最初に伝えたはずです。この者たちは死刑囚だと。彼らに命を弄ばれ散った、罪のない人がたくさんいます。ここで処刑執行したまでです」
「これは、処刑ではない、私刑、とも違う気がしますけれど、こんなのは間違っている!」
「なるほど、手を汚し、目と心に焼き付ける事は他人がやればいいと」
「そんな事は、言ってない!」
「意図は違うにしても、結果はそうですよ? で、次のこの男はどうしましょうか?」
「もういい……、せめて、一撃で殺してやってくれ……」
サヴァイヴは、視線を床に落とした。体の力が入らない。殺されていった罪人たちよりももっと心が擦り切れてしまい、何も考えられなくなっていた。
「剣も上達し、体も鍛え上げられました。自信もつき、一日も早く戦場に出て、領主様の手伝いをしたいという心意気はご立派です。ですが、戦というのはもっと理不尽な命のやり取りの場です。感情を殺せ、とまではいいません。ですが完璧にコントロールし、他者に見せてはなりません。あなたは一兵卒ではないのです。あなたの一言が、部下を、仲間を、領民を、そして、ご領主様の命を奪う一投石になりえるのです」
「だからといって、こんな……」
「この程度で心折れるくらいなら、砦の角で震えて膝を抱えていなさい。曲がりなりにも次期領主たるあなたを、皆が守ってくれますよ」
「……!」
「ぼっちゃん、いえ、サヴァイヴ様。目をそらさず見るのです。それが出来ないのならお飾りの領主と家に震えながら閉じ籠りお生き下さい。周囲の者だけが、敵襲や小さな小競り合いで大ケガや命を落とすでしょう」
いつの間にか、両目から大量の涙を流していた。
こんなに泣くのは物心ついてからなかった。無表情の、自分よりも背の高い先生が見下ろしている。彼の瞳は凍てつくようだ。このまま何もしなければ、もう彼に見放されて、先程言われた通りの人生を歩む事になるだろう。
サヴァイヴは、右の前腕でぐいっと顔を乱暴に拭う。キッと先生を睨みつけるように真剣にその無感情の瞳を見返した後、腰に挿した、お飾りではない愛用の剣を手に取った。
新たに連れてこられた男の罪状など知らない。いつ、処刑になる予定だったのかも。だが、過去には残虐だったであろう男が、震えて懇願する瞳を見ても恐ろしいとも憐れだとも思えない。
サヴァイヴは、目をしっかり開けたまま、男のさらけ出された無防備な首に剣を突き立てたのであった。
ここも、読まなくても物語は進みます。(今後出たとしてもにおわせ程度ですので次回以降はご安心ください)
「ぼっちゃん、まずはそこにいて見ていてください。質問には必ず答えるように。いいですね? おい、連れて来い」
クロヴィスが、サヴァイヴを連れて拷問用の地下牢につくと、屈強な牢番が一人のやせ細った後ろ手に縛られ、重り付きの足かせをつけた男を乱暴に引きずるように連れて来た。いや、荷物を運んできたといったほうが正確だろう。
サヴァイヴは、すでに拷問の様子を知っており参加していたため、何か機密事項を吐かせるためにこれから男をそうするのだろうかと思った。それにしては、クロヴィスの様子が、一見平常だがいつも一緒にいるサヴァイヴにしてみればピリピリしており雰囲気がおかしい。
「お、おゆるしを……、いのち、いのちだけはぁ、ぐあっ!」
男が、命乞いを始めた途端、血と体液で汚れがこびりついた冷たい床に投げ出され野太い枯れた咽から悲鳴が上がる。
「この男は、山賊の一味で、殺人、婦女暴行、誘拐などを犯した死刑囚です」
「……」
なぜ、今更罪がはっきりしており処刑が確定している男を連れて来たのか分からず首を傾げる。
「ぼっちゃん、ここは戦場です。床に寝そべった男がいます。この場合手足がしばられ身動きすら叶いませんし戦意を消失しております。一撃で戦闘不能になる効果的な場所、あるいは即死する場所を言ってください」
サヴァイヴは、目下の男を見た。すでに命乞いしかできない男だ。
「生かす必要があるのなら、足の腱や、上腕の神経を横なぎに断ち切る」
すると、クロヴィスはおもむろに剣を抜き、サヴァイヴの言った通りの事を瞬時にやってのけた。血が飛び散り、男の悲鳴が部屋全体を埋め尽くし、耳をふさぎたくなったが、塞げばクロヴィスの血濡れの剣先がサヴァイヴのほうへ向くだろう。
驚愕しつつ、これはいつもの拷問ではないと確信して冷や汗を流す。
「ひぃいいぎぃ! た、たすけ、て……! たすけてくれええええ!」
「ここが戦場なら、声が大きくて周囲に気付かれる。どうしましょうか? あなたの言う通りにしたら、男の援軍が来て包囲されて全滅したかもしれませんね?」
「……!」
情報量が少ないとはいえ、戦場ならばそんな事は当たり前だ。その中での一瞬の判断ミスが大勢の、自分の命を危うくする。
「まず、情報が必要か必要でないか、そのような状況を作ってはなりません」
クロヴィスの剣が、男の首をかっきる。痙攣をおこしたのち、男は命の灯を消した。
「……」
「次、連れて来い」
クロヴィスの表情からは何も読み取る事ができない。牢番は言い知れぬ恐ろしさが体の奥底から湧き出て、操り人形のように言われたように次々と死刑囚を運んできた。
「……、もう、やめてください……先生、やめて」
「なぜです? 最初に伝えたはずです。この者たちは死刑囚だと。彼らに命を弄ばれ散った、罪のない人がたくさんいます。ここで処刑執行したまでです」
「これは、処刑ではない、私刑、とも違う気がしますけれど、こんなのは間違っている!」
「なるほど、手を汚し、目と心に焼き付ける事は他人がやればいいと」
「そんな事は、言ってない!」
「意図は違うにしても、結果はそうですよ? で、次のこの男はどうしましょうか?」
「もういい……、せめて、一撃で殺してやってくれ……」
サヴァイヴは、視線を床に落とした。体の力が入らない。殺されていった罪人たちよりももっと心が擦り切れてしまい、何も考えられなくなっていた。
「剣も上達し、体も鍛え上げられました。自信もつき、一日も早く戦場に出て、領主様の手伝いをしたいという心意気はご立派です。ですが、戦というのはもっと理不尽な命のやり取りの場です。感情を殺せ、とまではいいません。ですが完璧にコントロールし、他者に見せてはなりません。あなたは一兵卒ではないのです。あなたの一言が、部下を、仲間を、領民を、そして、ご領主様の命を奪う一投石になりえるのです」
「だからといって、こんな……」
「この程度で心折れるくらいなら、砦の角で震えて膝を抱えていなさい。曲がりなりにも次期領主たるあなたを、皆が守ってくれますよ」
「……!」
「ぼっちゃん、いえ、サヴァイヴ様。目をそらさず見るのです。それが出来ないのならお飾りの領主と家に震えながら閉じ籠りお生き下さい。周囲の者だけが、敵襲や小さな小競り合いで大ケガや命を落とすでしょう」
いつの間にか、両目から大量の涙を流していた。
こんなに泣くのは物心ついてからなかった。無表情の、自分よりも背の高い先生が見下ろしている。彼の瞳は凍てつくようだ。このまま何もしなければ、もう彼に見放されて、先程言われた通りの人生を歩む事になるだろう。
サヴァイヴは、右の前腕でぐいっと顔を乱暴に拭う。キッと先生を睨みつけるように真剣にその無感情の瞳を見返した後、腰に挿した、お飾りではない愛用の剣を手に取った。
新たに連れてこられた男の罪状など知らない。いつ、処刑になる予定だったのかも。だが、過去には残虐だったであろう男が、震えて懇願する瞳を見ても恐ろしいとも憐れだとも思えない。
サヴァイヴは、目をしっかり開けたまま、男のさらけ出された無防備な首に剣を突き立てたのであった。
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