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やんちゃ姫とわんこ③
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サヴァイヴは、少し離れた東屋で、テーブルの下にもぐった。そこには、5号のホールケーキが入るほどの箱がきれいに梱包されており、薔薇を模ったリボンで出来た大きな花が角に一つ咲いている。
「よかった! ちゃんとあった!」
朝の内に、そわそわしていたサヴァイヴは、使用人たちが誰もいない時を見計らい、数日前から準備していたこの箱をここに隠していたのだ。誰にも言っていないので、他の人たちや小動物に見つかり、どこかにいかないか心配していたのである。勿論、そんな彼の可愛らしい行動は筒抜けで、何やらサプライズを考えているような時期当主の意向を組み、庭師などがきちんと見守っていた。
サヴァイヴは、知らないのだ。朝露でその場所が濡れてびしょびしょになるなんて事を。皆で箱を守ってくれていたのでこうして無事なのだ。
「へへへ、ヴィー、よろこんでくれるかなぁ?」
サヴァイヴは、そっと箱を撫でた後、しっかりと胸に抱えて先ほどの場所に戻っていく。すると、地面につかない足をぶらぶらと所在なげにしているイヴォンヌが見えて来た。
「ヴィー、おまたせっ!」
「ヴァイス~。もう、つくなりどこかにいっちゃうんだもの。ゲストをほうっておくなんて、どういうことー?」
「ヴィー……。その、ごめんね……。ぼく……」
いきなり一人にされたイヴォンヌは少し拗ねたように、ツンッと顔を背けて怒ってみせた。けれど、先ほど視界にとらえたサヴァイヴが持っている箱が気になってしょうがない。視線をそちらにチラチラ向けていたけれど、ついに好奇心が上回った。
ベンチに座らずに、怒った彼女の様子にハラハラしているサヴァイヴをしっかり真正面からとらえて、首をかしげながらニッと笑った。
「もういいよ!」
あからさまにホッとしたサヴァイヴは、彼女の隣にちょこんと座った。膝の上に持って来た箱をのせて、箱と彼女を交互に見つめる。
「……? いったいどうしたの?」
「えっとね。ぼくね、このあいだもりで、かりをひとりでさいごまで、できたんだ!」
「わぁ! ひとりで? すっごーい!」
仲良しの彼が、同い年なのに狩りを成功させた事に、先ほどまでの拗ねた気分や、おかしと彼の持つ箱の存在も忘れて手を叩きながら、自分の事のように喜んだ。
「へへへ……。で、でね。いちばんさいしょにかりのせいかを、ヴィーにあげたくって。けがわもきれいにとれたから、さむいときに、これをつかってほしいんだ」
そう言って、照れながら持って来た箱をずいっと彼女に差し出した。
「え? だって、さいしょのかりのって……。おばさまにはいいの?」
「うん。えっとね……、ぼく、ヴィーにあげたいってずっとおもっていたから、ははうえもそうしなさいって。ははうえには、つぎのえものをあげるから! だから、その。もらってくれる?」
「ヴァイス……!」
イヴォンヌは、サヴァイヴが渡してくれたプレゼントも嬉しかったが、何よりも彼の気持ちが嬉しいと心が弾む。
「ありがとう! いいのかしら? でも、とってもうれしい!」
あまりの嬉しさに、彼に抱き着いた。やや勢いがあったため、彼の体に体当たりのようになった。だが、普段から鍛えている彼の体は、少々ぐらついたもののしっかり同じ体格ほどの少女を受け止める。
「ヴィー! ちょ、ちょっと」
「ありがとう! ありがとう! たいせつにするね!」
「うん! そういってくれて、よろこんでくれて、ぼくもうれしい!」
抱き着いて暫くすると、イヴォンヌは彼から離れた。顔を赤くしたサヴァイヴが、仕切り直しにプレゼントをしっかり手渡す。
「あけてみて!」
わくわくと、イヴォンヌが箱を壊さないように、落とさないように開けると、そこにはまっしろなつややかな毛皮で出来た首巻きがあった。
「わぁ……。きれーい。すっごいスベスベ……」
ふわふわのそれを、撫でたり頬に当ててみるとまるでビロードのようだ。今日の日差しはとても強くじりじりと肌に容赦なく太陽の光がささっている。だが、毛皮はややひんやりとしていて気持ちがいい。そのまま首にそっと巻き付けた。
まっしろな毛皮に日が反射して、輝いているような彼女の微笑んだ姿を見て、サヴァイヴはなぜだかとても胸が熱くなっていたのであった。
※何の毛皮かは、かわいそうなのでずっと内緒にさせておいてください。
「よかった! ちゃんとあった!」
朝の内に、そわそわしていたサヴァイヴは、使用人たちが誰もいない時を見計らい、数日前から準備していたこの箱をここに隠していたのだ。誰にも言っていないので、他の人たちや小動物に見つかり、どこかにいかないか心配していたのである。勿論、そんな彼の可愛らしい行動は筒抜けで、何やらサプライズを考えているような時期当主の意向を組み、庭師などがきちんと見守っていた。
サヴァイヴは、知らないのだ。朝露でその場所が濡れてびしょびしょになるなんて事を。皆で箱を守ってくれていたのでこうして無事なのだ。
「へへへ、ヴィー、よろこんでくれるかなぁ?」
サヴァイヴは、そっと箱を撫でた後、しっかりと胸に抱えて先ほどの場所に戻っていく。すると、地面につかない足をぶらぶらと所在なげにしているイヴォンヌが見えて来た。
「ヴィー、おまたせっ!」
「ヴァイス~。もう、つくなりどこかにいっちゃうんだもの。ゲストをほうっておくなんて、どういうことー?」
「ヴィー……。その、ごめんね……。ぼく……」
いきなり一人にされたイヴォンヌは少し拗ねたように、ツンッと顔を背けて怒ってみせた。けれど、先ほど視界にとらえたサヴァイヴが持っている箱が気になってしょうがない。視線をそちらにチラチラ向けていたけれど、ついに好奇心が上回った。
ベンチに座らずに、怒った彼女の様子にハラハラしているサヴァイヴをしっかり真正面からとらえて、首をかしげながらニッと笑った。
「もういいよ!」
あからさまにホッとしたサヴァイヴは、彼女の隣にちょこんと座った。膝の上に持って来た箱をのせて、箱と彼女を交互に見つめる。
「……? いったいどうしたの?」
「えっとね。ぼくね、このあいだもりで、かりをひとりでさいごまで、できたんだ!」
「わぁ! ひとりで? すっごーい!」
仲良しの彼が、同い年なのに狩りを成功させた事に、先ほどまでの拗ねた気分や、おかしと彼の持つ箱の存在も忘れて手を叩きながら、自分の事のように喜んだ。
「へへへ……。で、でね。いちばんさいしょにかりのせいかを、ヴィーにあげたくって。けがわもきれいにとれたから、さむいときに、これをつかってほしいんだ」
そう言って、照れながら持って来た箱をずいっと彼女に差し出した。
「え? だって、さいしょのかりのって……。おばさまにはいいの?」
「うん。えっとね……、ぼく、ヴィーにあげたいってずっとおもっていたから、ははうえもそうしなさいって。ははうえには、つぎのえものをあげるから! だから、その。もらってくれる?」
「ヴァイス……!」
イヴォンヌは、サヴァイヴが渡してくれたプレゼントも嬉しかったが、何よりも彼の気持ちが嬉しいと心が弾む。
「ありがとう! いいのかしら? でも、とってもうれしい!」
あまりの嬉しさに、彼に抱き着いた。やや勢いがあったため、彼の体に体当たりのようになった。だが、普段から鍛えている彼の体は、少々ぐらついたもののしっかり同じ体格ほどの少女を受け止める。
「ヴィー! ちょ、ちょっと」
「ありがとう! ありがとう! たいせつにするね!」
「うん! そういってくれて、よろこんでくれて、ぼくもうれしい!」
抱き着いて暫くすると、イヴォンヌは彼から離れた。顔を赤くしたサヴァイヴが、仕切り直しにプレゼントをしっかり手渡す。
「あけてみて!」
わくわくと、イヴォンヌが箱を壊さないように、落とさないように開けると、そこにはまっしろなつややかな毛皮で出来た首巻きがあった。
「わぁ……。きれーい。すっごいスベスベ……」
ふわふわのそれを、撫でたり頬に当ててみるとまるでビロードのようだ。今日の日差しはとても強くじりじりと肌に容赦なく太陽の光がささっている。だが、毛皮はややひんやりとしていて気持ちがいい。そのまま首にそっと巻き付けた。
まっしろな毛皮に日が反射して、輝いているような彼女の微笑んだ姿を見て、サヴァイヴはなぜだかとても胸が熱くなっていたのであった。
※何の毛皮かは、かわいそうなのでずっと内緒にさせておいてください。
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