完結  R18 転生したら、訳ありイケメン騎士様がプロポーズしてきたので、回避したいと思います

にじくす まさしよ

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9 諦めるのも、時には効果的なんですよ

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 脳みそのシワがなくなるくらい、彼とどうやって離れるのか考えた。前世と今世合わせても、今が一番頭をフル回転させただろう。

 だけど、正攻法で、この状況をひっくりかえすことは不可能だと痛感しただけだった。

 ヒロインちゃんが、特定の相手がまだいなかったら、今からでも真実の愛をもたらすキューピットになることも可能かもしれないが、彼女はヌケドメ殿下とラブラブなので無理だ。

その1
 こうなったら、いっそ、ここから逃げるかとか(どうせすぐに見つかるに決まってる)

その2
 彼の記憶を、魔法使いのおじいちゃまやおじさまがたに頼んで改ざんしてもらうとか(後日、頼みに行ったら、おじいちゃまたちにまで、良かったなと開口一番お祝いのプレゼントをもらった) 

その3
 彼好みの☆(ゝω・)vキャピキャラをお金で雇って、ハニートラップをしかける(後日、成人女性であれができそうな本番ありのデリバリースタッフに頼んでみたけど、なんか、ボウウ様はその世界でブラック入りしているらしいので、秒で断られた。何をやらかしたんだと思ったが、ゲームの設定の通りなら、そういうこともあるかなと、詳しい内容は興味がないから聞いていない)

その4
 色々なことに、片目どころか両目を閉じて、平穏な夫婦として、夜の生活だけは回避させてもらう(無理だ。だって、ゲームでは毎日のようにヒロインと熱い夜を過ごしたってストーリーだったもの)

その5
 いきなり後頭部に衝撃を加えて、記憶喪失になってもらう(騎士の彼に、背後から襲いかかっても返り討ちにされそうだし、成功しても記憶を失ってくれるかどうか。記憶がそのままだたと、更にややこしいことになりそう)

 そのほか、色々、本当にいろいろ考えてみたものの、良い案が思いつかなかった。
  
 ほどなくして、私とボウウ様の、正式な婚約が整った。まだ社会人になったばかりだから、書類上だけで。
 主君であるヌケドメ殿下と、タンシ聖女様のご結婚よりも先にするわけにもいかないので、婚約披露は半年後になった。

 まだだ。最後まで諦めたらダメだ。結婚する瞬間まで、諦めたらそこでジエンドだよ。

 四角い眼鏡の、某スポーツアニメの先生の言葉がリフレインする。

 ハイセン先生、私は、回避がしたいんです。

 だばーっと涙を流して、空想の先生に思いの丈を伝える。すると、ハイセン先生が、ほっほと笑って、「諦めるのも、時には効果的なんですよ」と、私を暗闇に落としてしまった。そんな、馬鹿なー。

 そこで、私は目が覚めた。汗だくで、起きたばかりなのに息があがっている。

「うー、いやな夢を見た……先生、そこは、あきらめたらそこでバトルエンドですよ、でしょう……ひどーい……」

 体が重だるい。うー、体調不良で、今日はこのまま惰眠のかぎりをつくそうか。そんな風に思っていると、メイドちゃんが、元気いっぱいで入ってきた。

「お嬢様! 今日は、待ちに待った、デ・ー・ト♡ですね! いいなぁ、かの老舗スイーツ店、アースリケージに行かれるんですよね。なんでも、私たちにまで、特別におみやまで準備していただけてるとか。ふふふ、楽しみですー」

「そうね。確かに、美味しいしどのスイーツも間違いないわよ」

 そうだった。今日のデートをすっぽかせば、伝説のスイーツが手に入らない。コレを逃せば、うちのメイドたちが一生口にできないかも。

 そうよ、今日は、この子たちにおみやげを持って帰るというミッションがあったんだ。

 私は、なんとか無事に夕方どころかお昼すぎにとっととお土産を持って帰ってこようと握りこぶしを作った。

 メイドちゃんがちの力で、今日の私は、やや下からのツインテールに、少女の面影を残したふんわりしたワンピースを着せられた。そう、まるで☆(ゝω・)vキャピの黒歴史を彷彿させるような、だ。

 あかん、これはあかん。これでデートなんかしたら、もっと彼が私に執着するではないか。

「ちょ、これは……」
「本当は、10代前半までのものですが、大人風にアレンジしましたからご安心を。今、王都で聖女様のような、清楚系ふんわりかわいいファッションが流行っているんですよ。ふふふ、普段のお嬢様と違うから、ボウウ様もきっと驚かれて、ますますお嬢様に恋い焦がれますわ」

 まるで、恋の勝負は私の勝ちとばかりに、親指を立てられた。

 ちゃうねん。真逆がいいねん。

 間違いだらけの、聞きかじり関西弁がでそうになる。

 今すぐ、この間の服に変えてと言おうとした時、待ち合わせよりも1時間も早く、彼が来てしまった。

 さあさあと、はしゃぐメイドちゃんたちに急き立てられ彼のもとに向かう。
 すると、私を一目見た彼の口がぽかんとあいて、囁くように言葉を発した。

「……キヨク……、たん。うっそだろ。ヤッべ……」

 幸い、はしゃいでいるメイドちゃんたちには聞こえなかったようだが、私の耳にはバッチリ聞こえた。

 たんって、たんって言った! まさか、当時のあいつら、私のことを、たん付けて呼んでたの? ヤッベってなんだ、ヤッベってー! あんた、そんなキャラじゃないだろーと、デートように前髪をアップしたその丸出しのおでこに、ちからいっぱい手のひらでツッコミたい。

 彼の、一目惚れしたという、14歳の私の黒歴史が、ふたりの脳裏に蘇る。

 一方は夢現で幸せな、もう一方は地獄のような長い時間を共有しながら、アースリケージに向かったのである。





デ・ー・ト♡ これが一瞬でも顔に見えた方。残念ながら、作者と同じ症状を患っております。

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