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馬車が突然止まった。
「きゃあ!」
一気に前につんのめる。転げ落ちそうになったが、寸でのところで堪えた。
「雨? きゃあっ!」
気が付かなかったが、まだ昼過ぎだというのに、周囲は真っ暗だった。雨が激しく振っており、天は神が怒りを表しているかのように、大きな黒い雲の中で雷が発生している。御者台から、ピスティの声がした。
「フェルミさん、落雷があったようで、大木が行く手を塞いでいます。ここから先は馬車では通れません。このまま待機するには、追手が来る可能性があるため、得策ではありません。馬も怯えて動けないようです。雨に濡れてしまいますが、歩けますか?」
「はい、大丈夫です」
ピスティに言われるがまま、フェルミは馬車から降りた。一瞬で身体がずぶ濡れになる。ワンピースが張り付いて、うまく走れない。水を含んだ服がどんどん体温を奪っていった。
「大雨だと私のスキルは役に立ちません。ですが、もうすぐ町があるはずです。そこまで行けば……」
「はい、私なら走れますから……ああ、ピスティさん、ピスティさん!」
息があがる。脇腹も痛い。必死に呼吸をくり返した。自分がいないほうが、ピスティは身軽に動けるだろう。そう思った時、眼の前を走る彼がゆっくり倒れた。肩に矢が突き刺さっている。
「しっかりしてください! ああ、どうしたら……」
フェルミは、本では様々なバトルシーンを読んでいた。だが、実際に見たのが初めてで、崩れ落ちた彼の側に膝をつき、ただ泣き叫ぶのが精一杯だった。
「くそ、約束が違うじゃないか……。お茶会のあと、公爵邸ではなく、港町にいるあの方の元に、連れて行く予定だけだったはずなのに」
「ピスティさん、何を?」
雨の音と、近づく数人の足音のせいで、彼が何を言ったのかわからない。
ぐいっと乱暴に腕を掴まれて立たされた。
「ピスティ、ご苦労だったな」
「お前、奇襲をかけるなんて聞いていないぞ? これはどういうことだ? 御者は買収していたし、シアノだってどうとでもできた。このことは、あの方は知っているのか?」
「あの方は知らないさ。今の俺の主は、別の方だからな。お前がもたもたしているせいで、数ヶ月もこの国に足止めされちまった。しびれを切らした俺が、報酬が良い新しい主に鞍替えするのは当然さ。最初から、こうしてればよかったんだよ!」
男が言い終わると同時に、ピスティの胸に剣が突き立てられた。彼の口から、真紅の命の煌めきが大量に失われていく。
「ピスティさん! ピスティさん! 離して!」
「フェル……すまな……ごぼっ!」
どうやら、ピスティと彼らは顔見知りのようだ。彼は、いわゆるスパイだったのかもしれない。
だが、今はそれどころではない。見る間に、ピスティの胸の動きがなくなっていった。
「くくく。ちょっと奇襲をかけただけで、簡単に手に入れられる女に、今までの連中ときたら。ははは、なんともまあ無様なことだ」
男たちは、全員覆面をかぶっている。ピスティと離しをしていた男が、フェルミを肩に担ぎ上げた。
「いやっ! おろして !」
「残念だったな、お嬢さん。またまた予定変更だ。この国も、あの方が申し出をした時に、大人しく会見の場を設ければよかったのになあ。恨むなら、穏便にあんたに会いたがっていたせいで数ヶ月も待っちまったあの方や、この国、そして公爵を恨むんだな。俺は一生遊んで暮らせる大金貰えるってわけだ。最高だろ? ま、うるさいからねんねしておきな」
男の肩がお腹にぐっと入って痛い。圧迫されて気分も悪くなる。
楽しそうに、色々言っていた男が黙ると、瞼が降りてきた。
「ピスティ、さ……カイ……」
フェルミの意識がブラックアウトする。その向こう側で、自分を甘やかしていたカインの笑顔が見えた気がした。
目を覚ますと、海の香りとウミネコの鳴く声がした。とても気持ちが悪く、目眩がして起き上がれない。
「起きたかい? 大変だったね」
すぐそばで、穏やかな声がした。うっすら目を開けると、そこには心配そうに自分を見つめる男性がいた。
「???」
何がなんだか、わからない。疑問だらけで、頭の中が、まとまらない思考がぐるぐる回っていた。
「まずは、気になっているだろうことから話そう。今の君は、私の保護下に置かれている。ああ、フレイム国から出ていないし、危害を加えるつもりもない。君が望めば、話をしたあと、ゲブリオ公爵邸に送り届けると誓う。信じてくれるかい?」
フェルミは、じっと彼の瞳を見つめた。信じるも信じないも、この状況では彼の手のひらの上だろう。それに、乱暴をするような人物にも見えない。
フェルミがコクリと頷くと、男は大切なものを見るかのように微笑んだ。
「今回はすまなかったね。もっとスマートにこうして会いたかったんだが、いつまで経ってもフレイム国王やゲブリオ公爵の許可が降りなくてね。私の国の過去の所業を考えると無理はないんだが……。ピスティに、君をここに連れてくるように頼んだ。強引な手を使ったことで、他者に介入され、君を危険な目に合わせることになった。我ながら、情けないことだ」
「では、ピスティさんはあなたの仲間で、襲撃犯は元の仲間で裏切り者だということでしょうか?」
「ああ、襲撃犯たちは、元々私が雇った騎士の端くれなんだ。だが、我が国の王族の一派が、あいつらに多額の報酬を約束し、君を攫うよう依頼した。だから、こんなことになったんだが……。私がきちんとあいつらを統率できていればこんなことにはならなかった。本当にすまない」
岩の国の危険さは、コーパやガヴァネスたちから聞いている。一枚岩ではないため、裏切りが日常茶飯事だということも。
「あの、ピスティさんは? シアノさんも、怪我をされて……!」
フェルミは、最後に見たふたりの姿を思い出して声をあげた。特にピスティは、瀕死のような状態だ。すぐに助けないとと男性に詰め寄った。
「私が、一刻も早く君に逢いたいから、側近たちを向かわせていたんだ。そうしたら、偶然、襲撃に遭った騎士に出会った。すぐに、君たちを追った彼らが、ちょうど君が攫われそうになっていたところを発見して、君を救出できたんだ。勿論、ピスティも他の関係者たちも全員無事だ」
「そうだったんですね。ああ、無事で良かった……」
フェルミが、自分のことよりも他人が助かっとことに、神に感謝の祈りを捧げるのを見て、男は微笑みながら話しを続けた。
「実は、ピスティは私の甥でね、なんとか君と会えるように取り計らってもらっていた。どうか、彼を恨まないで欲しい」
フェルミは、彼の言葉にびっくりした。祈りをやめて、まじまじ彼を見つめる。
「ピスティさんは、あなたの甥なのですか? それなら、彼から私に直接伝えていただければ、お会い出来たかと思うのですが」
「それが、何度も申し込みをしたんだ。ピスティも、何度も君に話しをしたがったそうだが、君とふたりきりになるチャンスがなかったそうだ。それに、私と君の関係性もあって、ピスティが動かなければ、一生会えなかったと思う」
「私と、あなたの関係……、ですか?」
フェルミは、彼の話しを聞いて顎が外れんばかりに驚愕したのであった。
「きゃあ!」
一気に前につんのめる。転げ落ちそうになったが、寸でのところで堪えた。
「雨? きゃあっ!」
気が付かなかったが、まだ昼過ぎだというのに、周囲は真っ暗だった。雨が激しく振っており、天は神が怒りを表しているかのように、大きな黒い雲の中で雷が発生している。御者台から、ピスティの声がした。
「フェルミさん、落雷があったようで、大木が行く手を塞いでいます。ここから先は馬車では通れません。このまま待機するには、追手が来る可能性があるため、得策ではありません。馬も怯えて動けないようです。雨に濡れてしまいますが、歩けますか?」
「はい、大丈夫です」
ピスティに言われるがまま、フェルミは馬車から降りた。一瞬で身体がずぶ濡れになる。ワンピースが張り付いて、うまく走れない。水を含んだ服がどんどん体温を奪っていった。
「大雨だと私のスキルは役に立ちません。ですが、もうすぐ町があるはずです。そこまで行けば……」
「はい、私なら走れますから……ああ、ピスティさん、ピスティさん!」
息があがる。脇腹も痛い。必死に呼吸をくり返した。自分がいないほうが、ピスティは身軽に動けるだろう。そう思った時、眼の前を走る彼がゆっくり倒れた。肩に矢が突き刺さっている。
「しっかりしてください! ああ、どうしたら……」
フェルミは、本では様々なバトルシーンを読んでいた。だが、実際に見たのが初めてで、崩れ落ちた彼の側に膝をつき、ただ泣き叫ぶのが精一杯だった。
「くそ、約束が違うじゃないか……。お茶会のあと、公爵邸ではなく、港町にいるあの方の元に、連れて行く予定だけだったはずなのに」
「ピスティさん、何を?」
雨の音と、近づく数人の足音のせいで、彼が何を言ったのかわからない。
ぐいっと乱暴に腕を掴まれて立たされた。
「ピスティ、ご苦労だったな」
「お前、奇襲をかけるなんて聞いていないぞ? これはどういうことだ? 御者は買収していたし、シアノだってどうとでもできた。このことは、あの方は知っているのか?」
「あの方は知らないさ。今の俺の主は、別の方だからな。お前がもたもたしているせいで、数ヶ月もこの国に足止めされちまった。しびれを切らした俺が、報酬が良い新しい主に鞍替えするのは当然さ。最初から、こうしてればよかったんだよ!」
男が言い終わると同時に、ピスティの胸に剣が突き立てられた。彼の口から、真紅の命の煌めきが大量に失われていく。
「ピスティさん! ピスティさん! 離して!」
「フェル……すまな……ごぼっ!」
どうやら、ピスティと彼らは顔見知りのようだ。彼は、いわゆるスパイだったのかもしれない。
だが、今はそれどころではない。見る間に、ピスティの胸の動きがなくなっていった。
「くくく。ちょっと奇襲をかけただけで、簡単に手に入れられる女に、今までの連中ときたら。ははは、なんともまあ無様なことだ」
男たちは、全員覆面をかぶっている。ピスティと離しをしていた男が、フェルミを肩に担ぎ上げた。
「いやっ! おろして !」
「残念だったな、お嬢さん。またまた予定変更だ。この国も、あの方が申し出をした時に、大人しく会見の場を設ければよかったのになあ。恨むなら、穏便にあんたに会いたがっていたせいで数ヶ月も待っちまったあの方や、この国、そして公爵を恨むんだな。俺は一生遊んで暮らせる大金貰えるってわけだ。最高だろ? ま、うるさいからねんねしておきな」
男の肩がお腹にぐっと入って痛い。圧迫されて気分も悪くなる。
楽しそうに、色々言っていた男が黙ると、瞼が降りてきた。
「ピスティ、さ……カイ……」
フェルミの意識がブラックアウトする。その向こう側で、自分を甘やかしていたカインの笑顔が見えた気がした。
目を覚ますと、海の香りとウミネコの鳴く声がした。とても気持ちが悪く、目眩がして起き上がれない。
「起きたかい? 大変だったね」
すぐそばで、穏やかな声がした。うっすら目を開けると、そこには心配そうに自分を見つめる男性がいた。
「???」
何がなんだか、わからない。疑問だらけで、頭の中が、まとまらない思考がぐるぐる回っていた。
「まずは、気になっているだろうことから話そう。今の君は、私の保護下に置かれている。ああ、フレイム国から出ていないし、危害を加えるつもりもない。君が望めば、話をしたあと、ゲブリオ公爵邸に送り届けると誓う。信じてくれるかい?」
フェルミは、じっと彼の瞳を見つめた。信じるも信じないも、この状況では彼の手のひらの上だろう。それに、乱暴をするような人物にも見えない。
フェルミがコクリと頷くと、男は大切なものを見るかのように微笑んだ。
「今回はすまなかったね。もっとスマートにこうして会いたかったんだが、いつまで経ってもフレイム国王やゲブリオ公爵の許可が降りなくてね。私の国の過去の所業を考えると無理はないんだが……。ピスティに、君をここに連れてくるように頼んだ。強引な手を使ったことで、他者に介入され、君を危険な目に合わせることになった。我ながら、情けないことだ」
「では、ピスティさんはあなたの仲間で、襲撃犯は元の仲間で裏切り者だということでしょうか?」
「ああ、襲撃犯たちは、元々私が雇った騎士の端くれなんだ。だが、我が国の王族の一派が、あいつらに多額の報酬を約束し、君を攫うよう依頼した。だから、こんなことになったんだが……。私がきちんとあいつらを統率できていればこんなことにはならなかった。本当にすまない」
岩の国の危険さは、コーパやガヴァネスたちから聞いている。一枚岩ではないため、裏切りが日常茶飯事だということも。
「あの、ピスティさんは? シアノさんも、怪我をされて……!」
フェルミは、最後に見たふたりの姿を思い出して声をあげた。特にピスティは、瀕死のような状態だ。すぐに助けないとと男性に詰め寄った。
「私が、一刻も早く君に逢いたいから、側近たちを向かわせていたんだ。そうしたら、偶然、襲撃に遭った騎士に出会った。すぐに、君たちを追った彼らが、ちょうど君が攫われそうになっていたところを発見して、君を救出できたんだ。勿論、ピスティも他の関係者たちも全員無事だ」
「そうだったんですね。ああ、無事で良かった……」
フェルミが、自分のことよりも他人が助かっとことに、神に感謝の祈りを捧げるのを見て、男は微笑みながら話しを続けた。
「実は、ピスティは私の甥でね、なんとか君と会えるように取り計らってもらっていた。どうか、彼を恨まないで欲しい」
フェルミは、彼の言葉にびっくりした。祈りをやめて、まじまじ彼を見つめる。
「ピスティさんは、あなたの甥なのですか? それなら、彼から私に直接伝えていただければ、お会い出来たかと思うのですが」
「それが、何度も申し込みをしたんだ。ピスティも、何度も君に話しをしたがったそうだが、君とふたりきりになるチャンスがなかったそうだ。それに、私と君の関係性もあって、ピスティが動かなければ、一生会えなかったと思う」
「私と、あなたの関係……、ですか?」
フェルミは、彼の話しを聞いて顎が外れんばかりに驚愕したのであった。
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