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54 甘い香りの雇い主
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「カインさん、こう言ってはあれなんですけど、フェルミさんに、全くと言っていいほど相手にされてませんよね……」
「シー、おま、言うなよ。本人が一番わかってるって。傷をえぐるな」
「もともと高嶺の花だもんなあ。そういえば、お前らはゲブリオ公爵の邸で知り合った侍女ちゃんたちと恋人になったらしいな」
「僕は、国や団長の命令もありましたし、頑張ろうと思ったんですけどね。年上の女性で魅力的でしたし。でも、ほら。あのカインさんですら太刀打ち出来ないんですよ。僕なんか無理ですって。そりゃ、近くにいる可愛い侍女ちゃんが告白してくれたら、仲良くなってもいいじゃないですか」
「悪いとは言ってない。仕事に支障がなければな。それにしても、騎士団の中で、残っているのはカインだけとはな……」
コーパの執務室には、今日の当番の騎士以外が勢揃いしている。勿論、その中にはカインもいて、彼らの会話を聞いてふてくされていた。
コーパは、ランサミはもともとその気はないとしても、5人も様々なタイプの男がずっと側にいれば、誰かと懇意になってもおかしくないと考えていた。だからこそ、独身の騎士をつけたのだ。
しかし、フェルミにとって、男というものは異次元生物のような、知人や友人以外にはなり得ない存在なのだろうか。最初から有利なカインが側にいて、赤羅様なアプローチをしても、なしのつぶてなのは計算外もいいところだった。
「おい、お前ら。聞こえているぞ。ちゃんと、脈はあるんだ、脈は。現に、俺にしか見せない表情や反応があるんだからな。フェルミさんは俺を真っ先に頼ってくれるし。隣にいさせてくれるし。この間なんて、手を握って腰を支えても許してくれたんだぞ」
「そりゃ、彼女が躓いたからだろ」
カインは、ぐっと言葉を詰まらせた。悪あがきのように言ってみたものの、彼らと同じようにフェルミに相手にされていないと痛感している。
「カインさんがいない時は、俺達もお前のように頼りにされてるんだが」
「僕は、カインさんほど図々しくできないので、何もないのにぴったり隣にひっつくなんて無理ですけど。ダンスの相手になった時は、全面的に信頼して体を預けてくれますよ 」
騎士たちは、少々鬱屈とした気分の彼を慰めるどころか、更に追い打ちをかけた。コーパは、確認済みの書類に目を落として知らんふりをしている。
「な、なん、なっ……! だ、ダンスの相手、だと? ダンスといえば、男女が密着するアレか? お前、フェルミさんのあんなところやこんなところを、俺の許可なく触ったのか?」
聞き捨てならないことを言ったシアノに、カインが詰め寄った。彼は、しまったと口を手で隠すが、出てしまった言葉はもう戻らない。
「わあ、馬鹿野郎。カインだけダンスの練習パートナーになってないってことは内緒だっただろ……あ、いや、カイン、今のは言葉のあやというか。そもそも、いかがわしい想像なんかするなって!」
さらに、タオが追い打ちをかける。自分だけダンスのパートナーにしてくれなかったと知り、カインは燃え尽きた灰のように項垂れた。
「そんな、フェルミさん……。俺だけだって……言ってたのに……」
勿論、フェルミはカインに「あなただけよ♡」などと言ったことはない。勘違いさせるような言動もしたことなど皆無だ。あるとすれば、彼女が信頼をしているのは、ファーリの次がカインだと言うくらいだろう。
(この間の夜会の時に、どこぞの王族が彼女とダンスをしてベタベタベタベタベタベタ触っていた。あれほど腸が煮えくり返ったのはあの時が最初だが、俺のフェルミが断れない相手とのダンスだからと容認してやっていたのに)
カインは再起不能なほど、ずどんと落ち込んだ。
「まあなんだ。カイン以外も公爵邸に行きたい理由がある。今後も今のメンバーで問題なかろう。ただなぁ、陛下から数ヶ月経つのに、女性一人に何をやっているとお叱りがあってな。傷心中なんだから、もうちょっとなんとかしろだとさ。フェルミさん自身が男とどうこうという気持ちがないがな。カイン、今のところお前が一番有力候補だ。もう少し、お前の出番を増やしたいが、大丈夫か?」
コーパの提案に、カインの底辺まで落ちた気持ちが急上昇して、ふたつ返事で了承した。
「毎日、二十四時間大丈夫です。なんなら、俺ひとりでもいいです。俺達は一緒に寝起きした仲ですし、寝室まででも俺はかまいません」
「カインさん、誤解を招くような言い方をしないでくださいね。それは船の中限定でしょう? ただ、僕は、カインさんを応援します。ですから、勝算がこれっぽっちもなくても諦めないでください!」
「お前は一言多いんだよ。たしかに、勝算はなさそうだが、俺も手伝ってやるから。ただし、寝室はダメだぞ」
こうして、カインは週のの殆どをフェルミと共に過ごすことになった。天にも登りそうなほど足取りは軽い。暖簾に腕押し状態の彼を、憐れに思って応援する侍女たちの協力もあり、フェルミと更に打ち解けていった。
ガヴァネスの授業が一段落するやいなや、カインが軽食を持ってきた。そこには、お茶だけでなく、カットされたメローゴールドが乗せられ、酸味を和らげるはちみつや生クリーム、砂糖などが添えられている。切り口はぷりっとしており、とてもみずみずしい。グレープフルーツよりも苦みがないため、とても甘く感じられた。
「フェルミさん、珍しい外国の果物があるんだが、そろそろ休憩して食べないか?」
「ええ。カインさんも、ランサミさんも一緒にどうですか?」
「私は、その果物が苦手なので遠慮しておきます。どうぞ、ふたりで食べてください」
カインが睨まずとも、ランサミに彼を邪魔する気はない。少し離れたところでフェルミを見守る。
ランサミは、女性を寄せ付けなかったカインのあまりの変わりように、最初はびっくりしたが、変わらずフェルミにだけ甘い態度を取るカインに慣れてきた。スルー検定というものがあるとすれば、ランサムがトップだろう。
カインがでれでれと目尻を下げて、メローゴールドを刺したフォークを差し出す。まるで、求愛給餌行動をしている雄鳥のようだ。
「か、カインさん。ひとりで食べられますから」
「昨日、本で指を切っただろう? 小指に逆剥けもある。切り傷に知るが入ったら大変だ。ほら、口をあけて」
「とても小さい傷ですから。もう治ってますし……」
「ダメだよ。ほら」
カインが強引に口元に持っていくと、照れた彼女の小さな唇が開く。ぷるんとした唇は、思わず吸い付きたくなるほどだ。彼女の口の中に消えたメローゴールドの果実が羨ましいとさえ思う。
「フェルミさん、ついてる」
唇についたメローゴールドの汁が、カインの唇を吸い寄せようと魅了してくる。苦渋の決断で我慢をして指先で拭き取った。
「あ、あの……ありがとう、ございます……。もっとすっぱくて苦いのかと思っていたんですけど、とても甘いですね」
「フェルミさんが好きなら、また買ってくるよ」
「え? これ、カインさんが買ってきてくれたんですか?」
「ああ。また、これの他にも、美味しそうなものを見つけたら買ってくる」
カインがそう言いながら微笑むと、フェルミが顔を真っ赤にする。それは、まるで熟した甘いイチゴのようだ。まだ、彼女にとっては自分は恋人以前の存在だろう。しかし、誰よりも自分がフェルミの心に近しいのだと感じて口元が綻んだ。
(こういう時、この人が俺を好きなのかもしれないと勘違いしそうになる……。フェルミさんの気持ちは、俺に完全に向いていないんだ。強引に進めるにはまだ早いし、今はこれで満足しないと)
カインは、もどかしい彼女との距離を推し量りながら、思わせぶりに繋いだ指を絡めるだけにとどめたのであった。
「シー、おま、言うなよ。本人が一番わかってるって。傷をえぐるな」
「もともと高嶺の花だもんなあ。そういえば、お前らはゲブリオ公爵の邸で知り合った侍女ちゃんたちと恋人になったらしいな」
「僕は、国や団長の命令もありましたし、頑張ろうと思ったんですけどね。年上の女性で魅力的でしたし。でも、ほら。あのカインさんですら太刀打ち出来ないんですよ。僕なんか無理ですって。そりゃ、近くにいる可愛い侍女ちゃんが告白してくれたら、仲良くなってもいいじゃないですか」
「悪いとは言ってない。仕事に支障がなければな。それにしても、騎士団の中で、残っているのはカインだけとはな……」
コーパの執務室には、今日の当番の騎士以外が勢揃いしている。勿論、その中にはカインもいて、彼らの会話を聞いてふてくされていた。
コーパは、ランサミはもともとその気はないとしても、5人も様々なタイプの男がずっと側にいれば、誰かと懇意になってもおかしくないと考えていた。だからこそ、独身の騎士をつけたのだ。
しかし、フェルミにとって、男というものは異次元生物のような、知人や友人以外にはなり得ない存在なのだろうか。最初から有利なカインが側にいて、赤羅様なアプローチをしても、なしのつぶてなのは計算外もいいところだった。
「おい、お前ら。聞こえているぞ。ちゃんと、脈はあるんだ、脈は。現に、俺にしか見せない表情や反応があるんだからな。フェルミさんは俺を真っ先に頼ってくれるし。隣にいさせてくれるし。この間なんて、手を握って腰を支えても許してくれたんだぞ」
「そりゃ、彼女が躓いたからだろ」
カインは、ぐっと言葉を詰まらせた。悪あがきのように言ってみたものの、彼らと同じようにフェルミに相手にされていないと痛感している。
「カインさんがいない時は、俺達もお前のように頼りにされてるんだが」
「僕は、カインさんほど図々しくできないので、何もないのにぴったり隣にひっつくなんて無理ですけど。ダンスの相手になった時は、全面的に信頼して体を預けてくれますよ 」
騎士たちは、少々鬱屈とした気分の彼を慰めるどころか、更に追い打ちをかけた。コーパは、確認済みの書類に目を落として知らんふりをしている。
「な、なん、なっ……! だ、ダンスの相手、だと? ダンスといえば、男女が密着するアレか? お前、フェルミさんのあんなところやこんなところを、俺の許可なく触ったのか?」
聞き捨てならないことを言ったシアノに、カインが詰め寄った。彼は、しまったと口を手で隠すが、出てしまった言葉はもう戻らない。
「わあ、馬鹿野郎。カインだけダンスの練習パートナーになってないってことは内緒だっただろ……あ、いや、カイン、今のは言葉のあやというか。そもそも、いかがわしい想像なんかするなって!」
さらに、タオが追い打ちをかける。自分だけダンスのパートナーにしてくれなかったと知り、カインは燃え尽きた灰のように項垂れた。
「そんな、フェルミさん……。俺だけだって……言ってたのに……」
勿論、フェルミはカインに「あなただけよ♡」などと言ったことはない。勘違いさせるような言動もしたことなど皆無だ。あるとすれば、彼女が信頼をしているのは、ファーリの次がカインだと言うくらいだろう。
(この間の夜会の時に、どこぞの王族が彼女とダンスをしてベタベタベタベタベタベタ触っていた。あれほど腸が煮えくり返ったのはあの時が最初だが、俺のフェルミが断れない相手とのダンスだからと容認してやっていたのに)
カインは再起不能なほど、ずどんと落ち込んだ。
「まあなんだ。カイン以外も公爵邸に行きたい理由がある。今後も今のメンバーで問題なかろう。ただなぁ、陛下から数ヶ月経つのに、女性一人に何をやっているとお叱りがあってな。傷心中なんだから、もうちょっとなんとかしろだとさ。フェルミさん自身が男とどうこうという気持ちがないがな。カイン、今のところお前が一番有力候補だ。もう少し、お前の出番を増やしたいが、大丈夫か?」
コーパの提案に、カインの底辺まで落ちた気持ちが急上昇して、ふたつ返事で了承した。
「毎日、二十四時間大丈夫です。なんなら、俺ひとりでもいいです。俺達は一緒に寝起きした仲ですし、寝室まででも俺はかまいません」
「カインさん、誤解を招くような言い方をしないでくださいね。それは船の中限定でしょう? ただ、僕は、カインさんを応援します。ですから、勝算がこれっぽっちもなくても諦めないでください!」
「お前は一言多いんだよ。たしかに、勝算はなさそうだが、俺も手伝ってやるから。ただし、寝室はダメだぞ」
こうして、カインは週のの殆どをフェルミと共に過ごすことになった。天にも登りそうなほど足取りは軽い。暖簾に腕押し状態の彼を、憐れに思って応援する侍女たちの協力もあり、フェルミと更に打ち解けていった。
ガヴァネスの授業が一段落するやいなや、カインが軽食を持ってきた。そこには、お茶だけでなく、カットされたメローゴールドが乗せられ、酸味を和らげるはちみつや生クリーム、砂糖などが添えられている。切り口はぷりっとしており、とてもみずみずしい。グレープフルーツよりも苦みがないため、とても甘く感じられた。
「フェルミさん、珍しい外国の果物があるんだが、そろそろ休憩して食べないか?」
「ええ。カインさんも、ランサミさんも一緒にどうですか?」
「私は、その果物が苦手なので遠慮しておきます。どうぞ、ふたりで食べてください」
カインが睨まずとも、ランサミに彼を邪魔する気はない。少し離れたところでフェルミを見守る。
ランサミは、女性を寄せ付けなかったカインのあまりの変わりように、最初はびっくりしたが、変わらずフェルミにだけ甘い態度を取るカインに慣れてきた。スルー検定というものがあるとすれば、ランサムがトップだろう。
カインがでれでれと目尻を下げて、メローゴールドを刺したフォークを差し出す。まるで、求愛給餌行動をしている雄鳥のようだ。
「か、カインさん。ひとりで食べられますから」
「昨日、本で指を切っただろう? 小指に逆剥けもある。切り傷に知るが入ったら大変だ。ほら、口をあけて」
「とても小さい傷ですから。もう治ってますし……」
「ダメだよ。ほら」
カインが強引に口元に持っていくと、照れた彼女の小さな唇が開く。ぷるんとした唇は、思わず吸い付きたくなるほどだ。彼女の口の中に消えたメローゴールドの果実が羨ましいとさえ思う。
「フェルミさん、ついてる」
唇についたメローゴールドの汁が、カインの唇を吸い寄せようと魅了してくる。苦渋の決断で我慢をして指先で拭き取った。
「あ、あの……ありがとう、ございます……。もっとすっぱくて苦いのかと思っていたんですけど、とても甘いですね」
「フェルミさんが好きなら、また買ってくるよ」
「え? これ、カインさんが買ってきてくれたんですか?」
「ああ。また、これの他にも、美味しそうなものを見つけたら買ってくる」
カインがそう言いながら微笑むと、フェルミが顔を真っ赤にする。それは、まるで熟した甘いイチゴのようだ。まだ、彼女にとっては自分は恋人以前の存在だろう。しかし、誰よりも自分がフェルミの心に近しいのだと感じて口元が綻んだ。
(こういう時、この人が俺を好きなのかもしれないと勘違いしそうになる……。フェルミさんの気持ちは、俺に完全に向いていないんだ。強引に進めるにはまだ早いし、今はこれで満足しないと)
カインは、もどかしい彼女との距離を推し量りながら、思わせぶりに繋いだ指を絡めるだけにとどめたのであった。
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