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これって、女神が言っていた、文句なしのハッピーエンド? ③
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ダンは、あれから初日のような馴れ馴れしい態度を取る事はなかった。指をなめたりとか、手の平に乗せても、でろーんと伸びて甘えるなんて事も。
少し寂しくなったけれど、彼にしてみればペット扱いの延長で可愛がられても複雑なのだろう。
「ダン。お風呂に入って来るね」
「……チィ」
「お利口で待っててね? いいわね?」
「……チ」
ダンのお風呂は、獣の姿だと基本砂風呂らしく砂を準備した。彼は、私のお風呂の度に少しでも離れようとすると寂しそうに力なく渋々返事をする。
その愛らしく切なそうな小さくて頼りなく、可愛い姿に胸をいた…………全く、なんら痛まなかった。連れて行って欲しそうだとは分かるが、敢えて見ないふりをしてささっと浴室に向かうと、どんな虫一匹すら入って来られないように、脱衣所に強固な結界を張る。
※※※※
初めて会った日に、お風呂で裸同士でいたのかと理解した時、首から上が沸騰したかのように感じた。彼は今はハムチュターン成分が多いけれど立派な18才の男の子なのだ。
『ねえ、ダン。貴方私の裸を見たわよね……? それに、それにぃ……!』
そう、彼は鼻先を突っ込みアソコのその奥に入ろう入ろうとしていたのを思い出したのである。はっきりいって痴漢だ。変態だ。犯罪だ。
──何をするつもりだったんだ、この野郎!
そりゃもう、怒った。怒り狂って、ダンに対して人差し指を突き付けて言い逃れできないように追い詰める。
人間とか大きい姿ならビンタしてたかもしれない。
流石に小さな彼には、それでも可愛いから、そんな事は出来なかった。
でも怒りはおさまらない。
『チ! チチチチ!』
ダンも、慌てて何かを伝えようとしているけれど、どうせ、そんなつもりじゃなかったんだ! とかなんとかテンプレでもあるのかと思うような痴漢行為の言い訳に決まっている。
『見たわよね?』
『チチッチチ!』
ぶんぶんと首を振って、心なしか涙目になっている気がする。じりじり後ずさりして、壁に背中が当たると、ぺたんと腹ばいになった。
『チー……、チチ! チー……チゥ……』
『う……可愛い……!! じゃなくって。これは、わかるわ、ごめんなさいでしょ?』
『チ!』
──やっぱりか! この、エロハムー!!!!
『じゃあ、痴漢セクハラを認めるのね?』
『チチッチチ!』
『これもわかるわ! 違うとか、誤解なんだ、でしょう!』
『チ!』
『しんっじらんないっ!』
私は羞恥と怒りで頭に血がのぼっていたし、ダンも私に怒られたのと、裸を見て色々しちゃった事に焦っていたから文字盤でゆっくり状況を聞くなんて無理だった。
ここに、ハムチュターン族がいたら、通訳もしてもらえるんだろうけれど、やっぱり南国で暮らす彼らにとって北の果ての気候で過ごすのは無理みたい。
ダンに凍えて欲しくないから、彼の周りの結界や気温調節の魔法をよりしっかりと組んだ。私が眠っても間違いなく動作するように、勿論チート使って彼を守っている。
『……埒が明かないわね……。人化したらきちんと説明してもらうからね? いいわね?』
『……チゥ……』
『い・い・わ・ね?』
『チ!』
サンタクロース協会への出勤は、今の所事務仕事だけだ。これまで余りに余りまくっているどころか、消化しきれず消えていった有給もある。それの消化をしていいと指示されて、サンタ業をしている面々は25日から年明けの初出勤まで連休を貰っていた。
そんなこんなで、一度はぎくしゃくしたものの、ダンとケンカができるほど仲良くなった。といっても、彼は私のやる事なす事全てを喜んで受け入れるから私が一方的に怒っているのだけれども。
そうして年末年始を迎えたある日、ライラの元にお祝いに行く事になったのであった。
※※※※
「いらっしゃい! エミリアお姉ちゃん!」
「年始の慌ただしい時にお邪魔してごめんね、ライラ、会いたかったわ」
私は、ライラの家にダンを連れて行った。長時間になるかもしれないし、ライラの旦那様とはいえ、他の男性のいるところに私一人で行くのが嫌なのだろう。
ヤキモチと独占欲が少々強いけれど、無理強いはしないらしいし、現状彼には私に何かを仕掛けるのは無理だ。
それに、ハムチュターン族は本当に番への愛情は深い。行動原理は相手の幸せが基準で、夢見勝ちなポジティブ思考をする種族。
言い換えると思考は単純で喜怒哀楽が表にすぐ出るっぽいから、腹黒とか精神がひんまがった者はそうそういないんだって。
──詐欺に合いやすそうだなあ……
少し、ダンの国が心配になる。一応、他人への警戒心は滅茶苦茶強いらしいし賢さもあるから大丈夫っぽいけど……。
あと、本気で相手が嫌がることはしないと、調べてわかった。
無用の心配や嫉妬をさせたいわけでもないため、ちょっとした遠出用のケージにいれているのであった。
「ふふふ、いいのよー。私も夫も孤児だから親戚全員集まったりとかってないし。あ、お姉ちゃん、改めて紹介するね。夫の、オスクよ」
「突然お邪魔してすみません。ライラの旦那様に、こうしてまたお会いできて嬉しいです」
「いえ、ライラからたくさん聞かされていたお姉さんに会えて、僕も嬉しく思います。口を開けばエミリアさんの事ばかりで、実は焼いていました」
「あー、もう。オスクったらぁ! 言わないでっていったのに!」
「ははは、ライラ、ごめんよ」
仲睦まじく、オスクがライラをとても愛していて大切にしているのがわかる。クリスマスイブの時も思っていたけれど、安泰の仲の良さを見せつけられて、こちらまで心がぽかぽかして、自然とニコニコと微笑んだ。
「ねえ、お姉ちゃん、その手に持っているのって……」
「ああ、これはね……」
「ライラー。オーブンが焦げ臭くなってきたぞー! どうすりゃいいんだ?」
ダンの事を説明して紹介しようとした時、キッチンの方から男性がライラを呼ぶ声がしたのであった。
少し寂しくなったけれど、彼にしてみればペット扱いの延長で可愛がられても複雑なのだろう。
「ダン。お風呂に入って来るね」
「……チィ」
「お利口で待っててね? いいわね?」
「……チ」
ダンのお風呂は、獣の姿だと基本砂風呂らしく砂を準備した。彼は、私のお風呂の度に少しでも離れようとすると寂しそうに力なく渋々返事をする。
その愛らしく切なそうな小さくて頼りなく、可愛い姿に胸をいた…………全く、なんら痛まなかった。連れて行って欲しそうだとは分かるが、敢えて見ないふりをしてささっと浴室に向かうと、どんな虫一匹すら入って来られないように、脱衣所に強固な結界を張る。
※※※※
初めて会った日に、お風呂で裸同士でいたのかと理解した時、首から上が沸騰したかのように感じた。彼は今はハムチュターン成分が多いけれど立派な18才の男の子なのだ。
『ねえ、ダン。貴方私の裸を見たわよね……? それに、それにぃ……!』
そう、彼は鼻先を突っ込みアソコのその奥に入ろう入ろうとしていたのを思い出したのである。はっきりいって痴漢だ。変態だ。犯罪だ。
──何をするつもりだったんだ、この野郎!
そりゃもう、怒った。怒り狂って、ダンに対して人差し指を突き付けて言い逃れできないように追い詰める。
人間とか大きい姿ならビンタしてたかもしれない。
流石に小さな彼には、それでも可愛いから、そんな事は出来なかった。
でも怒りはおさまらない。
『チ! チチチチ!』
ダンも、慌てて何かを伝えようとしているけれど、どうせ、そんなつもりじゃなかったんだ! とかなんとかテンプレでもあるのかと思うような痴漢行為の言い訳に決まっている。
『見たわよね?』
『チチッチチ!』
ぶんぶんと首を振って、心なしか涙目になっている気がする。じりじり後ずさりして、壁に背中が当たると、ぺたんと腹ばいになった。
『チー……、チチ! チー……チゥ……』
『う……可愛い……!! じゃなくって。これは、わかるわ、ごめんなさいでしょ?』
『チ!』
──やっぱりか! この、エロハムー!!!!
『じゃあ、痴漢セクハラを認めるのね?』
『チチッチチ!』
『これもわかるわ! 違うとか、誤解なんだ、でしょう!』
『チ!』
『しんっじらんないっ!』
私は羞恥と怒りで頭に血がのぼっていたし、ダンも私に怒られたのと、裸を見て色々しちゃった事に焦っていたから文字盤でゆっくり状況を聞くなんて無理だった。
ここに、ハムチュターン族がいたら、通訳もしてもらえるんだろうけれど、やっぱり南国で暮らす彼らにとって北の果ての気候で過ごすのは無理みたい。
ダンに凍えて欲しくないから、彼の周りの結界や気温調節の魔法をよりしっかりと組んだ。私が眠っても間違いなく動作するように、勿論チート使って彼を守っている。
『……埒が明かないわね……。人化したらきちんと説明してもらうからね? いいわね?』
『……チゥ……』
『い・い・わ・ね?』
『チ!』
サンタクロース協会への出勤は、今の所事務仕事だけだ。これまで余りに余りまくっているどころか、消化しきれず消えていった有給もある。それの消化をしていいと指示されて、サンタ業をしている面々は25日から年明けの初出勤まで連休を貰っていた。
そんなこんなで、一度はぎくしゃくしたものの、ダンとケンカができるほど仲良くなった。といっても、彼は私のやる事なす事全てを喜んで受け入れるから私が一方的に怒っているのだけれども。
そうして年末年始を迎えたある日、ライラの元にお祝いに行く事になったのであった。
※※※※
「いらっしゃい! エミリアお姉ちゃん!」
「年始の慌ただしい時にお邪魔してごめんね、ライラ、会いたかったわ」
私は、ライラの家にダンを連れて行った。長時間になるかもしれないし、ライラの旦那様とはいえ、他の男性のいるところに私一人で行くのが嫌なのだろう。
ヤキモチと独占欲が少々強いけれど、無理強いはしないらしいし、現状彼には私に何かを仕掛けるのは無理だ。
それに、ハムチュターン族は本当に番への愛情は深い。行動原理は相手の幸せが基準で、夢見勝ちなポジティブ思考をする種族。
言い換えると思考は単純で喜怒哀楽が表にすぐ出るっぽいから、腹黒とか精神がひんまがった者はそうそういないんだって。
──詐欺に合いやすそうだなあ……
少し、ダンの国が心配になる。一応、他人への警戒心は滅茶苦茶強いらしいし賢さもあるから大丈夫っぽいけど……。
あと、本気で相手が嫌がることはしないと、調べてわかった。
無用の心配や嫉妬をさせたいわけでもないため、ちょっとした遠出用のケージにいれているのであった。
「ふふふ、いいのよー。私も夫も孤児だから親戚全員集まったりとかってないし。あ、お姉ちゃん、改めて紹介するね。夫の、オスクよ」
「突然お邪魔してすみません。ライラの旦那様に、こうしてまたお会いできて嬉しいです」
「いえ、ライラからたくさん聞かされていたお姉さんに会えて、僕も嬉しく思います。口を開けばエミリアさんの事ばかりで、実は焼いていました」
「あー、もう。オスクったらぁ! 言わないでっていったのに!」
「ははは、ライラ、ごめんよ」
仲睦まじく、オスクがライラをとても愛していて大切にしているのがわかる。クリスマスイブの時も思っていたけれど、安泰の仲の良さを見せつけられて、こちらまで心がぽかぽかして、自然とニコニコと微笑んだ。
「ねえ、お姉ちゃん、その手に持っているのって……」
「ああ、これはね……」
「ライラー。オーブンが焦げ臭くなってきたぞー! どうすりゃいいんだ?」
ダンの事を説明して紹介しようとした時、キッチンの方から男性がライラを呼ぶ声がしたのであった。
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