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気弱なハムチュターンのあまがみ⑥ R15
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※※※※
『ダメだよ。ちゃんとお互いの両親に許可を貰わないとね? 俺のほうは、君が番だから無条件で大歓迎だけど、君は人間だろう? 明日、結婚の申し込みの挨拶に行くから……』
ベッドで一緒に寝ようと、可愛らしく甘美な誘いをしてくれた。俺だって一緒のベッドで眠りたい。人化した俺は、そっと彼女の頬に手を当てて、額にキスを贈った。
うっとり目を閉じて、俺の胸にそっと小さな手を当ててくれる。
『明日、両親に会ってくれるなんて嬉しい。私も早く結婚したいわ? 許可が必要な事も分かってる。でも……、ずっと一緒にいて欲しいの……』
『ぐぅ……。そんな事を言ったら、俺は悪い男になってしまうよ?』
『悪い男って……?』
『……』
何も知らない彼女は、本当に何もわかっていないんだ。俺がどれほど堪えているのか、どんなに今すぐ組み敷きたくて仕方がないのかも。
『ねえ、ダン。本当にダメ……?』
『ああ、もう! 可愛い君が悪いんだからな。もう止めてやらないから……!』
『え? きゃ……』
ベッドに押し倒して、上から俺の体で囲む。
彼女はびっくりして愛らしい悲鳴をあげつつ、頬を赤らめて何かを期待していた。
『君からキスをしてくれないか?』
『キスって、さっきのやつよね? うん、任せてっ!』
無邪気にはしゃぎながら、瞳を潤ませつつ首に腕を回して、下から一生懸命顔を上げて来てくれる。
俺は、彼女がキスをしやすいように顔を下げると、二人の唇が程なく重なった。
息が苦しくなる彼女のために、時々唇を離してあげる。鼻で吸うように伝えると、素直に従って一生懸命俺に応えてくれる。
『ん……はぁ……ん……』
『ああ、素敵だ。そう、上手だよ。可愛い、愛しているよ』
そう言って、そっとシーツの波に、俺に抱き着いたために浮いた彼女の体を沈み込ませて、先ほどせっかく着たパジャマを脱がせていった。
※※※※
「ハムちゃーん、さあ、寝室に行こうね~。あら? どうして目を瞑っているの?」
俺は、お風呂でぬくもってぽかぽかの彼女の両手に掬われた。
一瞬で妄想の世界から、愛しい彼女のリアルの感触と香りを楽しむ。石鹸やシャンプーの香りが邪魔な気がするけれど、それさえ愛しい人の素晴らしい匂いをより一層高めるようだ。
本当にベッドで一緒に寝たら、ひょっとしたら彼女に押しつぶされるかもしれない。だから、近く、かつ安全な場所で一緒に寝る気満々で、お風呂上りの体を毛づくろいした。
「ふふふ、大人しいしすんごい可愛い。あ、後ろ足で耳の後ろを高速で毛づくろいしてる。凄い速い~。ハムスターって体が柔らかいのねえ。さあ、着いたわ」
そう言うと、番は箱の中に俺をそっと入れた。手のひらからぴょんと箱に入る。高さは俺の今の身長の5倍はあるだろう。
「チ? チ? チチー!」
魔力のない現在の俺では、この巨大な壁を乗り越えられない。どう言う事かと必死に鳴いて番を呼んだ。
「んー。つっかれた~。ハムちゃんは夜行性だから今から元気に遊ぶんだよね? そこで遊んでてね。ふふふ、おやすみなさーい。また明日ね」
なんという事だ。番は、俺を天井だけ開いた箱に閉じ込めて(いつの間に用意したのか分からないけれど、きちんとタオルが敷かれていた。水も小さなお皿に入っていて、やわらかい干し芋とヒマワリの種まである)、無情にも去って行ったのだ。
「チーチー!」
それからは、どれほど鳴いて呼んでも、ベッドで一人ぼっちで眠ってしまったのか彼女が俺を箱から出すことが無かった。
彼女だって、寂しいけれど、節度あるお付き合いのためにここに俺を運んだのだろう。そうだ、きっと涙を堪えて俺をここに置いていったに違いない。彼女のためにも、一夜を共にするなんてやめた方がいいに決まっている。
そうは思っても、離れて行った彼女が恋しくて愛しくて悲しくなる。そして、物理的に乗り越えられない、俺たちを隔てている高く立ちふさがった壁が憎く、うらめしい。
「チー……チー……チチ……チー……」
俺は、一晩中、ぽろぽろ涙を流しながら、番の準備してくれたヒマワリの種をかじったり、干し芋を頬張ったり、妄想したり、箱の角をぐるぐる走ったりしたのであった。
──ヒマワリの種美味しい。グスグス……。あ、干し芋甘くて最高だぁ……ううう、モグモグ。どこかに、箱に穴が空いてないかなあ……ない、ないぃ~……うううう…………。モグモグモグモグ……
『ダメだよ。ちゃんとお互いの両親に許可を貰わないとね? 俺のほうは、君が番だから無条件で大歓迎だけど、君は人間だろう? 明日、結婚の申し込みの挨拶に行くから……』
ベッドで一緒に寝ようと、可愛らしく甘美な誘いをしてくれた。俺だって一緒のベッドで眠りたい。人化した俺は、そっと彼女の頬に手を当てて、額にキスを贈った。
うっとり目を閉じて、俺の胸にそっと小さな手を当ててくれる。
『明日、両親に会ってくれるなんて嬉しい。私も早く結婚したいわ? 許可が必要な事も分かってる。でも……、ずっと一緒にいて欲しいの……』
『ぐぅ……。そんな事を言ったら、俺は悪い男になってしまうよ?』
『悪い男って……?』
『……』
何も知らない彼女は、本当に何もわかっていないんだ。俺がどれほど堪えているのか、どんなに今すぐ組み敷きたくて仕方がないのかも。
『ねえ、ダン。本当にダメ……?』
『ああ、もう! 可愛い君が悪いんだからな。もう止めてやらないから……!』
『え? きゃ……』
ベッドに押し倒して、上から俺の体で囲む。
彼女はびっくりして愛らしい悲鳴をあげつつ、頬を赤らめて何かを期待していた。
『君からキスをしてくれないか?』
『キスって、さっきのやつよね? うん、任せてっ!』
無邪気にはしゃぎながら、瞳を潤ませつつ首に腕を回して、下から一生懸命顔を上げて来てくれる。
俺は、彼女がキスをしやすいように顔を下げると、二人の唇が程なく重なった。
息が苦しくなる彼女のために、時々唇を離してあげる。鼻で吸うように伝えると、素直に従って一生懸命俺に応えてくれる。
『ん……はぁ……ん……』
『ああ、素敵だ。そう、上手だよ。可愛い、愛しているよ』
そう言って、そっとシーツの波に、俺に抱き着いたために浮いた彼女の体を沈み込ませて、先ほどせっかく着たパジャマを脱がせていった。
※※※※
「ハムちゃーん、さあ、寝室に行こうね~。あら? どうして目を瞑っているの?」
俺は、お風呂でぬくもってぽかぽかの彼女の両手に掬われた。
一瞬で妄想の世界から、愛しい彼女のリアルの感触と香りを楽しむ。石鹸やシャンプーの香りが邪魔な気がするけれど、それさえ愛しい人の素晴らしい匂いをより一層高めるようだ。
本当にベッドで一緒に寝たら、ひょっとしたら彼女に押しつぶされるかもしれない。だから、近く、かつ安全な場所で一緒に寝る気満々で、お風呂上りの体を毛づくろいした。
「ふふふ、大人しいしすんごい可愛い。あ、後ろ足で耳の後ろを高速で毛づくろいしてる。凄い速い~。ハムスターって体が柔らかいのねえ。さあ、着いたわ」
そう言うと、番は箱の中に俺をそっと入れた。手のひらからぴょんと箱に入る。高さは俺の今の身長の5倍はあるだろう。
「チ? チ? チチー!」
魔力のない現在の俺では、この巨大な壁を乗り越えられない。どう言う事かと必死に鳴いて番を呼んだ。
「んー。つっかれた~。ハムちゃんは夜行性だから今から元気に遊ぶんだよね? そこで遊んでてね。ふふふ、おやすみなさーい。また明日ね」
なんという事だ。番は、俺を天井だけ開いた箱に閉じ込めて(いつの間に用意したのか分からないけれど、きちんとタオルが敷かれていた。水も小さなお皿に入っていて、やわらかい干し芋とヒマワリの種まである)、無情にも去って行ったのだ。
「チーチー!」
それからは、どれほど鳴いて呼んでも、ベッドで一人ぼっちで眠ってしまったのか彼女が俺を箱から出すことが無かった。
彼女だって、寂しいけれど、節度あるお付き合いのためにここに俺を運んだのだろう。そうだ、きっと涙を堪えて俺をここに置いていったに違いない。彼女のためにも、一夜を共にするなんてやめた方がいいに決まっている。
そうは思っても、離れて行った彼女が恋しくて愛しくて悲しくなる。そして、物理的に乗り越えられない、俺たちを隔てている高く立ちふさがった壁が憎く、うらめしい。
「チー……チー……チチ……チー……」
俺は、一晩中、ぽろぽろ涙を流しながら、番の準備してくれたヒマワリの種をかじったり、干し芋を頬張ったり、妄想したり、箱の角をぐるぐる走ったりしたのであった。
──ヒマワリの種美味しい。グスグス……。あ、干し芋甘くて最高だぁ……ううう、モグモグ。どこかに、箱に穴が空いてないかなあ……ない、ないぃ~……うううう…………。モグモグモグモグ……
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