【完結】【R18】クリスマスイブの前夜に初めて出来た恋人にフラれました~転生先で、気弱な絶倫もふもふに溺愛されちゃいます

にじくす まさしよ

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ヤンデレはお断り① 軽微でさくっとざまああり

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 結局、いい案が浮かばずに15才から18才までを元の国の王都にある自宅で過ごす事になってしまった。

 まさか自分が公爵令嬢なんて思いもしなかった。
 迎え入れられた自宅は、家や屋敷レベルではない。お城だよお城。びっくりしたよ。王様の子じゃないけど、ある意味お姫様だったわ!

 勿論使用人たちもすんごい人で、揃いも揃って、チートくらいの能力を持つんだから無為無策に逃げられないなって思ってた。それに、すぐに逃げたら、孤児院とかがマジでどうにかされるとヒヤヒヤしていたから。




「ああ、エミリア。今日も綺麗だね。綺麗なんて言葉では言い表すなど不可能なほど。どうか、その瞳に私だけをうつしておくれ」

 私は、この国の社交界で右に出る者はいないほど、すんごい色っぽい美人になった。胸はFカップくらいまで育ちすぎるほど育って肩がこる。
 ウエストもコルセットが緩いほど細くて……、は、言い過ぎた。ごめんなさい。あ、手足も長いよ。

 田舎から孤児院で育ったとは思えないほど染み一つな白い肌に、香水をつけなくても、なんかいい匂いがする。私が男ならむしゃぶりついて離れないだろう。

 そりゃもうモテた。モテにモテて、パーティ―に行こうものなら、一部のストーカー令息や使用人、護衛や騎士たちにつけ回されるほど。

 見てくれないかな? 偶然声をかけられたら……。

 から始まって、一夜を共にしたいなどなど、人によって程度の差はあるけれども、狙われる私はたまったものじゃない。

 確かに、いやっほーいな世界になった。女神の言う通りひっぱりだこ。

 だけれども、それが常軌を逸している。前世でも同じように美人って大変だったんだなと、憂いを帯びたため息を吐こうものなら、周囲が騒めく。
 男の子たちの中には股間を抑えてへっぴり腰で何処かに行ってしまうのだ。

 正直言っていい? 

 こんなの望んでいなかった。私はありきたりの幸せで良かったのになあ。と、またもやため息を一つ吐いてしまう。

 すると、目の前の青年もまたごくりと欲情のこもった眼差しで見て来るのだ。これは、一触即発ヤンデレモード発動のクラウチングスタートの合図だ。一瞬たりとも油断できない会話を単語一つ一つ気をつけながら発した。

「まあ、ほほほ。わたくしには殿下しかいませんわ。もうすぐ結婚しますのに、他の殿方に目移りするなど言われては悲しいですわ? 酷いかた……」

「ああ、エミリアッ! 殿下など他人行儀な……。どうか名前で呼んでおくれ。それにしても、君がいるというだけで不埒な男が寄っていくんだ……! 罪があるとすれば、君がいるという事だろう。いや、君が罪なんかであるはずがない……。どうすれば私だけのエミリアになってくれる? いっそ、今すぐその唇を奪ってしまいたい」

「ヤーンレデン様、もうとっくに貴方だけのものですのに、困った方ね。ふふふ。ああ、わたくしの唇も、全てを貴方に捧げる事のできる結婚式の初夜まで大切にとっておきたいのです……」


「エミリア……! ああ、私とて……。純真無垢な花嫁のエミリアもいい。だが、このまま君をこの手にもしたい。私はどうしたらいいのだろう? 私を翻弄する君は、やはり罪な人だ……」

「愛しい貴方、もうすぐですわ。貴方だけの花嫁になればその時に……ね?」


 私に甘い言葉と熱い視線でこんな風に口説いて来るのは、母とあのままここに来たらすぐに婚約する予定だった男だ。そんな男から少しでも逃れるためにキスすら許していない。
 早くセックスをしたいと言わんばかりの、しつっっっっっっっっっっこい王子に、ぞわぞわ肌がチキンになり、腹をたてつつなんとかかんとか誤魔化す日々。

 要するに、5才の時に女神が言っていたヤンデレ。私は、このままいけば、一番嫌だった未来まっしぐらの状況に放り込まれていたのである。


──いくらイケメンだろうが、じょぉーだんっじゃないわよ~ぅ! 振り出しに戻っただけじゃないかああああああ!




※※※※




 母は、望みの正妻になったものの、実権を握る事が出来なかったようだ。飼い殺しみたいになっていて、自由もなく、お金はまあまあ使えるけれど母の望むような生活には程遠い。子供をあんな風に扱う人だから、周囲の人にも恵まれていない。
 父は気まぐれに、外観だけは美しい母と一晩過ごすものの、母を愛しているかというとしょうがなく正妻にしたから義務でそうしているのがよくわかった。
 かと言って、愛人や側室はもうおらず、仕事が本気で忙しいらしく家にあまり帰ってこない。

 前の正妻が残した兄たちもまた、母違いの妹である私にとても優しい。慣れない生活と、やっぱり寂しい気持があって落ち込んでいる時に、代わる代わる声をかけて慰めてくれた。

 私が帰って来たとき、母は出てこなかったけれど、父や腹違いの兄たちが涙を流して抱きしめて喜んでくれたのにはびっくりした。どうも、父は、母はともかく、私の事はずっと気にかけていて毎週手紙を書いていたらしい。
 娘ばかりにそんな風に手紙を書くからって母が握りつぶしていたんだって。

 そんな母の性格を父は知っていた。だから、本当はあの田舎から、私だけをこの家に迎え入れたかったらしい。なので、私の捜索は父が真剣に心からしてくれていたのだった。

 そんな感じで、母以外とはそこそこいい関係を築けていた。

 迎えに来たおばちゃんは本当に家庭教師だったみたいで、品のない田舎娘とは思えない最低限の所作や勉強も一通りできる事が分かってからは馬鹿にしたりする事がなくなった。とはいえ、こういう人はあまり好きじゃない。適当にはいはい言ってあしらっていた。

 イケオジは、なんと熊の獣人だった。そりゃパワーあるわと感心したのもいい思い出だ。私が逆らわずに大人しく、しかも出来がいいので何かと気にかけてくれるおじいちゃんみたいな存在になった。

 仲の良い人が一人ずつ増えてしまって、またしても自分の首を絞めるかのように下手な事が出来なくなった。



※※※※




 目の前の王子に、ぞわぞわ鳥肌が立ち、ビンタかまして気持ち悪いから雷撃ぶっぱなしたい。

 見てー、ここ見て! ほら、腕なんて、ティキンよ、ティキン! 羽毟られたチキン肌なのよ! ポツポツってしてるのよー! うわわわ、どっかから座布団、じゃなかった、中性子爆弾持って来てー!

 だけれども、仮にも王子にそんな事をすれば父たちが困る。

 今日も今日とて、ヤンデレの地雷を踏みぬかないように慎重に対策に迷いながら会話を続けていたのであった。
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