【完結】【R18】クリスマスイブの前夜に初めて出来た恋人にフラれました~転生先で、気弱な絶倫もふもふに溺愛されちゃいます

にじくす まさしよ

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エライーン国②

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14才になった。

 あれから、小さな子は数人里親が出来て去って行った。新たに、親を亡くした子が数人入って来たりを繰り返しながら大きくなっていったのだ。

「エミリアお姉ちゃん、そっちに逃げたー! 捕まえて!」
「わかったわ、ライラ。ほらほら、ちゃんと髪を洗わないとだめなのよ?」

 今は、お風呂の時間だ。小さな子を私やライラ、そして他にもお世話の出来る子たちが洗っている。拭いたり着替えをさせたり慌ただしい。
 小さな子がキャアキャアはしゃいで余計に逃げてしまう。
 全身ずぶぬれになりながら、脱衣所から廊下に出てしまった男の子を追いかけた。

「こらー、濡れたまま出て行ったら廊下が濡れちゃうでしょー!」
「わーい、おいかけっこー」

 3才の子は足が短く走る速度も遅いのに、ちょこまかと動いてなかなか捕まえられない。元気いっぱいの彼の姿に大変だけれども楽しくて夢中で追いかけた。

 少し先で消灯の確認をしているライノの背中が見えて声をかける。ちょうど、ライノの前に彼が行ってしまった後だった。

「あ、ライノ! トゥーレを捕まえて~!」

「は? おっと、トゥーレ、お前びしょぬれじゃねえか。ほら、ちゃんと拭いてもらって服を着てきな。そうじゃなかったら一緒に寝てやんねーぞ」

「ひとりでねるの、いや~」

 逃げたトゥーレをひっつかまえて、ライノがこちらを振り向いた。

「ありがと、ライノ! 助かっちゃった」

 やっと逃亡者確保が出来た事に、私はホッとして満面の笑顔でライノに礼を言った。

「エミリア……、なんて恰好なんだ!」

「え?」

 私は、脱衣所で小さなやんちゃたちを拭いて着替えさせていた。服を着ていると濡れてしまうために、バスタオルを巻いているだけだった。
 バスタオルは、チューブワンピースみたいになっていて、酷い露出はしていないつもりだ。これだと、濡れても支障はないし動きやすいから人気なのだ。
 ちなみに、前世の知識でこれを考案した。
  この国では子供は働いてはいけないので、便宜上、孤児院宛に報酬を貰っていた。

「? どうしたの? お風呂の時間は、いつもこの姿でしょう?」

「………………」

「エミリアおねえちゃん、おっぱいふわふわ~」


 びしょぬれのトゥーレが抱き着いて来たので抱っこした。すると、彼がおっぱいを小さな手で揉んでくる。


 ここ1.2年で、第二次性徴が現れた私のスタイルは、文句なくボンキュッボンになりそうだ。
  すでに、前世の自分と同じくらいだから、現在はCカップといったところか。この体の期待値が高くて嬉しくなる。
  まだまだ甘えたのトゥーレはいつもおっぱいに触りたがる。きっとお母さんが恋しいのだろう。
 小さな手が、バスタオルを引っ張りずらそうとしたので叱る。

「こーら、そんな事したら痴漢で牢屋にぶち込まれちゃうわよ~? 怖いわよ~?」

「ろうや、いや~」

「ふふふ、じゃあちゃんと体を拭いて服を着ましょうね?」

「はぁい」

「……、ろ、廊下はあとで拭いとけよ!」

 真っ赤になったライノが、大きな手で顔の下半分を隠してそう叫ぶ。いつもならそんな風に荒げた声を出さずに、笑いながら、こういうやんちゃをするトゥーレたちにお兄さんらしく対応するのに変だなと、首を傾げて見ると彼はくるりと背を向けて全速力で何処かに走り去ったのである。

「変なライノ」

「へんなのー」

 きゃっきゃと笑うトゥーレがかわいくて、ぎゅっと抱きしめる。その後素直に服を着たトゥーレは、更に小さな子に世話を焼き始めた。


 なんとかちびっこたちに眠る準備を整えさせたあと、男の子たちにちびっこを任せてライラたちとお風呂をゆっくり楽しんだ。その間に、男の子たちが彼らを寝かせてくれるのだ。
 先生たちは、皆の健康チェックや、危ない場所の片付け、そして、国に提出する孤児たちの報告書をしたためている。この国は、孤児たちに優しい。時々、攫われる子もいるらしくて、そういった犯罪組織や、孤児院の腐敗に目を光らせてくれているらしい。
 いい国に来たなと思った。

 今6才以下の子が5人いる。全体で13人がここにいて、手分けをしてこんな風に日常のお世話をしていた。


 あと、1年未満でこの孤児院を出て行かなければならない。孤児になった私は平民だ。身元不明者である私のような人間にはやっぱり仕事先はあまりなくて、ライノと二人でどうするかを話し合う事も多くなった。



※※※※




「ライノ、起きてる?」

 真夜中すぎ、目が冴えてしまって、いつものように皆で寝ている部屋のベッドからライノのベッドに移動して小声で声をかけた。

「……起きてる」

 ライノは、初めて会った時は高くて可愛い声だったのに、今は声変わりを終えて低くなった。体つきも、毎日数センチ伸びて関節が痛いって愚痴るくらいどんどん大きくなっていった。

「ねぇ、お月様がきれいだよ」

「だな……」

 二人で、誰も起こさないようにそっと部屋から出た。灯りはお金がかかるので、月あかりを頼りに外に設置されているベンチに並んで座る。

「……? ライノ、なんか変だよ?」

「……」

 最近、特に挙動不審な時がある。ライラは思い当たる事があるみたいだけれども、ニコニコ笑うだけで理由を教えてくれなかった。聞いても応えてくれないので、視線をライノから月に移動させた。

「ライノは、ライラちゃんと一緒に暮らせる仕事を探しているんだよね?」

「ああ。たった一人の妹だしな。俺がここを出て働きだしたら一緒にライラと暮らすつもりだ」

「ライノはさ、すごくいいお兄さんだよね」

「……そうでもない。時々、ライラがいなかったらもっと自由なんじゃないかって思うし」

「うん。そうだね」

「……、エミリアは、妹を邪魔者のように言うなって怒らないよな」

「……大事な妹だからってさ、そんな風に多少は思ってても、それは当たり前じゃない? 妹だからこそって思う何かがあるのかなーなんて私は思う。だから、何処かでガス抜きしないとライノがいっぱいいっぱいになっちゃうじゃない。それに、そんな思いよりもずっと大きく深くライラちゃんを愛しているのがわかってるから」

「……そっか」

「そうよ、だからライノはそのままでとっても素敵な人なのよ」

「……素敵な人か……。……なあ、本当に、そう思うか?」

 少し黙っていた彼が、言いづらそうにそう言った。

  私が将来に不安を抱える以上に、ライラを見なければならない彼の不安は強いのだろう。少しでも彼の気持ちが軽くなるように言葉を紡いでいく。

「うん。ほら、私ってば、嘘はつかないし?」

「そうか~?」

「…………、たまに? ちょびっとだけ、かな」

「ははは、ちょびっとだけじゃねーだろ」

「へへへ。記憶にございませーん」

「なんだよ、それ。ははは」

 明るい月が、世界を照らす。静寂な夜の空間に私たちの笑い声が溶けて行ったのであった。






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