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エライーン国①
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私はあれから、一番近いそこそこ大きな都市に移動した。勿論チート魔法があるから楽々で。こんな事なら、とっととあの家を出て自由に過ごせばよかったなんて思う。
「ヘリヤ、ミンミ、サイニは、女神が幸せ保障をしてくれたから大丈夫よね。守護を張ったけれど、今の所何も衝撃がないし。予め手紙に事情を書いて来たから、きっと、お母さんたちは分かってくれる……」
私は、彼女たちの笑顔や怒った顔、呆れた顔を次々思い出した。最後の悲しみの泣き顔に胸が痛くなって目に涙が浮かんだ。
「お母さんたち、私、がんばる……!」
きゅっと目に力を入れて涙をこらえる。そして、子供の救済場所である、これも調べて目をつけていた超優良なそこそこお金が潤っている孤児院の扉を叩いた。
※※※※
「……? おねえちゃん、だあれ?」
「あの、わたくし、じゃない、私、迷ってしまって……」
小さな、可愛らしい女の子が、優しそうな大人に手を握られて問いかけて来た。
「あらあら、迷子? おうちはどこかわかるかしら? お名前は?」
「せんせー。おなかすいた! あれ、おまえ行くとこないの? なら、おやつの時間だし一緒に食べよーぜ」
先生と呼ばれたということは、ここの孤児院の責任者の一人かボランティアだろうか。後ろから、同年代の元気な男の子が、粗野だけれども明るく、にかっと笑っておやつに誘ってくれた。
「ライノ、先生はこの女の子と少しお話してから行くから、ライラを連れて先におやつを食べててちょうだい」
「わかったよ、先生。ほら、ライラ行こうぜ」
「うん。ライノお兄ちゃん」
ライノ、ライラと呼ばれた二人はよく似ている。髪も瞳も同じ色だし兄妹かななんて思っていると、目の前に先生の優しい笑顔が降りて来た。
「私の名前は、ティーアよ。ここの孤児院で働いているの。孤児院って知っているかしら?」
「あの、初めまして。私はエミリアと言います。あの、身寄りのない、行く場所のない子供をお世話してくれる所ですよね?」
「まあ、しっかりしているのね。その通りよ? エミリア、あなたおうちは? あなた、裕福な家の子でしょう?」
「……、えっと、追い出されたんです……」
「……! あなたみたいな子供を? 何てこと……!」
私の言葉を聞くと、ティーア先生が驚愕して私を追い出した親に憤慨した。涙を流してぎゅっと抱きしめてくれる。
ティーア先生は、私が国もなにもわからず、親もあまり知らずに姓も名乗った事がないというと、さらにわんわんと泣きだした。平民には姓がない。明らかに上等の服に身を包んだ私が平民ではないことを察したのだろう。
「なんて酷い……。貴族にも虐待とかはあるのは聞いているし、何年か毎にそういう子もここに捨てられたり、逃げて来るから、安心してね。私たちが守ってあげるから。今までのような裕福な生活は無理だけれど。だけどね、きっと幸せになれるわ……!」
それほどまで姓を名乗りたくないなんて、貴族とはいえ、これまでどんな酷い境遇だったのかと、ぶつぶつ言いながら涙を流していた。
少々、大げさに言ってしまい、チクリと罪悪感が芽生えるが、ネグレクト状態だったからあながち間違いでもないだろう。
そして、ティーア先生は、すぐに魔法で私の事を国に報告して孤児院で住めるように手続きをしてくれたのであった。
※※※※
「はい、皆、ちゅーもーく。今日から皆のきょうだいになる女の子を紹介しまーす!」
ティーア先生が、15人ほどがおやつを楽しんでいる場所につれてきた。子供たちは、ぱくぱく、パイ生地が風車のように形どられた美味しそうなヨウルトルットゥを頬張っているのをやめて一斉に私に注目する。
「あ、さっきのおねえちゃんだ」
「ライラ、ほら。ほっぺたにヒィロ(ジャム)が付いているぞ。服にもいっぱいパイのクズがついてる」
「ん」
先ほどの二人はやはり兄妹かなと思うほど、ライノがライラの世話を一生懸命していた。優しいお兄ちゃんの様子に、前世の兄を少し思い出して胸がきゅっとなった。
見渡すと、大きな子が小さな子をきちんと世話をしていて、とても優しいおやつ時間の楽しい雰囲気が伝わる。
「あの、初めまして。エミリアって言います。年は10才です。仲良くしてください」
注目の的になり少し恥ずかしくなった。顔に熱がこもっているからきっと真っ赤だろう。それでも大きな声でそういうと、皆が笑って拍手をしてくれる。
「わぁ、ライノおにいちゃんと、いっしょのとしだね」
「だな」
二人の声が聞こえる。わくわくと、期待に満ちた小さな女の子の笑顔にほっこりして微笑み返した。すると、ライラは手を振り返し、ライノはなぜか赤くなったのである。
「エミリア、ここは15才で出ないといけないのだけれど、引き取り先や、仕事が見つかったらそれまで待たずに出て行く子もいてね。先月、14歳の男の子がここを巣立ってしまったから、今はあなたとライノが最年長なのよ」
「最年長……」
「先生たちだけでは、小さな子の面倒を見るのも大変だから、良かったらお手伝いしてくれないかしら?」
「はい、それは勿論です。家事とか得意じゃないですけど、頑張ります」
「ふふふ、ここでは皆が出来る事を出来るだけして支え合っているの。ここを巣立っても、皆が家族みたいなものなのよ?」
「……家族……」
思わず、前世の家族とお母さんたちを思い出してうるうると瞳が潤んだ。それを見て、ティーア先生は眉をハノ字にして頭を撫でて抱きしめてくれる。
「そう、今日からエミリアもここの子、皆の家族よ。一番上だからお姉さんね」
「私がお姉さん……」
その後、あちこちからここに来てーっと呼ばれる。その都度、今日出来た、沢山の妹たちや弟たちと笑って過ごし、香ばしいヨウルトルットゥを温かい気持で食べたのであった。
「ヘリヤ、ミンミ、サイニは、女神が幸せ保障をしてくれたから大丈夫よね。守護を張ったけれど、今の所何も衝撃がないし。予め手紙に事情を書いて来たから、きっと、お母さんたちは分かってくれる……」
私は、彼女たちの笑顔や怒った顔、呆れた顔を次々思い出した。最後の悲しみの泣き顔に胸が痛くなって目に涙が浮かんだ。
「お母さんたち、私、がんばる……!」
きゅっと目に力を入れて涙をこらえる。そして、子供の救済場所である、これも調べて目をつけていた超優良なそこそこお金が潤っている孤児院の扉を叩いた。
※※※※
「……? おねえちゃん、だあれ?」
「あの、わたくし、じゃない、私、迷ってしまって……」
小さな、可愛らしい女の子が、優しそうな大人に手を握られて問いかけて来た。
「あらあら、迷子? おうちはどこかわかるかしら? お名前は?」
「せんせー。おなかすいた! あれ、おまえ行くとこないの? なら、おやつの時間だし一緒に食べよーぜ」
先生と呼ばれたということは、ここの孤児院の責任者の一人かボランティアだろうか。後ろから、同年代の元気な男の子が、粗野だけれども明るく、にかっと笑っておやつに誘ってくれた。
「ライノ、先生はこの女の子と少しお話してから行くから、ライラを連れて先におやつを食べててちょうだい」
「わかったよ、先生。ほら、ライラ行こうぜ」
「うん。ライノお兄ちゃん」
ライノ、ライラと呼ばれた二人はよく似ている。髪も瞳も同じ色だし兄妹かななんて思っていると、目の前に先生の優しい笑顔が降りて来た。
「私の名前は、ティーアよ。ここの孤児院で働いているの。孤児院って知っているかしら?」
「あの、初めまして。私はエミリアと言います。あの、身寄りのない、行く場所のない子供をお世話してくれる所ですよね?」
「まあ、しっかりしているのね。その通りよ? エミリア、あなたおうちは? あなた、裕福な家の子でしょう?」
「……、えっと、追い出されたんです……」
「……! あなたみたいな子供を? 何てこと……!」
私の言葉を聞くと、ティーア先生が驚愕して私を追い出した親に憤慨した。涙を流してぎゅっと抱きしめてくれる。
ティーア先生は、私が国もなにもわからず、親もあまり知らずに姓も名乗った事がないというと、さらにわんわんと泣きだした。平民には姓がない。明らかに上等の服に身を包んだ私が平民ではないことを察したのだろう。
「なんて酷い……。貴族にも虐待とかはあるのは聞いているし、何年か毎にそういう子もここに捨てられたり、逃げて来るから、安心してね。私たちが守ってあげるから。今までのような裕福な生活は無理だけれど。だけどね、きっと幸せになれるわ……!」
それほどまで姓を名乗りたくないなんて、貴族とはいえ、これまでどんな酷い境遇だったのかと、ぶつぶつ言いながら涙を流していた。
少々、大げさに言ってしまい、チクリと罪悪感が芽生えるが、ネグレクト状態だったからあながち間違いでもないだろう。
そして、ティーア先生は、すぐに魔法で私の事を国に報告して孤児院で住めるように手続きをしてくれたのであった。
※※※※
「はい、皆、ちゅーもーく。今日から皆のきょうだいになる女の子を紹介しまーす!」
ティーア先生が、15人ほどがおやつを楽しんでいる場所につれてきた。子供たちは、ぱくぱく、パイ生地が風車のように形どられた美味しそうなヨウルトルットゥを頬張っているのをやめて一斉に私に注目する。
「あ、さっきのおねえちゃんだ」
「ライラ、ほら。ほっぺたにヒィロ(ジャム)が付いているぞ。服にもいっぱいパイのクズがついてる」
「ん」
先ほどの二人はやはり兄妹かなと思うほど、ライノがライラの世話を一生懸命していた。優しいお兄ちゃんの様子に、前世の兄を少し思い出して胸がきゅっとなった。
見渡すと、大きな子が小さな子をきちんと世話をしていて、とても優しいおやつ時間の楽しい雰囲気が伝わる。
「あの、初めまして。エミリアって言います。年は10才です。仲良くしてください」
注目の的になり少し恥ずかしくなった。顔に熱がこもっているからきっと真っ赤だろう。それでも大きな声でそういうと、皆が笑って拍手をしてくれる。
「わぁ、ライノおにいちゃんと、いっしょのとしだね」
「だな」
二人の声が聞こえる。わくわくと、期待に満ちた小さな女の子の笑顔にほっこりして微笑み返した。すると、ライラは手を振り返し、ライノはなぜか赤くなったのである。
「エミリア、ここは15才で出ないといけないのだけれど、引き取り先や、仕事が見つかったらそれまで待たずに出て行く子もいてね。先月、14歳の男の子がここを巣立ってしまったから、今はあなたとライノが最年長なのよ」
「最年長……」
「先生たちだけでは、小さな子の面倒を見るのも大変だから、良かったらお手伝いしてくれないかしら?」
「はい、それは勿論です。家事とか得意じゃないですけど、頑張ります」
「ふふふ、ここでは皆が出来る事を出来るだけして支え合っているの。ここを巣立っても、皆が家族みたいなものなのよ?」
「……家族……」
思わず、前世の家族とお母さんたちを思い出してうるうると瞳が潤んだ。それを見て、ティーア先生は眉をハノ字にして頭を撫でて抱きしめてくれる。
「そう、今日からエミリアもここの子、皆の家族よ。一番上だからお姉さんね」
「私がお姉さん……」
その後、あちこちからここに来てーっと呼ばれる。その都度、今日出来た、沢山の妹たちや弟たちと笑って過ごし、香ばしいヨウルトルットゥを温かい気持で食べたのであった。
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