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アフターフォローは一度だけよ?③
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事故描写があります。前世のざまあ入れてみました。
「ありえるちゃん……! 俺が300万用意したら結婚してくれるって言ったじゃないか! ちゃんとプレゼントしたよね? あれは嘘だったのか?」
「は? ありえる? どう言う事だ?」
目を血走らせて、ヨレヨレの薄汚れたスーツに身を包み、髪を乱した男性が唾を吐きながらありえるだけを見ていた。
アキは戸惑いつつ、その様子に内心ひるんでいたけれども、恋人が危ないと思い背にかばった。
「え……、ありえる知らないよぉ。なんかの間違いじゃないのぉ?」
ありえるは、アキの背に隠れながら後ずさりを始める。そして、くるりと踵を返してアキを置き去りにして逃げた。
「ありえるちゃん、待って! 君のために、俺は離婚もしたし、全財産妻に渡して子供も置いて家を出たんだ! もう、ありえるちゃんしかいないんだっ!」
男性は、逃げ始めたありえるを追いかける。目の前の邪魔なアキをどんっと思い切り突き飛ばして、ありえるの腕を掴んだ。
「ひぃ……! なんなのよぉ! あんたなんか、知らないって言っているでしょおおおお!」
「ありえるちゃん、ありえるちゃん……! さっきいた男は誰だい? ああ、言い寄られたんだね?」
「ひ、ひぃ……! 離せ、はなせぇ……!」
「おい、ありえるを離せっ!」
尋常でない男性の様子に、ありえるは恐怖で体が震えて動けなくなった。彼女のピンチにアキが男性に飛び掛かる。
「うるさい、邪魔するな!」
男性は、アキよりもはるかに大きく鍛え上げられた肉体をしていた。猫のようなアキの力のない腕を簡単に払いのけて突き飛ばす。
アキは、道路に倒れた所、道をスマホを見ながら、下り坂を走って来た自転車に跳ねられた。
ガシャーーーーン!
大きな音がして、自転車が転倒する。そこそこスピードが出ていたため、アキは跳ね飛ばされ全身が痛み身動きできなくなった。
「……っつぅ……! あ、ありえる、逃げろ!」
アキは、血を流しながらもありえるを心配して叫んだ。
周囲の人々が、事故を目撃して騒然となる。すぐさま警察と救急車を呼ばれたり、アキや自転車に乗っていた人の救護などが行われていった。
そんな騒動を背に、それがまるでないかのように、男性はありえるの両腕を掴んだ。
「ふふふ、ありえる、イケナイ子だね。見たよ? いかがわしいビデオに出ちゃって。ははは、びっくりしたんだよ?」
「な……、な、なんでそれを……」
「なんでって、最近じゃあ有名だよ? すごいAV新人女優出現って。初体験は中学一年の時にお父さんの部下と、なんだってね。それから日替わりでセフレがいてて? 目についた女の子たちの恋人をたくさん寝取ったらしいね?」
「ひ、ひ、離して、はなせ、痛いっ! だから何だって言うんだよ! 皆やってるだろ! おっさん、離せよっ! 無一文のおっさんなんか、お呼びじゃねーんだよ! さっさと枯れちまえ」
「え……? ありえる?」
アキは、男性の言葉と恋人の叫びを信じられずに目を見張った。体中の痛みを忘れるほどのその内容に衝撃を受ける。何かの間違いだと腕をありえるに伸ばそうとした。
「おい、君、大丈夫か? 腕の骨が折れていると思うから、動くんじゃない!」
誰かがアキにそう呼びかけるが、どこか遠い場所のように感じた。
やがて警察と救急車が来た。事故で呼ばれたはずが、別に不審者が若い女性に詰め寄っているのを見てすぐさま男性を拘束した。
ありえるは、ぺたんと道路にお尻をつけた。腰が完全に抜けて放心している。
男性の背広から、刃渡り15センチほどのナイフが転がり落ちた。
それを見た周囲が悲鳴をあげてパニックになる。その中の数人はスマホを彼らに向けていた。
「皆さん、危険ですっ! 離れてくださいっ!」
男を拘束しながら警察官が叫ぶ。
ありえるは、大きなナイフを見て刺されていたのかもしれないと理解した途端に震えあがり、意識がなくなった。
別動隊の救急車が現れると、ありえるたちを連れて現場を去って行ったのであった。
※※※※
「あの子たちはこんな感じ。結局、元カレ君は彼女が計画していたお仕置きを免れたんだけれどもね。事故の骨折が元で指を上手く動かせなくなったのよね。二人は、AV関連で伝染する病気も貰ったわね」
「……ソウデスカ」
やはり、聞くんじゃなかったと後悔する。精神年齢はそこそこあるが、今世ではまだ5才の幼女だ。なんてものを聞かされたのだろうとげんなりした。
嘘のような女神の話は、どこか他人事のように思えた。まるでお芝居か漫画みたい。
そして、アキの事はもう過去の事として区切りがついていたのだと悟ったのであった。
「ありえるちゃん……! 俺が300万用意したら結婚してくれるって言ったじゃないか! ちゃんとプレゼントしたよね? あれは嘘だったのか?」
「は? ありえる? どう言う事だ?」
目を血走らせて、ヨレヨレの薄汚れたスーツに身を包み、髪を乱した男性が唾を吐きながらありえるだけを見ていた。
アキは戸惑いつつ、その様子に内心ひるんでいたけれども、恋人が危ないと思い背にかばった。
「え……、ありえる知らないよぉ。なんかの間違いじゃないのぉ?」
ありえるは、アキの背に隠れながら後ずさりを始める。そして、くるりと踵を返してアキを置き去りにして逃げた。
「ありえるちゃん、待って! 君のために、俺は離婚もしたし、全財産妻に渡して子供も置いて家を出たんだ! もう、ありえるちゃんしかいないんだっ!」
男性は、逃げ始めたありえるを追いかける。目の前の邪魔なアキをどんっと思い切り突き飛ばして、ありえるの腕を掴んだ。
「ひぃ……! なんなのよぉ! あんたなんか、知らないって言っているでしょおおおお!」
「ありえるちゃん、ありえるちゃん……! さっきいた男は誰だい? ああ、言い寄られたんだね?」
「ひ、ひぃ……! 離せ、はなせぇ……!」
「おい、ありえるを離せっ!」
尋常でない男性の様子に、ありえるは恐怖で体が震えて動けなくなった。彼女のピンチにアキが男性に飛び掛かる。
「うるさい、邪魔するな!」
男性は、アキよりもはるかに大きく鍛え上げられた肉体をしていた。猫のようなアキの力のない腕を簡単に払いのけて突き飛ばす。
アキは、道路に倒れた所、道をスマホを見ながら、下り坂を走って来た自転車に跳ねられた。
ガシャーーーーン!
大きな音がして、自転車が転倒する。そこそこスピードが出ていたため、アキは跳ね飛ばされ全身が痛み身動きできなくなった。
「……っつぅ……! あ、ありえる、逃げろ!」
アキは、血を流しながらもありえるを心配して叫んだ。
周囲の人々が、事故を目撃して騒然となる。すぐさま警察と救急車を呼ばれたり、アキや自転車に乗っていた人の救護などが行われていった。
そんな騒動を背に、それがまるでないかのように、男性はありえるの両腕を掴んだ。
「ふふふ、ありえる、イケナイ子だね。見たよ? いかがわしいビデオに出ちゃって。ははは、びっくりしたんだよ?」
「な……、な、なんでそれを……」
「なんでって、最近じゃあ有名だよ? すごいAV新人女優出現って。初体験は中学一年の時にお父さんの部下と、なんだってね。それから日替わりでセフレがいてて? 目についた女の子たちの恋人をたくさん寝取ったらしいね?」
「ひ、ひ、離して、はなせ、痛いっ! だから何だって言うんだよ! 皆やってるだろ! おっさん、離せよっ! 無一文のおっさんなんか、お呼びじゃねーんだよ! さっさと枯れちまえ」
「え……? ありえる?」
アキは、男性の言葉と恋人の叫びを信じられずに目を見張った。体中の痛みを忘れるほどのその内容に衝撃を受ける。何かの間違いだと腕をありえるに伸ばそうとした。
「おい、君、大丈夫か? 腕の骨が折れていると思うから、動くんじゃない!」
誰かがアキにそう呼びかけるが、どこか遠い場所のように感じた。
やがて警察と救急車が来た。事故で呼ばれたはずが、別に不審者が若い女性に詰め寄っているのを見てすぐさま男性を拘束した。
ありえるは、ぺたんと道路にお尻をつけた。腰が完全に抜けて放心している。
男性の背広から、刃渡り15センチほどのナイフが転がり落ちた。
それを見た周囲が悲鳴をあげてパニックになる。その中の数人はスマホを彼らに向けていた。
「皆さん、危険ですっ! 離れてくださいっ!」
男を拘束しながら警察官が叫ぶ。
ありえるは、大きなナイフを見て刺されていたのかもしれないと理解した途端に震えあがり、意識がなくなった。
別動隊の救急車が現れると、ありえるたちを連れて現場を去って行ったのであった。
※※※※
「あの子たちはこんな感じ。結局、元カレ君は彼女が計画していたお仕置きを免れたんだけれどもね。事故の骨折が元で指を上手く動かせなくなったのよね。二人は、AV関連で伝染する病気も貰ったわね」
「……ソウデスカ」
やはり、聞くんじゃなかったと後悔する。精神年齢はそこそこあるが、今世ではまだ5才の幼女だ。なんてものを聞かされたのだろうとげんなりした。
嘘のような女神の話は、どこか他人事のように思えた。まるでお芝居か漫画みたい。
そして、アキの事はもう過去の事として区切りがついていたのだと悟ったのであった。
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