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「なによ! そもそも、尾櫃じゃないし! 銚櫃 茅耶子よっ。 ちゃこって名前は、まあまあかわいいけどシワシワネームだから嫌なのよ! 私がつけた可愛いありえるって名前でちゃんと呼べよっ! ほんっと、あんたって馬鹿なのぉ? クスクス……SNSのあのアカウントもフリーメールアドレスだって消したからもうないし! 名誉棄損とかわけわかんないけど、おあいにくさまっ! そっちが訴えたってもうないもんねぇ。あと、なに? あんた、その顔とスタイルであのセフレにまで色目使ってたっていうの? あいつ、ちょっとイケメンだし金持ちだから彼氏の一人にしてやってんのに、こんな不細工に声かけるなんてムカつく!」
私はあっけにとられて、頬に手を当てながらありえるを見た。彼女は今激怒りしていて自分が何を言ったのかわかっていないみたいだ。
勿論、その横で未だに肩を抱いているアキも。理解するなんて無理だろう。とりあえず一つは失礼な事をしてしまったようだ。
「名前を間違えてごめんなさい。ちょうびつちやこ、さん。でも、ちやこも可愛いと思うけど……」
「ふん。分かればいいのよ。ちやこも可愛いし、パパとママがつけてくれた宝物だから最高だし自慢なんだけどさ。でも、今どき子とかありえないでしょ? わかったら、ありえるのほうが可愛いからそっちで呼んでよね」
「……分かったわ、ありえるさん」
私が名前を謝罪した事で、ありえるは鼻息をふんっと最後に大きく吐き出して、ビンタした時に乗り上げた体をドスンっとソファに降ろした。
そのまま、彼女に怒るよりも、こいつは関わらないほうがいいかなと判断して、この雰囲気のままそっと立ち去る事に決めた。すでに、アキにフラれたショックよりも、さきほどの彼女の強烈すぎるインパクトのほうが凄すぎて、現実味がまったくない。今までの時間、何をしていたのかわからなくなるほどの衝撃を受けてしまっていた。
彼らから1メートルほど距離を取ると、背後でアキの声が聞こえる。
「ありえる……? え? アカウント消した? いや、セフレって? 彼氏の一人とかって、どう言う事だ?」
「あ……! あの、アキくん、ち、違うの。え、っと。えっと。そう、例えばの話で。あんな風に書かれていたから……。えと、えっとぉ、ありえるの名前を教えてないのに、なんであの子が知ってたのかわかんなくてパニックになっちゃったぁ。あのね、あの、セフレっていうのは、セ、……せ……、せ、せ。世界のフレンドの事だよね? あの子、ハーフなんだ。これからはグローバルな時代だし、ありえるね、そんなお友達が欲しくってぇ。ダブルデートだって、彼はありえるの彼氏でもなんでもないただの友達なのに、アキくんがえみりちゃんを連れて来るっていうから、無理に頼んだだけで。それに、ありえるはずっとアキくん一筋だったし……。もぉ、そんなのわかってるでしょぉ?」
「あ、ああ。勘違いしてるのか。ありえる、セフレっていうのはな、そういう意味じゃないんだ。お前には信じられないだろうけど、セックスフレンドって言って、誰とでも友達感覚でそういう事をするそんな言葉だから、もう使うなよ?」
「え……。どうしよ、ありえる、そんな言葉だったなんて……。知らなくってぇ」
「ありえるは今どき女子じゃないからなあ。知らなくていいよ。純真で可愛いお前が俺とのあの日まで大切にとっておいてくれたのは俺が一番知っているし。好きだよ」
「アキくぅん。ありえる、嬉しい……!」
なんだろう、よくわからない世界が背後で広がっている。お似合いの二人じゃないかと思いつつ、何も頼んでいないので会計もせずにファミレスを出た。
アキには、少しだけ彼女とは縁を切った方がいいかなと思ってしまう。彼女のさっきの言葉のツッコミどころとか。でも、もう関係ないし元カレがどうなっても知った事かと思い、近くにある満喫に入って時間をつぶす事にした。
私はあっけにとられて、頬に手を当てながらありえるを見た。彼女は今激怒りしていて自分が何を言ったのかわかっていないみたいだ。
勿論、その横で未だに肩を抱いているアキも。理解するなんて無理だろう。とりあえず一つは失礼な事をしてしまったようだ。
「名前を間違えてごめんなさい。ちょうびつちやこ、さん。でも、ちやこも可愛いと思うけど……」
「ふん。分かればいいのよ。ちやこも可愛いし、パパとママがつけてくれた宝物だから最高だし自慢なんだけどさ。でも、今どき子とかありえないでしょ? わかったら、ありえるのほうが可愛いからそっちで呼んでよね」
「……分かったわ、ありえるさん」
私が名前を謝罪した事で、ありえるは鼻息をふんっと最後に大きく吐き出して、ビンタした時に乗り上げた体をドスンっとソファに降ろした。
そのまま、彼女に怒るよりも、こいつは関わらないほうがいいかなと判断して、この雰囲気のままそっと立ち去る事に決めた。すでに、アキにフラれたショックよりも、さきほどの彼女の強烈すぎるインパクトのほうが凄すぎて、現実味がまったくない。今までの時間、何をしていたのかわからなくなるほどの衝撃を受けてしまっていた。
彼らから1メートルほど距離を取ると、背後でアキの声が聞こえる。
「ありえる……? え? アカウント消した? いや、セフレって? 彼氏の一人とかって、どう言う事だ?」
「あ……! あの、アキくん、ち、違うの。え、っと。えっと。そう、例えばの話で。あんな風に書かれていたから……。えと、えっとぉ、ありえるの名前を教えてないのに、なんであの子が知ってたのかわかんなくてパニックになっちゃったぁ。あのね、あの、セフレっていうのは、セ、……せ……、せ、せ。世界のフレンドの事だよね? あの子、ハーフなんだ。これからはグローバルな時代だし、ありえるね、そんなお友達が欲しくってぇ。ダブルデートだって、彼はありえるの彼氏でもなんでもないただの友達なのに、アキくんがえみりちゃんを連れて来るっていうから、無理に頼んだだけで。それに、ありえるはずっとアキくん一筋だったし……。もぉ、そんなのわかってるでしょぉ?」
「あ、ああ。勘違いしてるのか。ありえる、セフレっていうのはな、そういう意味じゃないんだ。お前には信じられないだろうけど、セックスフレンドって言って、誰とでも友達感覚でそういう事をするそんな言葉だから、もう使うなよ?」
「え……。どうしよ、ありえる、そんな言葉だったなんて……。知らなくってぇ」
「ありえるは今どき女子じゃないからなあ。知らなくていいよ。純真で可愛いお前が俺とのあの日まで大切にとっておいてくれたのは俺が一番知っているし。好きだよ」
「アキくぅん。ありえる、嬉しい……!」
なんだろう、よくわからない世界が背後で広がっている。お似合いの二人じゃないかと思いつつ、何も頼んでいないので会計もせずにファミレスを出た。
アキには、少しだけ彼女とは縁を切った方がいいかなと思ってしまう。彼女のさっきの言葉のツッコミどころとか。でも、もう関係ないし元カレがどうなっても知った事かと思い、近くにある満喫に入って時間をつぶす事にした。
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