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「先ほどの婚約破棄を撤回する。私はあの女にダマされていただけだ! あんな女だと知っていれば……」

「ふっ、今更だな。あんな分かりやすい女にダマされるほうが悪い」
「お似合いだ。二人で幸せになるといい。ティーヌは私が幸せにするからな」


「ユス……。こんな所からさっさと帰ろう。これ以上そいつらといたらもっとおかしくなる。王子との婚約さえなんとかなれば僕と二人で家を継ぐと言っていただろう? 義父上も、それを望んでいたのに、王家からの横やりが入ったのだから」

「えっとぉ……。ところであなたは?」

「ああ、記憶がないのだったか? そんなショックを受けるほど王子を? ……そうは見えなかったんだがなぁ。まあいい。僕はカクシキャーラ。君の義理の兄で、家の後継だ。もともと、義母一筋の義父が、娘一人のユスの婿として、遠縁の僕を迎え入れて後継者として育てていたんだよ? 君が2つの時に紹介されてから、一緒にお風呂も入ったし、ベッドで毎日のように熱い夜を過ごしただろう?」




「は?」




 なんだ、それ! 聞いていないぞ? などという怒号が周囲どころか会場中から聞こえる。黄色い悲鳴も上がり泣いて倒れる女の子たちもいるみたい。


「はんっ! どうせ、3つか4つくらいの事だろ! 嘘はついていないが盛大に誤解するように言いやがって! 誤魔化されないからな!」


 一瞬、すでに義兄っぽい怖い君、改め、カクシキャーラ君とあんな事やこんな事をしたかと思っちゃったけど、プリンスンタラズ王子のツッコミに対して義兄が舌打ちしたから、事実無根のようだ。
  この体の持ち主のジュスティーヌちゃんもガバーニャちゃんみたいにビッチだったのかと心配したけれどそうじゃなさそうでホッとする。


 どうやら、この目の前のカクシキャーラ君はモテモテだったのねえ


 まじまじと、とってもイケメンでがっしりした義兄を見つめた。他の王子たち3人もイケメンだけど、この子が一番好みだわぁ……。孫たちは王子たちがいいだろうけど、やっぱり銀幕のスターといえばこんな感じの男っぽさがある色気もにおうような彼よね。

 ふむふむ、柔らかふんわりの髪の毛は、日の光を溶かしたかのような明るいブロンド。今の段階で、額が広がったり、頭頂部が荒野になりそうな気配もない。眉はほどよい太さでキリっとしていて、やや切れ長の目元は厳しそうにもみえるが、私を見る眼がとっても優しくて温かい。すっと通った鼻筋に、ふにっとした感じの唇から聞こえる声は低すぎず、高すぎず。声だけで妊娠しちゃうと言われた某有名俳優のようだ。ミッションダブルオーエイトナインテーン! なんちゃって。

 
 うーん。このジュスティーヌちゃんには家にはお父さんとお母さんがいるのよね? だいたい孫くらいの年齢かしらねぇ? 結婚年齢が10代ならひ孫くらいかな? とりあえず、家に帰ってジュスティーヌちゃんの両親に保護して貰えば安全かも?


「えっと、ツキマートイー王子様、降ろしてくださいな」

「どうした? 俺としてはこのまま君を抱きしめていたいのだが」

「とりあえず、両親は私の事をいじめていないんですよね? だったら、両親に会って、それからきちんと考えたいのですけれども」

「きちんと? ああ、そうだな。きちんとした形でジュスティーヌを妃に迎えるにこしたことはないからな」
「何言っている! 私が先に申し込むに決まっているだろう!」
「婚約は続行だ! ジュスティーヌ、すまなかった。これからはよそ見しないから。だから……!」
「僕と帰ろうね。帰って、じっくり話をしようか」

「えっと、えーっと……。とりあえず、私、浮気とかダメなんで。なので、王子様はごめんなさい」

「そんなっ!」

 絶対有り得ないプリンスンタラズ王子に対しては断ってもいいだろうと思う。だって、先に婚約破棄言って来たし。皆の前でどうどうと浮気宣言した子だし。

  浮気した子はまたするのよねえ。高確率で。浮気へのハードルがさがるから~。それに、王子ならエッチしたいほうだいっぽいし。ないな、うん。

……小さいってカミングアウトされたし、私を逃したらこの子まともな縁談来ないかもねえ?  こういう情報って近隣とかあっという間に全世界に流されるだろうから……王子だし大丈夫かな?  愛(政略だろうし、愛はないかもー、うーん、じゃあ、イケメンだし地位と権力)があれば、股間の相性なんて……っていう女の子だっているはずよ!    たぶん……いるかな……?


あれだよね?  


夫に満足出来ないほにゃらら婦人の怠惰な肉棒まみれの昼下がり

NTRれたお飾りの団地妻(王子だからお妃さまか)は、宅配のガチムチお兄さんに翻弄される~あ、ダメよ、こんな所で……声がご近所に聞こえちゃうっ

  みたいになって、それで……


  ……あ、一瞬で前世のパート仲間に借りたAVタイトルと中身を思い出しちゃってたわ

──欲求不満だったのかしら?  若返ったから?

  耳までかーって熱い。真っ赤になってると思う。顔を伏せて恥ずかしさのあまりプルプル震えていたら、ツキマートイー君とシューチャック君、それにカクシキャーラ君が慰めてくれた。

「ジュスティーヌは優しいな……。こんなに震えて……。あんな浮気者に罪悪感など抱かなくともよい」
「ティーヌ、ティーヌ。王子は自業自得なのだから、ティーヌがそんな風に震えるくらいあいつの末路を思いやる事なんてないんだよ?」
「泣くなユス。記憶がなくなっても優しいのは変わらないんだね。でも、王子のためにこれ以上涙を流さなくっていいんだよ」

   泣いてませんけど…… 


  あー、王子君、めっちゃくちゃ落ち込んじゃってる。

「えーと、ガバーニャちゃんとお幸せに?」

 こう言って励まそうとして逆にとどめをさしたら、プリンスンタラズ王子は項垂れて膝をピカピカに磨かれた大理石についた。

 うわ~、膝小僧、ガンッっていったよ? ガンッって。膝の皿、割れてない? あ、若いから大丈夫か。転倒転落注意よ! お大事に!

「とりあえず、おうちに帰ります! どこかわからないし、どうやって帰ったらいいんでしょうか?」

「僕と一緒に馬車に乗ろうね」

 なんだかんだとうやむやになりつつ、結局義兄に連れられて会場を去って、家に向かう豪華なシンドレラに出てくるような馬車に乗ったのであった。
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