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伝えたい想いは唇にのせて
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「リフレーシュ、愛しているんだ」
今、わたくしの身に何が起こっているのだろう……。悲しい気持ちを彼にぶつけるように話をしていたら、彼に抱きしめられた。涙でぐちゃぐちゃになった不細工な顔を見られたくないのに、そっと顔を挙げられた。
大きな温かい指が、わたくしの頬の涙をそっと拭ったかと思った後、突然息ができなくなった。
「ん……」
子供のように泣いていた唇に、大きくて少しかさついた何かが覆いかぶさってきている。苦しさと、驚愕でどうにかなりそうだ。でも、突然のその感触に、ずっとそうして欲しいと思い、抗う事なく、唇に触れては離れるそれを、夢中で追いかけた。
「好きだ……好きなんだ。信じてくれ」
「フレイム、さま……」
何度かキスを繰り返すと、すっかりわたくしの心は他人事のように静まりかえり、真剣な眼差しの彼を見つめ返していた。
大きな彼に、すっぽりと包まれているかのようで、ずっとこのままこうして欲しいと願う。信じるとか、嘘だとか、彼の言葉を考える事なんて出来なくて、ただ、彼の熱い瞳と腕に、自分から望んでとらわれていた。
「腫れてしまったな……」
フレイム様がそう呟きながら、わたくしの唇を親指の腹でそっとなぞる。ふと、彼の唇を見ると、彼のほうは全く腫れていないように見えたから、わたくしも指先で彼の唇を同じように触れた。
「フレイムさま……」
どろりと、思考が何かに纏わりつかれているようだ。さっきまで、何の話をしていたんだっけ?
「リフレーシュ、今から話す事は、少々人の名誉や命にかかわる事でもあるから他言しないでもらいたい」
「……? はい」
最後に、軽くちゅってキスを落された後、彼が真剣に話をし出した。その内容に、びっくりしつつも、完全にわたくしの勘違いで勝手に焼きもちを焼いていただけだと知り、恥ずかしくて何処かに消えたくなった。
※
観覧車が地上に降りると、そこに、にやにやと笑いながらわたくしたちを出迎えるレイトー殿下とシピユ様たちがいた。
「リフレーシュ、なんで泣いているの? フレイム様、わたくしのリフレーシュに何をなさったのですか?」
降りる直前にハンカチで涙を拭き取ったが、目がまだまだ赤かったし、泣いた痕跡は消えていない。明らかに泣いていたわたくしを心配して、フレイム様から奪うように、シピユ様に抱き着かれた。
「シピユ様、これは、違うんです……」
華奢な細い体に腕なのにナマケモノ獣人の彼女のパワーはすさまじい。わたくしの体も頑丈な方だけど、流石に少し苦しくて、ぽんぽん彼女の腕を叩くと、心配そうに顔を覗き込まれる。
「シピユ様、どうしてここに……?」
「わたくしは、今日、殿下に誘われて。この国のテーマパークの視察にも来たいと思っていたし、リフレーシュが心配で……」
実は、シピユ様はレイトー殿下と婚約したのだ。わたくしが、フレイム様と婚約して暫くしてから。『だって、レイトー殿下はまあまあいい人だし。それに、彼と結婚したら、リフレーシュにいつでも会えるでしょう? 国に帰っても、結婚したい男性なんていないし。ハムスターはもふもふごたえが少々物足りないけれど、ちまっと小さくて愛らしくてかわいいから』と、殿下のプロポーズへの返事は秒も迷わなかったようだ。
ただ、フレイム様の態度に、レイトー殿下との婚約を破棄して、真剣にわたくしを隣国に連れて帰るつもりだったらしい。
「シピユ様……」
わたくしが、今日、別れの話をする事を知っているシピユ様は、相当心配していてくれたのだろう。誤解だった事を伝えると、すでに事情は殿下から聞いたと言われた。
シピユ様が、わたくしたちの婚約が無くなり次第、わたくしを連れて隣国に帰ると殿下に伝えたら、シピユ様に惚れ込んでいる殿下から慌てて事情を説明されたらしい。
一応、国家機密みたいなものだけど、殿下と結婚するため話す事を許されたようだ。殿下の側近である、フレイム様と結婚するわたくしも知っていていいと判断された。
「シピユ嬢、誤解だと理解したのなら、リフレーシュをかえしてもらおうか」
「……わかったわ。でも、誤解とはいえ、あなたが! わたくしの大切な親友を悲しませたんですからね? 事情がどうであれ、かわいいリフレーシュを悲しませないように、いくらでも行動できたのですから。次に泣かせたら許しません。問答無用で実家に連れて帰って、二度とこの国には戻らないから覚悟してください」
「シピユ様~」
シピユ様の優しさが嬉しくてぎゅっと抱き着こうとしたら、フレイム様にひょいっと抱きしめられた。皆の前で恥ずかしいし照れくさいけれど、嬉しくてそのまま彼の腕の中にいた時、かわいらしい声が響いた。
「初めまして、リフレーシュさん。メモリと申します。フレイム先輩から、あなたの事を聞いていて、仲良くなりたいって思っていたのです」
「メモリ様……初めまして、リフレーシュと申します……」
短かったようで長い間、勘違いとはいえ彼の恋人だと思っていた方にカーテシーをする。先ほど、彼から彼女の事を聞いたばかりで、にわかには信じがたい真実に少々戸惑う。
改めて、彼女から漂う王族の気品や威圧を感じて、深々と頭を下げた。
「僕が、もっと早く完全な女性体になって立場を確固たるものにし、婚約者と堂々と過ごせたら良かったのですけれど……。未成熟だから身分も性別も内緒にしていただいていたために、……ごめんなさい」
彼女には、国に帰ったらすぐに結婚する予定の相手がいるらしい。ただ、今は国が混乱しているため、次期女王候補の彼(女)を我が国が保護している状態なのだという。
「そんな! メモリ殿下は何も悪くございません。どうぞ、謝罪などなさらないでくださいませ……。わたくしが、ひとりで勝手に思い込んでいただけで。きちんとフレイム様にもっと早くお聞きしていたら良かったのです……わたくしが悪いんです」
「いや、俺が説明不足だったからだ。リフレーシュは塵一つほども悪くない」
王族が、一男爵の令嬢に頭を下げるなどあってはならない。わたくしが恐縮していると、フレイム様がかばってくれた。
「リフレーシュ嬢、頭をあげるといい。メモリ殿下の国では、国民は全て男に産まれるのは知っているな? その中から女性体になれる者が非常に少ない。彼女が未成熟な姿だと、他の女王候補を推す一党の中の過激派が、今のうちに彼女を排除しようと目論んでいた。交易のある我が国が、彼女を完全体になるまで保護する協定を組んだんだ。俺が隠すよう命令していたから、フレイムは迂闊にメモリ殿下が雌雄同体のカクレクマノミ獣人の女王候補だと説明出来なかったんだ」
そうなのだ。メモリ殿下は、近いうちにカクレクマノミ国の女王となるべきお方。この国で密かに保護していて、ようやく、完全体になれる思春期になり、学園で見識を広げていたらしい。そこで、レイトー殿下をはじめとする生徒会の皆様が、メモリ殿下を守っていた。魔法も体術にも長けているフレイム様は、その当時には婚約者がいなかった事から、世話役と護衛を命じられていたのである。
「皆様のご協力のおかげで、やっと完全な女性体になる事が出来たのです。ですから、魔力も十分に扱えるようになりましたので、自分の身は守れます。もう隠す必要はありません。フレイム先輩、リフレーシュさん、それにシピユさんにも、わたくしが正体を隠したために、多大なご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。この国には雌雄同体の種族はいませんから、フレイム先輩が男の性別が出ているの頃のわたくしと恋人などという、気の毒な状況になってしまって……ふふふ、あ、笑いごとではございませんね。何よりも、わたくしにしても、婚約者を愛しておりますから安心なさって」
メモリ殿下は、万が一にも、拗れてフレイム様がわたくしにフラれてしまわないように、事情を説明するために来てくださったようだ。なんという優しい方なのだろう。皆に好かれるのも納得した。
暫く歓談した際、何故かわたくしをもふもふしたいと言われ、後日ウォンバットの姿で会う事を約束したのである。
今、わたくしの身に何が起こっているのだろう……。悲しい気持ちを彼にぶつけるように話をしていたら、彼に抱きしめられた。涙でぐちゃぐちゃになった不細工な顔を見られたくないのに、そっと顔を挙げられた。
大きな温かい指が、わたくしの頬の涙をそっと拭ったかと思った後、突然息ができなくなった。
「ん……」
子供のように泣いていた唇に、大きくて少しかさついた何かが覆いかぶさってきている。苦しさと、驚愕でどうにかなりそうだ。でも、突然のその感触に、ずっとそうして欲しいと思い、抗う事なく、唇に触れては離れるそれを、夢中で追いかけた。
「好きだ……好きなんだ。信じてくれ」
「フレイム、さま……」
何度かキスを繰り返すと、すっかりわたくしの心は他人事のように静まりかえり、真剣な眼差しの彼を見つめ返していた。
大きな彼に、すっぽりと包まれているかのようで、ずっとこのままこうして欲しいと願う。信じるとか、嘘だとか、彼の言葉を考える事なんて出来なくて、ただ、彼の熱い瞳と腕に、自分から望んでとらわれていた。
「腫れてしまったな……」
フレイム様がそう呟きながら、わたくしの唇を親指の腹でそっとなぞる。ふと、彼の唇を見ると、彼のほうは全く腫れていないように見えたから、わたくしも指先で彼の唇を同じように触れた。
「フレイムさま……」
どろりと、思考が何かに纏わりつかれているようだ。さっきまで、何の話をしていたんだっけ?
「リフレーシュ、今から話す事は、少々人の名誉や命にかかわる事でもあるから他言しないでもらいたい」
「……? はい」
最後に、軽くちゅってキスを落された後、彼が真剣に話をし出した。その内容に、びっくりしつつも、完全にわたくしの勘違いで勝手に焼きもちを焼いていただけだと知り、恥ずかしくて何処かに消えたくなった。
※
観覧車が地上に降りると、そこに、にやにやと笑いながらわたくしたちを出迎えるレイトー殿下とシピユ様たちがいた。
「リフレーシュ、なんで泣いているの? フレイム様、わたくしのリフレーシュに何をなさったのですか?」
降りる直前にハンカチで涙を拭き取ったが、目がまだまだ赤かったし、泣いた痕跡は消えていない。明らかに泣いていたわたくしを心配して、フレイム様から奪うように、シピユ様に抱き着かれた。
「シピユ様、これは、違うんです……」
華奢な細い体に腕なのにナマケモノ獣人の彼女のパワーはすさまじい。わたくしの体も頑丈な方だけど、流石に少し苦しくて、ぽんぽん彼女の腕を叩くと、心配そうに顔を覗き込まれる。
「シピユ様、どうしてここに……?」
「わたくしは、今日、殿下に誘われて。この国のテーマパークの視察にも来たいと思っていたし、リフレーシュが心配で……」
実は、シピユ様はレイトー殿下と婚約したのだ。わたくしが、フレイム様と婚約して暫くしてから。『だって、レイトー殿下はまあまあいい人だし。それに、彼と結婚したら、リフレーシュにいつでも会えるでしょう? 国に帰っても、結婚したい男性なんていないし。ハムスターはもふもふごたえが少々物足りないけれど、ちまっと小さくて愛らしくてかわいいから』と、殿下のプロポーズへの返事は秒も迷わなかったようだ。
ただ、フレイム様の態度に、レイトー殿下との婚約を破棄して、真剣にわたくしを隣国に連れて帰るつもりだったらしい。
「シピユ様……」
わたくしが、今日、別れの話をする事を知っているシピユ様は、相当心配していてくれたのだろう。誤解だった事を伝えると、すでに事情は殿下から聞いたと言われた。
シピユ様が、わたくしたちの婚約が無くなり次第、わたくしを連れて隣国に帰ると殿下に伝えたら、シピユ様に惚れ込んでいる殿下から慌てて事情を説明されたらしい。
一応、国家機密みたいなものだけど、殿下と結婚するため話す事を許されたようだ。殿下の側近である、フレイム様と結婚するわたくしも知っていていいと判断された。
「シピユ嬢、誤解だと理解したのなら、リフレーシュをかえしてもらおうか」
「……わかったわ。でも、誤解とはいえ、あなたが! わたくしの大切な親友を悲しませたんですからね? 事情がどうであれ、かわいいリフレーシュを悲しませないように、いくらでも行動できたのですから。次に泣かせたら許しません。問答無用で実家に連れて帰って、二度とこの国には戻らないから覚悟してください」
「シピユ様~」
シピユ様の優しさが嬉しくてぎゅっと抱き着こうとしたら、フレイム様にひょいっと抱きしめられた。皆の前で恥ずかしいし照れくさいけれど、嬉しくてそのまま彼の腕の中にいた時、かわいらしい声が響いた。
「初めまして、リフレーシュさん。メモリと申します。フレイム先輩から、あなたの事を聞いていて、仲良くなりたいって思っていたのです」
「メモリ様……初めまして、リフレーシュと申します……」
短かったようで長い間、勘違いとはいえ彼の恋人だと思っていた方にカーテシーをする。先ほど、彼から彼女の事を聞いたばかりで、にわかには信じがたい真実に少々戸惑う。
改めて、彼女から漂う王族の気品や威圧を感じて、深々と頭を下げた。
「僕が、もっと早く完全な女性体になって立場を確固たるものにし、婚約者と堂々と過ごせたら良かったのですけれど……。未成熟だから身分も性別も内緒にしていただいていたために、……ごめんなさい」
彼女には、国に帰ったらすぐに結婚する予定の相手がいるらしい。ただ、今は国が混乱しているため、次期女王候補の彼(女)を我が国が保護している状態なのだという。
「そんな! メモリ殿下は何も悪くございません。どうぞ、謝罪などなさらないでくださいませ……。わたくしが、ひとりで勝手に思い込んでいただけで。きちんとフレイム様にもっと早くお聞きしていたら良かったのです……わたくしが悪いんです」
「いや、俺が説明不足だったからだ。リフレーシュは塵一つほども悪くない」
王族が、一男爵の令嬢に頭を下げるなどあってはならない。わたくしが恐縮していると、フレイム様がかばってくれた。
「リフレーシュ嬢、頭をあげるといい。メモリ殿下の国では、国民は全て男に産まれるのは知っているな? その中から女性体になれる者が非常に少ない。彼女が未成熟な姿だと、他の女王候補を推す一党の中の過激派が、今のうちに彼女を排除しようと目論んでいた。交易のある我が国が、彼女を完全体になるまで保護する協定を組んだんだ。俺が隠すよう命令していたから、フレイムは迂闊にメモリ殿下が雌雄同体のカクレクマノミ獣人の女王候補だと説明出来なかったんだ」
そうなのだ。メモリ殿下は、近いうちにカクレクマノミ国の女王となるべきお方。この国で密かに保護していて、ようやく、完全体になれる思春期になり、学園で見識を広げていたらしい。そこで、レイトー殿下をはじめとする生徒会の皆様が、メモリ殿下を守っていた。魔法も体術にも長けているフレイム様は、その当時には婚約者がいなかった事から、世話役と護衛を命じられていたのである。
「皆様のご協力のおかげで、やっと完全な女性体になる事が出来たのです。ですから、魔力も十分に扱えるようになりましたので、自分の身は守れます。もう隠す必要はありません。フレイム先輩、リフレーシュさん、それにシピユさんにも、わたくしが正体を隠したために、多大なご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。この国には雌雄同体の種族はいませんから、フレイム先輩が男の性別が出ているの頃のわたくしと恋人などという、気の毒な状況になってしまって……ふふふ、あ、笑いごとではございませんね。何よりも、わたくしにしても、婚約者を愛しておりますから安心なさって」
メモリ殿下は、万が一にも、拗れてフレイム様がわたくしにフラれてしまわないように、事情を説明するために来てくださったようだ。なんという優しい方なのだろう。皆に好かれるのも納得した。
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