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(これって、まさかの異世界転生とかなんとか? えー……誰か夢だといってー)
そう考えるようになり、頬をつねっても何をしても目が覚めることはなかった。それどころか、少しずつこの体の持ち主の記憶の断片を思い出していく始末。
どうやら、この体の持ち主は、ずいぶん遠く離れた国から、今朝こっちの国に入国して即時に結婚したっぽい。王命だから、王族ゆかりの会場で披露宴をして、この家の離れにあるボロ家(といっても、日本の家賃6万のワンルームよりも立派)に連れて来られたものの放置された。
この国では、実家で準備されたウェディングドレスを着たまま新郎のところに行き、そこで初夜を過ごした新郎から新しい家の服に着替えさせられるのが風習とな。なんじゃそりゃ。
つまり、新郎は例の犯罪まがいの嫌嫌イケメンだったと。式でも仏頂面。道中はさっさとやつだけ先に帰ってて、初夜もドレスを着たままやるだけやって追い出したし。しかも、はるばる他国からやってきた妻を、離れに追いやってあの言い草。
(うーわ。泥酔したのが切っ掛けだったのかもだけど、マジでガチかも。でも、ちょっとまって。こういう時って、たいがいヒロイン転生とか悪役令嬢とか、モブとか。なんかの題材があって、そのキャラにっていう感じとか? 見たところ、産まれたてでもないし、スライムとか蜘蛛とか十男とかダンジョンじゃないわね。ということは、乗っ取ったってやつかしら? それにしても、あの男、ムカツクー。あれが夢じゃなくて現実だったのなら、次あったらどうしてくれようか。くっそー。お礼は倍、お礼参りは10倍返しよ!)
読んだことのあるWEB漫画だと、周囲に内緒にしてあれこれしてハプニングが起こる事が多かった。私は、この美女の元ネタの漫画やらゲームなんか心当たりはない。ただ、こういう迫力美人は悪女とか、そういう相場に決まってる。
(でも、漫画とかだと、ああいう態度のヒーローの妻って大抵悪女よね。ザマアされるのなんていやだなー。処刑とかゴメンだわ)
どっちにしても、そんな面倒はノーサンキュー。この状況から逃れられないのなら、平穏無事に、ごくごく翩翻に寿命を全うしたい。さっさと事情を話して、まずは理解者を得ることが先決だろうと思った。
(いやいや、まだ決めつけるには時期尚早。案外、二日酔いで目が覚めちゃうかもしれないし。うん、そうであってくれ。あんな男の妻として生きるのって滅茶苦茶いやー)
私は、取り敢えずあの男のことはうっちゃって、さっぱり理由がわからないことや自分の身の上を、クローザに伝えた。
「はい? では、奥様は、というか、奥様の中身は、別の世界の独身36歳アラフォー独身アラフォー社畜様、オタクゲーマーアラフォーVチューバー様。単語がよくわかりませんが、要するに、平民の経済力中の下、下の上、下の中くらいの、世間ではそこそこ名の知れた、いきおくれすぎた独身女性いうことで?」
案の定、クローザは目を丸くして、眉間にシワをよせて疑心暗鬼の眼差しでこちらを見てくる。逆の立場なら、信じられないし、相手をおかしな人認定して警察とか病院に相談するだろう。
(やっぱり言わないほうが良かったのかも?)
しかしながら、一度口にしたことをなかったことにはできない。それに、彼女の様子を見る限り、大げさに騒いで私を捕らえてどうこうしようとは思ってなさそうだ。
それにしても、彼女の言う通り、要約するとそんな感じだ。アラフォーが多いけど。行き遅れすぎたってなんだ、行き遅れすぎたって。うるせぇ、今どき未婚なんて珍しくないわー。絶対に単語わかって使ってるだろ。と、やさぐれてしまう。
「……胸に、疑問形に見せかけた言葉の暴力がぐさーっと来ますが、その通りです……いきおくれというよりも、私がいた場所では、未婚男女は多かったので普通でした。それと、名の知れたというか、アカウント名ですけど、VRリズムゲーム系の実況者でして、登録者数は50000人はいました」
「この世界では、女性は21でいきおくれなんですけどねぇ。たくさんの単語が理解できかねますが、とにかく人気者だったということで?」
ふんふんと、お互いに顔を上下に振りながら言葉を交わす。ちょっとずつ思い出したことによると、このクローザは、この体の持ち主だっtトッティ=ダンパー伯爵令嬢の乳母の子で、産まれた時から姉妹のように育った
「世界人口90億、だったかな、とにかくたくさんいましたから、人気というのもおこがましいですが……一応? でも、クローザさん、この話を、わりとすんなり受け入れてませんか? もっと、こう、信じられないとか、元の中の人の演技かと疑われるかなって思っていました」
「それはですね、度々そういうケースがあるからです。20年前に入れ替わった王妃様の中の方は有能な男性でして、ぼんくら、んんっ、ポンコ、んんんっ、女癖が悪、浪費、天下り、横領、癒着、あーゴホンゴホン、腐敗貴族に好き放題させていた名ばかりの王様よりも名君として尊敬されてます。以前まで国民の税を好き勝手に使っていた王様や愛人、側室たちは、今は王妃様から『働かざるもの食うべからず』と言われ、小遣いと仕事をもらって、細々と暮らしています。おかげさまで、色々搾り取られていた国民は3年でゆとりある生活と仕事をすることができたんですよね。それにしても、VRリズムゲームというのが良く分かりません。いわゆるダンスでしょうか?」
私は、VRリズムゲームというものがどういうものか、意気揚々と説明しようとした。が、話が長くなりそうだったので「あ、もういいです」と、カットされた。
しかし、『働かざるもの食うべからず』だなんて、もしかしたら王妃様の中の男性は、日本人なのだろうか。機会があれば、王妃様に会って答え合わせをしたいなあと思っていると、クローザが咳払いをした。
そう考えるようになり、頬をつねっても何をしても目が覚めることはなかった。それどころか、少しずつこの体の持ち主の記憶の断片を思い出していく始末。
どうやら、この体の持ち主は、ずいぶん遠く離れた国から、今朝こっちの国に入国して即時に結婚したっぽい。王命だから、王族ゆかりの会場で披露宴をして、この家の離れにあるボロ家(といっても、日本の家賃6万のワンルームよりも立派)に連れて来られたものの放置された。
この国では、実家で準備されたウェディングドレスを着たまま新郎のところに行き、そこで初夜を過ごした新郎から新しい家の服に着替えさせられるのが風習とな。なんじゃそりゃ。
つまり、新郎は例の犯罪まがいの嫌嫌イケメンだったと。式でも仏頂面。道中はさっさとやつだけ先に帰ってて、初夜もドレスを着たままやるだけやって追い出したし。しかも、はるばる他国からやってきた妻を、離れに追いやってあの言い草。
(うーわ。泥酔したのが切っ掛けだったのかもだけど、マジでガチかも。でも、ちょっとまって。こういう時って、たいがいヒロイン転生とか悪役令嬢とか、モブとか。なんかの題材があって、そのキャラにっていう感じとか? 見たところ、産まれたてでもないし、スライムとか蜘蛛とか十男とかダンジョンじゃないわね。ということは、乗っ取ったってやつかしら? それにしても、あの男、ムカツクー。あれが夢じゃなくて現実だったのなら、次あったらどうしてくれようか。くっそー。お礼は倍、お礼参りは10倍返しよ!)
読んだことのあるWEB漫画だと、周囲に内緒にしてあれこれしてハプニングが起こる事が多かった。私は、この美女の元ネタの漫画やらゲームなんか心当たりはない。ただ、こういう迫力美人は悪女とか、そういう相場に決まってる。
(でも、漫画とかだと、ああいう態度のヒーローの妻って大抵悪女よね。ザマアされるのなんていやだなー。処刑とかゴメンだわ)
どっちにしても、そんな面倒はノーサンキュー。この状況から逃れられないのなら、平穏無事に、ごくごく翩翻に寿命を全うしたい。さっさと事情を話して、まずは理解者を得ることが先決だろうと思った。
(いやいや、まだ決めつけるには時期尚早。案外、二日酔いで目が覚めちゃうかもしれないし。うん、そうであってくれ。あんな男の妻として生きるのって滅茶苦茶いやー)
私は、取り敢えずあの男のことはうっちゃって、さっぱり理由がわからないことや自分の身の上を、クローザに伝えた。
「はい? では、奥様は、というか、奥様の中身は、別の世界の独身36歳アラフォー独身アラフォー社畜様、オタクゲーマーアラフォーVチューバー様。単語がよくわかりませんが、要するに、平民の経済力中の下、下の上、下の中くらいの、世間ではそこそこ名の知れた、いきおくれすぎた独身女性いうことで?」
案の定、クローザは目を丸くして、眉間にシワをよせて疑心暗鬼の眼差しでこちらを見てくる。逆の立場なら、信じられないし、相手をおかしな人認定して警察とか病院に相談するだろう。
(やっぱり言わないほうが良かったのかも?)
しかしながら、一度口にしたことをなかったことにはできない。それに、彼女の様子を見る限り、大げさに騒いで私を捕らえてどうこうしようとは思ってなさそうだ。
それにしても、彼女の言う通り、要約するとそんな感じだ。アラフォーが多いけど。行き遅れすぎたってなんだ、行き遅れすぎたって。うるせぇ、今どき未婚なんて珍しくないわー。絶対に単語わかって使ってるだろ。と、やさぐれてしまう。
「……胸に、疑問形に見せかけた言葉の暴力がぐさーっと来ますが、その通りです……いきおくれというよりも、私がいた場所では、未婚男女は多かったので普通でした。それと、名の知れたというか、アカウント名ですけど、VRリズムゲーム系の実況者でして、登録者数は50000人はいました」
「この世界では、女性は21でいきおくれなんですけどねぇ。たくさんの単語が理解できかねますが、とにかく人気者だったということで?」
ふんふんと、お互いに顔を上下に振りながら言葉を交わす。ちょっとずつ思い出したことによると、このクローザは、この体の持ち主だっtトッティ=ダンパー伯爵令嬢の乳母の子で、産まれた時から姉妹のように育った
「世界人口90億、だったかな、とにかくたくさんいましたから、人気というのもおこがましいですが……一応? でも、クローザさん、この話を、わりとすんなり受け入れてませんか? もっと、こう、信じられないとか、元の中の人の演技かと疑われるかなって思っていました」
「それはですね、度々そういうケースがあるからです。20年前に入れ替わった王妃様の中の方は有能な男性でして、ぼんくら、んんっ、ポンコ、んんんっ、女癖が悪、浪費、天下り、横領、癒着、あーゴホンゴホン、腐敗貴族に好き放題させていた名ばかりの王様よりも名君として尊敬されてます。以前まで国民の税を好き勝手に使っていた王様や愛人、側室たちは、今は王妃様から『働かざるもの食うべからず』と言われ、小遣いと仕事をもらって、細々と暮らしています。おかげさまで、色々搾り取られていた国民は3年でゆとりある生活と仕事をすることができたんですよね。それにしても、VRリズムゲームというのが良く分かりません。いわゆるダンスでしょうか?」
私は、VRリズムゲームというものがどういうものか、意気揚々と説明しようとした。が、話が長くなりそうだったので「あ、もういいです」と、カットされた。
しかし、『働かざるもの食うべからず』だなんて、もしかしたら王妃様の中の男性は、日本人なのだろうか。機会があれば、王妃様に会って答え合わせをしたいなあと思っていると、クローザが咳払いをした。
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