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「マール! ああ、本当にマールなの? よく顔を見せて……」
先だってのコーキさんと同じく、すらりとした美魔女がぎゅうぎゅう抱きついてきた。
「あ、あのあのあの……」
話によると、彼女はネオンという名前で、かつて聖女だったみたい。たしかに、私が知っているネオンちゃんが年齢を重ねたら、こんな感じになるのかなというような、まさにイメージ通りだ。
因みに、ここでいう勇者と聖女というのは、何も魔王などを退治するためのファンタジーみたいなあれじゃなくて、単なる役職とのことだ。主に、めんどくさい辺境の盗賊退治とか危険だけど割に合わない仕事をさせられる、名誉だけの名ばかり役職。
ただ、コーキさんは王女の私のツガイだし、ネオンさんは今の王様で私の従兄弟である人のツガイだから、比較的、他の勇者たちや聖女たちとはちがって安全な場所だったらしいけど。
「事前の連絡である程度はわかっているわ。だから安心してね。きっと、私と苦楽を共にしたマールは別の世界でも幸せに生きていると思うし、あなたも大切だということはかわらないのよ」
「ネオンさん……。私を受け入れてくださってありがとうございます」
涙ながにそういうネオンさんと、お互いにハグしあう。ツガイならともかく、他の人にはもうひとりの私じゃないとダメだと言われるかと思っていたから嬉しい。
何をどうやっても、私はこの世界で生きていかなければならない。かといって、たったひとりぼっちで生きてはいけないだろう。
本当なら私が女王になるはずだったのだけれど、メ・ガーミの手違いで転移した時間がかなりずれてしまったから、私の従兄弟が王様になったみたい。
私がこうして現れたことで、王宮内では騒動になったけど、私自身が女王とかは無理だし、従兄弟さんがきちんと国を治めてくれているみたいだから、このままでいいと言った。
王位継承権の放棄をした代わりに、元直系の王族だから、それ相応に年金ももらえるみたいだし、コーキさんがもともと物凄くお金持ちだから、それで十分かなと思う。
ところで、ここに来る数日の間に、私はコーキさんと話をいっぱいした。話など聞かなくても、気持ちばかりが先走っていた状況だったけど、話を聞くにつれて彼がツガイである私のことを大事にしてくれているのがわかった。
そして、別人のような感覚なんだけど、やっぱり同一人物というか、ツガイというのは根っこの部分で惹かれ合うから外見や体験は二の次だということもわかり、打ち解けたのは言うまでもない。
年の差はあるけど、今ではコーキさんと結婚することを素直に受け止められるようになっていた。
ひとしきり話をしたあと、私はコーキさんと一緒に彼の家に向かった。たどり着いたのは、なんというか、「ここが俺の家」みたいな簡単なノリで紹介されるようなものではなくてびっくりした。
王宮はもちろん壮大で、ああ、裕福な国のお城だなーって感じだったけど、それに劣らないほど大きくて広い。一体、何部屋あるのだろうか。
尖塔のようなものもあり、こっちから案内されたら、ここが王宮だと勘違いしたに違いない。
「俺が世界中を旅していたせいで長年ほったらかしだったけど、執事たちやうちの騎士団が留守をきっちり守ってくれていたから、すぐに住めるよ」
「私が、十数年現れなかったせいですね。ごめんなさい」
「マールは悪くないだろ? メ・ガーミ様は、人々にたまに試練をお与えになる。だけど、こうして巡り合えたんだ。会えなくて寂しかったが、諦めずに探し続けてよかった。マールを見つけ出せた時に俺の思いは報われたから問題ないよ」
「コーキさん……」
もとの世界でも、コーキさんは私を好きだと言ってくれていたから、別の世界でも私達はツガイみたいに惹かれ合うんじゃないかな。
できれば、もうひとりの私は、私と違ってきちんとすぐに彼と出会って結ばれてくれていたら嬉しい。
「さあ、皆に紹介しよう。大まかなことは執事たちが全部するし、この世界のことから少しずつ覚えていけばいいから」
「はい」
今はまだ、わからないことがわからない状態だ。いきなりこの広大なお城や領地や会社を管理なんてできるわけがない。
紹介された皆さんからも、快く受け入れていただけた。
ただ、たった一つだけ急いですぐにしなきゃいけないことがあったことを知ったのは、その日の夜だった。
先だってのコーキさんと同じく、すらりとした美魔女がぎゅうぎゅう抱きついてきた。
「あ、あのあのあの……」
話によると、彼女はネオンという名前で、かつて聖女だったみたい。たしかに、私が知っているネオンちゃんが年齢を重ねたら、こんな感じになるのかなというような、まさにイメージ通りだ。
因みに、ここでいう勇者と聖女というのは、何も魔王などを退治するためのファンタジーみたいなあれじゃなくて、単なる役職とのことだ。主に、めんどくさい辺境の盗賊退治とか危険だけど割に合わない仕事をさせられる、名誉だけの名ばかり役職。
ただ、コーキさんは王女の私のツガイだし、ネオンさんは今の王様で私の従兄弟である人のツガイだから、比較的、他の勇者たちや聖女たちとはちがって安全な場所だったらしいけど。
「事前の連絡である程度はわかっているわ。だから安心してね。きっと、私と苦楽を共にしたマールは別の世界でも幸せに生きていると思うし、あなたも大切だということはかわらないのよ」
「ネオンさん……。私を受け入れてくださってありがとうございます」
涙ながにそういうネオンさんと、お互いにハグしあう。ツガイならともかく、他の人にはもうひとりの私じゃないとダメだと言われるかと思っていたから嬉しい。
何をどうやっても、私はこの世界で生きていかなければならない。かといって、たったひとりぼっちで生きてはいけないだろう。
本当なら私が女王になるはずだったのだけれど、メ・ガーミの手違いで転移した時間がかなりずれてしまったから、私の従兄弟が王様になったみたい。
私がこうして現れたことで、王宮内では騒動になったけど、私自身が女王とかは無理だし、従兄弟さんがきちんと国を治めてくれているみたいだから、このままでいいと言った。
王位継承権の放棄をした代わりに、元直系の王族だから、それ相応に年金ももらえるみたいだし、コーキさんがもともと物凄くお金持ちだから、それで十分かなと思う。
ところで、ここに来る数日の間に、私はコーキさんと話をいっぱいした。話など聞かなくても、気持ちばかりが先走っていた状況だったけど、話を聞くにつれて彼がツガイである私のことを大事にしてくれているのがわかった。
そして、別人のような感覚なんだけど、やっぱり同一人物というか、ツガイというのは根っこの部分で惹かれ合うから外見や体験は二の次だということもわかり、打ち解けたのは言うまでもない。
年の差はあるけど、今ではコーキさんと結婚することを素直に受け止められるようになっていた。
ひとしきり話をしたあと、私はコーキさんと一緒に彼の家に向かった。たどり着いたのは、なんというか、「ここが俺の家」みたいな簡単なノリで紹介されるようなものではなくてびっくりした。
王宮はもちろん壮大で、ああ、裕福な国のお城だなーって感じだったけど、それに劣らないほど大きくて広い。一体、何部屋あるのだろうか。
尖塔のようなものもあり、こっちから案内されたら、ここが王宮だと勘違いしたに違いない。
「俺が世界中を旅していたせいで長年ほったらかしだったけど、執事たちやうちの騎士団が留守をきっちり守ってくれていたから、すぐに住めるよ」
「私が、十数年現れなかったせいですね。ごめんなさい」
「マールは悪くないだろ? メ・ガーミ様は、人々にたまに試練をお与えになる。だけど、こうして巡り合えたんだ。会えなくて寂しかったが、諦めずに探し続けてよかった。マールを見つけ出せた時に俺の思いは報われたから問題ないよ」
「コーキさん……」
もとの世界でも、コーキさんは私を好きだと言ってくれていたから、別の世界でも私達はツガイみたいに惹かれ合うんじゃないかな。
できれば、もうひとりの私は、私と違ってきちんとすぐに彼と出会って結ばれてくれていたら嬉しい。
「さあ、皆に紹介しよう。大まかなことは執事たちが全部するし、この世界のことから少しずつ覚えていけばいいから」
「はい」
今はまだ、わからないことがわからない状態だ。いきなりこの広大なお城や領地や会社を管理なんてできるわけがない。
紹介された皆さんからも、快く受け入れていただけた。
ただ、たった一つだけ急いですぐにしなきゃいけないことがあったことを知ったのは、その日の夜だった。
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