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ころりん2/2 ※ 毎度おなじみご要望右手回です。タグをご覧くださいませ。

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「フロント王子、これはこれは。おお、新作のトウミョイヤーを食べている途中でしたかな。まだお皿にいっぱい残っているではありませんか。これは由々しき問題。ささ、リア様。フロント王子に、愛♡のあーんをして差し上げてくださいなのじゃ」

「愛って……もうやだ、おじいちゃんったら、さっきから。ふふふ、青々として美味しそうな豆苗、トウミョイヤーっていうのね。フロント、はい、どうぞ」

 愛するリアが、僕の口の前に、トウミョイヤーを持って来てくれる。嬉しい。リクガメの姿で軽快に踊れてしまいそうなほど幸せだ。だが、トウミョイヤーだけはご遠慮したい。どうせなら、キャベトゥとか、なんならお菓子がいい。

 僕は、じいに助けを求めたが、常日頃から好き嫌いやお残しを許してくれないじいは、僕の訴えを秒も迷わず拒絶した。

 なんという鬼だ。悪鬼はここにいた。賢者の姿は仮の姿で、その実態は、リクガメの悪魔に違いない。

「どうしたのー? はい、あーん」

 僕は、目に涙を浮かべてリアを見て懇願した。くやしいけれど、僕の今の姿の言葉がリアには全く、これっぽっちも届かない。
 キラキラと輝く瞳は、僕がそれを食べるのを期待している。
  大好きなリアが、求愛給餌行動をしてくれる天国と、世にも不味いトウミョイヤーをもしゃるという地獄を同時に味わったのである。

……も、しゃ、もしゃ、うう……おえ”……! もういいです、もう満腹です。ごちそうさま、、あ、ダメですか、そうですか……

  も、もしゃ……も…………も……ぐえ”……ご………く……ん……


 涙とえづきをこらえながら、なんとかトウミョイヤーを全て食べ終えた。

「フロント、美味しかった? ふふ、ティルの飼っていたリクガメも豆苗とかよく食べてたもんね。涙が出るほどの大好物だったのかなー? 良かったねー。ほら、口の周りを綺麗にしよーねー」

「……」

  不味すぎて悶絶している半泣きリクガメの僕の顔に、かわいくて眩しい笑顔で近づいて口元を綺麗にしてくれた。僕たちは、誰から見ても幸せいっぱいカップルだ。ハートが飛び交ってると思う。
  さらに、指先で突っついてくれた。わ、これって恋人に好意を示すやつ。そのまま両方の指で、僕のほっぺたをペチペチしてくれ……なかった。しょんぼり。

  でも、甲羅をじいが持って来た布で綺麗に艶を出してくれた。

  僕のリアは、最高だああああ!

  晴れ渡る幸せいっぱいの時。僕はもう有頂天だった。口がトウミョイヤー臭かったけど。


 夜になり、僕はトウミョイヤーの事は記憶の彼方に追いやり、至高の給餌求愛の時を思い出しながら右手で、昼間からきかん棒になっていたそこをなぐさめていた。

 実は、昼間、中途半端にこんにちはしたままだったソコは、今までで一番大きくなっていた。

 僕はモテたためしがない。ガタイはそこそこイイのに、野菜なんて作ってるひ弱な王子と揶揄され、令嬢は僕と視線が合う事すら避けていた。
 皆だって、野菜を食べるのに。なんで、僕が野菜を育てちゃダメだと言うんだろう。
 ヒソヒソ噂されていた僕は、どんどん沈んでいった。男友達や家族は、僕の事を認めてくれているし、僕の作った野菜を美味しいって絶賛してくれる。だから、僕の周りには男友達とじいたち重鎮のおっさんくらいしかいなかった。

 でも、今の僕は、世界一の幸せな男だと自信を持って言える。

「リア、リア……好きだ」

 しゅっしゅと右手を素早く動かすと、先端から透明の粘液が出てきて滑りを良くした。彼女の色気のある姿や可愛くて綺麗な顔、そして、僕を何度も呼ぶ声が、ベッドでしどけない姿に早変わりして僕を誘う。

 赤らんだ頬に、潤んだ瞳。愛らしい唇がぽってり腫れているのは、少し前に僕と舌を絡める激しいキスをしたから。

 僕は、誘われるがまま、彼女を組み敷いて愛を囁きながらお互いを高め合う。そして、ついに彼女の中で……

「う……はぁー」

 目を開けても僕以外誰もいない暗い部屋。いつか、リアとキスして、それから夢のような愛の一夜を過ごしたい。

 汚れた股間を魔法できれいにしながら、リアがこの世界の、僕の元に来てくれた次の日を思い返す。


 リアは、目を覚ましてから、元の世界に帰れないと聞いても、冷静に見えた。多少の戸惑いはあっても、なんだか割とすんなり受け入れてくれたみたい。

 僕の事も、愛まではいってないけど、いいなって思ってるって照れながら言ってくれた。マジ可愛い! 滅茶苦茶嬉しい!

 次の日の会議で、堂々とリアを僕の花嫁である事を宣言した。

  だけど、カバー侯爵から、別の青年との見合いも提案されるという邪魔が入ったけど、概ねリアの身柄の安全は確保できたのである。

 王子である僕の花嫁候補を強奪なんてするやつはそうはいないからね。

 だけど、貴族たちの反感を治めるためにも、独身の青年10人とリアは形だけでもお見合いしなければならない。夫を、できれば3人選んでもらう必要がある。
  僕よりも逞しくて令嬢たちどころか、平民の女の子たちにもモテモテの男達だ。
 騎士とか武官は勿論の事、文官すら僕よりも一回り以上は大きい。悔しい。

『ペンギンの国のビィノ様のご主人は王様ひとりだったんでしょ? じゃあ、私も、その……。えっと、フロント様ひとりでいいんじゃないんですか? その。だから、あのその……夫になる人はひとりでも、かわいい赤ちゃんはたくさんできたらいいなって思います』

 リアの言う事はもっともだった。彼女の世界は基本的に一夫一妻らしいし、ビィノ様の世界もそうだったと聞いている。
 それにしても、赤ちゃんがたくさん欲しいだなんて。照れるなあ。僕、頑張っちゃうよ!

『乙女はフロントの求婚を快く受け入れたのである。一夫一妻を望む乙女と王子の結婚は、即ち、国の繁栄に繋がる。もう決まったも同然だ』って父王も言ってくれた。

『王、それはあまりにも性急すぎますぞ!』

 だけど、カバー侯爵以外の複数の貴族たちから、リアが来たばかりだから、右も左もわからないままなし崩しで流されているだけだ。リアが本当に選ぶ男は別にいるかもしれないと言われ、会議は膠着状態に陥った。結局、独身の青年とお見合いして、半年後に正式なリアの夫を決めようという事になったのである。

 その際、彼女が選ぶのがたったひとりなのか、それとも複数なのか。男達は異世界の乙女に、熱烈なアプローチを始める事になった。

 誰にも有無を言わせず、今すぐリアと結婚したいのに。

 神託の乙女を欲しがるのは僕だけじゃない。彼らだって寒い環境では生きていけないリクガメ族だから、リアを咽から手が出るほど望んでいる。
  だから、貴族たちから強い反感がある以上、王族だからこそ彼らの意見を大切にしなければならない。

「フロント、あやつらの意志も固い。令息たちと平等に乙女を会わさねば国が混乱しかねない。なあに、いくら別の男が来たからといって、お前が乙女の心をがっちり掴んで離さなければ良いだけの事だ。乙女もお前を好いておるとじいたちから聞いてるぞ。半年後が楽しみだ。ははは」

 父王にも、僕を選んでくれるのが決まっているから承諾しろと後から説得された。僕だって頭では理解している。

 だけど……

 お見合いの途中で、リアが僕よりももっと好きな男が出来て、そいつと結婚するって言って僕を捨てたら……

 僕は、リアに必ず選んでもらえる自信なんて全くない。悪い方悪い方へと広がる不安を、どうしようもなく持て余す事があった。





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