上 下
15 / 29

ブレイクタイム インナーマッスルを鍛えよう~俺の嫁(確定にしたい)は筋肉がお好き❤️ 1/2

しおりを挟む
 俺は、はんにゃらげーのおかげかどうかはわからないが、ベアトリーチェ未来の嫁とのアンラッキー&ラキスケが無くなった。とはいっても接触タイプのものだけなので、風になびいたスカートが翻りもう少しでその中のパラダイスが見えそうになったり(ガン見している事が思いっきりバレて逃げられ嫌われポイントが加算される)などといった種類のものはあったが。

 それと同時くらいに、ブリゲラが俺の周りをチョロチョロする事が無くなり、まずまず落ち着いた日常を送っていた。


※※※※


 俺には王子から言い渡された任務がある。そのため、今日も一人の女性と話をしているのだが──。

「フランチェスコ様、私、何か殿下がたに粗相をしたのでしょうか……? 殿下は私を妃にしてくださると仰ってくださっていたのに……いきなりお会いにもなってくれなくなって……グスッ」

 フランチェスコの記憶を手繰れば、この任務は転生前の学園に入学して以来ずっとだし、転生後もブリゲラが消えてからこうして定期的に王子たちにフラれた女子生徒たちに相対していた。

「……いや、君に問題があるわけではないんだ」

「だったらどうして……。そうだわ、フランチェスコ様、何が悪かったのかお確かめになって……?」

 折角ブリゲラに遭遇しなくなったというのに、こうして王子の命令で後始末をしに来る度に迫られる。転生前もうまく任務をこなし彼女たちと関係を持った事がなかったため、実はフランチェスコは童貞なのだ。

 王族は勿論高位貴族など純粋に近いとある性質を持っているにも拘らず、どうやら彼は代々色事には不得手だったようだ。

 ザビーリョ家は、ある意味この国の民として恥さらしと侮蔑されてもおかしくないほど、これと決めたパートナー一筋を貫いて来た一族として有名なのである。
 しかし、召喚術やその性質ならではの特性を国に買われて割と高位に位置づけされており、歴代の当主は時折王子や王を助けて来たため尊敬もされている。ザビーリョ家がなかったら、内乱がしょっちゅう勃発し、国が廃れただろうと言われるほど。

「いや、だからね。俺には心に決めた女性がいるんだ。離れてくれ」
「少し前まではそのように仰らなかったではないと聞いているわ? 趣味ではない、顔が好みではないなどと数多の女性を袖にしてきたと。ですが、くらいはしてからお決めになってもいいでしょう? 案外、私がその相手かもしれないじゃない?」

 胸を強調する制服の上半身の胸元のボタンをぷちぷち外し、俺の手を取ってそこに誘う妖艶な美女。この国は、ブリゲラもそうではあるが、男の欲情を誘う美女や美少女ばかりなのだ。

 ベアトリーチェは比べものにならない。唯一無二のヴィーナスですが何か?

 この国の民である彼女たちは、男を誑かし、その精を取り込み生きて行くサキュバスの血を引いている。
 男も勿論インキュバスの血を引いており、女の身の内にある性的欲情を取り込む。

 勿論、建国してから徐々にその血は薄れているし、もともと食事は人間と同じだ。精はおやつみたいなもので、ひとりひとりその味も濃度も大きさも相性も何もかもがちがう。

 ブリゲラは変わった異国の珍味のようなもので胸やけがするほどだったという。一時はハマるがすぐに飽きて、いわば、ラルドやオルチェッリ アル バローロばかりでは食べ飽きるので白米が欲しくなるみたいな感覚らしい。ラルドは新鮮な豚の背脂を熟成させた生ハムのようなもので、ラルドやオルチェッリ アル バローロとは、イタリアワインの王様、バローロを作った後の葡萄の搾りかすに付け込んで熟成させたチーズだ。どちらも絶品ではあるが毎食にはちょっとご遠慮したい。

 王子たちは、おやつをつまみ食いしてはその味に飽き、そして次のおやつに手を伸ばす。こうして飽きられ捨てられた女子生徒たちが彼らに未練を残さないように、俺が彼女たちの心の中にある、王子たちの精の名残りや魅了を全て取り除いて来た。
 それには肉体関係を持つ事が手っ取り早いが、そうなると今度は俺に相手が執着する事態になる。話をしながら肉体的に接触せず、そして魔力でそれを成し遂げるのがベストだったため、女に興味のない俺が担当になっているのであった。

「……違うな。断固として拒絶する……。ごめんね」

 俺はその手をそっとよけ、彼女の体の内に残る王子たちの精の一欠けらも残さずerase消去した。精を増強させるのも出来るが、王子たちの強烈な精と魅了を受けた彼女たちの、人間でいう所の純粋な恋心や執着という部分を消し去るのだ。

 フランチェスコは、替えの利くおやつ感覚で彼女たちのその部分を弄び、そして最終的には自分が引導を渡さねばならない現状が嫌でたまらなかったらしい。彼もまた、この国では生きづらかったのだと思う。

 俺に言わせてみれば、彼女たちも男をとっかえひっかえしているビッチだし、どこがピュアな恋心を抱く乙女なんだとツッコみたいところだ。

 ベッドの中での男の言葉ほど当てにならないものはない、と彼女たちがよーく知っているはずだ。なのに、こうして執着と言う名の恋にも似た感情を抱くのは、王子たちがよりインキュバスとしての能力が優れているためというよりも、彼女たちがそれを望んで彼らの虜になっているにすぎない。

 王子たちに散々弄ばれたとはいえ、彼女たちも割り切って喜んで相手をしていた部分もある。複数同時にベッドで淫靡な時を興じていたのだから。本当に嫌なら拒絶するはずだ。

 王子たちも自分で後始末が出来ない理由がある。何度か試したようだがより一層執着され、狂気じみたサキュバスが出来あがってしまう。曰く、折角植え付けた自分の精と魅了を取り除くなど愚の骨頂だと本能が拒否して、オートでeraseどころかamplification増幅するらしい。 


「え……あら? フランチェスコ様? やだ、私ったらどうして……?」

「殿下たちがどうしたって?」

「んー? なんでもないわ? 私の勘違いというか。そうね、また機会があれば遊んでねってお伝えしてくれるかしら?」

「わかったよ」

 俺のeraseで彼女は王子たちに出会う前の魅了されていない正常な精神に戻るや否や、次のターゲットを求めて行くのだから世話はない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

キズモノ令嬢絶賛発情中♡~乙女ゲームのモブ、ヒロイン・悪役令嬢を押しのけ主役になりあがる

青の雀
恋愛
侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタインには、れっきとした婚約者がいるにもかかわらず、ある日、突然、婚約破棄されてしまう そのショックで、発熱の上、寝込んでしまったのだが、その間に夢の中でこの世界は前世遊んでいた乙女ゲームの世界だときづいてしまう ただ、残念ながら、乙女ゲームのヒロインでもなく、悪役令嬢でもないセリフもなければ、端役でもない記憶の片隅にもとどめ置かれない完全なるモブとして転生したことに気づいてしまう 婚約者だった相手は、ヒロインに恋をし、それも攻略対象者でもないのに、勝手にヒロインに恋をして、そのためにミッシェルが邪魔になり、捨てたのだ 悲しみのあまり、ミッシェルは神に祈る「どうか、神様、モブでも女の幸せを下さい」 ミッシェルのカラダが一瞬、光に包まれ、以来、いつでもどこでも発情しっぱなしになり攻略対象者はミッシェルのフェロモンにイチコロになるという話になる予定 番外編は、前世記憶持ちの悪役令嬢とコラボしました

処理中です...