【完結】【R18】猫背ぎみのコンプレックス女子は、痴漢から助けてくれた男の子に大切にされています【改題】

にじくす まさしよ

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4 真冬の屋上庭園はすぐに撤退だ

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 地下駐車場の寒さは、俺でもキツイ。着慣れていない振り袖姿の彼女を、こんな所でいさせるなんて彼氏失格だ。うっとりと、潤んだ表情の愛らしい彼女を抱きしめていられる時間が名残り惜しいけれど、慌ててエレベーターでホテルのロビーに移動した。
 やっと快適温度を保つ暖房の効いた場所に来られてほっとする。

「うーん。庭園に行ってみる? それともそこのオープンカフェに行く?」
「じゃあ、庭園! ふふ、ここの屋上庭園って雑誌に載ってるし行ってみたかったの!」

 その雑誌知ってる。先月のクリスマスのデート特集で載っていたから、ここを選んだのだから。庭園でロマンチックに寄り添ってムードが高まり、そのままこのホテルに泊まる……。なんて、ちょっと今は時間が早いけどそんな感じの所なのだ。
 雑誌は勿論健全なデートスポットとして紹介している。プロポーズや告白にもぴったりだと。だけど、邪な下心丸出しの目的の男なんて俺以外にも多いだろう。

 彼女のリクエスト通りにエレベーターでそこに上がった。扉を開けてみると、びゅーびゅー凍り付くような風が吹き荒れていた。空は成人式の会館で見上げた時よりも暗くなっていて、その暗さよりも黒く厚い雲が広がっていてまだまだ勢いを増しそうだ。速攻扉をバタンと閉めたのは言うまでもない。

「どうりで誰もいないなって思ったんだぁ。いつもはカップルだらけだって聞いていたのに」
「ちょっと、今日は無謀だね。風邪をひくかもしれないからまた今度、あったかい時に来ようか」
「うん!」

 残念だけど、彼女を連れて階下に降りるエレベーターの前まで戻る。こんな日に、わざわざここに来ようとする人はいなさそうで、今は広い廊下にいるのは俺たちふたりだけだった。
 俺は、なかなか来ないエレベーターの前から、少し隠れるような曲がり角まで彼女の手を引き連れて行った。とてとてついてくる彼女は本当に可愛くて最高だ。

「ひふみくん……? もうすぐエレベーターが来ちゃうよ?」
「うん。ちょっとだけ」

 そう言うと、小さな彼女の体をすっぽり囲い込むように抱きしめた。ぴくっとびっくりして体に力が入った彼女がすぐに俺を抱きしめ返してくれる。

「はぁ……、好きだよ。誰にも取られたくない。ごめんね、ちょっと考えたら寒すぎるってわかりそうなものなのに。カッコ悪い所ばかり見せちゃって……」
「ひふみくん、私も。えっとね? ここが寒すぎるなんて来てみなきゃわかんない事だったよ? それに、……私がいいなんて言うのはひふみくんくらいだと思う」
「いろはちゃんは可愛いし魅力的だよ。優しいし。ふんわりしていてずっとこうしていたい。気づいてないだけで、いろはちゃんを狙う男は沢山いると思う」
「うーん? 全くモテた事ないけど?」
「まあ、他の男が寄ってこないならそれでいいけど」

 こういうやり取りは今までにも何度もしている。俺は本心で言っているのに、彼女は全然信じてくれない。確かに彼女は一見地味だし、大人しいし。でも、こんなにも優しくて可愛くて奥さんにするには最高の女性だと、男の本命にいつもなれる人だと思う。

 今までモテなくて良かった。俺のために一人でいさせてくれてありがとう!

 目を閉じてぎゅっと抱きしめて、信じていない神様に感謝なんかしてしまう。

「こんな、チビでデブを好きだって言ってくれるの、ひふみくんが初めてだし、これからずっとそうだよ?」
「だから、いろはちゃんはチビじゃなくて可愛いんだし、デブじゃなくてちょうどいいんだ。今どきの痩せすぎた子より、ふわふわした君がいい。それに、俺と出会ってからダイエットして標準体重まで落ちたんでしょ? 俺はあのままでいいのに……。これ以上痩せちゃダメ。死んじゃうよ?」
「うん。もうこれ以上はきつくって。だけど、維持するのは頑張る。だって、ひふみくんの隣にいるのに、ちょっとでも可愛い彼女でいたいから……」

 もう、この子はいつだってこんな風に自信がないけれど、すんごい魅力的で。絶対、ふわふわした彼女のほうが抱き心地が良いに決まってる。今だって、俺にしてみたら痩せすぎて心配になるのに。でも、健康的な標準体重のほうがいいんだろう。どんな姿だって、たとえいろはちゃんが100キロ……は病気が心配だからアレだけど愛せる自信がある。

「うん。もう少しふわっとしてもいいけど……。でも、いろはちゃんが自分で好きになれる体型を維持してくれたらいいよ」
「ありがと……。嬉しいな、男の子ってモデル体型の明るくて綺麗な子が好きだと思っていたから。私、ひふみくんに会えてよかった。幸せ……ひふみくんこそ、とってもカッコいいのに、私なんかでいいのかなあって……美人さんとかかわいい人、会社にいっぱいいてそうだし……」
「俺、いつも怒ったみたいな顔だし。モテないどころか怖がられているよ。それに、ほかのどんな子にモテたって、いろはちゃんにモテなかったら意味ないし。はぁ……いろはちゃん、大好き」
「私も大好き」

 にこにこ笑って、こつんと額をつけたりは身長差がありすぎて無理だ。でも、座ったりしたら出来るから、それは後でするとして。

 かがんで、化粧が取れないように唇にちゅってキスをした。

──このキスで、君がどれほど好きなのか、気持ちの全部が伝わればいいのに……

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