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始まり
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けたたましく吠える魔物の声。叫び声を上げる護衛兵の声。馬車の中で震えながら、パメラ・ジェローム・ライネック伯爵令嬢はその声を聞いていた。
恐怖で足が震えうまく立てない。それでも外の様子が気になって、そっとカーテンの隙間から外をのぞく。
夕暮れに染まる大地に、人と魔物が絡み合っている。大型の人間のような風貌をした魔物はヴォッヴォッと威嚇する声を上げ続け、森からは次々と同族の魔物があふれ出てきていた。その様子はまるで仲間を呼んでいるかのようだった。
護衛兵たちが徐々に馬車の方へと追い詰められてゆく。
「何としてでもお嬢様を守り抜くんだ!」
おう! とその声に応える。まだ諦めてはいないが、それほど長くは持ちそうにない。徐々に絶望感がその一帯に漂い始めていた。
そのとき、一筋の光が走った。一呼吸遅れて、魔物たちがまるで糸が切れた操り人形のようにバタバタと倒れていく。
「助太刀するぞ。シルバー級冒険者のエルネストだ。こいつらの相手は俺がする。馬車の守りを固めろ」
光り輝く剣を持つ黒髪の男は、そう叫ぶと魔物の間を駆けて行った。
日が落ちて闇に染まりつつある戦場を、光の剣が煌々と照らした。その太陽のような光に励まされ、護衛兵たちは奮起した。
パメラはカーテンの隙間からその光景を見ていた。光り輝く剣に次々と倒されていく魔物たち。その様子はまるで、物語に登場する勇者のようであった。
呆気にとられる護衛兵たちの目の前で、魔物の中でも特別大きな一体がドザリと倒れた。それを皮切りにして残りの魔物が森の中へと逃げてゆく。
辺りを静寂が包み込んだ。
遠くから馬がいななくような声がかすかに聞こえてきたが、すぐにそれも闇の中に消えていった。
エルネストは何もなかったかのように馬車に目を向けた。
パメラの潤んだ瞳と、エルネストの輝く瞳が交錯する。
その瞬間、パメラは恋に落ちた。
パメラが十三歳のときの出来事であった。
それから二年後、成人の儀を終えたパメラはとんでもない計画を両親に突きつけた。そして、それを実行に移したのであった。
両親が天を見上げ、頭を抱えたのは言うまでもなかった。
恐怖で足が震えうまく立てない。それでも外の様子が気になって、そっとカーテンの隙間から外をのぞく。
夕暮れに染まる大地に、人と魔物が絡み合っている。大型の人間のような風貌をした魔物はヴォッヴォッと威嚇する声を上げ続け、森からは次々と同族の魔物があふれ出てきていた。その様子はまるで仲間を呼んでいるかのようだった。
護衛兵たちが徐々に馬車の方へと追い詰められてゆく。
「何としてでもお嬢様を守り抜くんだ!」
おう! とその声に応える。まだ諦めてはいないが、それほど長くは持ちそうにない。徐々に絶望感がその一帯に漂い始めていた。
そのとき、一筋の光が走った。一呼吸遅れて、魔物たちがまるで糸が切れた操り人形のようにバタバタと倒れていく。
「助太刀するぞ。シルバー級冒険者のエルネストだ。こいつらの相手は俺がする。馬車の守りを固めろ」
光り輝く剣を持つ黒髪の男は、そう叫ぶと魔物の間を駆けて行った。
日が落ちて闇に染まりつつある戦場を、光の剣が煌々と照らした。その太陽のような光に励まされ、護衛兵たちは奮起した。
パメラはカーテンの隙間からその光景を見ていた。光り輝く剣に次々と倒されていく魔物たち。その様子はまるで、物語に登場する勇者のようであった。
呆気にとられる護衛兵たちの目の前で、魔物の中でも特別大きな一体がドザリと倒れた。それを皮切りにして残りの魔物が森の中へと逃げてゆく。
辺りを静寂が包み込んだ。
遠くから馬がいななくような声がかすかに聞こえてきたが、すぐにそれも闇の中に消えていった。
エルネストは何もなかったかのように馬車に目を向けた。
パメラの潤んだ瞳と、エルネストの輝く瞳が交錯する。
その瞬間、パメラは恋に落ちた。
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それから二年後、成人の儀を終えたパメラはとんでもない計画を両親に突きつけた。そして、それを実行に移したのであった。
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