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大地の精霊
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一通り教えたあとはそれぞれが自主練を始めた。もちろん盆踊りの音楽はない。ゆえに手拍子でリズムをとることになる。あパパンがパン、ってね。やだ、何だか恥ずかしい。
死ぬまでに盆踊りを一度みんなと一緒に踊ってみたいと願ったことはあったけど、多分こういうことじゃないと思う。
「よし、みんな盆踊りをマスターしたな。それではこれより、大地の精霊様に祈りをささげる儀式を始める」
ルークが高らかに宣言した。有り体に言えば「みんなで盆踊りを踊ろうぜ!」ということである。こうなりゃやけだ。やってやらぁ! あパパンがパン。
こうして謎の集団が、謎の石碑の周りで踊り出した。総勢百人くらいだろうか? 踊りの輪は二重になっている。
初めは静かに踊り出したのだが、みんなの手拍子がそろってくるに連れて、どこからともなくあの音楽が流れてきた。盆踊りのテーマソングである。
「何だ、一体どこから音楽が!?」
「何かしら、この音楽。聞いたことがありませんわね。でもなんだか、盆踊りの動きに合っていますわ!」
ざわざわと騒がしくなってきたが、音楽がある方が断然踊りやすかった。音楽のリズムに乗って軽やかに踊り出す私を見習ったのか何なのか、みんなも同じように踊り出した。
そうして踊り出すとすぐに、石碑に変化があった。石碑が輝き始めたのだ。
「見ろ、石碑が光っているぞ! 祈りが大地の精霊様に届いたんだ」
「おおおお! 踊れ、みんな踊るんだ!」
それからは謎のテンションで踊り続けた。そしてその踊りは、その日一日では終わらなかった。翌日はセバスティアンが領都の住民を大量に連れてきたのだ。これはもう祭りである。私は即座に屋台を出すことを提案した。
「ずっと踊ってばかりでは疲れ果ててしまいますわ。休憩のためにも、お店をこの近くで開くべきですわ」
私の提案はすぐに採用された。大地の精霊の巫女が言うのだ。すぐに実行すべし。セバスティアンはそう言った。
うん、何か違う。絶対に違う。そうじゃない。何でいつの間にか私が大地の精霊の巫女になっているのだ。
聖女という肩書きはあったが、巫女という肩書きはなかったぞ。それに何でそこだけ和風なの? 他はバリバリの洋風なのに。
間違いなく何かがズレて来ている。それが私のせいなのか、ソフィアのせいなのかは分からないが。
こうして大地の精霊を祭る祈りの盆踊りが、毎年この時期に開催されることが決まった。そして精霊の怒りを静める巫女として、私がたてまつられることになった。
もう好きにしてくれ。私は流れに身を任せるだけだ。ゲームが始まるまでは自由行動だ。
そんな感じで課外活動は最終日を迎えた。町や村を視察に行ったり、馬や羊を見に行ったりと本当に色々な体験ができて面白かった。
そしてその合間を縫って盆踊りをするのは、別の意味で面白かった。
「ここで踊るのもこれで最後になりますね」
しみじみとフィル王子が言った。王子には申し訳ないが、イケメンが真剣な顔つきで盆踊りを踊る光景はシュール以外の何者でもなかった。笑い出さなかった自分をほめてあげたいくらいだ。
「そうですわね。もう二度と来ることはないかも知れませんから、しっかりと祈りをささげておきましょう」
私がそう提案した直後、石碑がひときわ大きな輝きを放った。
ちょうどこの場所には私たちしかいなかった。慌てて護衛が私たちの前にかばうように立つ。
『もう帰ってしまうのか。せめて、礼をさせてくれ』
そこに現れたのは大地の精霊。
その姿は何度も見たことがある。ゲームの中で。
その場にいたフィル王子たちも、それが何なのか合点がいったようである。その場でひざまずいた。
それを見た私も慌ててひざまずいた。
『そのようなことをする必要はない。私がこうして存在していられるのは、皆の信仰があったからだ』
大地の精霊の呼びかけで全員が姿勢を正した。みんなの表情には安堵の色が見えた。それにしても、さっき礼をさせてくれって言っていたわよね。何か良いものでもくれるのかしら?
私たちがひざまずくのをやめたことを確認した大地の精霊は私の方に向き直った。
『そなたのおかげで力を取り戻せたと言っても過言ではない。そなたには特別に私の加護を授けよう』
精霊の加護! それは確か災害イベントをクリア後にヒロインがもらうヤツだ。これはまずい。今ここで私がもらうのは非常にまずいわ。これは悪役令嬢がもらったらいかんヤツだわ。
「お、お言葉ですが、わたくしに加護は必要ありませんわ! それよりも……そ、そうだわ! こちらのフィル王子に加護を授けていただけませんか? フィル王子は将来この国の王様になるお方ですわ。きっとこの土地も、あちらの土地も、この国中の土地も、みんなで祈りをささげる素晴らしい土地にして下さいますわ!」
私はフィル王子を前に押し出した。ここは王子に身代わりになってもらおう。この世界のためだ。悪く思うなよ。
『ハッハッハッハ! そうか。自分よりも他人のことを思うか。ますます気に入ったぞ。分かった。その願い、聞き入れよう。さあ、私の加護を受け取るが良い』
大地の精霊とフィル王子が光の線でつながった。それは一瞬の出来事で、すぐに大地の精霊とともに見えなくなってしまった。
え? これで終わり? フィル王子には特に変化はなさそうなんだけど。
確か精霊の加護をもらったら、精霊の持っている魔力が上乗せされるのよね。ということは、大地の精霊が祈りによって強くなればなるほど、フィル王子も強くなるということだ。
何それチートじゃん。ま、すでに無限大の魔力を持ってるから、私には関係ないですけどね。
死ぬまでに盆踊りを一度みんなと一緒に踊ってみたいと願ったことはあったけど、多分こういうことじゃないと思う。
「よし、みんな盆踊りをマスターしたな。それではこれより、大地の精霊様に祈りをささげる儀式を始める」
ルークが高らかに宣言した。有り体に言えば「みんなで盆踊りを踊ろうぜ!」ということである。こうなりゃやけだ。やってやらぁ! あパパンがパン。
こうして謎の集団が、謎の石碑の周りで踊り出した。総勢百人くらいだろうか? 踊りの輪は二重になっている。
初めは静かに踊り出したのだが、みんなの手拍子がそろってくるに連れて、どこからともなくあの音楽が流れてきた。盆踊りのテーマソングである。
「何だ、一体どこから音楽が!?」
「何かしら、この音楽。聞いたことがありませんわね。でもなんだか、盆踊りの動きに合っていますわ!」
ざわざわと騒がしくなってきたが、音楽がある方が断然踊りやすかった。音楽のリズムに乗って軽やかに踊り出す私を見習ったのか何なのか、みんなも同じように踊り出した。
そうして踊り出すとすぐに、石碑に変化があった。石碑が輝き始めたのだ。
「見ろ、石碑が光っているぞ! 祈りが大地の精霊様に届いたんだ」
「おおおお! 踊れ、みんな踊るんだ!」
それからは謎のテンションで踊り続けた。そしてその踊りは、その日一日では終わらなかった。翌日はセバスティアンが領都の住民を大量に連れてきたのだ。これはもう祭りである。私は即座に屋台を出すことを提案した。
「ずっと踊ってばかりでは疲れ果ててしまいますわ。休憩のためにも、お店をこの近くで開くべきですわ」
私の提案はすぐに採用された。大地の精霊の巫女が言うのだ。すぐに実行すべし。セバスティアンはそう言った。
うん、何か違う。絶対に違う。そうじゃない。何でいつの間にか私が大地の精霊の巫女になっているのだ。
聖女という肩書きはあったが、巫女という肩書きはなかったぞ。それに何でそこだけ和風なの? 他はバリバリの洋風なのに。
間違いなく何かがズレて来ている。それが私のせいなのか、ソフィアのせいなのかは分からないが。
こうして大地の精霊を祭る祈りの盆踊りが、毎年この時期に開催されることが決まった。そして精霊の怒りを静める巫女として、私がたてまつられることになった。
もう好きにしてくれ。私は流れに身を任せるだけだ。ゲームが始まるまでは自由行動だ。
そんな感じで課外活動は最終日を迎えた。町や村を視察に行ったり、馬や羊を見に行ったりと本当に色々な体験ができて面白かった。
そしてその合間を縫って盆踊りをするのは、別の意味で面白かった。
「ここで踊るのもこれで最後になりますね」
しみじみとフィル王子が言った。王子には申し訳ないが、イケメンが真剣な顔つきで盆踊りを踊る光景はシュール以外の何者でもなかった。笑い出さなかった自分をほめてあげたいくらいだ。
「そうですわね。もう二度と来ることはないかも知れませんから、しっかりと祈りをささげておきましょう」
私がそう提案した直後、石碑がひときわ大きな輝きを放った。
ちょうどこの場所には私たちしかいなかった。慌てて護衛が私たちの前にかばうように立つ。
『もう帰ってしまうのか。せめて、礼をさせてくれ』
そこに現れたのは大地の精霊。
その姿は何度も見たことがある。ゲームの中で。
その場にいたフィル王子たちも、それが何なのか合点がいったようである。その場でひざまずいた。
それを見た私も慌ててひざまずいた。
『そのようなことをする必要はない。私がこうして存在していられるのは、皆の信仰があったからだ』
大地の精霊の呼びかけで全員が姿勢を正した。みんなの表情には安堵の色が見えた。それにしても、さっき礼をさせてくれって言っていたわよね。何か良いものでもくれるのかしら?
私たちがひざまずくのをやめたことを確認した大地の精霊は私の方に向き直った。
『そなたのおかげで力を取り戻せたと言っても過言ではない。そなたには特別に私の加護を授けよう』
精霊の加護! それは確か災害イベントをクリア後にヒロインがもらうヤツだ。これはまずい。今ここで私がもらうのは非常にまずいわ。これは悪役令嬢がもらったらいかんヤツだわ。
「お、お言葉ですが、わたくしに加護は必要ありませんわ! それよりも……そ、そうだわ! こちらのフィル王子に加護を授けていただけませんか? フィル王子は将来この国の王様になるお方ですわ。きっとこの土地も、あちらの土地も、この国中の土地も、みんなで祈りをささげる素晴らしい土地にして下さいますわ!」
私はフィル王子を前に押し出した。ここは王子に身代わりになってもらおう。この世界のためだ。悪く思うなよ。
『ハッハッハッハ! そうか。自分よりも他人のことを思うか。ますます気に入ったぞ。分かった。その願い、聞き入れよう。さあ、私の加護を受け取るが良い』
大地の精霊とフィル王子が光の線でつながった。それは一瞬の出来事で、すぐに大地の精霊とともに見えなくなってしまった。
え? これで終わり? フィル王子には特に変化はなさそうなんだけど。
確か精霊の加護をもらったら、精霊の持っている魔力が上乗せされるのよね。ということは、大地の精霊が祈りによって強くなればなるほど、フィル王子も強くなるということだ。
何それチートじゃん。ま、すでに無限大の魔力を持ってるから、私には関係ないですけどね。
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