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レオナールは悪くない
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現場に急行した我々はすぐに調査を開始した。いくら私が高位貴族といえども、子供たちには顔バレしていない。高慢ちきに振る舞わなければ、私が公爵令嬢であることはバレないだろう。
だが一応、ソフィアには見つからないようにしておいた。ゲームが始まる前から積極的な動きを見せているところを見ると、もしかしたら、私と同じ転生者なのかも知れない。それならば、悪役令嬢イザベラの顔も知っているはず。
騒ぎが大きくなりすぎないためにも、ここは慎重に行動すべきだろう。忍者のように。
私たちは身体強化魔法を使い、忍者のように人目を避けて移動し、情報収集にいそしんだ。そんなコソコソ動く私にローレンツが聞いてきた。
「師匠、一体どうしたのですか? もしかして、敵ですか!」
「違うわ。今はまだ、敵なのか味方なのか分からないわ」
ローレンツが意味不明なことを言い出したので、とりあえずそれっぽいことを言って黙らせておいた。
本当は一人で行きたかったのだが、私がいないことに気がつくと、ローレンツが何をやりだすか分からない。クラスメートを締め上げて私の居場所を聞き出そうとする光景がありありと浮かんだので、連れて行くより他なかった。
「犯人(ホシ)を確認したわ」
「あの、女の子に囲まれている子ですか?」
私は黙ってうなずきを返した。レオナールは数人の男の子とともに、それなりの数の女の子に囲まれていた。キャッキャウフフと楽しそうである。何これぇ……。
レオナールもイケメンだが、その男友達もイケメンぞろいである。一体どういうことだってばよ。私が聞きたい。
これは直接本人に聞いてみるしかないのかな? 接触するのはちょっと怖いが、一回くらいならノーカンだろう。それに他にも女の子がいるし、大丈夫だろう。
「楽しそうにお話をしておりますわね。わたくしも混ぜていただいてもよろしいかしら?」
突然聞こえて来た声に、その場にいた全員が沈黙した。しまった。隠密行動をやめてから現れるんだった。足音も立てずに現れたら、そりゃビックリするわよね。
沈黙に耐えきれず、とりあえず肩にかかったブロンドの髪を背中の方に払っておくわ。
「おい、お前たち、挨拶もなしか? こちらをどなたと……」
「お黙り」
私の一括でローレンツは黙り込んだ。やはり連れてきたのは間違いだったか。でもクラスメートの友達がー。
その場の空気はどんどんと悪い方へと傾いてゆく。これはまずい。
「申し訳ありませんわ。こちらはただの私の護衛ですので気になさらないで下さいませ。ところで、いつもこのメンバーでお話をなさっているのですか?」
私の丁寧な言葉遣いに、身分はそれほど高くないと判断されたようだ。少し落ち着いた雰囲気になってきた。
「ええ、大体そうですね。みんなで学校が終わってからどこに行くかを話していたのですよ」
「まあ! 学園の外に出ることができますの?」
「もちろん。学園の寮に住んでいる人は、寮の門限まで外に出ても良いことになっているんですよ」
学園の寮生活は思ったよりも快適そうである。私は馬車で直接家に帰るから、帰りにどこかに寄り道することはできないのだ。寮生は出かけられるのか。それなら私も寮生活が良かったな。
「うらやましいですわ」
思わず漏れた本音に、周囲の空気が明らかに柔らかくなったことが分かる。何だかほっこりとした感じになってきた。
これは聞くなら今しかないんじゃないのか?
「ところで、ピンク色の髪の方はご一緒じゃないのですか?」
何だろう。私がそれを言った途端、レオナールの顔が若干曇ったように見えた。
「ソフィアのことですか? その子なら、学園中をあちこち動き回っているみたいですよ」
何だか吐き捨てるような感じで言った。何だろう、こんな発言をする子ではなかった印相があるのだが。
「レオはアイツのことで苦労してるよな。同じ街の出身だからって言っても、レオには関係ないのにな」
「ああ、そうだよ。俺には関係ないことだ。なのに何で俺がアイツの尻拭いをしなくちゃいけないのか。俺はアイツとは縁を切ったんだぞ」
何ですと! ソフィアと縁を切った!? 一体何があったんだ。何があったのかは分からないが、レオナールとソフィアの関係が最悪であることだけは分かった。
そりゃ護衛としてレオナールがついていないわけだ。
「ねえ、レオ。前から気になってたんだけど、どうしてソフィアのことをそんなに嫌っているの?」
おお、実に言い質問ですね。レオナールの取り巻き(?)の女子生徒が聞きたかったことを聞いてくれた。他の人も実は気になっていたようであり、その場にいた全員がレオナールの方を注目した。
その様子に観念したのか、レオナールは語り始めた。
「ソフィアも昔はあんなにわがままで傲慢な子じゃなかったんだ。街のみんなから愛される女の子だったよ。正直言って、俺も好きだった。でも、ある日を境に、人が変わったかのように振る舞いだしたんだ」
それはソフィアが八歳のころの話らしい。突然それまでの楚々とした少女のソフィアが親に意見をするようになったらしい。ソフィアの家はそれほど裕福ではなかったのだが、食べ物や洋服をもっと良いものにしろと言い出したそうである。
初めはただの反抗期だと思っていた両親だったが、その言動は日に日に激しいものになっていた。魔法の儀式で魔力量が非常に高いことが分かっていたので、両親も強く言うことができず、それに従うしかなかった。
だが、両親の頑張りもむなしく、ついには魔法で街の人たちを脅して食べ物や洋服を譲ってもらっていたらしい。
いやそれ、譲ってもらったと言うよりか、脅して強奪しただけじゃないか。
うん。これはレオナールは悪くない。レオナールがソフィアを見捨てるのも仕方がないだろう。
ヒロインであるソフィアの奇行。その裏にはやはり、彼女には前世の記憶があるのかも知れない。八歳のころに突如として前世の記憶を取り戻したのではなかろうか。
それならつじつまが合いそうね。
だが一応、ソフィアには見つからないようにしておいた。ゲームが始まる前から積極的な動きを見せているところを見ると、もしかしたら、私と同じ転生者なのかも知れない。それならば、悪役令嬢イザベラの顔も知っているはず。
騒ぎが大きくなりすぎないためにも、ここは慎重に行動すべきだろう。忍者のように。
私たちは身体強化魔法を使い、忍者のように人目を避けて移動し、情報収集にいそしんだ。そんなコソコソ動く私にローレンツが聞いてきた。
「師匠、一体どうしたのですか? もしかして、敵ですか!」
「違うわ。今はまだ、敵なのか味方なのか分からないわ」
ローレンツが意味不明なことを言い出したので、とりあえずそれっぽいことを言って黙らせておいた。
本当は一人で行きたかったのだが、私がいないことに気がつくと、ローレンツが何をやりだすか分からない。クラスメートを締め上げて私の居場所を聞き出そうとする光景がありありと浮かんだので、連れて行くより他なかった。
「犯人(ホシ)を確認したわ」
「あの、女の子に囲まれている子ですか?」
私は黙ってうなずきを返した。レオナールは数人の男の子とともに、それなりの数の女の子に囲まれていた。キャッキャウフフと楽しそうである。何これぇ……。
レオナールもイケメンだが、その男友達もイケメンぞろいである。一体どういうことだってばよ。私が聞きたい。
これは直接本人に聞いてみるしかないのかな? 接触するのはちょっと怖いが、一回くらいならノーカンだろう。それに他にも女の子がいるし、大丈夫だろう。
「楽しそうにお話をしておりますわね。わたくしも混ぜていただいてもよろしいかしら?」
突然聞こえて来た声に、その場にいた全員が沈黙した。しまった。隠密行動をやめてから現れるんだった。足音も立てずに現れたら、そりゃビックリするわよね。
沈黙に耐えきれず、とりあえず肩にかかったブロンドの髪を背中の方に払っておくわ。
「おい、お前たち、挨拶もなしか? こちらをどなたと……」
「お黙り」
私の一括でローレンツは黙り込んだ。やはり連れてきたのは間違いだったか。でもクラスメートの友達がー。
その場の空気はどんどんと悪い方へと傾いてゆく。これはまずい。
「申し訳ありませんわ。こちらはただの私の護衛ですので気になさらないで下さいませ。ところで、いつもこのメンバーでお話をなさっているのですか?」
私の丁寧な言葉遣いに、身分はそれほど高くないと判断されたようだ。少し落ち着いた雰囲気になってきた。
「ええ、大体そうですね。みんなで学校が終わってからどこに行くかを話していたのですよ」
「まあ! 学園の外に出ることができますの?」
「もちろん。学園の寮に住んでいる人は、寮の門限まで外に出ても良いことになっているんですよ」
学園の寮生活は思ったよりも快適そうである。私は馬車で直接家に帰るから、帰りにどこかに寄り道することはできないのだ。寮生は出かけられるのか。それなら私も寮生活が良かったな。
「うらやましいですわ」
思わず漏れた本音に、周囲の空気が明らかに柔らかくなったことが分かる。何だかほっこりとした感じになってきた。
これは聞くなら今しかないんじゃないのか?
「ところで、ピンク色の髪の方はご一緒じゃないのですか?」
何だろう。私がそれを言った途端、レオナールの顔が若干曇ったように見えた。
「ソフィアのことですか? その子なら、学園中をあちこち動き回っているみたいですよ」
何だか吐き捨てるような感じで言った。何だろう、こんな発言をする子ではなかった印相があるのだが。
「レオはアイツのことで苦労してるよな。同じ街の出身だからって言っても、レオには関係ないのにな」
「ああ、そうだよ。俺には関係ないことだ。なのに何で俺がアイツの尻拭いをしなくちゃいけないのか。俺はアイツとは縁を切ったんだぞ」
何ですと! ソフィアと縁を切った!? 一体何があったんだ。何があったのかは分からないが、レオナールとソフィアの関係が最悪であることだけは分かった。
そりゃ護衛としてレオナールがついていないわけだ。
「ねえ、レオ。前から気になってたんだけど、どうしてソフィアのことをそんなに嫌っているの?」
おお、実に言い質問ですね。レオナールの取り巻き(?)の女子生徒が聞きたかったことを聞いてくれた。他の人も実は気になっていたようであり、その場にいた全員がレオナールの方を注目した。
その様子に観念したのか、レオナールは語り始めた。
「ソフィアも昔はあんなにわがままで傲慢な子じゃなかったんだ。街のみんなから愛される女の子だったよ。正直言って、俺も好きだった。でも、ある日を境に、人が変わったかのように振る舞いだしたんだ」
それはソフィアが八歳のころの話らしい。突然それまでの楚々とした少女のソフィアが親に意見をするようになったらしい。ソフィアの家はそれほど裕福ではなかったのだが、食べ物や洋服をもっと良いものにしろと言い出したそうである。
初めはただの反抗期だと思っていた両親だったが、その言動は日に日に激しいものになっていた。魔法の儀式で魔力量が非常に高いことが分かっていたので、両親も強く言うことができず、それに従うしかなかった。
だが、両親の頑張りもむなしく、ついには魔法で街の人たちを脅して食べ物や洋服を譲ってもらっていたらしい。
いやそれ、譲ってもらったと言うよりか、脅して強奪しただけじゃないか。
うん。これはレオナールは悪くない。レオナールがソフィアを見捨てるのも仕方がないだろう。
ヒロインであるソフィアの奇行。その裏にはやはり、彼女には前世の記憶があるのかも知れない。八歳のころに突如として前世の記憶を取り戻したのではなかろうか。
それならつじつまが合いそうね。
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