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我に集いし仲間たち

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 我がランドール公爵家の庭には、ルーク、フィル王子、ユリウス、ローレンツの顔が並んでいた。
 いや~、四人の攻略対象がそろうと実に壮観ですね~。思わず現実逃避したいくらいだわ。

「外出禁止令が出されたイザベラの代わりに、城下町で人気のスイーツを買ってきましたよ。一緒に食べましょう」
「フィル王子が自分の手で買いたいからとねだったので、本当に大変だったんですよ。心して食べて下さいね、イザベラ様」

 そう言いながら、ユリウスは持って来たお茶菓子をランドール公爵家の使用人に渡した。使用人は包みを開き、すぐにお茶の準備をしてくれていた。

 あれからフィル王子はひらめいたらしい。イザベラをお城に呼び出せないなら、自分が行けばいいじゃない。

 くっ、悪知恵が働くようになったじゃないか。そしてフィル王子の護衛という肩書きでユリウスも一緒に来るようになった。

「フィル王子、お城で働いている私の父に渡して下されば良かったのに。そうすれば、わざわざこのようなところまでご足労をおかけすることもなかったと思いますが」

 ツンツンとルークが対応する。
 本来ならばこの時間帯は、ルークは学園に行っている時間帯である。しかし、どこかでフィル王子がランドール公爵家に来ることを知ったのだろう。ルークは仮病を使って学園を休んだ。

 それで良いのかルークよ。それを許すお母様もどうかと思うのだが……もしかしてお母様、ルークを私の監視役として配置したのではあるまいか。かすかな疑問が頭をよぎった。

 ローレンツにいたっては、今ではランドール公爵家に住み着いている。完全に私専属の護衛である。
 あれからすぐに身体強化魔法を習得したローレンツは、私への忠誠心の高さから護衛を任されることになったのだ。

 お母様はローレンツのことを、「自分の身を犠牲にしてもイザベラを守るつもりでいる」と極めて高く評価していた。
 私としてはローレンツの命を守ってもらいたいのだが、それを言うとまた怒られそうなのでやめておいた。

 そんなこともあって、我が家の庭には攻略対象が勢ぞろいすることになったのだ。
 正確に言えば、平民出身のレオナールがいないのだが、あの子は学園が始まらないと出会うことができない。
 レオナールとは学園でしか会えない設定で本当に良かったと思っている。万が一、を考えたら、レオナールにどんな顔をして会えば分からなかったわ。できればこのまま顔を合わせなくてすめば良いのだが。

 どうかヒロインには幼なじみのレオナールとの好感度をしっかりとあげておいてもらいたい。
 こちらはもうダメかも……。
 いやいや、まだチャンスはあるはずだ。諦めたらそこでゲームは終わりだと偉い先生が言っていた。
 まだだ、まだ終わらんよ!


 ****


 一方そのころ、天界ではようやく下界をのぞくことができる泉が静けさを取り戻していた。

 彼女にとっては、ほんの少し揺らいだだけであり、すぐに収まったと思っていた。しかし、創造者と下界に生きているものとでは、その時間軸に大きな隔たりがあった。

 創造者の「ほんの少し」は下界では八年の月日が経過していたのだ。
 創造者の中では少しの時間でも、世界は大きく変わっていた。

 送り込んだイザベラはしっかりと仕事をこなしてくれているだろうか?
 直接見ることができなかった月日に何事もなかったかを知るため、イザベラへと目を向ける。

 どういうことだ? なぜローレンツがイザベラのそばにいるのだ?
 だが見た感じ、ローレンツはイザベラに完全服従しているようである。少しゲームとは違う状況にはなっているが、悪役令嬢としてはしっかりと機能しているようだ。
 あのイザベラの顔を見ろ。どこからどう見ても悪役令嬢そのものではないか。

 その様子を見て、創造者はニヤリと笑った。最初はどうなるかと思ったが、どうやらもくろみ通りに進んでいるようである。

 ルークは予定通り学生として学園に通っている。フィリップのそばにはすでにユリウスが付き従っている。

 ……うん? 何だかユリウスが髪の毛を伸ばしているようだが、イメージチェンジでもしているのか? 分からないが似合っているのでよしとしよう。髪型が違うことくらい、大した問題ではない。

 よしよし、順調に下準備は進んでいるようだな。あとは私がこのゲームのヒロインとして下界に降り立てばいいだけだ。
 だが、この場から姿を消すのはさすがに問題がある。他の創造者にバレるわけにはいかない。ならば意識の一部を送り込み、体を乗っ取るとしよう。

 なに、バレはしまい。この場には姿が残っている。私が下界の人間に憑依していることなど分かるまい。

 ゲームが本格的に開始されるまでにはまだ時間があるが、先行して地盤を固めておくのもまた一興。確か幼なじみのレオナールが近くにいたはずである。まずはそやつを丸め込むことにしよう。

 憧れのゲームの世界に、ヒロインとして降り立つことができるとは、感慨深いな。長い時間をかけて準備をしておいて良かった。


 この日、一人の少女の意識は深い眠りについた。
 その日以降、その娘はまるで人が変わったかのように、わがまま放題に振る舞うようになった。
 彼女を知る周囲の人たちはこぞって眉をひそめた。
 幼いころから仲が良かった友達もまた、同じように眉をひそめた。
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