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君たち男の子
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あれからと言うもの、ことあるごとにフィル王子からお茶会のお誘いが来るようになった。これはまずい。ゲロマジヤバい。
できる限り王子からのお誘いを断りたいのだが、いくら悪役令嬢イザベラと言えどもすべてのお誘いを断るわけにはいかなかった。いや、お母様がそれを許さなかった。
どうやらお母様と王妃様はマブダチのようであり、ズッ友でもあるようだ。裏で結託しているのが見え隠れしている。ときにお母様は私をお城に連れて行って、王妃様のお茶会にねじ込むくらいは軽くやってのけていた。
強引なトライを決めようとするその姿。たくましいわよお母様。でもここまで元気にするつもりはなかったのよ。もう手遅れだけどね。
そうなってくると、必然的にお城に行く機会も増えてくることになる。そうなると、別の攻略対象とも遭遇する機会が増えてきた。
これ以上の失態は許されない。残りの攻略対象についてはしっかりとシナリオ通りに敬遠されなければならないのだ。
前回の王子のときと同じ過ちは繰り返さない。イザベラはできる子。今回は最初から悪役令嬢路線で嫌味ったらしくいこうと思う。
お城に行くときには、必ずお母様か、兄のルークがついていた。
どうやらランドール公爵家では「イザベラは何かをしでかすから、絶対に一人にするな」という命令が、お母様から下っているようである。
そして今日も、ルークとともにフィル王子のお茶会に参加していた。ようやくフィル王子も、ルークが必ず私の付き添いでくることに諦めたようである。最近ではちゃんとイスが三つ用意されるようになっていた。
いつものように、たわいのない話をしていると、使用人がお茶会の終了を告げにきた。
「フィリップ王子、そろそろ訓練のお時間です」
「もうそんな時間か。イザベラと話していると、まるで時間が飛んで行ってしまったかのようだよ」
「まあ、フィル王子ったら」
ウフフ、アハハ。それを歯ぎしりしながら半眼でにらむルーク。こいつはいつか不敬罪で捕まると私はにらんでいる。
「そうだ、良かったらイザベラも見学に来ないかい? これから魔法の訓練を行うことになっているから、イザベラにとっても、きっと良い刺激になると思うよ」
「行きます!」
私はすぐに飛びついた。
実は私、いまだに魔法のまともな訓練を受けさせてもらっていないのだ。
その理由は、私がどれだけの能力を持っているのかをフランツが把握しきれていないから。
もちろんフランツも、私にちゃんとした魔法の訓練を受けさせるために頑張っている。私もそれに協力しており、フランツの指示した通りに魔法を使って、予備テストのようなものを受けているのだが……。
ご存じのように、このイザベラの能力はチートそのもの。何と、一度教えられた魔法を一回で使いこなせてしまうのだ。何度やっても一回で覚えてしまうので、さすがのフランツもマジでビビっているらしい。
「教えて良い魔法と、悪い魔法を見極める必要があるので、しばらく時間が欲しい」
そう言ったきり、毎日ウンウンと頭を抱えているのだ。これはフランツの頭から髪が無くなるのも時間の問題ね。何だか悪いことをしてしまったわ。
そんなわけで、魔法をガンガン使いたい私にとっては、このフィル王子の申し出は大変ありがたかった。
当然、こちらの事情を知っているルークは反対した。だが、当事者である私がOKを出していること、誘い主が王子であること、などから渋々従うことになった。
「イザベラ、見るだけだからね。絶対に魔法を使ってはいけないからね」
この言葉を移動中に何度聞いたことか。それほどまでに信頼がないとは思わなかった。
私だってやるときはやるんだよ? やらかしてばっかりじゃないんだからね? そこのところよろしく。
フィリップ王子に連れられてやって来たのは、お城から出て少し進んだ先にある広場だった。どうやらこの場所は限られた人だけが利用出来る施設のようであり、立派な服をきた軍人や、魔術師たちがそこら中にウヨウヨいた。
私が物珍しそうにキョロキョロとしていると、一人の短髪の子供がやってきた。こやつは……。
短い金色の髪に、ブラウンの瞳。間違いない。攻略対象のユリウス・シャフラーネクだ。さすがは騎士団の総隊長の娘だけあって、ここでの訓練が許されているのね。
攻略対象の幼少期なだけあって、どう見ても美ショタです。本当にありがとうございます。眼福、眼福。でも私、あなたに嫌われないといけないのよね。何だか複雑な心境だが、ここは心を鬼にするしかない。
「フィリップ王子、お待ちしておりました。客人もご一緒だったのですね。僕はユリウス・シャフラーネクと言います」
そう言うと、ビシッとりりしい騎士のポーズをとった。あらやだ、様になっているわ。そんな私のデレッとした態度を見たのか、ルークが同じく騎士のポーズをとった。こちらも様になっている。
「ルーク・ランドールだ。隣にいるのは僕の妹のイザベラだ」
早くも牽制状態に入ったルークを引きつった顔でユリウスが見た。そりゃそうだよね。ユリウスには私をどうのこうのしようだなんて思いは、一切ないだろうからね。女の子同士だし。
「イザベラですわ。ユリウス様」
お母様仕込みの美しい淑女の礼をとる。さすがにこれにはユリウスも目を見張った。
本当はユリウスもこんな風に淑女の礼をしたいはずなのよね。親の見栄のせいで苦しい思いをしているのはいただけないわ。
ああ、でもダメよ。ダメダメ。私はユリウスに嫌われなければならないのよ。これ以上、あの日の悔しい思いをするわけにはいけない。
鬼よ、鬼になるのよイザベラ!
できる限り王子からのお誘いを断りたいのだが、いくら悪役令嬢イザベラと言えどもすべてのお誘いを断るわけにはいかなかった。いや、お母様がそれを許さなかった。
どうやらお母様と王妃様はマブダチのようであり、ズッ友でもあるようだ。裏で結託しているのが見え隠れしている。ときにお母様は私をお城に連れて行って、王妃様のお茶会にねじ込むくらいは軽くやってのけていた。
強引なトライを決めようとするその姿。たくましいわよお母様。でもここまで元気にするつもりはなかったのよ。もう手遅れだけどね。
そうなってくると、必然的にお城に行く機会も増えてくることになる。そうなると、別の攻略対象とも遭遇する機会が増えてきた。
これ以上の失態は許されない。残りの攻略対象についてはしっかりとシナリオ通りに敬遠されなければならないのだ。
前回の王子のときと同じ過ちは繰り返さない。イザベラはできる子。今回は最初から悪役令嬢路線で嫌味ったらしくいこうと思う。
お城に行くときには、必ずお母様か、兄のルークがついていた。
どうやらランドール公爵家では「イザベラは何かをしでかすから、絶対に一人にするな」という命令が、お母様から下っているようである。
そして今日も、ルークとともにフィル王子のお茶会に参加していた。ようやくフィル王子も、ルークが必ず私の付き添いでくることに諦めたようである。最近ではちゃんとイスが三つ用意されるようになっていた。
いつものように、たわいのない話をしていると、使用人がお茶会の終了を告げにきた。
「フィリップ王子、そろそろ訓練のお時間です」
「もうそんな時間か。イザベラと話していると、まるで時間が飛んで行ってしまったかのようだよ」
「まあ、フィル王子ったら」
ウフフ、アハハ。それを歯ぎしりしながら半眼でにらむルーク。こいつはいつか不敬罪で捕まると私はにらんでいる。
「そうだ、良かったらイザベラも見学に来ないかい? これから魔法の訓練を行うことになっているから、イザベラにとっても、きっと良い刺激になると思うよ」
「行きます!」
私はすぐに飛びついた。
実は私、いまだに魔法のまともな訓練を受けさせてもらっていないのだ。
その理由は、私がどれだけの能力を持っているのかをフランツが把握しきれていないから。
もちろんフランツも、私にちゃんとした魔法の訓練を受けさせるために頑張っている。私もそれに協力しており、フランツの指示した通りに魔法を使って、予備テストのようなものを受けているのだが……。
ご存じのように、このイザベラの能力はチートそのもの。何と、一度教えられた魔法を一回で使いこなせてしまうのだ。何度やっても一回で覚えてしまうので、さすがのフランツもマジでビビっているらしい。
「教えて良い魔法と、悪い魔法を見極める必要があるので、しばらく時間が欲しい」
そう言ったきり、毎日ウンウンと頭を抱えているのだ。これはフランツの頭から髪が無くなるのも時間の問題ね。何だか悪いことをしてしまったわ。
そんなわけで、魔法をガンガン使いたい私にとっては、このフィル王子の申し出は大変ありがたかった。
当然、こちらの事情を知っているルークは反対した。だが、当事者である私がOKを出していること、誘い主が王子であること、などから渋々従うことになった。
「イザベラ、見るだけだからね。絶対に魔法を使ってはいけないからね」
この言葉を移動中に何度聞いたことか。それほどまでに信頼がないとは思わなかった。
私だってやるときはやるんだよ? やらかしてばっかりじゃないんだからね? そこのところよろしく。
フィリップ王子に連れられてやって来たのは、お城から出て少し進んだ先にある広場だった。どうやらこの場所は限られた人だけが利用出来る施設のようであり、立派な服をきた軍人や、魔術師たちがそこら中にウヨウヨいた。
私が物珍しそうにキョロキョロとしていると、一人の短髪の子供がやってきた。こやつは……。
短い金色の髪に、ブラウンの瞳。間違いない。攻略対象のユリウス・シャフラーネクだ。さすがは騎士団の総隊長の娘だけあって、ここでの訓練が許されているのね。
攻略対象の幼少期なだけあって、どう見ても美ショタです。本当にありがとうございます。眼福、眼福。でも私、あなたに嫌われないといけないのよね。何だか複雑な心境だが、ここは心を鬼にするしかない。
「フィリップ王子、お待ちしておりました。客人もご一緒だったのですね。僕はユリウス・シャフラーネクと言います」
そう言うと、ビシッとりりしい騎士のポーズをとった。あらやだ、様になっているわ。そんな私のデレッとした態度を見たのか、ルークが同じく騎士のポーズをとった。こちらも様になっている。
「ルーク・ランドールだ。隣にいるのは僕の妹のイザベラだ」
早くも牽制状態に入ったルークを引きつった顔でユリウスが見た。そりゃそうだよね。ユリウスには私をどうのこうのしようだなんて思いは、一切ないだろうからね。女の子同士だし。
「イザベラですわ。ユリウス様」
お母様仕込みの美しい淑女の礼をとる。さすがにこれにはユリウスも目を見張った。
本当はユリウスもこんな風に淑女の礼をしたいはずなのよね。親の見栄のせいで苦しい思いをしているのはいただけないわ。
ああ、でもダメよ。ダメダメ。私はユリウスに嫌われなければならないのよ。これ以上、あの日の悔しい思いをするわけにはいけない。
鬼よ、鬼になるのよイザベラ!
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